- 作成日 : 2025年12月9日
営業の自動化はどこから始めるべき?具体的なステップや導入メリットを紹介
企業の成長に不可欠な営業活動ですが、「本来注力すべき業務に時間を使えない」といった課題を抱えていませんか。その解決策となるのが「営業自動化」です。営業自動化は、これまで手作業で行っていた定型業務をツールで効率化し、営業担当者が顧客との関係構築など、より重要な業務に集中できる環境を作ります。この記事では、営業自動化をどこから始めるべきか、具体的なステップと導入メリット、そして注意点までを分かりやすく解説します。
目次
営業自動化はどこから始めるべきか
営業自動化を成功させる鍵は、いきなり大規模なツールを導入するのではなく、段階的に進めることです。まずは自社の状況を正確に把握し、小さな範囲から試していくことが重要です。ここでは、営業自動化を始めるための具体的な3つのステップを紹介します。
関連記事|業務の自動化とは?メリットや方法、実施の手順を紹介
まずは現状の営業業務を洗い出す
最初に行うべきは、営業担当者が日々どのような業務にどれくらいの時間を使っているかを具体的に洗い出すことです。例えば、新規顧客リストの作成、メールの送信、資料作成、商談記録の入力、見積書や請求書の作成など、全ての業務をリストアップします。これにより、どの業務が負担になっているのか、どこに非効率な部分が隠れているのかが明確になり、自動化すべき業務の優先順位が見えてきます。
次に自動化する範囲と目標を決める
業務の洗い出しが終わったら、次に「どの業務を」「何のために」自動化するのかを決めます。例えば、「問い合わせ対応の初動を自動化して、顧客への返信時間を平均1時間以内に短縮する」や「月20時間かかっているレポート作成を自動化し、その時間を顧客への提案活動に充てる」など、具体的で測定可能な目標を設定することが大切です。目的が明確であれば、導入すべきツールも自ずと絞られてきます。
スモールスタートで導入し効果を検証する
自動化の範囲と目標が決まったら、いよいよツールの導入です。しかし、最初から全部門で一斉に導入するのは避けましょう。まずは特定のチームや一部の業務に限定して試験的に導入する「スモールスタート」がおすすめです。小さな範囲で試すことで、現場の混乱を最小限に抑えつつ、ツールの効果や課題を具体的に把握できます。その検証結果をもとに、本格導入や他部門への展開を検討するのが成功への近道です。
営業自動化で得られるメリット
営業自動化は、単に業務の手間を省くだけではありません。営業組織全体の生産性を向上させ、企業の成長を加速させる多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットについて解説します。
関連記事|営業プロセスは可視化が大切|可視化のメリットと各プロセスを解説
営業担当者のコア業務への集中
営業担当者の重要な仕事は、顧客と対話し、課題を解決する提案を行うことです。しかし実際には、データ入力や資料作成といったノンコア業務に多くの時間を費やしているケースが少なくありません。営業自動化によってこれらの定型業務から解放されれば、営業担当者は本来注力すべき顧客との関係構築や価値の高い提案活動に多くの時間を割けるようになり、成果の向上に直結します。
属人化の解消と営業品質の標準化
「あのエース社員でなければ売れない」といった状況は、組織にとって大きなリスクです。営業自動化ツールを導入すると、トップセールスの行動パターンや効果的な提案資料などをチーム全体で共有し、標準化できます。これにより、個人のスキルや経験に依存しがちだった営業活動の属人化が解消され、チーム全体の営業品質が底上げされます。新人でも早期に戦力化できるというメリットもあります。
データに基づいた戦略的な営業活動の実現
営業活動のプロセスがツール上で管理されることで、顧客情報、商談の進捗、受注確度といったデータが蓄積・可視化されます。これまで担当者の勘や経験に頼っていた部分を客観的なデータで分析できるようになるため、より精度の高い営業戦略を立てることが可能です。例えば、失注の原因をデータから分析して改善策を講じたり、受注しやすい顧客層を特定してアプローチを強化したりできます。
営業自動化で効率化できる具体的な業務
営業活動には、自動化によって大幅に効率化できる業務が数多く存在します。ここでは、営業自動化ツールが得意とする代表的な業務を4つのカテゴリーに分けて紹介します。自社のどの業務に適用できそうか、イメージしながら読み進めてみてください。
関連記事|業務効率化につながる自動化48例!失敗を防ぐコツも解説
見込み客(リード)のリスト作成と管理
新規開拓に不可欠な見込み客リストの作成は、手作業では膨大な時間がかかります。Webサイトの問い合わせフォームとツールを連携させれば、入力された情報を自動でリスト化できます。また、イベントで交換した名刺情報をスキャンするだけでデータ化し、自動で顧客リストに追加する機能も便利です。これにより、リスト作成の手間を削減し、常に最新の顧客情報を維持できます。
メールの作成と配信
顧客へのアプローチやフォローアップに欠かせないメール業務も、自動化の効果が高い領域です。例えば、資料をダウンロードした顧客に対して、数日後に自動でフォローアップメールを送る「ステップメール」を設定したり、顧客の興味関心に合わせてパーソナライズされた内容のメールを自動配信したりすることが可能です。これにより、適切なタイミングで効果的なアプローチが実現します。
見積書作成から請求書送付までの事務作業
営業活動には、見積書の作成、社内承認、契約書の締結、そして請求書の送付といった一連の事務作業が付随します。これらの業務を自動化ツールで一元管理することで、作成の手間や承認の待ち時間を大幅に削減できます。特に、受注後の請求書発行や送付を自動化し、会計システムと連携させれば、経理担当者の負担も軽減でき、会社全体の業務効率化に繋がります。
Webフォームからの問い合わせ対応
企業のWebサイトに設置された問い合わせフォームは、重要な顧客接点です。フォームから問い合わせがあった際に、内容に応じて担当者を自動で割り振り、サンクスメールを即座に自動返信するよう設定できます。これにより、顧客を待たせることなく迅速な対応が可能となり、機会損失を防ぎ、顧客満足度の向上に貢献します。
【目的別】営業自動化ツールの種類と選び方
営業自動化を実現するツールには様々な種類があり、それぞれ得意な領域が異なります。自社の目的や課題に合わせて最適なツールを選ぶことが重要です。ここでは、代表的な4種類のツールとその特徴を解説します。
SFA(営業支援システム)
SFA(Sales Force Automation)は、営業部門の活動を支援するためのツールです。主な機能には、顧客情報管理、案件の進捗管理、商談履歴の記録、営業活動のレポーティングなどがあります。SFAを導入することで、営業担当者一人ひとりの行動を可視化し、チーム全体で情報を共有できるため、案件の引き継ぎがスムーズになったり、上司が的確なアドバイスを送りやすくなったりします。
関連記事|案件管理とは?なぜ必要?業務別の例やツールの種類、事例を解説
MA(マーケティングオートメーション)
MA(Marketing Automation)は、主にマーケティング活動を自動化し、見込み客(リード)の獲得から育成までを支援するツールです。Webサイトの閲覧履歴やメールの開封率などから顧客の興味度合いをスコアリングし、購買意欲が高まったタイミングで営業担当者に通知するといった機能があります。これにより、営業は確度の高い見込み客に効率的にアプローチできます。
CRM(顧客関係管理)
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客情報を一元管理し、顧客と良好な関係を長期的に築くことを目的としたツールです。購入履歴や問い合わせ履歴、サポートの対応記録などを管理し、全社で共有できます。顧客一人ひとりに合わせたきめ細やかな対応が可能になるため、顧客満足度の向上やリピート購入の促進に繋がります。SFAの機能を包含しているツールも多く存在します。
関連記事|顧客管理とは?経営に役立つCRMシステム導入のメリットやおすすめ比較7選
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上で行う定型的な事務作業を自動化するツールです。特定のアプリケーションに限定されず、複数のシステムを横断した作業を自動化できるのが特徴です。例えば、「CRMから顧客リストをダウンロードし、Excelで加工して、会計システムにインポートする」といった一連の作業をロボットに任せることができます。
営業自動化の導入で失敗しないための注意点
営業自動化は多くのメリットをもたらしますが、導入しただけでは成果は出ません。計画や準備が不十分だと、かえって現場の負担を増やしてしまうこともあります。ここでは、導入で失敗しないために押さえておきたい3つの注意点を解説します。
関連記事|システム導入とは?期待できる効果や進め方、失敗を防ぐ方法解説
導入目的を明確にする
まず重要なのは、「なぜ営業自動化を行うのか」という目的を明確にすることです。「流行っているから」「競合が導入したから」といった曖昧な理由で導入すると、ツールを使いこなせず形骸化してしまう可能性が高まります。「残業時間を月10%削減する」「新規契約数を年間15%増やす」など、具体的な目標を設定し、社内で共有することが成功の第一歩です。
現場の理解と協力体制を築く
新しいツールを導入する際、現場の営業担当者から「入力作業が増えて面倒だ」「今のやり方を変えたくない」といった反発が起こることは少なくありません。導入をスムーズに進めるためには、なぜこのツールが必要なのか、導入によって現場の業務がどう楽になるのかを丁寧に説明し、理解を得ることが不可欠です。導入前に研修会を実施したり、操作が簡単なツールを選んだりする配慮も重要です。
費用対効果を慎重に見極める
営業自動化ツールの導入には、初期費用や月額のライセンス費用など、コストがかかります。ツールの機能や価格だけを見るのではなく、「導入によってどれだけの時間が削減できるか」「その時間でどれくらいの売上増が見込めるか」といった費用対効果を慎重に検討しましょう。自社の規模や課題に対して過剰な機能を持つ高価なツールを選ばないよう、複数のツールを比較検討することが大切です。
AI活用でさらに進化する営業自動化
近年、AI(人工知能)技術の進化により、営業自動化は新たなステージに進んでいます。AIを活用することで、これまで人間が行っていた、より高度な判断を伴う業務も自動化できるようになりつつあります。2025年9月現在、特に注目されている活用法を2つ紹介します。
生成AIによるメール文面や提案資料の自動作成
ChatGPTに代表される生成AIを活用すれば、顧客へのアプローチメールの文面や、提案資料の骨子などを自動で作成できます。顧客の業種や過去のやり取りといった情報をAIに与えることで、よりパーソナライズされた質の高いコンテンツを瞬時に生成することが可能です。これにより、営業担当者は資料作成にかかる時間を大幅に短縮し、より戦略的な活動に集中できます。
AIによる高精度な見込み客予測とアプローチの最適化
過去の膨大な営業データをAIに学習させることで、受注確度の高い見込み客を予測する精度が飛躍的に向上しています。AIは、企業の属性や過去の行動履歴など、様々な要素を分析し、「次にアプローチすべき顧客」や「最適なアプローチのタイミング」を提案してくれます。これにより、営業担当者はより効率的に成果に繋がる活動を展開できるようになります。
営業自動化で組織の営業力を最大化する
営業自動化は、単なる業務効率化のための手段ではありません。定型業務をテクノロジーに任せ、人間はより創造的で付加価値の高い仕事に集中するための戦略的な取り組みです。営業担当者が顧客と向き合う時間を増やし、データに基づいて戦略を立てることで、組織全体の営業力は最大化されます。どこから始めるべきかを見極め、自社の課題に合ったツールを段階的に導入していくことが、これからの時代に企業が成長し続けるための重要な鍵となるでしょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選【部署別紹介】
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
経理担当者向け
①Excel関数集 32選まとめブック
経理担当者の方をはじめ、ビジネスパーソンが知っておきたい便利なExcel関数集を初級~上級までギュッと網羅。新人社員の研修用などにもお使いいただけます。Google スプレッドシートならではの関数もご紹介しています。
②勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)
勘定科目・仕訳に関する基本知識、および各勘定科目の仕訳例を具体的かつ網羅的にまとめた、50ページを超えるガイドを無料で提供しております。お手元における保存版としてでだけでなく、従業員への印刷・配布用としてもぜひご活用ください。
人事労務担当者向け
①入社・退職・異動の手続きガイドブック
書類の回収・作成・提出など手間のかかる入社・退職・異動(昇給・昇格、転勤)の手続き。
最新の制度をもとに、よくある質問やチェックポイントを交えながら、各手続きに必要な情報をまとめた人気のガイドですす。
②社会保険・労働保険の手続きガイド
企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。
各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。
総務・法務担当者向け
契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
プロセスマネジメントとは?導入するメリット・流れも解説
プロセスマネジメントとは、業務の流れを細かくプロセスとして分解し、プロセスごとに分析・管理することで業務課題を可視化するマネジメント手法のことです。プロセスマネジメントを導入すると業務の標準化も進めやすくなり、特定の業務が属人化したりブラッ…
詳しくみるセールスイネーブルメントとは?意味や導入するメリット、企業事例を解説
セールスイネーブルメントとは、営業組織の強化を意味します。ITツールや研修を通じて人材育成を仕組み化することで、組織全体の営業力を強化することが目的です。営業部門を強化して、収益を上げたいと考えている企業に有効な手法でしょう。 本記事では、…
詳しくみるペーパーレス化とは?メリットや推進する時のポイント、成功事例を紹介!
ペーパーレス化とは、紙で保管していた文書や資料などを電子化し、データとして保管・活用することです。ペーパーレス化を行うことで、コスト削減やセキュリティの強化が期待できます。本記事では、ペーパーレス化の概要や日本のペーパーレス化の現状を紹介し…
詳しくみる見やすいマニュアルの作り方!レイアウトのコツや具体例を解説
業務中にマニュアルを参照しようと思っても、見づらかったり内容が分かりにくかったりするマニュアルしかなければ、業務中の疑問を解決することができません。他の従業員に尋ねる手間がかかるほか、分からないまま進めることによりトラブルが発生する可能性も…
詳しくみるマニュアル作りが上手い人とは?失敗しがちな例と上達するコツを解説
業務効率化において、利用者が使いやすいマニュアルを作るのは大切です。しかし、特にマニュアル作成に慣れていない方が使いやすいマニュアルを作るのは難しく、作成が上手くいかずに悩む方もいるでしょう。マニュアルを作るときに上手い人がどのようなポイン…
詳しくみる飲食店のQSCとは?向上させる5つのステップとチェックシート、企業事例を紹介
QSCとは、マクドナルドを世界的チェーンに育て上げたレイ・クロックが生み出した飲食店経営を成功に導くための行動指標です。QSCは「Q=Quality」「S=Service」「C=Cleanliness」の略で、すべての項目が実現できている状…
詳しくみる



