- 更新日 : 2025年12月2日
スプレッドシートで2軸グラフを作成するには?設定手順から活用例、トラブル解決まで
Googleスプレッドシート(Google Sheets)の2軸グラフを使うと、単位やスケールが異なるデータを1枚のグラフで比較でき、関係性を直感的に把握できます。
本記事では、複合グラフの選択→系列ごとの左右軸割り当て→軸の書式設定という基本手順に加え、売上×利益率・数量×単価・環境指標×生産性といった実践例、さらに作成できない/崩れるといったトラブルの原因と対処を解説します。
適切に設計された2軸グラフは、複雑なデータ関係をわかりやすく可視化し、意思決定の精度を高めます。
目次
スプレッドシートで2軸グラフを作成する手順は?
2軸グラフは、左右それぞれに異なる目盛りを持つY軸を配置し、スケールの異なるデータを同一グラフ上で表現できる強力な可視化ツールです。 作成手順は、まずデータを準備し、グラフを挿入した後、グラフエディタで系列ごとに軸を割り当てることで実現します。
2軸グラフは、複合グラフとも呼ばれ、棒グラフと折れ線グラフの組み合わせが最も一般的です。例えば、売上高を棒グラフで、成長率を折れ線グラフで表示することで、絶対値と相対値の関係を同時に把握できます。この手法により、データの多面的な分析が可能になり、ビジネスインサイトの発見につながります。
データの準備と構造化
2軸グラフを作成する前に、データを適切に構造化することが重要です。一般的なデータ配置は、A列に期間や項目、B列に第1軸のデータ、C列に第2軸のデータを配置します。ヘッダー行には、それぞれのデータの名称と単位を明記します。
データの準備例として、月別売上と利益率のデータを考えます。
- A列:月(1月、2月、3月…)
- B列:売上高(円)(1000000、1200000、1100000…)
- C列:利益率(%)(15.2、16.5、14.8…)
データの単位が大きく異なる場合は、事前にスケーリングを検討することも重要です。例えば、売上を百万円単位に変換することで、グラフの読みやすさが向上します。ただし、単位変換を行った場合は、必ず軸ラベルに単位を明記する必要があります。
グラフの挿入と初期設定
データ範囲を選択した後、メニューバーの「挿入」→「グラフ」をクリックすると、Googleスプレッドシートが自動的に推奨グラフを作成します。多くの場合、複数の系列データがある場合は自動的に複合グラフが選択されますが、そうでない場合は手動で設定する必要があります。
グラフエディタが開いたら、「設定」タブで「グラフの種類」から「複合グラフ」を選択します。これにより、異なる系列に対して異なるグラフタイプと軸を割り当てることが可能になります。複合グラフを選択すると、自動的に最初の系列が棒グラフ、2番目の系列が折れ線グラフとして設定されることが多いです。
データ範囲の確認も重要です。「データ範囲」フィールドで、ヘッダー行を含む正しい範囲が選択されているか確認し、「行と列を切り替える」オプションでデータの向きが適切かチェックします。
系列ごとの軸割り当て設定
2軸グラフの核心は、各系列を左軸または右軸に割り当てる設定です。 グラフエディタの「カスタマイズ」タブから「系列」セクションを開き、各データ系列の詳細設定を行います。
- 「系列」ドロップダウンから設定したい系列を選択
- 「軸」オプションで「左軸」または「右軸」を選択
- 「タイプ」で棒グラフ、折れ線グラフ、エリアグラフなどを選択
- 必要に応じて色、線の太さ、マーカーなどを調整
一般的な設定パターンとして、量的データ(売上、数量など)を左軸の棒グラフに、比率データ(成長率、利益率など)を右軸の折れ線グラフに割り当てます。この組み合わせにより、絶対値の推移と相対的な変化を同時に把握できます。
軸の書式設定とカスタマイズ
左右の軸それぞれに対して、個別の書式設定を行うことで、グラフの可読性を大幅に向上させることができます。「カスタマイズ」タブの「縦軸」セクションで、左軸と右軸を個別に設定します。
- 最小値・最大値:データの範囲に応じて手動設定し、グラフの表示を最適化
- 軸ラベル:「売上高(百万円)」「利益率(%)」など、単位を含めて明記
- 数値形式:通貨、パーセント、カスタム形式を適切に選択
- グリッド線:主グリッド線と補助グリッド線の表示/非表示を調整
- 軸の色:対応する系列の色と合わせることで、どのデータがどの軸に対応しているかを明確化
軸の目盛り間隔も重要な要素です。左右の軸で異なる間隔を設定できるため、それぞれのデータの特性に応じた最適な表示が可能です。例えば、売上は100万円刻み、利益率は5%刻みといった設定により、両方のデータが適切に表現されます。
2軸グラフの実践的な活用例とベストプラクティスは?
2軸グラフは、異なる性質のデータ間の相関関係や、原因と結果の関係を視覚化する際に特に有効です。 ビジネス分析、科学研究、マーケティング調査など、様々な分野で活用されています。
適切な活用により、単一軸のグラフでは見えなかった洞察を得ることができます。ただし、誤った使い方をすると誤解を招く可能性もあるため、用途に応じた適切な設計が重要です。
売上と利益率の同時分析
最も一般的な活用例は、売上高と利益率を同時に表示することです。売上が増加しても利益率が低下している場合、ビジネスの健全性に問題がある可能性を示唆します。このような関係性は、2軸グラフによって一目で把握できます。
- 左軸:売上高(棒グラフ、青色系)
- 右軸:利益率(折れ線グラフ、赤色系)
- 期間:月次または四半期
- 追加要素:目標ラインや前年同期比を点線で追加
この組み合わせにより、「売上は増加しているが利益率が低下している」「特定の月で売上と利益率が共に向上している」といった重要なパターンを発見できます。さらに、コストデータを第3の系列として追加することで、より詳細な分析も可能です。
数量と単価の推移分析
製品の販売数量と平均単価の関係を分析する際にも、2軸グラフが効果的です。価格戦略の効果や、需要の価格弾力性を視覚的に理解できます。
- 左軸:販売数量(棒グラフ)
- 右軸:平均単価(折れ線グラフ)
- 分析ポイント:価格を下げた時の数量増加、プレミアム化による単価上昇の影響
この分析により、最適な価格設定や、プロモーション戦略の立案に役立つインサイトが得られます。季節変動や競合の動向も同時に把握できるため、マーケティング戦略の策定に重要な情報となります。
KPIと影響要因の相関分析
重要業績評価指標(KPI)とその影響要因を同時に可視化することで、因果関係の理解が深まります。 例えば、ウェブサイトのコンバージョン率とトラフィック数、顧客満足度と応答時間などの関係を分析できます。
- 左軸:サイト訪問者数(棒グラフ)
- 右軸:コンバージョン率(折れ線グラフ)
- 追加分析:広告費用対効果、チャネル別パフォーマンス
この手法により、量的な増加と質的な改善のバランスを評価し、リソース配分の最適化を図ることができます。
環境データと生産性の関係
製造業や農業では、温度・湿度などの環境データと、生産性や品質指標を同時に監視することが重要です。2軸グラフにより、環境要因が生産に与える影響を直感的に理解できます。
- 左軸:生産数量または不良率(棒グラフ)
- 右軸:室温または湿度(折れ線グラフ)
- 活用:最適な生産環境の特定、設備投資の判断材料
このような分析により、品質管理の向上や、エネルギーコストの最適化が可能になります。
2軸グラフが正しく作成できない原因と解決方法は?
2軸グラフの作成で問題が発生する主な原因は、データ形式の不適切さ、グラフタイプの選択ミス、設定の誤りなどがあります。 体系的なトラブルシューティングにより、ほとんどの問題を解決できます。
問題の早期発見と適切な対処により、効率的にグラフ作成を進めることができます。よくある問題とその解決方法を理解しておくことで、スムーズな作業が可能になります。
データ形式と構造の問題
最も一般的な問題は、データが適切な形式になっていないことです。文字列として保存された数値、空白セル、エラー値などが含まれていると、グラフが正しく作成されません。
- 数値データが文字列になっていないか(左揃えの数字は要注意)
- 空白セルは目的に応じて処理:欠測として扱うなら空白のまま/グラフから除外したいなら =NA()(#N/A)に置換/真のゼロ値である場合のみ 0 を入力
- エラー値(#DIV/0! 等)は IFERROR などで適切に処理(グラフから除外したい場合は #N/A に置換)
- 日付形式の統一(シリアル値の整合も確認)
データの前処理として、IFERROR関数やCLEAN関数を使用してデータをクリーニングすることも有効です。また、データ範囲に結合セルが含まれている場合も問題となるため、結合を解除してから グラフを作成します。
グラフタイプの互換性問題
すべてのグラフタイプが2軸表示に対応しているわけではありません。 円グラフ、ドーナツグラフ、散布図などは、2軸グラフとして使用できません。
- 棒グラフ + 折れ線グラフ(最も一般的)
- 棒グラフ + エリアグラフ
- 折れ線グラフ + 折れ線グラフ
- 棒グラフ + 棒グラフ(同一設定内で:すべて通常 または すべて積み上げ/100%積み上げ)
※混在(一部だけ積み上げ/一部は非積み上げ)は不可。
グラフタイプを変更しても2軸オプションが表示されない場合は、一度「複合グラフ」を明示的に選択してから、各系列の設定を行います。
系列の認識と設定エラー
Googleスプレッドシートが系列を正しく認識していない場合、2軸設定ができないことがあります。特に、データの配置が標準的でない場合に発生しやすい問題です。
- データ範囲を再選択し、ヘッダー行が正しく含まれているか確認
- 「データ範囲」の詳細設定で、系列を手動で追加・削除
- 「行と列を切り替える」オプションを試す
- 系列の順序を入れ替えて、第1系列と第2系列の関係を調整
系列名が正しく表示されない場合は、ヘッダー行のセルが空白でないか、特殊文字が含まれていないか確認します。
スケールと表示範囲の調整不足
左右の軸のスケールが大きく異なる場合、一方のデータが見えにくくなったり、グラフが歪んで見えたりすることがあります。これは設定エラーではありませんが、グラフの有用性を損なう問題です。
- 軸の最小値・最大値を手動設定して、データが適切に表示されるよう調整
- 対数スケールの使用を検討(データの範囲が極端に広い場合)
- データの正規化や標準化を事前に実施
- 必要に応じて外れ値を除外または別途処理
軸の原点を揃えるかどうかも重要な検討事項です。比較を公平にするため、両軸とも0から始まるように設定することが推奨される場合もあれば、データの変化を強調するために原点をずらすことが適切な場合もあります。
効果的な2軸グラフで複雑なデータ関係を可視化する
Googleスプレッドシートの2軸グラフは、異なる単位や規模のデータを同一グラフ上で効果的に表現できる強力なツールです。基本的な作成手順として、適切なデータ準備、複合グラフの選択、系列ごとの軸割り当て、そして軸の書式設定を正しく行うことで、プロフェッショナルな2軸グラフを作成できます。
実践的な活用例として、売上と利益率、数量と単価、KPIと影響要因などの分析において、2軸グラフは単一軸では見えない相関関係や因果関係を明らかにします。ただし、データ形式の問題、グラフタイプの互換性、系列の設定エラーなど、作成時に遭遇する可能性のある問題を理解し、適切に対処することが重要です。
2軸グラフを効果的に活用することで、データの多面的な分析が可能となり、より深いビジネスインサイトを得ることができます。適切な設計と実装により、複雑なデータ関係を分かりやすく伝え、意思決定の質を向上させることができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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