- 作成日 : 2025年10月16日
スプレッドシートのSUMIFS関数で複数条件の集計を効率化するには?使い方から応用テクニックまで徹底解説
Googleスプレッドシートで複数の条件を指定して数値を合計したい場合、SUMIFS関数が最も効率的な解決策となります。売上データの月別・部門別集計、在庫管理での条件付き合計、経費精算での項目別集計など、ビジネスシーンで頻繁に必要となる複数条件での集計作業を、SUMIFS関数を使えば数式一つで実現できます。
本記事では、SUMIFS関数の基本的な使い方から実践的な応用方法、よくあるエラーの解決方法まで、実例を交えながら詳しく解説します。
目次
SUMIFS関数の基本的な使い方と構文は?
SUMIFS関数は、複数の条件をすべて満たすセルの値を合計する関数で、構文は=SUMIFS(合計範囲, 条件範囲1, 条件1, 条件範囲2, 条件2, …)という形式で記述します。
この関数は、単一条件のSUMIF関数の拡張版として、より複雑な集計ニーズに対応できる強力な機能を持っています。最大127組の条件を設定でき、AND条件(すべての条件を満たす)での集計が可能です。
参考:SUMIFS 関数 – Google ドキュメント エディタ ヘルプ
SUMIFS関数の基本構文と引数の説明
SUMIFS関数の基本的な構文は以下のとおりです。
=SUMIFS(合計範囲, 条件範囲1, 条件1, [条件範囲2, 条件2, …])
- 合計範囲:実際に合計する数値が入っているセル範囲
- 条件範囲1:1つ目の条件を評価する範囲
- 条件1:条件範囲1に適用する条件
- 条件範囲2, 条件2:追加の条件(オプション)
実例として、売上データから「東京支店」の「4月」の売上を集計する場合:
=SUMIFS(D2:D100, B2:B100, “東京支店”, C2:C100, “4月”)
この数式では、D列の売上金額を、B列が「東京支店」かつC列が「4月」の条件で合計します。
条件の指定方法と比較演算子の活用
条件には文字列だけでなく、比較演算子を使った数値の範囲指定も可能です。
- “>=1000”: 1000以上
- “<5000”: 5000未満
- “<>0”: 0以外
- “*田*”: 「田」を含む(ワイルドカード)
- “?”&”月”: 1文字+「月」(例:4月、5月)
実例:売上金額が10万円以上50万円未満の東京支店のデータを集計:
=SUMIFS(D2:D100, B2:B100, “東京支店”, D2:D100, “>=100000”, D2:D100, “<500000”)
セル参照を使った動的な条件設定
条件を直接入力する代わりに、セル参照を使うことで、条件を変更しやすい動的な数式を作成できます。
=SUMIFS(D2:D100, B2:B100, F1, C2:C100, G1)
この場合、F1セルに支店名、G1セルに月を入力することで、条件を簡単に変更できます。さらに、比較演算子と組み合わせる場合は、文字列結合演算子「&」を使用します。
=SUMIFS(D2:D100, D2:D100, “>=”&H1, D2:D100, “<=”&H2)
H1に最小値、H2に最大値を入力すれば、範囲指定が可能になります。
SUMIFS関数の実践的な利用シーンと事例は?
SUMIFS関数は売上分析、在庫管理、経費精算、勤怠管理など、複数の軸で数値を集計する必要があるあらゆる業務で活用でき、手作業での集計ミスを防ぎながら作業時間を大幅に短縮します。
実際の業務では、単純な合計よりも条件付き集計のニーズが多く、SUMIFS関数の活用により業務効率が飛躍的に向上します。
売上データの多次元分析での活用
営業管理において、支店別・商品別・期間別の売上集計は日常的な作業です。以下は、実務でよく使われる売上分析の例です。
商品カテゴリー「家電」の第2四半期(4-6月)の売上を支店別に集計:
=SUMIFS($E$2:$E$1000, $B$2:$B$1000, “東京支店”, $C$2:$C$1000, “家電”, $D$2:$D$1000, “>=2024/4/1”, $D$2:$D$1000, “<=2024/6/30”)
この数式を各支店用にコピーすることで、瞬時に支店別の集計表が作成できます。絶対参照($記号)を適切に使用することで、コピー時の参照ズレを防げます。
在庫管理と発注点管理への応用
在庫管理では、特定の条件下での在庫金額や数量の把握が重要です。
倉庫別・カテゴリー別の在庫金額集計例:
=SUMIFS(在庫金額範囲, 倉庫名範囲, “関東倉庫”, カテゴリー範囲, “消耗品”, 在庫数範囲, “>0”)
さらに、発注点を下回った商品の把握にも活用できます。
=SUMIFS(発注必要数量, 在庫数範囲, “<“&発注点範囲, 商品状態範囲, “販売中”)
経費精算と予算管理での実装
部門別・費目別の経費集計は、予算管理の基本作業です。
特定期間の部門別経費を費目ごとに集計する例:
=SUMIFS(金額列, 部門列, “営業部”, 費目列, “交通費”, 日付列, “>=”&DATE(2024,4,1), 日付列, “<=”&DATE(2024,4,30))
予算との比較分析を行う場合は、SUMIFS関数の結果を別の計算式に組み込みます。
=予算セル – SUMIFS(実績金額, 部門, “営業部”, 費目, “交通費”, 期間, “2024年4月”)
SUMIFS関数の応用テクニックと高度な使い方は?
SUMIFS関数は他の関数と組み合わせることで、より複雑な集計や動的なレポート作成が可能になり、ARRAYFORMULA、QUERY関数、ピボットテーブルとの併用で分析力が格段に向上します。
基本的な使い方をマスターしたら、これらの応用技術で業務の自動化レベルを高められます。
日付関数との組み合わせによる期間集計
TODAY関数やEOMONTH関数と組み合わせることで、動的な期間集計が可能になります。
当月の売上を自動集計する数式:
=SUMIFS(売上列, 日付列, “>=”&DATE(YEAR(TODAY()),MONTH(TODAY()),1), 日付列, “<=”&EOMONTH(TODAY(),0))
過去3ヶ月の移動合計を計算:
=SUMIFS(売上列, 日付列, “>=”&EDATE(TODAY(),-3), 日付列, “<=”&TODAY())
前年同月の売上合計を自動計算:
=SUMIFS(売上列, 日付列, “>=”&DATE(YEAR(TODAY())-1,MONTH(TODAY()),1), 日付列, “<=”&DATE(YEAR(TODAY())-1,MONTH(TODAY()),DAY(TODAY())))
ワイルドカードと正規表現の活用方法
部分一致や複雑なパターンマッチングには、ワイルドカードが有効です。
商品名に「Pro」を含むすべての商品の売上合計:
=SUMIFS(売上列, 商品名列, “*Pro*”)
特定の形式の商品コード(例:A-3桁の数字)に一致:
=SUMIFS(売上列, 商品コード列, “A-???”)
複数のパターンに対応する場合は、SUMIFS関数を複数組み合わせます。
=SUMIFS(売上列, 商品名列, “*Pro*”) + SUMIFS(売上列, 商品名列, “*Premium*”)
配列数式とMAP関数・LAMBDA関数を組み合わせた一括処理
複数の条件セットに対して一度に集計を行う場合、MAP関数とLAMBDA関数を組み合わせることで実現できます。
=MAP(A2:A10, LAMBDA(rowValue, SUMIFS(売上データ!D:D, 売上データ!B:B, rowValue, 売上データ!C:C, B1) ))
この方法により、集計表の各行に対応した合計を一括で計算できます。
INDIRECT関数による動的な範囲指定
シート名や範囲を動的に変更したい場合、INDIRECT関数と組み合わせます。
=SUMIFS(INDIRECT(A1&”!D:D”), INDIRECT(A1&”!B:B”), “東京”, INDIRECT(A1&”!C:C”), “4月”)
A1セルにシート名を入力することで、参照先のシートを切り替えられます。
SUMIFS関数の集計がうまくいかない場合の対処法は?
SUMIFS関数でエラーが発生したり期待した結果が得られない場合は、データ型の不一致、範囲サイズの相違、条件式の記述ミス、空白セルの扱いなどが主な原因であり、それぞれに対する具体的な解決方法があります。
トラブルシューティングの手順を理解することで、問題を素早く解決できます。
よくあるエラーと解決方法
#VALUE!エラー:範囲のサイズが一致していない場合に発生します。
問題のある例:
=SUMIFS(D2:D100, B2:B99, “東京”) // 範囲の行数が異なる
修正例:
=SUMIFS(D2:D100, B2:B100, “東京”) // すべての範囲を同じサイズに
#N/Aエラー:条件に配列を使用した場合に発生することがあります。
問題のある例:
=SUMIFS(D:D, B:B, {“東京”,”大阪”}) // 配列は使用不可
修正例:
=SUMIFS(D:D, B:B, “東京”) + SUMIFS(D:D, B:B, “大阪”)
データ型の不一致による集計ミスの回避
数値が文字列として保存されている場合、集計されません。VALUE関数で変換するか、データ自体を修正します。
データ修正用の数式:
=ARRAYFORMULA(VALUE(A2:A100))
日付の比較で問題が発生する場合は、DATEVALUE関数を使用:
=SUMIFS(金額列, 日付列, “>=”&DATEVALUE(“2024/4/1”))
空白セルと0の扱い方
空白セルを除外して集計する場合:
=SUMIFS(D:D, B:B, “東京”, D:D, “<>”)
0を除外して集計する場合:
=SUMIFS(D:D, B:B, “東京”, D:D, “<>0”)
空白と0の両方を除外:
=SUMIFS(D:D, B:B, “東京”, D:D, “>0”)
パフォーマンス改善のための最適化
- 範囲を限定する:列全体(A:A)ではなく、必要な範囲(A2:A1000)を指定
- QUERY関数への置き換え:複雑な条件の場合、QUERY関数の方が高速な場合があります
=QUERY(A:D, “SELECT SUM(D) WHERE B = ‘東京’ AND C = ‘4月'”, 0) - 計算の分割:中間結果を別セルに保存し、段階的に集計
SUMIF関数との違いと使い分けのポイントは?
SUMIF関数は単一条件での集計に特化し、SUMIFS関数は複数条件での集計に対応しています。条件数と引数の順序が主な違いですが、将来的な拡張性を考慮してSUMIFS関数の使用を推奨します。
両関数の特徴を理解することで、適切な選択ができます。
SUMIF関数とSUMIFS関数の構文比較
SUMIF関数の構文:
=SUMIF(条件範囲, 条件, [合計範囲])
SUMIFS関数の構文:
=SUMIFS(合計範囲, 条件範囲1, 条件1, [条件範囲2, 条件2, …])
引数の順序が異なることに注意が必要です。SUMIF関数では合計範囲が最後(省略可能)ですが、SUMIFS関数では最初に指定します。
単一条件での使用時の比較
単一条件の場合、両方の関数が使用可能です。
SUMIF使用例:
=SUMIF(B:B, “東京”, D:D)
SUMIFS使用例(同じ結果):
=SUMIFS(D:D, B:B, “東京”)
SUMIFS関数を使用するメリットは、後から条件を追加しやすいことです。メンテナンス性を考慮すると、最初からSUMIFS関数を使用することを推奨します。
条件追加時の移行方法
- 合計範囲を最初の引数に移動
- 条件範囲と条件の順序を維持
- 追加条件を末尾に追加
移行前(SUMIF):
=SUMIF(B2:B100, “東京”, D2:D100)
移行後(SUMIFS):
=SUMIFS(D2:D100, B2:B100, “東京”, C2:C100, “4月”)
他の集計関数との組み合わせで実現する高度な分析は?
SUMIFS関数をCOUNTIFS、AVERAGEIFS、MAXIFSなどの条件付き集計関数と組み合わせることで、合計だけでなく件数、平均、最大値などを含む包括的な分析レポートを作成できます。
これらの関数を組み合わせることで、ダッシュボードやKPI管理表を効率的に作成できます。
COUNTIFSとの併用による集計件数の把握
売上合計と件数を同時に把握する例:
合計: =SUMIFS(金額列, 支店列, “東京”, 月列, “4月”)
件数: =COUNTIFS(支店列, “東京”, 月列, “4月”)
平均: =SUMIFS(金額列, 支店列, “東京”, 月列, “4月”) / COUNTIFS(支店列, “東京”, 月列, “4月”)
AVERAGEIFSによる条件付き平均の算出
SUMIFS関数の結果を補完する平均値分析:
=AVERAGEIFS(売上列, 支店列, “東京”, 商品カテゴリー列, “家電”)
中央値や標準偏差が必要な場合は、FILTER関数と統計関数を組み合わせます。
=MEDIAN(FILTER(売上列, (支店列=”東京”)*(商品カテゴリー列=”家電”)))
ピボットテーブルとの使い分け指針
- 特定の条件での集計値を数式で取得したい
- 他の数式と連携させたい
- リアルタイムで更新される必要がある
- レポートのレイアウトが固定
- 多次元での分析が必要
- インタラクティブな分析をしたい
- 集計軸を頻繁に変更する
- ドリルダウン分析が必要
スプレッドシートでSUMIFS関数を使いこなして業務を効率化
GoogleスプレッドシートのSUMIFS関数は、複数条件での数値集計を可能にする強力な関数であり、適切に活用することで手作業での集計作業を大幅に削減できます。基本的な構文を理解し、実務での利用シーンに応じた応用テクニックを身につけることで、売上分析、在庫管理、経費精算などの業務効率が飛躍的に向上します。エラーが発生した場合も、データ型の確認や範囲の調整といった基本的な対処法を知っていれば、スムーズに解決できます。
SUMIFS関数をマスターすることで、より高度なデータ分析と意思決定の迅速化を実現し、組織全体の生産性向上に貢献できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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