- 更新日 : 2024年12月20日
コアタイムとは?フレックスタイム制の導入方法や適正時間を解説
コアタイムとは、フレックスタイム制において従業員が必ず勤務していなければならない時間帯のことです。その時間帯は従業員がそろうため、打ち合わせなどの目的で設定されます。設定は必須ではなく、開始時間・終了時間や何時間にするかについても企業が自由に決められます。ただし、フレックスタイム制の趣旨に添うよう、適正な時間を設定しなければなりません
目次
コアタイムとは?
コアタイムとはフレックスタイム制において、従業員が必ず勤務していなければならない時間帯を指します。
フレックスタイム制は始業時間・終業時間を従業員が自由に決めることができる労働時間制ですが、コアタイムが定められている場合、従業員はその時間帯は必ず勤務していなければなりません。コアタイムは定める場合と定めない場合があり、コアタイムのないフレックス制は完全フレックス制やスーパーフレックス制と呼ばれます。曜日などで異なるコアタイムを定めることも可能で、コアタイムを分割することも認められています。
フレックスタイム制の概要
フレックスタイム制とは、従業員がその日の始業時間・終業時間を自由に決めることができる労働時間制を指します。企業は清算期間の総労働時間数を定めておき、従業員はその総労働時間数の範囲で労働日ごとに何時から何時まで、何時間働くかを決めることができます。
従業員がそれぞれの事情に合わせて始業時間・終業時間を決めることができることから、柔軟な働き方を可能にする労働時間制として位置づけられています。
コアタイムとフレキシブルタイムの関係
コアタイムは従業員が必ず勤務していなくてはならない時間帯で、フレキシブルタイムは勤務していてもしていなくてもよい時間帯です。
例)
12:00~13:00 休憩時間
13:00~15:00 コアタイム(必ず勤務していなくてはならない時間帯)
15:00~20:00 フレキシブルタイム(勤務していてもしていなくてもよい時間帯)
フレックスタイム制にコアタイムを設ける目的
企業がコアタイムを設定する理由として、まず「会議などを行うために必要だから」ということが挙げられます。フレックスタイム制では従業員が自由に始業時間・終業時間を決めるため、全員がそろって勤務している時間はあまり多くありません。全員が出席する必要がある会議や打ち合わせ、ミーティングなどでも全員がそろいにくく、また十分な時間も取れないという問題が生じます。そのため、コアタイムは、全員が顔を合わせるために設けられる時間です。また、労働時間が被らないことで「同じ部署でもあまり接点がない」「話をするチャンスがない」という従業員同士のコミュニケーションを活性化する効果もあります。
コアタイムを設定するには?
企業がコアタイムを定めるためには、必要な手続きを行わなければなりません。どのような手続きや定めが必要か、説明します。
フレックスタイム制度を導入する
コアタイムを設定するには、まずフレックスタイム制を導入する必要があります。フレックスタイム制は労働時間に関する定めなので、導入にあたっては就業規則等に規定を設けなければなりません。
就業規則への明記
従業員が始業時刻・終業時刻を決定できる旨を就業規則、または就業規則に準ずるものに定めておく必要があります。
労使協定で定める
就業規則にフレックスタイム制を導入する旨を記載した後で必要になるのは、労使協定の締結です。次の事項を定めておく必要があります。
- 対象となる従業員の範囲
- 清算期間
- 清算期間における起算日
- 清算期間における総労働時間
- 標準となる1日の労働時間
- コアタイム(定める場合)
- フレキシブルタイム(定める場合)
コアタイムの適正時間は?
コアタイムは開始時刻や終了時刻、時間について、労働基準法といった法律などで特に規定されていません。労使協定で自由に設定することができますが、以下のようなコアタイムはフレックスタイム制の趣旨に反するとして認められないため、注意が必要です。
- 1日の所定労働時間のほとんどを占めるコアタイム1日の所定労働時間が7時間の企業で、コアタイムを9:00から17:00(12:00から13:00までは休憩時間)とすると、コアタイムだけで所定労働時間となり、従業員が始業時間・終業時間を選択する余地がなくなります。これではフレックスタイム制とは言えなくなるため、このようなコアタイムの設定は認められません。
- 分割した場合に、最初のコアタイムの開始時刻が標準的な労働時間での開始時刻、最後のコアタイムの終了時刻が標準的な労働時間の終了時間となるコアタイムコアタイムは分割して設定することもできますが、9:00から10:00、15:00から17:00と設定すると、コアタイム時間そのものは短くても、従業員が自由に始業時間・終業時間を決められるとは言えないため、認められません。
コアタイムに遅刻・早退・半休したらどうなる?
コアタイムは従業員が勤務していなければ時間帯であるため、遅刻や早退した場合はペナルティの対象とすることができます。しかし、フレックスタイム制は総労働時間数に対して実労働時間数が足りない場合にのみ、労働していない時間分の賃金控除が認められている制度であるため、通常の労働時間に対する遅刻や早退と同じように、給料から遅刻・早退した時間分の賃金を控除することはできません。コアタイムに対する遅刻・早退についてペナルティを課すためには、減給処分などを行う旨の規定を設けておく必要があります。
フレックスタイム制での従業員の年次有給休暇取得に対しては、コアタイムも含めてその日1日労働したものとして取り扱います。半休(半日単位の年次有給休暇)を従業員が取得した際は、コアタイムの半分の時間数を労働したとみなされます。
適正なコアタイムを設けたフレックスタイム制で柔軟な働き方を実現しよう
フレックスタイム制において、従業員が必ず勤務していなければならない時間帯をコアタイムと呼びます。各従業員が始業時間・終業時間を自由に決められるフレックスタイム制では、就業時間中に全員がそろう機会があまりなく、会議やミーティング、社外の人とのやり取りがしにくいという問題が生じます。コアタイムの設定にはそういった問題を解決し、また希薄になりがちなコミュニケーションを活性化するという役割があります。
コアタイムとする時間帯や長さは、企業が自由に設定できます。しかし、1日の労働時間に対して長過ぎたり、始業時間・終業時間を自由に決められない時間帯としたりすることは、フレックスタイム制の趣旨に反するため認められません。適正なコアタイムを設定して、柔軟な働き方を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
フレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点をわかりやすく解説!
フレックスタイム制は、従業員が自由に始業と就業の時刻を決められます。柔軟な働き方をサポートする労働時間制度ですが、「完全自由」「残業代がつかない」など様々な誤解があるのも事実です。 ここでは制度の基本を説明すると共に、メリット・デメリットを…
詳しくみる裁量労働制とは?対象業務やメリット・デメリットについて解説
裁量労働制とは、働き方について労働者の裁量に委ねる制度です。実際に働いた時間とは関係なく、一定時間が労働時間とみなされます。 専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があり、それぞれ定められた対象業務にしか適用されません。 今回は…
詳しくみる労働基準監督署の調査の流れは?対応方法から指摘されやすいポイントまで解説
労働基準法では、最低限の労働条件のルールが定められており、違反することがあれば労働基準監督署による立ち入りや呼び出しなど、調査の対象になることがあります。 当記事では、労働基準監督署の調査の目的や内容、調査の流れについて解説します。対応方法…
詳しくみる36協定に関する協定書の記載例や協定届との違い、法的義務を解説(テンプレート付き)
「36協定に関する協定書」とは、労働者に時間外労働や休日労働を課す際に、労使間で締結しなければならない協定書です。36協定に関わる書類には「36協定に関する協定届」というものもあります。名称は似ていますが、作成の目的は全く異なります。当記事…
詳しくみるコワーキングとは?働き方の特徴やコワーキングスペースについても解説!
現在では、テレワークなどの多様な働き方が普及し、これまでとは異なった方法で業務を行うことも珍しくありません。多様な働き方は、業務の無駄を省き、効率化の効果も期待できます。 当記事では、新しい働き方であるコワーキングの概要や注目の背景、メリッ…
詳しくみる育児による時短勤務はいつまで取得できる?制度や法律もあわせて解説!
育児・介護休業法では、育児や介護をする必要がある労働者を支援し、仕事と家庭を両立し、労働の継続ができるように様々な仕組みを設けています。 育児については子が1歳になるまでの育児休業がよく知られていますが、それ以外にも所定労働時間の短縮措置が…
詳しくみる