• 更新日 : 2026年1月14日

ガラスの天井と壊れたはしごとは?意味や課題、解消に向けた取り組みを解説

「女性活躍推進」を掲げても、なぜ管理職比率が伸び悩み、優秀な人材が定着しないのでしょうか。
日本のジェンダーギャップ指数は、世界に比べて低水準で、形式的な制度の導入だけでは組織の成長は見込めません。

本記事では、ガラスの天井と壊れたはしごの意味や課題、解消に向けた取り組みを解説します。
女性リーダー候補の課題を解消したい人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

ガラスの天井と壊れたはしごとは?

ガラスの天井と壊れたはしごは、企業のジェンダー平等と成長を阻む構造的な障壁を指す概念です。

以下では、ガラスの天井と壊れたはしごについて、くわしく解説します。

ガラスの天井とは

ガラスの天井とは、目に見えない障壁です。

能力や実績があるにもかかわらず、女性やマイノリティの昇進を阻みます。上級管理職や役員など、一定以上の高い地位への昇進を妨げるものです。

障壁は制度ではなく、主に無意識の偏見から形成されます。長年の慣習や男性中心の組織文化も要因で、キャリアの中盤から終盤にかけて顕著になります。

ガラスの天井があると、意思決定の多様性が失われ、生産性の低下やESG評価の低下といった経営リスクにつながるでしょう。

壊れたはしごとは

壊れたはしごとは、ガラスの天井の根本原因にあたる構造的な問題を指します。

女性はキャリアの初期段階で、管理職への昇進機会を男性に比べて得にくい状態です。男性と同等の能力があっても、昇進候補者リストに載らない傾向があります。

初期段階での不平等は、優秀な女性人材がキャリアの伸び悩みを理由に離職する原因となりかねません。将来の上級管理職候補が育たない深刻な事態も招くでしょう。

世界におけるガラスの天井と壊れたはしごの現状

世界的にみると、女性の管理職・リーダー登用は増えているものの、ペースは緩やかです。

マッキンゼーの「Women in the Workplace2025」によれば、マネージャーに昇進した男性100人に対し、2024年には女性が93人昇進しました。

しかし2016年のアメリカ大統領選挙で、ヒラリー・クリントンは「私たちはまだ一番高くもっとも固いガラスの天井を打ち破ってはいない」と述べました。ヒラリー・クリントンの発言を通じ、ガラスの天井という言葉は世界的に注目されています。

過去10年で女性の管理職は増えているものの、欧米の先進国でも「壊れたはしご」は共通の課題として認識されています。

日本におけるガラスの天井と壊れたはしごの現状

世界的には女性の管理職・リーダー登用が増えているものの、日本の現状は遅れが顕著です。

以下では、日本におけるガラスの天井と壊れたはしごの現状を解説します。

ジェンダーギャップ指数は146各国中125位で低い

日本は、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」のジェンダーギャップ指数(GGI)において、146か国中125位(2023年時点)という低水準です。

ジェンダーギャップ指数の低さは、主に経済や政治分野での男女格差が原因です。

日本企業にとっては、グローバルなESG投資の観点から多様性への取り組みが不十分であると評価されかねません。

経営リスクの一因となるため、経済や政治分野はもちろん、他分野においても組織の構造的な課題解決を急ぐ必要があるでしょう。

最初の昇進で女性リーダー候補が枯渇する

日本企業では、管理職への最初の昇進機会において、女性リーダー候補の枯渇が問題となっています。

原因は、主任・係長クラスへの昇進時点で、男性社員に比べて女性社員が機会を得にくい「壊れたはしご」現象があるためです。

帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」(2025年)では、女性管理職割合の平均は前年比0.2ポイント増の11.1%で、過去最高であるものの小幅の上昇にとどまっています。

初期段階での昇進機会の不平等さが、将来の上級管理職候補となる人材の数を根本的に減らし、ガラスの天井や壊れたはしごを強固にしているといえるでしょう。

マミートラックにつながるケースが多くみられる

日本では、制度利用が女性を昇進コースから外す「マミートラック」につながるケースが多いです。

マミートラックとは、短時間勤務や育休を取得し、不本意に出世コースから外れてしまう状態です。

日本では、男性の育児休業取得率が世界的に低水準のため、家庭内の責任の負担が女性に偏っています。負担が大きいのは、女性のキャリア中断リスクを増やす要因です。

制度がありつつも、制度の運用面が女性のキャリア形成を阻害しているといえるでしょう。

ガラスの天井と壊れたはしごのデメリット・課題

ガラスの天井と壊れたはしごの問題を放置すると、企業のリスクになりかねません。

以下では、ガラスの天井と壊れたはしごのデメリットと課題を解説します。

優秀な女性人材は流出し、企業の成長機会が失われる

ガラスの天井や壊れたはしごを放置すると、優秀な女性人材が流出し、企業の成長機会を失いかねません。

キャリアに対する満足度が低下するため、モチベーションの高い女性人材は、より公平な機会を求めて離職・転職します。

しかし公平な仕組みを構築すれば、人材が定着し、組織の多様な視点を維持できます。

長期的な成長機会を確保するために、公平な昇進・評価の仕組みを構築しましょう。

顧客からのイメージが低下するリスクがある

多様性が重視される近年、女性を排除する考え方は、顧客からのイメージを低下させます。

女性管理職比率の低さやジェンダーギャップ指数の低さは「時代遅れの企業」と伝わり、ESG投資の観点からも評価が下がりかねません。

積極的に女性の管理職登用をし、課題を解消して、市場でのブランド価値を高めていきましょう。

ガラスの天井と壊れたはしご問題を解決するメリット

ガラスの天井と壊れたはしごの問題解決は、コンプライアンスだけではく、企業の競争力と成長を強化する経営戦略です。

以下では、ガラスの天井と壊れたはしご問題を解決するメリットと効果を解説します。

働く女性の離職率が改善する

ガラスの天井と壊れたはしごの問題解決は、働く女性の離職率を改善する効果があります。

昇進機会の公平性を確保すると、キャリアアップ意欲の高い女性社員が、不平等を感じて離職するケースが減ります。

また、多様な働き方や育児支援制度が充実すると、出産・育児を理由とする離職も防げるでしょう。

結果、優秀な人材が定着しやすくなり、採用コストの削減につながります。人材の定着は、組織の持続的な成長基盤も築くでしょう。

組織の生産性が向上する

ガラスの天井と壊れたはしごの問題解決は、組織の生産性を向上させます。

公平な評価と昇進の仕組みを整えると、性別にかかわらず努力や成果が正当に認められ、全従業員のモチベーションと生産性を高めます。

女性リーダーが増えると、組織の意思決定時に多様な視点が加わり、市場のニーズを的確に捉えやすくなるでしょう。

革新的なアイデアが生まれやすくなり、企業の収益性や競争力を長期的かつ持続的に強化できます。

ESG投資の評価が高まる

ガラスの天井と壊れたはしごを解消し、女性管理職比率を向上させると、ESG投資の評価が高まります。

女性登用は社会性を重視する企業であると示し、投資家からの信頼を獲得する要素です。

投資家からの評価が向上すると、資金調達の優位性を確保できるほか、企業イメージの強化につながるでしょう。

ガラスの天井と壊れたはしごの解消に向けて企業が取り組むべきこと

ガラスの天井と壊れたはしごを解消するには、企業が組織課題として取り組むことが不可欠です。

以下では、ガラスの天井と壊れたはしごの解消に向けて、企業が取り組むべきことを解説します。

組織の現状を把握する

組織内にガラスの天井と壊れたはしごが存在しているか、客観的に把握しましょう。

全従業員を対象に、昇進プロセスの公平性やキャリアパスの透明性、無意識の偏見を感じる場面などについて、アンケートや聞き取り調査を行います。

また、以下のような内部データを収集・可視化します。

  • 役職別の男女比
  • 昇進率
  • 離職率
  • 勤続年数
  • 賃金ギャップ

課題が明確化したら、経営層に報告し、是正計画を策定・実行しましょう。

女性に対する従業員の意識改革を行う

女性に対する従業員の意識改革を行いましょう。

女性活躍を阻む要因は、組織に根付いた無意識の偏見です。無意識の偏見は、経営陣や管理職の考え方を通じて全社に影響を及ぼし、組織風土を形成します。

全社員を対象として、無意識の偏見を防ぐ意識改革の研修を実施しましょう。

研修を通じて、公平性を根本から改めると、ガラスの天井と壊れたはしごを解消できます。

ライフイベントを見据えて早期に育成機会を設ける

ガラスの天井と壊れたはしごを解消するには、ライフイベントを見据えた早期の人材育成が欠かせません。

早期の人材育成は、育児や介護によるキャリア中断リスクを前提に、成長機会を前倒しで確保する考え方です。

出世意欲のある女性社員に対し、キャリアの初期段階からリーダーシップ研修や重要プロジェクトの参画など、昇進に必要な経験を計画的に提供します。

早期育成は、昇進の機会損失を防ぐ戦略といえるでしょう。

多様な働き方を用意する

企業の取り組みとして、多様な働き方を用意しましょう。

近年女性の育児負担は制度により軽減しているものの、男性と比べると大きいです。

リモートワークやフレックスタイム制などの柔軟な運用をするだけでなく、制度利用で昇進や評価が不利に働かない人事制度へと改善する必要があります。

男性の育児休業取得を促進すると、両立負担の偏重を軽減し、性別に関係ない職場づくりができるでしょう。

優秀な女性を管理職・リーダーとして登用する

ガラスの天井や壊れたはしごを解消するには、優秀な女性を管理職・リーダーとして積極的に登用するのが重要です。

ロールモデルの創出は、将来の女性人材の意欲向上に直結します。

役員や管理職の女性比率で具体的な数値目標を設定し、経営層が責任をもって進めましょう。

同時に、優秀な女性社員を昇進させるための行動計画を策定し、継続的に評価と改善を行いましょう。

ガラスの天井と壊れたはしごに関するよくある質問

以下では、ガラスの天井と壊れたはしごに関するよくある質問に回答します。

英語でガラスの天井とは何ですか?

英語でガラスの天井は「Glass Ceiling」と呼ばれます。女性差別撤廃の動きが進んだ1980年代にアメリカで誕生しました。

Glass Ceilingは、能力や実績があるにもかかわらず、性別や人種を理由に高い地位への昇進が妨げられることを意味する言葉です。目に見えない構造的な障壁を指します。

英語で壊れたはしごとは何ですか?

英語で壊れたはしごは「Broken Rung」と呼ばれます。「Rung」は、はしごの段のことです。

「Glass Ceiling」が企業のトップ層に女性がいないことを指すのに対し、「Broken Rung」はキャリアの初期段階から障壁が存在していることを意味します。

ガラスの天井指数とは何ですか?

ガラスの天井指数とは、イギリスの経済週刊誌「エコノミスト」が発表している、ジェンダーギャップ指数とは別の指標となります。

ガラスの天井指数は、労働参加率や賃金格差、国会の議席数など10の指標にもとづき、経済協力開発機構(OECD)の主要29か国をランクづけしたものです。

日本は29か国中27位にあり、近年は韓国とトルコとともにワースト3です。

しかし、有給の育児休暇制度については「日本と韓国はより多くの女性の社会進出を促すためにもっとも寛大な制度を定めている」と評価されています。

ガラスの天井は男性にも当てはまりますか?

ガラスの天井は、性的少数派といったマイノリティ全般を対象として使われるため、男性にも当てはまる場合が少なくありません。

また、男性の場合は1993年にワレン・ファレルが提唱した「ガラスの地下室(Glass Cellar)」と呼ばれる概念もあります。

ガラスの地下室は、土木や兵役など、心身ともに過酷かつ危険な仕事を担うのは、大半が男性という状況を指します。

ガラスの天井を破るとはどういう意味ですか?

ガラスの天井を破るとは、女性やマイノリティがトップの地位になり、構造的な障壁を打ち破る意味です。

昇進プロセスにおける公平性が完全に確立され、ジェンダー比率が適切な水準になることを指します。誰もが能力に応じたキャリアを築ける、理想的な状態といえるでしょう。


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