• 更新日 : 2025年12月18日

人事組織のKPI指標一覧:採用から人材活用まで部門別指標をご紹介

人事組織がKPI(重要業績評価指標)を設定することは、組織全体の成長に不可欠です。しかし、「どの指標を選べばいいのか」「どうやって具体的な目標に落とし込むのか」と悩む担当者も多いでしょう。この記事では、人事組織がKPIを設定する必要性から、具体的な設定の流れ、採用・育成・生産性など部門別のKPI一覧までをわかりやすく解説します。

 人事組織のKPI指標とは?

人事組織のKPI(Key Performance Indicator)とは、経営目標や事業目標(KGI)を達成するために、人事部門の業務プロセスが適切に進んでいるかを測定・評価するための具体的な指標を指します。人事組織が取り組むべき活動が、目標達成に向けて正しい方向に向かっているかを測る羅針盤のような役割を果たします。

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部門別のKPI指標例

人事の業務は多岐にわたるため、部門や目的に応じて適切なKPIを設定することが重要です。多くの企業で使われる代表的な人事指標を知り、自社に合うKPIを見つけましょう。

採用部門のKPI例

採用活動の効率性や、採用した人材の質の向上を目的とします。

KPI例
  • 採用コスト:採用一人あたりのコストを前年より10%削減する
  • 採用リードタイム:応募から内定までの期間を平均30日に短縮する
  • 歩留まり率:一次面接から内定までの移行率を50%にする
  • 定着率:新卒入社1年以内の離職率を5%に抑える

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人材配置のKPI例

従業員の能力や意向を活かし、組織の生産性を最大化することを目的とします。

KPI例
  • 異動満足度:異動を経験した従業員の満足度を80%以上にする
  • 適材適所率:適性検査の結果と配置先のマッチ度を80%にする
  • 公募制度活用率:社内公募制度を通じた異動率を10%にする

人材育成のKPI例

従業員のスキルアップと能力開発の成果を測定し、将来の組織の成長を担保します。

KPI例
  • 研修参加率:必須研修の全従業員参加率を98%にする
  • スキル習得度:研修後のスキルテスト平均点を85点以上にする
  • 資格取得率:特定の資格の取得率を全社員の30%にする
  • タレントプール登録率:次世代リーダー候補の登録者数を20名にする

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人材活用のKPI例

従業員が持つ能力を最大限に引き出し、パフォーマンス向上に結びつけることを目的とします。

KPI例
  • エンゲージメントスコア:従業員のエンゲージメントスコアを75点以上にする
  • 1on1実施率:月間の上司と部下の1on1実施率を95%にする
  • 従業員満足度:社内アンケートのES(従業員満足度)を80%以上にする

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労働生産性のKPI例

人件費に対する付加価値を測定し、効率的な経営を実現することを目的とします。

KPI例
  • 労働生産性:従業員一人あたりの粗利額を前年比5%向上させる
  • 残業時間:月平均残業時間を20時間以下に抑える
  • 従業員一人あたりの売上高:前年比3%増を目指す

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労務管理のKPI例

健全な労働環境を維持し、法令遵守と従業員の心身の健康を確保することを目的とします。

KPI例
  • 有給休暇取得率:全従業員の有給休暇取得率を70%以上にする
  • 健康診断受診率:受診率を100%にする
  • 休職率:メンタルヘルスによる休職率を0.5%以下に抑える
  • ハラスメント相談件数:前年比10%減を目指す

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人事組織においてKPI指標を設定すべき理由

人事組織にKPIを設定することで、曖昧になりがちな「人の活動」を明確に評価し、経営に貢献できます。

経営への貢献度を可視化できる

人事部門の業務は、売上や利益のように直接的な数値に結びつきにくいため、評価が難しいことがあります。KPIを設定することで、採用コスト削減や生産性向上といった数値で貢献度を示すことができるようになります。

業務の優先順位が明確になる

KPIが設定されると、「どの業務が最終目標(KGI)の達成に最も貢献するのか」がはっきりします。これにより、限られた人員と時間を有効に使い、成果につながる業務に集中できます。

公平な人事評価が可能となる

人事部門のメンバーの評価が主観的にならず、設定されたKPIの達成度という客観的な指標に基づいて行えるようになります。これにより、人事考課の納得度が高まります。

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 人事組織のKPI指標設定に役立つSMARTの法則

人事組織で効果的なKPIを設定するには、目標設定のフレームワーク「SMARTの法則」を活用しましょう。

SMARTの法則とは、目標設定の際に満たすべき5つの要素の頭文字をとったものです。

Specific具体的に
Measurable測定可能に
Achievable達成可能に
Relevant経営目標に関連して
Time-bounded期限を定める
  • S (Specific):Specific(具体的に)
    「採用を強化する」ではなく、「中途エンジニアを3ヶ月で5名採用する」のように、誰が見ても同じ内容で理解できる具体性が必要です。
  • M (Measurable):Measurable(測定可能に)
    「従業員の満足度を上げる」ではなく、「エンゲージメントスコアを前年比5ポイント向上させる」のように、数値で測れることが必要です。
  • A (Achievable):Achievable(達成可能に)
    現状から見て非現実的な目標ではモチベーションが低下します。適切な努力で届く範囲に設定しましょう。
  • R (Relevant):Relevant(経営目標に関連して)
    設定したKPIが最終的なKGIや経営戦略の達成に貢献するものである必要があります。
  • T (Time-bound):Time-bound(期限を定める)
    「いつまでに達成するのか」という期限を明確に定めることで、実行が促進されます。

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人事組織のKPIを設定する具体的な流れ

KPIを策定する際は、まずKGI(最終目標)を決め、そこから逆算して落とし込む手順で進めます。KPIを設定する具体的な流れを4つのSTEPで進めましょう。

STEP1:KGI(最終目標)を設定する

「わが社の人事が達成すべき最終的なゴールは何か」を明確にします。このKGIは、必ず経営目標と連動している必要があります。

例:「3年後に労働生産性を20%向上させる」

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STEP2:KFS(重要成功要因)を特定する

STEP1で決めたKGIを達成するために最も重要な要素(要因)は何かを分析します。この要因がKGI達成の鍵となります。

例:「優秀な人材の定着率向上」

STEP3:KGIとKFSからKPIを設定する

STEP2のKFSを満たすために計測すべき中間目標を、SMARTの法則に従って具体的に設定します。KPIは計測可能な数値と期限を含めます。

例:「入社後1年以内の離職率を5%に抑える」

STEP4:トラッキングと改善を行う

設定したKPIを定期的に計測し、目標と実績を比較します。達成できていない場合は、原因を分析し、KPIや実施している施策を見直すPDCAサイクルを回します。

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人事KPI指標策定のポイント

人事KPIは設定するだけでなく、その後の運用と改善が重要になります。KPIが形骸化したり、現場のモチベーション低下につながったりしないよう、運用の方法に気をつけましょう。

「なんのためのKPIか」を共有する

KPIは単なる数字の目標ではなく、企業が達成したい最終ゴールにつながることを部門や従業員に明確に伝えます。これにより、現場の従業員はKPI達成が自分の仕事の意味とつながっていることを理解できます。

KPIツリーで構造化する

KGIからKFS、そしてKPIへと論理的につながる構造(KPIツリー)を作成し、一目で目標の連動がわかるように視覚化しましょう。人事部門だけでKPIを決めるのではなく、現場の業務実態や意見を反映させることが、達成意欲を高める鍵となります。

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現場にとって現実的かを検証する

設定したKPIが、現場の努力で達成できる現実的な目標であるかを、必ず現場のマネージャーや担当者と協議し、合意を得ます。非現実的な目標は、最初から諦めを生み出し、形骸化の原因となります。

評価と連動させる際は慎重にする

KPIの達成度を個人の人事評価に連動させる場合は、KPIが個人の努力でコントロールできる範囲にあるかを慎重に検討します。コントロールできない外部要因に左右される指標を評価 に使うと、不公平感が生まれます。

関連資料|360度評価シート

KPIの適切な運用が人事組織成長の鍵となる

人事KPIは、人事組織の活動を客観的に評価し、経営と人事の橋渡しをするための必須のツールです。SMARTの法則に基づき、KGIと連動した具体的な指標を部門ごとに設定し、PDCAサイクルを回すことで、人事部門は曖昧な活動から脱却し、組織全体の成長に貢献する真の戦略部門へと進化できるでしょう。

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