- 更新日 : 2025年12月5日
エース社員のやる気がないのは危険信号!退職を防ぐ5つの方法
能力が高く、優秀なエース社員には、ついつい頼りがちです。しかし、エース社員にとって「他部署の仕事を代行する」「頼まれごとが多い」職場は、やる気が下がりやすくなります。職場環境が改善しない場合は、退職するリスクもあるでしょう。
本記事では、エース社員がやる気を失う原因と前兆、離職につながるリスクを解説します。経営者や管理職向けの対策法も掲載しているので、エース社員のモチベーション低下にお悩みの方は、ぜひご覧ください。
目次
エース社員の特徴
エース社員とは、特定の領域で高い専門性をもち、業務遂行の質と量が安定している人材です。多くのエース社員は、下記のような特徴をもっています。
- 状況判断が早い
- 柔軟なコミュニケーションをとれる
- 自己管理力・自走力が高い
- 問題の原因やボトルネックに気づきやすい
- 周囲の課題を先回りして解決する
- 周囲からの信頼が厚い
エース社員は知識や経験が豊富で、難度の高い業務対応が可能です。目標や納期から逆算して計画を立て、体調や時間の使い方も自己管理できるため、成果が安定しています。仮に問題が起こっても、ボトルネックを見極めて対処し、改善提案まで実行できるでしょう。
また、エース社員は課題を先回りして解決するため、周囲からの信頼を得やすいのも特徴です。一方で、業務範囲が広がると、エース社員に業務負担が集中しやすくなります。
エース社員の活躍は、企業にとって不可欠です。エース社員のやる気を維持するには、負担が偏らないように配慮し、安定して実力が発揮できるようにしましょう。
エース社員が退職する4つの理由
エース社員は頼れる一方で、悩みを抱えやすい存在です。責任の重さや役割の偏りが続くと、心理的な負担が増え、将来への不安も高まります。負担が重なると、離職につながりかねません。
また、市場価値が高いため、外部からのオファーも届きやすくなっています。自社の環境に魅力を感じられなくなったエース社員は、転職を選びやすくなるでしょう。
1.能力・業務量に見合う待遇がない
成果や業務量に対して待遇が見合わない場合、エース社員は離職を考えがちです。仕事の責任や負担に、給与や役割が伴わないと、現在の業務に納得できなくなります。とくに、業務量の増加に報酬が追いつかないケースは、不満を抱きやすいでしょう。
また、エース社員には業務負担が集中しやすいため、負荷に対する感覚が鈍くなるケースもあります。表面的には問題なく見えても、内心では退職を検討していることも珍しくありません。
2.期待や責任が大きすぎる
期待や責任のプレッシャーに耐えられず、退職を選ぶこともあるでしょう。エース社員は重要な案件やトラブル対応を任されやすく、業務負荷が集中しがちです。責任感が強いタイプほど、精神的な疲労が蓄積します。
また、周囲からの期待が大きくなると、ミスが許されないと自分を追い込みがちです。本人の能力が高いほど、気軽に相談できる相手は減るでしょう。このような負荷が累積していくことで疲弊し、退職を選ぶケースも考えられます。
昇進や昇給を、プレッシャーととらえるエース社員は少なくありません。期待と責任が過剰に重なる状況は、離職につながる大きな要因です。
3.評価に不公平感を抱えている
評価への不公平感をもったエース社員は、離職を考えやすくなります。周囲の社員よりも成果を出しているにもかかわらず、給与・待遇が同じでは、不平等と感じるのが自然です。日々の努力や成果が反映されないと、組織への信頼も揺らぐでしょう。
また、エース社員は成果だけでなく、問題解決・業務改善のような見えにくい貢献を行う傾向があります。しかし、評価制度が数値成果だけに偏っていると、見えにくい行動は評価に表れません。自分の努力を見ていないと感じれば、やる気は低下します。
不透明な評価プロセスも、やる気を削ぐ理由のひとつです。同じ成果を出しているのに昇給・昇格に差があったり、基準が共有されなかったりすると、制度への不満をもちやすくなります。
4.他社の待遇・環境に魅力を感じている
エース社員は市場価値が高いため、他社からのオファーやスカウトが届きやすいです。日々の業務で成果を出し続けていれば、より快適な環境で働く選択肢が存在します。自社に将来性や成長機会を感じられなくなった場合、転職を決意するケースは少なくありません。
現代は転職サイトで、企業ごとの待遇や役割、キャリアパスなどを簡単に比較できます。エース社員が今の待遇より好条件で、スキルを活かせる職場があると判断した場合、離職へのハードルが下がるでしょう。
エース社員が退職した後の3つの影響
エース社員が退職すると、主要業務の質が低下し、プロジェクトの進行にも遅れが出やすくなります。引き継ぎが不十分な場合は、担当者が対応しきれず、ミスや判断の遅れが頻発するでしょう。
また、残った社員の負担が増えることで不満や疲労が蓄積し、さらなる退職を招く悪循環に陥るリスクもあります。
1.生産性が低下する
エース社員が退職すると、部署や企業全体の生産性が低下します。主要業務の中心を担っていた人材が抜けると、成果の質が下がりやすく、判断のスピードも落ちるでしょう。とくに、引き継ぎが不十分なままエース社員が離脱すると、プロジェクト全体の流れが滞りやすくなります。
また、新しい担当者が着任した場合も、状況を把握する時間が必要です。短期的には作業効率が落ち、売上にも影響が出るでしょう。エース社員が抜けた穴を埋めるため、他のメンバーが手一杯になり、改善活動や新規施策に手が回らなくなることも考えられます。
さらに、中心人物がいなくなることで「判断の軸」が曖昧になるのも難点です。エース社員が担っていた調整・品質管理・リスク対応のような重要業務が滞ると、結果的に組織全体のパフォーマンスが低下します。
2.社員の業務負担が増える
エース社員が退職すると、残った社員への業務負担が増えます。中心人物が担っていたタスクを引き継ぐことになるため、一人ひとりの業務量や負担が増えます。タスクを引き継ぐ社員はキャパシティを超えやすくなり、不満やストレスが高まりやすくなるでしょう。
また、過度な負荷が集中するとミスが増え、判断の遅れや品質低下が起きやすくなります。とくに、引き継ぎが不十分な場合は、過去の背景や仕様を理解するまでに時間がかかるでしょう。作業効率が大きく落ち、他のメンバーのパフォーマンス低下も避けられません。
3.連鎖的に離職が増える
エース社員が退職すると、職場に不安と不信感が広がります。「エース社員が辞めるほどの問題が会社にある」と考える社員が増え、安心して働けない環境になりがちです。さらに、業務量の増加や、生産性の低下が重なると、周囲のモチベーションも徐々に下がるでしょう。
また、残った社員に負担がかかり続ければ、将来に不安を感じる人が増えます。キャリアの選択肢として転職・退職を検討するようになった結果、悩みを抱えている社員が順番に退職していく「連鎖的な離職」が避けられません。
また、エース社員の退職は組織文化にも影響を与えます。信頼していたメンバーがいなくなることで、職場の雰囲気が崩れ、安心して意見を出せなくなるのも懸念点です。雰囲気の悪化や、不安のまん延は、退職を促す悪循環につながります。
離職率の改善方法については、関連記事もご覧ください。
エース社員のやる気がない?4つのチェックリスト
エース社員は、職場環境でのストレスが重なると、次第にやる気を失っていきます。やる気を失った際の特徴・解決すべき問題を表にまとめたので、職場の環境をチェックしてください。
| チェック項目 | 兆候の内容 | 背景にある問題 |
|---|---|---|
| 業務への関心が薄れている |
|
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| 発言量が減っている |
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|
| 細かいミスが増えている |
|
|
| 成長意欲が見られない |
|
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上記に当てはまる場合は、エース社員が別の環境に移ることを考えているサインです。責任が偏り続ける環境ではモチベーションが揺らぎ、離職を選びやすくなります。
やる気低下の背景は、評価や待遇の不公平感、周囲との比較による不満などです。上司や人事担当がやる気の低下に気づき、速やかに改善策を検討することで、モチベーションの悪化を避けられる可能性があります。
エース社員がやる気を出せる5つの方法
エース社員のやる気を高めるには、評価制度の透明化や、業務量の適正化が有効です。このような施策は、エース社員だけでなく、従業員全体にとって働きやすい環境づくりにつながります。
組織全体で環境の改善に取り組むことで、モチベーションの向上・離職防止を実現できるでしょう。
1.人事評価の基準を明確にする
人事評価の基準を明示することで、エース社員のやる気向上が可能です。成果や行動の評価基準が明確に共有されないと、不公平感が生まれ、モチベーションが下がりやすくなります。
責任の重い業務を担うエース社員ほど、評価基準に敏感です。評価項目を可視化し、報酬や役職に反映される基準を明確にすると、成長の方向性を決めやすくなります。エース社員のもつ主体性を活かして、率先した行動が可能です。
また、人事評価の基準と同時に、評価プロセスの透明化も必要になります。評価理由が曖昧になったり、同じ成果にもかかわらず評価に差があったりすると、エース社員は不信感を抱くでしょう。評価の背景を共有することで、安心して業務に取り組める環境が完成します。
人事評価制度については、関連記事の解説もご覧ください。
2.業務量を調整する
エース社員に集中した業務を見直すと、負担が減り、やる気の回復につながります。成果を上げ続ける人ほど、多くのタスクを任されやすく、業務が属人化しがちです。属人化が進むと、エース社員へのプレッシャーが強まり、精神的な負荷が大きくなります。
業務量の見直しを行う際は、チーム全体で業務の棚卸しを行いましょう。タスクの偏りを可視化し、改善すべきポイントを発見しやすくなります。棚卸しの結果から、タスクを再分配したり、標準化できる部分をマニュアル化したりして、役割のバランスを整えましょう。
業務量が適正化されると、エース社員の心理的余裕が戻り、視野が広がりやすくなります。新しい提案を行ったり、後輩のサポートに取り組んだりする余裕もできるでしょう。エース社員に前向きな行動が増えれば、チーム全体の生産性向上にもつながります。
3.定期的に1on1ミーティングを実施する
エース社員のモチベーションを保つには、定期的な1on1ミーティングが効果的です。成果を上げる人ほど悩みを抱え込みやすく、放置すると不安や負荷が蓄積しかねません。
1on1の場があると、日々の業務では話しにくい悩みや課題を安心して共有でき、問題の早期対処が可能です。
また、1on1は単なる面談ではなく、フィードバックと成長支援として機能します。上司が丁寧に話を聞き、努力や成果を言語化して認めるだけで、社員は自分の価値を実感しやすくなるでしょう。
さらに、1on1はメンタルケアの役割も担います。エース社員は自分に厳しい傾向が強く、限界まで頑張ってしまうことも少なくありません。定期的に対話の場が設定されていると、周囲が早い段階で変化に気づけるため、離職の予防効果が高まります。
4.キャリアパスを明示する
将来が見えない不安も、エース社員がやる気を失う原因のひとつです。キャリアパスを明確に示し、中長期的な成長イメージが描けると、目標に向けた行動が取りやすくなります。仕事への意欲も、自然と高まるでしょう。
まず、役割やポジションの将来像を提示することが大切です。日々の業務に意味づけができ、モチベーションが安定しやすくなります。
さらに、スキル習得のロードマップを可視化することも有効です。たとえば、1年後・3年後・5年後に習得しておくべきスキルを段階的に示すことで、社員自身が成長計画を立てやすくなります。
キャリアパスを明示することは、エース社員が自身の価値を再確認し、組織で活躍し続けるための大きな支えになります。
5.職場での心理的安全性を確保する
やる気を引き出すには、心理的安全性のある職場づくりが欠かせません。心理的安全性とは、意見を伝えても否定されにくく、失敗を責められない環境のことです。
成果を上げやすいエース社員でも、評価や周囲の期待を気にして本音を言いにくくなることがあります。どのような意見も歓迎し、相談しやすい雰囲気づくりを進めることで、モチベーションの低下を避けられるでしょう。
とくに、失敗を過度に責めないことが重要です。挑戦には必ずリスクが伴うため、失敗が責められる職場では新しい提案が生まれにくくなります。エース社員ほど挑戦的な業務を任されやすいため、失敗を責めない文化の整備が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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