• 更新日 : 2025年12月5日

中途採用者の離職率はどれくらい?離職理由や定着に向けた対策を解説

昇給や新たな職種への挑戦、環境の変化などを求めて、転職する人が増えています。しかし、こうした人々を即戦力として中途採用しても、なかなか定着しないケースもあるようです。

中途採用者の離職率は、どれくらいあるのでしょうか。この記事では、中途採用者の離職率や離職の理由、定着に向けた対策を解説します。

【データで見る】日本の労働者の離職率

まずは、日本の離職率を見ていきましょう。

厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、日本全体の離職率は14.2%となっています。内訳は男性が12.6%、女性が16.0%です。上記は中途採用者以外も含めた数字ではありますが、約6人に1人が離職している状況といえます。

また、離職者数は「卸売業、小売業」がもっとも多く、次いで「医療、福祉」「宿泊業、飲食サービス業」の順になっています。内訳は以下のとおりです。

区分離職者数
全産業平均7,195.3人
卸売業、小売業1,427人
医療、福祉1,135.4人
宿泊業、飲食サービス業1,070.8人

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査」

上記の3業種で、離職者の約半数を占めています。

離職理由としては「個人的理由」が10.7%と大半を占めており、契約期間の満了が1.7%、事業所側の理由が0.8%と続いています。自発的な離職がほとんどであることから、中途採用者は企業に何らかの不満を抱いて離職している可能性が考えられるでしょう。

離職率についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。

離職率の計算方法

離職率の計算は、以下の式を用いて行います。

(特定の期間の)離職者数 ÷ (期間の)期首の従業員数 × 100

中途採用者の離職率を計算するには、上記の式の「離職者数」や「従業員数」を、「中途採用者数」に変更する必要があります。

よって、中途採用者の離職率を計算する式は、以下のようになります。

(特定の期間の)中途採用の離職者数 ÷ (期間の)期首の中途採用者数 × 100

たとえば、直近5年間の中途採用者が20人、離職した中途採用者数が8人だったとします。この場合の離職率は「8人÷20人×100」で40%となります。

自社の離職率を算出する際は、上記の式で計算しましょう。

中途採用者が離職する主な理由

中途採用者が離職する主な理由としては、採用のミスマッチ、待遇面での不満、不透明なキャリア、人間関係の悪化などさまざまな要因が考えられます。中途採用者の離職理由を解説します。

採用のミスマッチが起きている

採用時のミスマッチは、離職のよくある理由のひとつです。ミスマッチが起きる原因は、以下のようにさまざまなことが考えられます。

  • 入社前と入社後のギャップが大きかった
  • 業務の裁量が思ったほどなかった
  • 労働条件が想定以上に厳しかった
  • 社風が合わない
  • 評価制度に問題がある など

面接時によい面ばかりを伝えたり、本来の実態とは程遠い内容を話していたりすると、こうした事象が起きやすいです。

企業が提示する待遇条件や業務内容などに少しでも違和感があると、従業員は会社に不信感を抱き、モチベーションが低下してしまいます。業務や社風のメリット・デメリットを包み隠さず事前に伝え、従業員が入社前と入社後で感じるギャップをできる限り少なくするのが大切です。

賃金・待遇が合っていない

賃金や待遇の不満は、離職の直接的な理由になりうるものです。とくに、面接時に確約された給与・賞与と実際に支給された給与・賞与が異なると、従業員が不信感を抱くことになります。確約されているであろう賃金や待遇が得られないとわかれば、従業員は早期に転職する可能性もあるでしょう。

賃金・待遇は転職においても重視されやすい項目です。優秀な人材を引き止めたいのであれば、常に金額や昇給・昇進の仕組みを見直す必要があります。

職場環境や人間関係が悪い

職場環境や人間関係が悪いと、心身に不調をきたし離職する原因になります。

たとえば「会社の風土が体育会系でついていけない」「コミュニケーションを取れる相手が少なく孤立している」といった状況が考えられます。こうした状況が続けば、業務に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。また、上司が高圧的でパワハラやセクハラをしていると、日常生活にも支障が出るほど精神が疲弊します。

このような状況を放置しておくと、結果的に中途採用者が定着できず離職してしまう可能性が高くなります。採用後のフォローや職場内の同僚・上司との関係性の構築ができているか、都度確認しておくのが重要です。

キャリアパスが明確でない

入社後のキャリアが不透明になってしまうと、従業員が将来に不安を感じ離職する可能性があります。

たとえば、入社前に期待していたポジションでの活躍ができなかったり、入社後すぐに希望の部署から異動になったりするといったことがあるとします。従業員が本来目指したいものとは異なるキャリアを歩ませると、従業員は「この会社にいても成長できない」「自分の思い描いていたキャリアを実現できない」と感じてしまうのです。

会社側が事前にどのようなキャリアプランを描いているのか採用時に確かめておくことで、採用者の希望を実現しやすくなるでしょう。

入社後のフォローがない

入社後にフォローがないと、いくら社会人経験がある中途採用者であっても、業務を上手にこなせません。

中途採用者に組織へ馴染んでもらうには、以下のような仕組み・慣習を丁寧に教育し、即戦力になってもらえるようサポートする必要があります。

  • 社内システムの使い方
  • 始業前に済ませること
  • 休暇の申請フロー
  • 社内用語 など

入社後のフォローを怠ると、会社への不信感や人間関係の孤立、必要以上のプレッシャーなどマイナス影響につながる可能性があります。そのため、中途採用者であっても、入社後の指導教育は欠かせません。

結果を求められ過剰なプレッシャーがかかる

中途採用者は即戦力として採用することが多いですが、その期待が採用した従業員のプレッシャーになり、ストレスを抱え込む可能性があります。とくに、前述のとおり業務や自社の慣習に関するフォローがなければ、たとえ優秀な人材でも思ったような力を発揮できず、結果的に期待を下回ってしまうことも考えられます。

適切な業務サポート体制を構築し、過度なプレッシャーや圧力がかからないようにすることで、中途採用の従業員が定着しやすくなるでしょう。

離職率が高いことで起きる影響

離職率が高いと、採用コストが増えたり、人材育成がうまくいかず会社のコアとなる人材が不足したりといった懸念が考えられます。会社の業績・生産性にもかかわるため、早急な改善が望まれます。

採用コストの増加

中途採用者の早期離職は、採用コストが膨らむ要因のひとつです。

採用の際は、求人広告費や採用担当者の人件費などの費用が発生します。また、面接の人員調整や日程調整など、業務の負担もあるでしょう。せっかく採用してもすぐに離職してしまうと、再度求人を出したり面接準備をしたりしなければなりません。

採用活動をする際は、その都度費用や業務リソースがその分かかります。採用機会が増えて支出が多くなれば、企業の財務状況にも影響を及ぼす可能性があります。

コア人材の不足

中途採用者の離職率が高いと、組織の中核を担える存在が育ちにくくなります。組織の中核を担うには、従業員自身のスキルや経験を積んだ年数が重要になるためです。

中途採用者の離職率が高いと、会社の成長に必要なノウハウや知見が蓄積されず、サービスのクオリティ低下やイノベーション停滞などを招きます。会社の競争力低下や将来の事業継続といった経営にも影響を及ぼしかねないのです。

既存社員の負担増加

中途採用者の離職が増えると、既存社員の負担が増えます。離職者が出れば、残った従業員は離職者が担当していた業務をカバーしなければなりません。また、新たな採用活動や採用後の教育に時間を費やさなければならず、本来の業務に集中できない可能性があります。

残った従業員が疲弊し不満が溜まると、さらに離職が相次ぐケースも考えられます。そうなると、事業の継続自体に見通しが立たなくなることもあるのです。

【採用時】中途採用者の離職率を下げる対策

採用時にできる中途採用者の離職率を下げる対策としては、採用基準の明確化や待遇の改善、立場・役割の通達などが挙げられます。また、リファレンスチェックやカジュアル面談などの活用も有効です。

中途採用者の離職率低減の対策をより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。

採用基準を明確にする

採用基準をあらかじめ明確にしておけば、ミスマッチの確率を減らせます。スキルや経験に加えて「自社の風土に合う人物か」「企業のビジョンに合致できるか」といった部分も定義づけておくと、どの候補者を採用するか見極める際に役立つでしょう。

曖昧な基準で採用すると、中途採用者は十分に力を発揮できないまま離職する可能性があります。基準については、人事担当部署はもちろん、採用先の部署とも擦り合わせておき「企業としてどのような人物を採用したいのか」を明確にしておきましょう。

採用者に適した給与を用意する

採用者にあった給与を用意することで、採用候補者にとって魅力的なオファーとなり得ます。詳細な金額まで面接時に明確に説明しておけば、採用候補者も将来のキャリアや転職後の生活をイメージしやすく、長期間にわたって貢献してくれる可能性があるでしょう。

また、賞与の算定基準やインセンティブ、昇給モデルといった具体的な給与体系もあわせて伝えておくと、入社後に感じるギャップも少なくなります。

採用後の役割や立場を伝える

採用後の役割・立場を面接時に伝えておくと、キャリアや業務内容のギャップを埋められます。

入社後に担当してほしい業務内容や役職、裁量や責任の範囲などを伝えておくと、採用候補者も業務のイメージが湧きやすくなるでしょう。

あわせて、現在組織の抱えている課題や仕事の厳しさ・難しさなども伝えておくと、入社後に「想定していたよりも厳しかった」といったギャップが発生することも少なくなります。

リファレンスチェックやカジュアル面談を活用する

リファレンスチェックやカジュアル面談を活用するのも効果的です。リファレンスチェックとは、候補者の同意のもと、前職の上司・同僚に働きぶりをヒアリングして確かめる方法です。客観的評価を得られるため、自社の風土に合うか、能力が十分かを判断する際に役立ちます。

カジュアル面談とは、候補者とリラックスした状態で質問ができる場を設けるものです。会社側も自社のリアルな雰囲気や社風を伝えやすくなります。合否に関係しないため、面接で聞きにくいことを聞いてもらったり、伝えにくいことを話せたりする場となります。

【採用後】オンボーディングのポイント

採用後の中途採用者の離職率を下げる対策のひとつに「オンボーディング」があります。オンボーディングとは、新しい従業員が業務に慣れ、組織にスムーズに馴染めるよう支援する一連のプロセスを指します。

中途採用者の定着に向けた重要な取り組みであるため、ポイントをおさえておきましょう。

メンター制度を導入する

メンター制度の導入により、入社後のフォローをするのが効果的です。

メンター制度とは、先輩社員が新しく入ってきた社員に個別に行う支援のことです。業務はもちろん、職場の悩みなどのサポートもします。直属の上司ではなく同僚が担当するのが一般的です。

ちょっとした疑問や悩みを相談・解決できる人がいることで、採用者のストレスを低減でき、定着につなげられます。

定期的に1on1ミーティングをする

1on1ミーティングにより、上司が部下である中途採用者の成長をサポートするのも重要です。

1on1ミーティングとは、上司と部下で定期的に行う面談で、比較的フランクなものです。上司・部下双方向で話をしながら、上司が部下の話を聞き出すのが目的で、評価を下すことはしません。日々の業務の成果や課題、今後の指針や確認すべき事項などを話し合うとよいでしょう。

上司が部下の成長を促すための発言をしたり気づきを与えたりすることで、中途採用者にとっては「現在何を求められているのか」「どのように今後業務にあたっていけばよいのか」が明確になります。対話を繰り返すことで、人材育成や社内のコミュニケーション活性化なども期待できます。


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