- 更新日 : 2025年12月5日
びっくり退職とは?主な原因や兆候、対策をわかりやすく解説
辞めると思っていなかった社員が突然退職することを「びっくり退職」と呼びます。突然の退職であるため、企業への影響は大きく、対策が重要です。
この記事では、びっくり退職の概要や原因、兆候を紹介します。びっくり退職を防止するための対策も、わかりやすく解説します。
びっくり退職とは?
びっくり退職とは、社員が退職の予兆を見せずに、突然辞職を申し出る現象を指します。普段通りに業務をこなしていた社員が、ある日突然「辞めます」と切り出す特徴があります。
びっくり退職は、残された社員に過度な業務負担がかかるため、職場の雰囲気やエンゲージメントの悪化を招く可能性があるでしょう。一人の退職をきっかけに、ほかの社員も転職を意識し始め、退職の連鎖につながるおそれもあります。
びっくり退職は企業の生産性や組織の安定性に悪影響があるため、予防と早期対応が不可欠です。
びっくり退職の増加の背景
びっくり退職が増加している背景として、以下が挙げられます。
- 働く世代の人口減少により、労働市場が売り手優位
- 転職市場の活発化により、社員は次の職場を見つけやすい
- SNSや転職サイトの普及で、他社との比較や転職情報の収集が容易
- 働き方の多様化により、テレワークやフレックスを求める人が増加
とくにミレニアル世代やZ世代は、ワークライフバランスや自己成長を重視する傾向にあります。社員の価値観の変化に企業が対応できていないと、びっくり退職が増加する要因となります。
びっくり退職の主な原因
びっくり退職の主な原因として、評価や待遇への不満、職場のストレスなどが挙げられます。びっくり退職の理由を正しく理解すると、突然の離職を未然に防ぎ、社員が働き続けやすい環境づくりに役立ちます。
評価や待遇に不満がある
評価や待遇に対する不満は、びっくり退職を引き起こす代表的な要因です。成果や努力が給与や昇進に反映されないと、モチベーションの低下につながります。
サービス残業や手当のカットといった待遇の悪さも、退職理由のひとつです。評価制度や面談が形だけの場合、社員は頑張っても報われないと感じてしまいます。
職場の人間関係や労働環境にストレスを感じている
人間関係のトラブルは、びっくり退職の原因のひとつです。上司との相性や方針が合わないと、精神的ストレスが蓄積されます。
また、ハラスメントが横行している職場は、突然の退職に発展しやすい傾向にあります。社内コミュニケーションの不足や孤立感も、職場への不信感や不安を高める要因となるでしょう。
さらに、業務分担の不公平さや責任の押し付けが続くと、働く意欲が低下し、退職を決意するきっかけになります。
キャリアや会社の将来性に不安がある
キャリアアップや成長が見込めないと感じた社員は、現職にとどまる理由を失いやすい傾向があります。昇進の機会が少なく、挑戦的な仕事が与えられないと、成長意欲が満たされないからです。
また、キャリアパスが不透明であったり、自身の市場価値に対して不安を感じたりすることも、びっくり退職を後押しする要因です。さらに、企業の業績不振や経営戦略の曖昧さが続くと、社員が会社の将来性に不安を抱き、退職につながります。
自身のキャリアを主体的に考える人ほど、組織の将来や成長機会の欠如に敏感であるため、突然の退職につながるでしょう。
ヘッドハンティングを受けている
他社からのヘッドハンティングは、びっくり退職の要因のひとつです。とくに優秀な中堅社員や若手の有望株は、競合他社から狙われやすい存在です。年収アップや管理職登用、新規事業への参加など魅力的な条件を提示されると、現職との待遇差が明確になり、不満が高まりやすくなります。
ヘッドハンティングを受けた社員は、現職の上司に相談しにくく、内密に転職を進めてしまいます。企業側は人材流出のリスクを正しく認識し、キャリア支援や処遇改善を行うことが重要です。
びっくり退職が企業に与える影響
びっくり退職は、業務の停滞や職場の士気の低下、採用や教育コストの増加など、企業に悪影響を及ぼします。突然の離職は、残された社員の負担増大や組織全体のバランスが崩れやすいため、早期の発見と対策が欠かせません。
業務の停滞を引き起こす
びっくり退職が発生すると、担当者不在により業務の停滞を引き起こします。たとえば、引き継ぎが不十分な場合、顧客対応や進行中のプロジェクトに深刻な支障が出ます。とくに専門性の高い業務や属人化しているタスクには、ほかの社員はすぐに対応できません。
また、びっくり退職が起きると、残されたメンバーに業務負担が集中し、効率低下やミスの増加につながります。想定外の退職は業務体制の乱れにつながり、チームの生産性やパフォーマンスにも悪影響が出てしまいます。
職場の士気が低下する
びっくり退職は、チーム内に大きな心理的衝撃を与えます。退職の理由が不明な場合、会社への信頼感や安心感が損なわれやすくなります。
また、優秀なメンバーの退職は残されたメンバーのモチベーションを下げる要因になり、結果として生産性の低下を引き起こしかねません。さらに、びっくり退職をきっかけに、ほかの社員も転職を意識し始め、退職の連鎖が起こる可能性もあります。
採用・教育コストが増加する
びっくり退職が発生すると、急な人員補充のために採用コストが増加します。求人広告や転職エージェントの利用により、予定外の費用が発生するからです。
また、新たに採用した社員が業務に慣れるまでには時間がかかるため、生産性が一時的に低下します。新人教育には工数がかかるため、現場の教育担当者の負担も大きくなるでしょう。
優秀な社員の離職は、単なる採用コストだけでなく、企業全体に与える損失が大きくなります。
びっくり退職をしやすい社員の特徴
びっくり退職をしやすいのは、真面目で責任感が強い社員や、優秀な若手・中堅社員です。仕事を一人で抱え込みやすく、キャリアアップの転職に踏み切りやすい層でもあります。
真面目で責任感が強い
真面目で責任感が強い社員は、表面上は安定して見えますが、内面ではストレスを抱え込みやすい傾向があります。問題や負担を一人で解決しようとする傾向があり、不満を周囲に共有せずに限界を迎えます。よくあるパターンとしては、周囲に迷惑をかけたくないという思いからギリギリまで我慢し、突然退職を決断するケースです。
業務に対する高い責任感から、自身の働き方に無理を重ねてしまい、心身の負担が増していきます。管理職や人事は、問題がなさそうな人ほど注意が必要と認識し、定期的な対話を心がけることが大切です。
優秀な若手・中堅である
優秀な若手・中堅社員は即戦力として期待される一方で、びっくり退職のリスクが高い層です。成長意欲や市場価値が高いため、キャリアアップの転職をしやすいからです。
優秀な人材はプロジェクトやチームの中心を担う場面が多く、突然の退職は現場に大きな混乱を与えます。一人の優秀な若手・中堅社員の退職がきっかけとなり、周囲に離職の連鎖が広がる可能性もあります。
びっくり退職の前に表れる兆候
びっくり退職は突然のように見えても、退職の前にいくつかのサインが表れています。コミュニケーションの減少や仕事への意欲の変化など、日常の小さな違和感を見逃さない姿勢が重要です。
コミュニケーションが減少する
周囲とのコミュニケーションの減少は、びっくり退職の初期サインのひとつです。会議での発言が減る、雑談やランチに加わらないなど、距離を取る行動が見られるようになります。1on1や上司への報告・相談を避けるようになった場合は、注意が必要です。
また、業務に必要な会話も最低限にとどまり、周囲との心理的距離が広がっていく傾向もあります。逆に、急に前向きな言動が増える場合も、退職を決意して吹っ切れた状態の可能性があります。そのため、コミュニケーションの取り方が急に変わった場合は注意が必要です。
仕事へのモチベーションが低下する
仕事へのモチベーションの低下は、びっくり退職の典型的な前兆のひとつです。たとえば、以下の兆候が見られた場合は注意が必要です。
- 以前は積極的だった業務に対して、消極的な姿勢を見せる
- 会議での発言や提案が減り、存在感が薄れていく
- 新規プロジェクトへの関心がなくなり、長期案件への関与を避ける
- 業務の質が下がり、納期遅れやミスの増加など、パフォーマンス低下が目立つ
びっくり退職の兆候が見られた場合には、早急な対応が必要です。
新規業務や長期プロジェクトへの関心が薄れる
新しい業務や長期プロジェクトへの関心が薄れている場合も、びっくり退職の前兆として現れやすいサインです。以下のような行動が見られる場合には、びっくり退職につながるリスクがあります。
- 新規プロジェクトの提案に対して、消極的または否定的な反応を示す
- 業務改善の提案や社内イベントへの参加意欲が低下し、存在感が薄れる
- 長期的な取り組みに後ろ向きになる
新しい挑戦への意欲を失う背景には、職場への不安や将来性への懸念が隠れていることがあります。
勤務態度や身だしなみに変化が見られる
勤務態度の変化は、びっくり退職の兆候のひとつです。遅刻や早退、欠勤の増加は、職場へのストレスや無気力の表れです。勤務中の無断離席や集中力の欠如は、すでに転職活動を始めている可能性を示唆します。
また、身だしなみの乱れは、仕事への関心やモチベーションの低下を示します。逆に、以前よりもフォーマルな服装をしていたり、髪型に変化があったりすれば、仕事後に面接の予定が入っている可能性もあるでしょう。
びっくり退職を防ぐ対策
びっくり退職を防ぐためには、日頃から社員の意見を聞き、問題を早期に察知する仕組みづくりが欠かせません。1on1や評価制度の見直し、キャリア支援など、多角的なアプローチで、社員の不安や不満を解消していくことが重要です。
定期的に1on1ミーティングを行う
定期的な1on1ミーティングは、びっくり退職を防ぐ手段のひとつです。個別での対話を通じて、業務の悩みやキャリアの不安など、本音を引き出しましょう。困っていることを聞くのではなく、オープンな質問を通じて、安心して話せる雰囲気づくりが重要です。
1on1ミーティングで早期に違和感やストレスの兆候を察知できれば、適切なフォローや支援策を講じやすくなります。継続的な対話は信頼関係を深め、離職防止に向けた基盤づくりにも役立ちます。
公正な評価とフィードバック体制を整える
社員の努力や成長を見逃さず、日常的にフィードバックを行うと、モチベーションを維持しやすくなります。評価のタイミングだけでなく、業務中の具体的な声かけも有効です。小さな貢献に対しても、周りが見てくれているという実感を与えることが重要です。
評価の軸が曖昧だと不満につながるため、全社共通の基準を明示し、透明性を高める必要があります。評価結果は一方的に伝えるのではなく、振り返りと今後の成長に向けた期待も含めて、丁寧に伝えることが大切です。
キャリア支援を行う
社員が自社に成長の機会を見出せるよう、キャリア支援を積極的に行うことが重要です。
定期的なキャリア面談を実施し、本人の志向や悩みを正しく把握しましょう。社内での昇進や異動ルールを明確化すると、キャリアパスの透明性を高められます。
社内外の研修制度を整え、新たなスキルや資格習得の支援も効果的です。今の会社にいれば成長できると思える環境を整えることは、びっくり退職の防止につながります。
メンタルヘルスケアの体制を整える
社員のメンタルヘルスを守るためには、早期の気づきと支援体制の構築が不可欠です。ストレスチェックを定期的に実施し、社員が自分の状態を客観的に把握できる機会が必要です。
社内だけで対応しきれない場合は、外部のカウンセラーや産業医との連携も視野に入れましょう。真面目な社員ほど悩みを抱えやすいため、普段から心理的な変化に気を配ることが大切です。一人で抱え込まなくていいと社員が思える環境が、突然の退職を防ぐ抑止力になります。
社員の満足度を可視化する
社員の本音を把握するには、満足度の見える化が効果的です。たとえば、匿名性を確保したアンケートを活用すると、上司や人事に言いづらい不満や不安を把握できます。満足度調査は、離職リスクの兆候を早期に捉える手段として役立ちます。
設問内容はキャリア意識や職場環境など、社員のモチベーションに直結する項目を中心に設計しましょう。調査後は迅速な分析と改善提案を行い、社員の声を反映する姿勢を示すと、会社への信頼を高められます。
アンケート結果は放置せずにアクションに結びつけることで、満足度向上と離職防止につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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