- 更新日 : 2025年12月5日
1on1ミーティングとは?実践的な進め方やメリットを解説
上司と部下の信頼関係を構築することは、スムーズな業務に欠かせません。しかし、どのようなコミュニケーションを取れば信頼関係を築けるのか、悩んでいる方も多いのではないのでしょうか?そこで効果的な手法のひとつが、1on1ミーティングです。
本記事では、上司と部下が定期的に行う1on1ミーティングについて、概要や実施の目的、評価面談との違いなどをわかりやすく解説します。
1on1ミーティングの効果的な進め方をステップごとに紹介し、話すべき内容や得られるメリット、注意すべきポイントも詳しくまとめました。
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
1on1ミーティングとは?
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談のことです。業務上の課題だけでなく、部下のキャリアや働き方など幅広いテーマを自由に話し合います。
もともとはシリコンバレーの企業で広まった手法ですが、近年は日本企業でも活発に導入されています。
所要時間は、30分から1時間程度が目安です。主に、週1回から月1回の頻度で実施されます。
1on1ミーティングで部下と面談するのは、直属の上司であることが多いでしょう。場合によっては部門長や経営者、メンターが担当することもあります。
評価面談と1on1ミーティングの違い
評価面談で話す内容は、主に業務の成果や進捗といった現在の仕事に焦点を当てます。
一方、1on1ミーティングでは、部下の成長支援やモチベーションの向上に重きを置きます。部下の話したいことに寄り添いつつも、上司が聞きたいことをうまく引き出すことが重要です。部下の緊張を解くために、適度に雑談を取り入れるのもよいでしょう。
ただし、あくまでも部下が仕事をしやすくなるように話を進めることが大切です。
また、上司が一方的に話すのではなく、互いに意見を交わす双方向の対話が重要です。
部下の人間関係の悩みやキャリアの相談など、話すことは多岐にわたります。
1on1ミーティングの進め方
ここでは、1on1ミーティングを効果的に行うための手順を紹介します。準備から実施、振り返りまでの流れを押さえ、スムーズに進めるポイントを見ていきましょう。
また、部下の離職を防ぐためのコミュニケーション術を知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
1. 話す内容・テーマを決める
1on1ミーティングでは、まず部下がどのようなことを話したいかを確認することが大切です。
もし話題がない場合は、上司から最近の業務状況や職場の様子に触れて会話を広げましょう。
1on1ミーティングに対して部下が消極的だったり、話が続かない状況だったりすると、双方向の対話が難しくなります。
担当する上司は、日頃から部下の状況や関心を把握し、適切なテーマを用意しておくことが重要です。
常に、部下の意見や気持ちを尊重する姿勢をもちましょう。
2. 日時・場所を決める
1on1ミーティングのテーマを共有したあとは、具体的な日時と場所を決めます。
スケジュール調整の際は、部下の都合を優先して予定を組むことで、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。
さらに、話しやすい雰囲気を作るために、面談場所も部下の希望を聞きながら選ぶことが大切です。
1on1ミーティングのテーマがカジュアルな場合は、会議室にこだわらず、カフェやラウンジなどリラックスできる空間を選ぶのもおすすめです。
3. 1on1ミーティングを実施する
1on1ミーティングでは、最初に軽い雑談から入ることで自然な雰囲気を作るのが効果的です。
限られた時間だからといって、いきなり業務の話をはじめると部下が緊張してしまうこともあります。あくまでもリラックスできる空気を意識しながら、会話のなかでテーマを明確にしていきましょう。
1on1ミーティングの進行中は、部下の状況や気持ちに寄り添い、うまくいっている点や悩みを丁寧に聞くことが大切です。
上司側の関心ばかりを押しつけない姿勢を心がけましょう。
4. 上司のサポート内容を明確にする
部下の話を聞いたあとは、本人がどのような気づきを得たか、今後どのような行動を取るべきかを一緒に考えることが重要です。
その際、上司としてサポートできることがあれば確認し、すぐに対応可能な内容であれば具体的な行動計画と期限を決めましょう。
ただし、課題の深掘りや行動設定には信頼関係が欠かせません。
まだ部下が心を開ききっていないと感じる場合は、無理に進めず、次回以降の対話につなげる姿勢も大切です。
5. ミーティングを振り返る
1on1ミーティングの終わりには、話し合った内容を簡潔に振り返り、決定した行動や上司の支援内容を双方で確認しましょう。
部下が次のステップに踏み出せるよう、前向きな言葉を添えて励ますことも効果的です。
また、上司は面談内容をメモしておくことで、次回の1on1に活かせます。記録をもとに成長の変化を振り返ることで、より実りあるコミュニケーションを継続できます。
6. 次回のミーティングを設定する
1on1ミーティングは単発で終わらせず、継続的に行うことで効果が高まります。
1on1ミーティングの終了時に、次回の日時を決めておくとスムーズです。難しい場合は、いくつか候補日を提示して部下に選んでもらいましょう。
加えて、次回の議題をあらかじめ決めておくと、双方が準備しやすくなります。
部下に話したいテーマを考えてもらうことで、自主性や主体性の育成にもつながります。
1on1ミーティングで話す内容
1on1ミーティングのテーマとして挙げられる代表的な例を、いくつか下記にまとめました。
- 仕事の進め方について
- 職場の人間関係について
- 中長期的なキャリアについて
- 社内の問題についての不安点など
- 仕事の成功・失敗について
- 家族の心配ごとなどのプライベートについて
1on1ミーティングでは、基本的に部下が話すテーマを用意するのが理想です。しかし、1on1ミーティングに慣れていない場合は、何を話すか思いつかないこともあります。
その場合は、上司がいくつかの例やテーマを提示し、そのなかから疑問点や困りごと、不満など具体的な話題を選んでもらうとよいでしょう。
上記のようなテーマをいくつか挙げることで、部下も話しやすくなり、より実りのある対話が生まれます。
1on1ミーティングを実施するメリット
ここでは、1on1ミーティングを行うことで得られるさまざまなメリットについて、解説します。部下との信頼関係が深まり、業務効率の向上にも効果が期待できるでしょう。
上司と部下の信頼関係を構築できる
1on1ミーティングでは、業務以外の話題も交えながら部下の人柄や考えを理解できるのがメリットです。
上司が、部下の話に真剣に耳を傾けることで、部下は安心して意見を伝えられます。継続的な対話は、信頼関係を築くうえで不可欠です。
信頼関係が深まると、業務上の指示やフィードバックも受け入れてもらいやすくなります。
結果として、チーム全体の生産性向上にもつながるメリットがあります。
コミュニケーションが取りやすくなる
1on1ミーティングを通じて、上司と部下が1対1で対話することで、お互いの性格や仕事観、プライベートの考え方などの理解が深まります。これにより、コミュニケーションが取りやすくなる点がメリットです。
上司は部下の価値観やキャリア志向、業務上の課題を把握することで、部下に適した仕事の割り振りや育成方針を立てられます。
結果として、マネジメントの質向上にもつながるでしょう。
部下の成長やモチベーションの向上につながる
1on1ミーティングで上司が具体的なアドバイスを提供することにより、部下は業務上の困難を乗り越える力を養えます。
効率のよい業務の進め方や課題解決のヒントを得られるため、パフォーマンスが向上するでしょう。
また、成果を実感できる機会が増えることで、部下の成功体験も積み重なります。これにより、部下のモチベーションの向上も期待できます。
離職を防ぐ効果が期待できる
1on1ミーティングで上司が部下に寄り添い、問題をひとりで抱え込ませない姿勢を示すことで、離職防止につながることがあります。
面談では雑談や業務のアドバイス、仕事やプライベートの悩みなど幅広いテーマを扱います。そのため、上司は部下の心理状態や状況を把握しやすくなるのが特徴です。
結果的に、部下のエンゲージメントやモチベーションの低下を早期に察知して、適切なサポートを行うことが可能になります。
社内のエンゲージメントを高める施策について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご確認ください。
1on1ミーティングを実施する際の注意点
ここでは、1on1ミーティングを効果的に進めるための注意点について解説します。部下との信頼関係を保ちながら、円滑に実施するポイントをまとめました。
話す内容によっては効果を感じにくい
1on1ミーティングは、テーマ設定や進め方を間違えると十分な効果が得られません。明確な目的や準備がないまま実施すると、雑談だけで終わってしまい、部下の成長や課題解決につながりません。
一方で、1on1ミーティングの目的を再度確認することで、1on1ミーティングの効果を高められます。あくまでも部下の成長につながるテーマに絞って対話することが重要です。
上司は、部下の特性や前回の1on1ミーティングの内容を踏まえて、適切な質問や効果的なアドバイスを用意します。
これにより1on1ミーティングの質が高まる、実りのある対話が可能です。
時間を確保する必要がある
1on1ミーティングは通常、月1回・30分程度で実施されます。しかし、準備にも時間がかかるため、上司への負荷が大きくなる点に注意が必要です。
効率よく1on1ミーティングを実施するためには、育成対象の社員を絞ることが必要になります。また、1on1支援ツールの活用などの活用も有効です。
こうした工夫により、限られた時間でも効果的な面談が可能になり、部下の成長支援を継続しやすくなります。
1on1ミーティングを成功させる進め方のポイント
ここでは、1on1ミーティングを効果的に進め、成果を引き出すためのポイントについて解説します。
従業員の満足度と離職率の関係についても知りたい方は、下記の記事もあわせてご参照ください。
部下の話を傾聴する
1on1ミーティングでは、部下が主体的に話せるよう、上司は聞き役に徹することが重要です。
話を聞くだけでなく、話を受け入れる「受容」と、共感を示す「傾聴」の姿勢を意識しましょう。
上から指導するのではなく、部下の立場に立ち、その気持ちに寄り添う姿勢で臨むことで、信頼関係が深まります。1on1ミーティングは、あくまでも部下を主役とすることで、より有意義な対話が生まれます。
定期的に実施する
1on1ミーティングは、短期間かつ定期的に実施することで、効果を高められます。
実施頻度の理想としては、毎週30分程度です。ただし、初めての場合はスムーズにいかないことも多いでしょう。
最初は月1回からはじめ、徐々に隔週や毎週に増やしていく方法がおすすめです。
たとえば、部下が立てたアクションプランを1週間以内に実行し、翌週の面談で振り返るなど、継続的なサイクルを組み込むとよいでしょう。
これにより、部下が学びや改善をすぐに業務上で反映できる体制が整います。
上司が部下を一方的に評価しない
1on1ミーティングでは、部下の考えや行動計画を上司が正誤で評価するのは避けるべきです。
「それは間違っている」「やり方がよくない」と否定してしまうと、部下のモチベーションが低下しやすくなります。
また、上司がすぐに解決策を提示したり結論を出したりすると、部下が自分で考える機会が減ります。結果的に、指示待ちになってしまうかもしれません。
上司は、アドバイスの押し付けは控え、部下自身が考えや行動を整理できるようサポートする姿勢が重要です。
部下自身に考えてもらえるように促す
1on1ミーティングでは、部下の考えを整理し、具体的な行動計画に落とし込むことが重要です。
上司は「こうすべき」と指示するのではなく、「どうすればよいと思う?」や「それを実施するとどうなる?」といった質問を重ねます。あくまでも、部下自身が結論を出せるよう導く役割を担いましょう。
これにより、部下が自主的・自発的に考え、行動できる力を育てられます。
上司はサポート役に徹する
1on1ミーティングでは、主役はあくまで部下です。
上司は聞き役としてサポートに徹し、部下が主体的に話せる環境を整えることが求められます。
具体的には、ミーティング中の会話の割合を部下が7割、上司は質問や促しに使う3割程度に抑えるとバランスがよいでしょう。
部下に多く話してもらうことで、意見や考えを引き出しやすくなります。
管理職に対して会社からのサポートを実施する
1on1ミーティングを実施するメリットを得られるかどうかは、管理職の関わり方によって大きく左右されます。会社としては、上司が効果的な進め方や対話スキルを身につけられるよう、研修を実施するとよいでしょう。
また、1on1ミーティングの進め方について、理解しやすいマニュアルを上司と部下の双方に配布することも大切です。
管理職の適切な進行や準備サポートにより、ミーティングの質を向上させられます。
人事部が1on1ミーティングの質の向上にかかわる
1on1ミーティングの効果を高めるためには、人事部が定期的に上司と部下の双方にアンケートを実施し、満足度や課題を把握することが重要です。
問題が明らかになった場合は、人事が上司に改善を促し、1on1ミーティングの質の向上をサポートします。
現場任せにせず、人事部が積極的に関与することで、1on1ミーティング全体の効果を高める仕組みを作れるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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