• 更新日 : 2025年9月26日

自社に合うeラーニングの種類は?目的別の講座の選び方と人材育成のコツ

企業の成長には人材育成が欠かせず、その手段としてeラーニングは急速に普及しています。ただし、教材の種類やシステム形態が多岐にわたるため、自社に合った選び方を理解しないと導入効果が薄れてしまうリスクがあります。

この記事では、eラーニングのコンテンツやシステムの種類を整理し、目的別の活用法から費用感、導入成功のコツまでをわかりやすく解説します。

目次

eラーニングの学習コンテンツにはどんな種類がある?

eラーニングの学習コンテンツは、大きく分けて全社員向けの「汎用講座」、専門職向けの「特化講座」、そして自社ノウハウを反映できる「内製教材」と「外注オリジナル教材」があります。研修目的に応じてこれらを使い分けることが重要です。

全社員向けの汎用的な講座

コンプライアンスや情報セキュリティ、ビジスマナーといった、職種や役職を問わず全社員が身につけるべき知識を学ぶための講座です。多くのeラーニングサービスで標準的に提供されており、法改正に対応した最新の教材を容易に導入できるのが特徴です。定期的な研修や新入社員教育の基盤として活用されます。

特定分野の専門性に特化した講座

医療、IT、製造、会計といった特定の業界や職種で求められる高度な専門知識やスキルを習得するための講座です。専門分野に特化したコンテンツ提供会社が作成した教材を利用することで、社内では育成が難しい領域の教育も効率的に進めることができます。

自社で作成した教材を活用するスタイル

自社の業務プロセスや企業理念、独自のノウハウなど、社外にはない内容を教育するための教材です。PowerPointやPDF、動画ファイルなどをeラーニングシステムにアップロードして使用します。身近な内容であるため従業員の理解を得やすく、企業文化の浸透にもつながるでしょう。

外部に依頼して作成するオリジナル教材

自社に教材作成のノウハウやリソースがない場合、制作会社に依頼してオリジナルの教材を作成する方法もあります。プロの視点で構成された、質の高い動画やアニメーション教材を作成できるのが魅力です。ただし、内製に比べてコストと時間はかかる傾向があります。

eラーニングのシステム提供形態による種類の違い

eラーニングシステムの提供形態は、手軽に導入できる「クラウド型」、カスタマイズしやすい「インストール型」、そして独自開発する「自社構築型」があります。それぞれコストや運用負荷に大きな違いがあります。

クラウド型(ASP型)

クラウド型(ASP型)は、インターネットを通じてサービスを利用する形態で、現在の主流なタイプです。サーバーの構築や管理が不要なため、初期費用を抑えて短期間で導入できます。

システムのアップデートやセキュリティ対策もサービス提供事業者が行うため、専門知識がなくても安心して運用を始められるのが大きなメリットです。

インストール型(パッケージ型)

インストール型(パッケージ型)は、ソフトウェアを購入し、自社のサーバーにインストールして利用する形態です。一度購入すれば月額費用がかからないサービスもありますが、サーバーの維持費やシステムのアップデートには別途コストや手間がかかります。

クラウド型に比べて、セキュリティポリシーなど自社の事情に合わせた運用がしやすい側面があります。

ゼロから自社で構築する方式

自社の要件に合わせて、eラーニングシステムをゼロから独自に開発する方式です。既存のシステムでは実現できない特殊な機能や、他の社内システムとの高度な連携が求められる場合に選択されます。

ゼロから自社で構築する方式はコストが高いため大企業中心ですが、近年は中堅企業でもオープンソースLMSを活用する事例があります。

機能面から見たeラーニングシステムの種類

eラーニングシステムは機能面で3種類に大別されます。すぐに研修を始められる「教材一体型」、自社教材の運用に特化した「管理特化型」、両方の利点を持つ「ハイブリッド型」があり、教材の保有状況によって選ぶべきタイプが異なります。

教材が最初から揃っているタイプ

システムとセットで、幅広い分野の学習コンテンツ(教材)があらかじめ用意されているタイプです。契約後すぐに研修を開始できる手軽さが魅力で、とくにeラーニングを初めて導入する企業や、汎用的な研修を幅広く実施したい企業に向いています。コンテンツ見放題プランなども多く見られます。

自社で教材を載せて管理できるタイプ

学習管理機能に特化しており、教材は自社で用意してシステムに登録(アップロード)するタイプです。自社独自の教材を中心に研修を行いたい企業や、すでに教材資産が豊富にある企業に適しています。受講者の進捗管理や成績評価などを効率的に行うことを主目的としています。

両方の特徴を兼ね備えたタイプ

学習管理機能を基本としながら、オプションで必要な教材を追加購入できるハイブリッドなタイプです。全社員向けのコンプライアンス研修は備え付けの教材を使い、専門的な内容は自社で作成した教材を使う、といった柔軟な運用ができます。多くのクラウド型LMSがこのタイプに該当します。

企業の研修目的別に見るeラーニングの種類と活用法

eラーニングは研修目的によって最適な活用法が異なります。たとえば基礎研修には汎用講座が豊富なシステム、専門スキル向上には特化講座や自社教材が有効です。ここでは、新入社員研修やスキルアップ研修といった目的別に、具体的な活用スタイルを解説します。

新入社員や全社員対象の基礎研修

新入社員や全社員を対象に、ビジネスマナーやコンプライアンスなどの基礎知識を定着させたい場合、汎用的な講座が豊富に揃っている教材一体型のeラーニングが適しています。クラウド型を選べば、多くの対象者へ一斉に研修を配信し、受講状況を効率的に管理できるでしょう。

専門スキル向上を狙う中堅社員向け研修

特定の職種に従事する中堅社員の専門性を高めるためには、専門特化型の講座や、自社で作成したより実践的な教材が有効です。学習管理機能が充実したシステムを選び、個々のスキルレベルに合わせた学習コースを設計することで、一人ひとりの成長をきめ細かく支援できます。

独自の社内ノウハウを共有する研修

OJTだけでは伝えきれない業務ノウハウや成功事例などを形式知として全社に共有したい場合、自社で教材を作成できるタイプのシステムが力を発揮します。動画マニュアルやトップセールスの営業手法を解説するコンテンツなどを作成・共有することで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

eラーニングの種類別に見る料金体系と費用相場

eラーニングの費用は、システムの提供形態と料金プランで決まります。主流のクラウド型は月額制、パッケージ型は初期のライセンス費用が中心です。ここでは、それぞれの料金体系と大まかな費用相場を解説し、予算を考える上での参考にします。

クラウド型LMSの料金体系

クラウド型LMSの多くは、初期費用と月額費用で構成されています。月額費用は、利用するユーザー数に応じて決まるプランが一般的です。「登録ユーザー数」で課金されるプランと、「実際に利用したユーザー数(アクティブユーザー)」で課金されるプランがあるため、利用頻度を想定して選ぶとよいでしょう。

費用項目費用相場
初期費用0円~10万円程度
月額費用数万円~(ユーザー数100名の場合)

パッケージ型(インストール型)LMSの費用

パッケージ型LMSは、ソフトウェアのライセンスを買い取る形式が多いため、初期にまとまった費用がかかります。月額費用は発生しないことが多いですが、サーバーの維持費や、年間保守費用が別途必要になる場合があります。長期的な視点で総コストを比較することが大切です。

教材(コンテンツ)にかかる費用

教材の費用は、利用形態によって異なります。既製の教材を使う場合、講座ごとに購入する方法や、月額制で豊富な講座が見放題になるプランがあります。

一方で、オリジナル教材作成を外部に依頼する場合、動画1本あたり数万円~数百万円と幅広く、内容や品質によって大きく変動します。

多様なeラーニングの種類から失敗しないための比較ポイント

自社に合うeラーニングを選ぶために、教材の質と量、管理者・受講者の使いやすさ、自社教材との連携、そしてサポート体制を比較しましょう。これらを総合的に評価し、自社の研修目的と照らし合わせることが導入後の成功につながります。

学習コンテンツの内容や量

提供される既製教材を利用する場合、その内容が自社の求めるレベルや業界の特性に合っているかを確認します。講座のラインナップ数だけでなく、教材の質や内容の更新頻度も重要なチェックポイントです。無料トライアルなどを活用し、実際に教材を視聴してみることをおすすめします。

受講状況や理解度を把握できる仕組み

管理機能の使いやすさは、研修運営の負担に直結します。受講者ごとの進捗状況やテストの成績が一覧でわかりやすく表示されるか、未受講者へのリマインドが簡単にできるかなど、管理画面の操作性をデモなどで確認しておきましょう。データを出力し、研修効果の分析に活用できるかも見ておきたい点です。

自社教材との親和性と拡張性

自社で作成したPowerPoint資料や動画などを教材として使用する予定があるなら、それらのファイル形式に対応しているか、また、誰でも簡単にアップロードできるかを確認する必要があります。将来的に受講者が増えたり、研修内容を拡充したりすることも見越して、柔軟にプランを変更できるかも確かめておきましょう。

運用やサポート体制

導入時の初期設定支援や、運用開始後の不明点に関する問い合わせ窓口など、サポート体制が充実しているサービスを選ぶと安心です。とくにeラーニングの運用に慣れていない場合は、電話やメールでのサポートが迅速に対応してくれるかどうかが、円滑な運用の鍵となります。

eラーニングを活用した人材育成を成功させるコツ

eラーニング導入後の成果は運用次第で大きく変わります。成功のコツは、学習目的の事前共有、集合研修などと組み合わせる「ブレンディッドラーニング」、そして継続的なフォローと評価への反映という3つの工夫にあります。

ブレンディッドラーニングは、文科省や海外研究でも学習効果や効率改善が報告されており、研修全体の時間短縮にも有効とされています。

学習の目的とゴールを明確に共有する

なぜこの学習が必要なのか、受講することでどのようなスキルが身につき、どうキャリアに活かせるのかを事前に伝えることが学習意欲の向上につながります。研修のキックオフミーティングを実施したり、上司から個別に期待を伝えたりするなど、eラーニングを「やらされ仕事」にしないための工夫が大切です。

集合研修と組み合わせて学習効果を高める

eラーニングで基礎知識をインプットし、集合研修でディスカッションや実践演習を行うなど、複数の学習方法を組み合わせることで知識の定着を促せます。このような手法は「ブレンディッドラーニング」と呼ばれ、学習効率の向上や研修全体の時間短縮といった効果が期待できるでしょう。

定期的なフォローと評価への反映を行う

学習の進捗状況を定期的に確認し、遅れている受講者には声かけを行うなど、孤独にさせないフォロー体制を整えましょう。学習の成果を人事評価の一部に組み込んだり、社内認定制度を設けたりすることも、学習へのモチベーションを維持・向上させるきっかけになります。

eラーニングの種類を理解し計画的な人材育成を実現する

eラーニングには、学習コンテンツの種類からシステムの提供形態、料金体系まで、さまざまな選択肢があります。これらの多様な種類を理解し、自社の研修目的や予算と照らし合わせながら最適なものを選ぶことが、導入成功への第一歩です。

そして、導入後は学習を促す仕組みを整えることで、eラーニングは強力な人材育成ツールとなります。計画的な活用で、企業の成長を加速させてみてはいかがでしょうか。


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