- 更新日 : 2025年6月2日
年間休日に有給は込み?実際に何日休める?正しい数え方を解説
年間休日とは、会社が定める1年間の休日(日数)の合計のことです。休日には年次有給休暇は含まれません。求人票に「年間休日○○日」と記載されていても、その休みの目安や、有給休暇を取得すると実際にどれくらい休めるのか分かりにくいこともあります。この記事では、年間休日の定義や日数の計算方法、実際の休める日数を解説します。
目次
年間休日に有給休暇は含まれる?
年間休日には年次有給休暇は含まれません。年間休日とは、企業があらかじめ定めた休日の総数を指します。これは週休二日制や祝日、年末年始休暇、夏季休暇などの公的な休日を含むものです。しかし、有給休暇は労働基準法により定められた労働者個人の権利であり、企業が設定する年間休日には含まれません。
例えば、求人票に「年間休日120日」と記載されている場合、これには有給休暇は含まれず、その120日とは会社があらかじめ定めた休日の合計を指します。
これとは別に各自が有給休暇(条件を満たした場合に付与される法定休暇)を取得できるという意味になります。
夏季休暇や年末年始休暇などについても、会社が就業規則で全社一斉の休日と定めている場合は年間休日に含まれますが、個人ごとに取得時期が異なるリフレッシュ休暇・慶弔休暇などは含まれません。
休日、休暇、休業の違い
「休日」「休暇」「休業」は労務上区別される用語で、休日は労働義務のない日、休暇は本来労働日だが条件により労働を免除される日(有給休暇など)、休業は会社都合や本人都合で長期にわたり就労しない期間を指します。
年間休日数はあくまでこの「休日」のみの合計であり、病欠や欠勤などで個別に休んだ日は会社全体の休日ではないため年間休日にはカウントされません。つまり社員が欠勤した場合、その日は単に労働義務を果たさなかった日であって年間休日には影響しないと言えるでしょう。
そもそも年間休日とは?
「年間休日」とは、企業が就業規則などで定める1年間の休日の合計日数を指します。企業や事業所ごとに就業規則で定められた「休日」を合算したもので、社員全員に共通する年間の休みの日数です。
ただし労働基準法で最低限守るべき休日の基準が定められており、使用者は「毎週少なくとも1回の休日(または4週で4日以上)」を与えなければなりません。この規定に沿えば、年間ベースでは最低でも約52日程度の休日が必要になる計算です。
一方で従業員の労働時間を短縮する変形労働時間制などを採用すれば、年間休日がこれより少なくても法律違反とならないケースもあります。つまり法令上の最低ラインは週1日(年52日)ですが、多くの企業では週休二日制等でもっと多くの休日を設けています。
年間休日の計算方法
年間休日○○日という数字は、主に会社の休日カレンダーに基づいて計算されています。計算方法としては、年間の総日数(365日)から年間の労働日数を引くかたちで求められます。
所定労働日数とは会社が定めた「働く日」の数です。例えば週休二日制(毎週2日休み)の会社で国民の祝日もすべて休みの場合、所定労働日数は週5日×52週=260日程度となります。365日 – 260日 = 105日がこのケースの年間休日になります。
年間休日の平均日数
企業全体で見ると、年間休日数の平均はおよそ110日強となっています。厚生労働省「就労条件総合調査」(令和6年/2024年調査)によれば、従業員規模や業種を含めた全体の平均年間休日は約112.1日でした。
大企業ほど休日数が多い傾向があり、従業員1000人以上の企業では平均117日程度、30~99人規模では平均111日程度と報告されています。企業の規模が大きくなるほど年間休日が増える傾向があるのは、人員体制や労務管理の充実によるものと考えられます。
求人情報の「年間休日」に有給を含む表示はできる?
企業が求人票で年間休日を記載する際には、有給休暇を含めず「会社が定める休日」のみの日数を記載します。例えば「年間休日120日(有給含む)」という表現は誤解を招くため、求人票の記載として適切ではありません。
年間休日数の表示は必須項目ではありませんが、正しい記載例としては「年間休日○日」というかたちで示し、必要であれば別途「有給休暇:初年度○日(入社半年後付与)」などと注記するのが望ましいでしょう。
年間休日の日数105日、120日、125日の違い
年間休日の日数は企業や業界によっても異なります。求人情報などで一般的に見られる年間休日について紹介します。自身の働き方に合った企業選びの参考にしてください。
年間休日105日
昔ながらの週休制(週1日+月数回休み)だと年間休日は105日前後になります。実は「105日」は法定労働時間内に収めるための一つの目安とも言われ、1日8時間・週40時間労働を前提にすると年間約261日勤務+104日休み=365日となることから出た数字です。そのため105日というのは事実上の最低ラインと認識されることが多く、求人条件で「年間休日105日」とあれば週休2日より少なめの休日と判断できます。ただし前述の通り法律上は週休1日(年間52日)でも形式上は違法ではなく、105日未満でも労働時間次第では違反とならないケースもあります。
年間休日110~115日
週休2日制だが祝日の一部は出勤日になっている場合や、完全週休2日ではない(例えば月に数回土曜出勤がある)場合などは、このレンジに収まります。例えば「年間110日」の場合、土日休みだと本来120日になるところを一部祝日や土曜日に出勤している計算です。110日前後の企業は小売業や飲食業など祝日や週末に営業する業種や、週休二日制ではない勤務形態の職場に多く見られます。
年間休日120日
土日祝日がすべて休みの場合は年間約104日(土日)+祝日約16日=120日前後になります。したがって120日という数字は「完全週休2日制かつ祝日休み」の会社に相当し、これはいわゆるホワイト企業で標準的とも言われる日数です。
厚労省調査でも「年間休日120日以上」の企業は全体の約36%で、特に大企業では半数以上が120日以上の休日数を設けています。120日を超える企業は、土日祝に加えて夏季休暇や年末年始休暇など独自の休日を設けているケースが多く、休みが多い企業といえるでしょう。
年間休日125日以上
年間休日125日以上というと土日祝日に加え、夏季・年末年始などで約5日以上の特別休暇があるイメージになります。公務員の休日数は、まさにこのイメージ通りとなり、平均年間休日は約125日程度と、民間平均(約112.1日)よりもかなり多い水準です。民間企業でも近年は製造業などで休日日数を増やす動きがあり、125日程度の休日を設ける企業も一部見られます。
年間休日数と有給休暇でどのくらい休める?
年間休日(会社が定める休日)について見てきましたが、実際には年間休日+年次有給休暇の取得日数が、個々の労働者の「年間の総休日日数」と言えます。では、年間休日と有給休暇を合わせると何日くらい休めるのか、シミュレーションしてみましょう。
年間休日 | 有給5日 | 有給10日 | 有給15日 | 有給20日 |
---|---|---|---|---|
105日 | 110日 | 115日 | 120日 | 125日 |
120日 | 125日 | 130日 | 135日 | 140日 |
125日 | 130日 | 135日 | 140日 | 145日 |
年間休日105日程度の場合、有給を5~10日取得することで年間の休みを110日から115日くらいに増やせます。休みが少ないと感じる職場でも、有給をしっかり取ることが大切です。
また、年間休日が125日あり、有給休暇をしっかり取れる職場では、年間140日以上の休みを確保できることもあります。しかし、有給休暇には「2年間の期限」があるため、取らずにいると消えてしまいます。いつ取得するかを考えることが大切です。
特に、仕事が忙しい時期(繁忙期)と落ち着いている時期(閑散期)を考え、長期連休と組み合わせて休むと、より効率よく休めます。計画的に有給を使い、体を休めたり、旅行や趣味、スキルアップの時間を確保したりして、休みを最大限活用しましょう。
年間休日数の数え方と有給・欠勤の関係
年間休日のカウント方法と個人の有給取得・欠勤との関係について整理します。繰り返しになりますが、企業が公表する年間休日数には個人の有給休暇取得分は含まれません。
年間休日は会社カレンダー上の休日数であり、法定有給休暇は各従業員に対して別途付与・取得されるものです。そのため、社員が有給休暇を何日取得できるかによって、各自が年間で休める日数は異なります。
例えば、年間休日が120日の会社で、有給休暇を10日取得した場合、その人の年間の総休日日数は「会社の年間休日120日+有給取得10日=130日」となります。ただし、企業の制度としては、年間休日120日という数え方は変わらず、有給の取得状況は別途管理されます。
欠勤についても同様に、年間休日には含まれません。欠勤とは、本来働くべき日に従業員が出勤しなかったことを指します。たとえ無断欠勤や病気による欠勤があったとしても、それが年間休日に追加されることはありません。欠勤が増えたからといって、年間休日数が増えるわけではなく、欠勤は給与控除や評価などの面で処理される別の問題となります。
つまり、年間休日は会社が定めた休日数、有給休暇は従業員が取得できる権利、欠勤は労働予定日に出勤しなかった日であり、それぞれ異なる扱いをされることを理解しておくことが大切です。
年間休日と有給休暇を理解しよう
年間休日は働き方に直結する要素ですが、その数え方について誤解されることも多く、有給休暇が含まれるかどうか不明確なケースがあります。年間休日は企業が一律に定める休日数であり、有給休暇は個人が取得する休みのため、別でカウントされます。最低ラインは週1日(年間52日)ですが、実際には105日以上が一般的とされています。
企業側も誤解を招かないよう、年間休日と有給休暇を明確に分けて記載することで、ミスマッチを防ぐことができます。適切な情報提供によって、労働者と企業双方にとって満足のいく労働環境が実現できるでしょう。
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