- 更新日 : 2024年12月13日
給与明細の電子化には同意書が必要?サンプル・フォーマットも紹介
給与明細の電子化には、法律で従業員の同意が必要だと定められています。
本記事では、同意書の作成から従業員が電子化に同意しない理由、そしてスムーズに導入するための対策までを解説します。
合わせて、同意書サンプル・フォーマットもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
本記事を読めば、給与明細の電子化をスムーズに進行できるでしょう。
目次
法律上、給与明細の電子化には同意書が必要
給与明細の電子化には、法律上、従業員の同意が必要です。
所得税法では、原則として、給与明細は紙で交付することが定められています。
しかし、同法では、従業員の「承諾」を得られれば、電子データで交付しても良いとされています。
つまり、従業員が電子化に同意しない限り、企業は一方的に給与明細を電子化することは認められません。
この規定の背景には、従業員が自身の所得に関する情報を正確に把握し、税務申告などに必要な書類として利用できる権利を保障するという目的があります。
給与明細電子化の同意の取り方
電子化を進める際は、従業員に事前説明を行い、メリットを十分に理解してもらうことが大切です。
具体的には、下記のような手順で進めましょう。
- 書面またはデジタルフォームでの同意書を用意する
- 全従業員を対象に説明会を実施する
- 十分に期間を設けた周知期間の設定をする
※令和5年度及び令和6年度税制改正において、会社が定めた期日までに「同意する・しない」の回答がなかった場合は、同意したとみなされることも周知しておく
合わせて、給与明細電子化の同意にあたって、会社が従業員に説明すべき内容は、下記の通りです。
- 電子交付する書類の名称
- 閲覧方法(Eメール、社内LAN、専用Webサイトなど)
- 受信者ファイルへの記録方法(XML形式、PDF形式など)
- 交付予定日や開始日
説明会では、給与明細電子化によるメリットやデメリット、セキュリティ対策について、従業員に分かりやすく説明する必要があります。
合わせて、従業員から寄せられる疑問に答えられるようにしておくと良いでしょう。
給与明細電子化の同意書のサンプル・フォーマット
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従業員が給与明細電子化に同意しない理由
従業員が給与明細電子化に同意しない場合、下記の理由が考えられます。
- 給与明細を紙で欲しいと思っている
- 給与明細を電子上で閲覧できる端末がない
次項で、それぞれの理由について詳しく解説します。
給与明細を紙で欲しいと思っている
従業員が給与明細電子化に同意しない場合、給与明細を紙で欲しいと思っている可能性があります。
従業員が給与明細を紙で欲しいと思っている理由としては、下記が挙げられます。
- 紙で保管しておきたい
- セキュリティ面の不安
- 電子化への抵抗
紙の給与明細は、物理的に手元に残るため、管理・保管がしやすい点がメリットです。
特に、税務申告やローンの申請時などにすぐ取り出せるため、便利に感じている人もいるでしょう。
また、電子化による不正アクセスやデータ漏洩のリスクを、不安に感じる人もいると考えられます。
紙の書類であれば、自分で管理したり保管したりできるため、セキュリティを確保できるという安心感があります。
さらに、これまでずっと紙の給与明細を受け取ってきた習慣があり、電子化に抵抗を感じる人もいるでしょう。
従業員のこうした懸念を払拭するために、電子化のメリットやセキュリティ対策を丁寧に説明することが重要です。
たとえば、いつでも給与明細を確認できたり、給与明細が紛失するリスクを軽減できたりなど、従業員に対して魅力的なメリットを伝えましょう。
給与明細を電子上で閲覧できる端末がない
電子化された給与明細を見るためには、パソコンやスマートフォンなどの端末が必要になります。
しかし、従業員によっては、スマホやパソコンなど、 給与明細を電子上で閲覧できる端末がないため、給与明細の電子化に同意しない可能性があります。
また、電子明細を確認するためのアプリやウェブサービスの使い方に不安があり、電子化に同意しないケースもあるでしょう。
これらの問題を解消するためには、紙の給与明細を選択肢として残したり、電子化された給与明細を確認する手順を説明する機会を提供したりなど、柔軟な対応が必要です。
従業員が給与明細電子化に同意しない場合の対応方法
従業員が給与明細電子化に同意しない場合の対応方法は、下記の通りです。
- 給与明細電子化のメリットを説明する
- 給与明細のデータを印刷して紙で配布する
次項で、それぞれの対応方法について詳しく解説します。
給与明細電子化のメリットを説明する
従業員が電子化に同意しない理由の多くは、電子化のメリットを十分に理解していない可能性があります。
そのため、給与明細の電子化によって従業員が得られるメリットを、具体的に説明することが大切です。
たとえば、給与明細の電子化によって、従業員は下記のようなメリットを得られます。
- スマートフォンやパソコンからいつでもどこでも給与明細を確認できる
- 紛失や盗難のリスクを軽減できる
- ペーパーレス化により、エコ活動に貢献できる
上記のような具体的なメリットを、従業員の立場に立って分かりやすく説明すれば、電子化への理解をより深めてもらえるでしょう。
給与明細のデータを印刷して紙で配布する
給与明細電子化のメリットを説明したうえでも、「給与明細を電子上で閲覧できる端末がない」といった理由から、給与明細の電子化に同意してもらえない可能性があります。
給与明細電子化の同意が得られなかった従業員には、電子化された給与明細を印刷して紙で配布するなどの対応をしましょう。
例え一部の従業員に対して給与明細を紙で配布したとしても、電子化する以前よりは給与明細の管理や作成が効率化されるため、十分コスト削減に期待できるでしょう。
給与明細電子化の同意を口頭で取ることはできる?
給与明細電子化の同意を口頭で取ることはできません。
所得税法では、従業員の同意は「電磁的方法または書面」によると、定められています。
口頭での同意は記録として残らないため、同意の有無や詳細について後から確認できません。
しかし、電磁的方法または書面に残せば、従業員の同意があったことを明確に証明できます。
そのため、給与明細電子化の同意に関しては、法律で定められているとおりに書面や電子書類などで対応するようにしましょう。
従業員から同意を得たうえで給与明細の電子化を進めよう
給与明細の電子化を進めるには、従業員の同意を得る必要があります。
同意を得ずに実施した場合、法令違反となるだけでなく、従業員との信頼関係にも影響を及ぼす可能性があります。
そのため、給与明細電子化のメリットを分かりやすく説明し、従業員の同意を得ましょう。
給与明細の電子化は、管理コスト削減や業務効率化だけでなく、従業員の利便性向上にもつながります。
一方で、電子化に同意してもらえない従業員がいる場合は、給与明細のデータを印刷して配布するなど、柔軟な対応を行いましょう。
企業は、法令遵守と従業員満足度のバランスを取りながら、円滑に給与明細の電子化を目指すことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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