• 更新日 : 2025年12月18日

ポテンシャル採用とは?意味やメリットデメリット、成功のための方法を解説

ポテンシャル採用は、人手不足が深刻化する日本において、企業の成長をけん引する新たな人材を確保する有効な手段です。しかし、経験やスキルを重視する中途採用とは異なり、評価基準が曖昧になりやすく、採用後のミスマッチや早期離職につながるリスクもあります。この記事では、ポテンシャル採用の基本的な考え方から、人事担当者が失敗を避けるための具体的な見極め方、入社後の定着に繋がる教育体制までを、わかりやすく解説します。

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用は、候補者の現在のスキルや経験よりも、将来的な潜在能力や成長意欲を重視して行う採用方法です。この採用手法が注目される背景には、急速なビジネス環境の変化や人材獲得競争の激化があります。

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ポテンシャル採用は潜在能力を評価する

ポテンシャル採用とは、具体的にどのような基準で候補者を評価するのでしょうか。

評価基準の重点は過去の実績ではなく未来の成長可能性に置かれ、社会人経験が浅い層(例:第二新卒、既卒)や、異業種への転職を希望する層などが主になります。

短期的にはスキル不足でも、長期的に見て組織の幹部候補や、新たな事業を担う人材に育つことが期待されます。

ポテンシャル採用は何歳まで?

ポテンシャル採用には、対象年齢があるのでしょうか?結論としては、対象となる年齢は明確に定められていません。しかし、企業は将来発揮されるであろう能力に期待して採用するため、新卒や第二新卒など20〜30代の若手人材が主な対象となっている傾向にあります。

40代以上でもこれまでのキャリアチェンジの経験や、特定の分野での圧倒的な熱意や意欲があれば、ポテンシャル採用の対象になることもあります。

ポテンシャル採用の反対語

ポテンシャル採用の反対語としては、プロフェッショナル採用があります。プロフェッショナル採用とは、本人の経験・スキルなどから即戦力となる人材を採用する、いわゆる中途採用方法です。

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ポテンシャル採用では専門スキルは問われず、その人の考え方や仕事への熱意・姿勢などで判断されるため、一般的な中途採用であるプロフェッショナル採用と比べて、応募ハードルは低いといえます。しかし、その分、応募可能な対象者の幅も広がるため、倍率が高くなる求人もあるようです。

ポテンシャル採用が注目されている理由

人材の採用競争が激化している現在、多くの企業がポテンシャル採用に注目しています。その理由を見ていきましょう。

潜在能力の高い人材を採用するため

企業の成長には、新しい発想や変化に対応できる柔軟性が欠かせません。既存の社員にはない新しい視点やアイデアを、経験が浅いポテンシャル採用者がもたらすことが期待されます。

採用競争の激化

また、採用競争の激化により、即戦力となる中途採用の難易度が高まっているため、採用の間口を広げる手段としても重要性が増しています。長期的に自社に合った人材を育成することで、組織の若返りや幹部候補の確保にもつながります。

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「ポテンシャル採用」と「第二新卒」「既卒」の違い

ポテンシャル採用と、対象となることが多い「第二新卒」「既卒」の定義や違いを整理しましょう。

ポテンシャル採用は「採用手法・評価軸」を示すのに対し、第二新卒や既卒は「対象となる候補者の属性」を示す言葉です。

区分定義主な対象と目的
ポテンシャル採用現在のスキルよりも、将来の潜在能力・成長意欲を評価する「採用手法」新規事業や未来の幹部候補など、長期的な育成を前提とした採用全般
第二新卒新卒で正社員として入社後、一般的に1年〜3年程度で転職活動をする層社会人としての基礎(ビジネスマナーなど)があり、育成コストを抑えたい場合
既卒学校卒業後、一度も正社員として働いていない層スキルよりも純粋な熱意や意欲を重視し、一から自社色に染めたい場合

ポテンシャル採用は、第二新卒や既卒をメインターゲットにとるべき手法の一つであり、これらの層をポテンシャルで評価する場合は、スキルよりも意欲や成長可能性に焦点を当てることが必要となります。

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ポテンシャル採用のメリット・デメリット

ポテンシャル採用は企業の成長に貢献しますが、一方でリスクも伴います。導入を検討する際は、メリットを最大限に活かし、デメリットにどう対処するかをはっきりさせることが重要です。

メリット:多様な人材の獲得

ポテンシャル採用は、採用の間口を広げることで、企業にさまざまな良い影響をもたらします。

ポテンシャル採用の大きな利点は、経験者の枠にとらわれない多様な人材を獲得できる点です。これにより、組織内に新しい視点や価値観が持ち込まれ、イノベーションのきっかけにつながります。また、

メリット:組織の若返り効果

若い世代の採用は、組織の平均年齢を下げ、活気や柔軟性を高める効果も期待できます。長期的な視点で見ると、自社の文化や事業に合うように時間をかけて育成できるため、将来的に幹部候補となる人材を確保しやすくなります。

デメリット:選考基準の曖昧化

ポテンシャル採用には、選考基準が曖昧になりやすいという難しさがあります。

ポテンシャルという目に見えない能力を評価するため、面接官の主観に頼ってしまい、選考基準がはっきりしなくなりがちです。その結果、企業が求める人材像と採用した人材の間でミスマッチが発生しやすくなります。

デメリット:転職リスク

経験が浅い候補者は、入社後に理想と現実のギャップを感じやすく、早期の離職という転職リスクを抱える可能性も高くなります。

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失敗しない!ポテンシャルを見極めるための具体的な評価項目と方法

ポテンシャル採用の成功は、いかに候補者の潜在能力を客観的に見極められるかにかかっています。この章では、その具体的な方法を解説します。

成功へ導く採用ペルソナの設定方法

評価基準を明確にするためには、まず「誰を採用するか」という採用ペルソナをはっきりさせる必要があります。

採用ペルソナとは、具体的には「最も採用したい理想的な候補者像」を、スキルや経験だけでなく、価値観や行動特性まで詳細に設定した仮想の人物像です。

ペルソナを設定する際は、「入社3年後に、この職種でどうなっていてほしいか」という未来の姿から逆算しましょう。「成長意欲がある」ではなく、「3年後に自分で新しいプロジェクトを立ち上げられるだけの自律性がある」など、具体的に定義することで、面接でとるべき質問や評価項目がわかります。

面接で確認すべきポテンシャルの5つの要素と質問例

曖昧になりやすいポテンシャルを、面接で具体的に見極めるために、特に重視すべき5つの要素と、効果的な質問例を紹介します。ポテンシャルを見極めるには、過去の行動や経験から、未来の行動を予測するコンピテンシー面接の形式で質問することが有効です。

1. 学習意欲

未経験の分野に対する好奇心と、目標達成に向けた努力の継続性を評価します。

効果的な質問例

「過去に、独学で習得したスキルや知識はありますか?そのプロセスを具体的に教えてください。」

2. キャリアプラン

自分の将来像を具体的に描き、それを実現するために現在から逆算して行動できているかを評価します。

効果的な質問例

「5年後、あなたはどのようなビジネスパーソンになっていたいですか?当社の仕事がそれにどう繋がると考えていますか。」

3. 論理的思考力

複雑な状況を整理し、筋道を立てて考え、それを簡潔かつ明確に説明できるかを評価します。

効果的な質問例

「過去に直面した最も大きな課題は何ですか?それを解決するために、あなたがとった具体的な手順を順序立てて説明してください。」

4. 主体性・自律性

指示を待つだけでなく、自ら考え、行動を起こせる積極性と、責任を持って最後までやり遂げる自律性を評価します。

効果的な質問例

「誰も着手していなかった問題に、あなたから働きかけて解決した経験はありますか?それはどのような状況で、なぜあなたがそれをやろうと思ったのですか。」

5. 企業文化への適合性

企業の価値観や働く仲間に共感し、長くモチベーションを保って働けるかを評価します。

効果的な質問例

「当社の企業理念(または行動指針)について、共感した点や、あなたがこれまで大切にしてきた価値観と重なる点があれば教えてください。」

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診断ツールによる評価も組み合わせよう

面接官の主観による評価を避けるために、客観的なツールを組み合わせることは、ポテンシャル採用において非常に効果的です。

面接だけでは判断が難しい内面的な特性や潜在能力を、適性検査や診断ツールで数値化しましょう。これにより、候補者の性格傾向、ストレス耐性、職務遂行能力に関する客観的なデータを得られます。これらのデータは、面接での質問の深掘り材料となるだけでなく、入社後の配属や育成計画を立てる上でも、具体的な土台を提供してくれます。

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ポテンシャル採用の注意点

ポテンシャル採用のリスクを避けるためには、以下の対策が適切です。

評価基準の明確化をする

「やる気」といった抽象的な言葉ではなく、「学習意欲を過去の行動事例で示せるか」など、具体的な行動や質問例に落とし込んだ評価項目(コンピテンシー)を設定しましょう。

採用ペルソナの徹底をする

どのような能力を、どのレベルまで求めるかを事前にチーム内で共有し、一貫した評価ができるよう面接官トレーニングを実施しましょう。

入社後のフォロー体制を整える

 定期的な1on1ミーティングやメンター制度を導入し、業務内容だけでなくキャリアプランや精神面もサポートする育成計画を立てましょう。

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採用成功の鍵!入社後の教育体制と定着への対策

ポテンシャル採用は「採用して終わり」ではありません。入社後のフォローアップこそが、その人材を企業の戦力にするかどうかの分かれ目となります。

育成計画の立案とOJTの進め方

ポテンシャル採用者は、新卒とは異なる社会人経験を持っています。その特性をふまえた育成計画を立てましょう。

新卒研修のように一律的なビジネスマナー研修だけでなく、ポテンシャル採用者がこれまでに培ってきた前職の経験やスキルを活かせるような、個別最適化された育成計画が必要です。

OJT(On-the-Job Training)を進める際も、単に業務を教えるのではなく、「なぜこの業務をするのか」「どのような成果を目指すのか」という目的を明確に伝え、主体性を引き出すコーチング型の指導を取り入れましょう。定期的なフィードバックの機会を設け、本人のキャリアプランと企業の期待値のすり合わせを行うことが大切です。

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ポテンシャル採用の企業事例

成功事例を知ることは、自社の採用活動を具体的に進める上でヒントとなります。最新の動向を取り入れた事例を紹介します。

ヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)の事例

ヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)では、30歳未満の候補者を対象とした「ポテンシャル採用」を導入しています。この採用では、過去の経歴やスキルレベルではなく、個人の将来的な成長可能性や熱意を一律に評価する手法をとっています。

これにより、大学時代の専攻分野や、これまでの職務経験にとらわれず、多様な背景を持つ人材を迎え入れ、組織の活性化と新規事業への貢献を目指しています。

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の事例

東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、社会人経験を問わず、「ポテンシャル」を重視したキャリア採用枠を設けるなど、多様な人材確保に注力しています。とくに、鉄道事業以外の生活サービス分野やIT分野など、新しい事業領域を担う人材については、現時点のスキルよりも、変化への対応力や、同社の理念に対する共感、長期的な視点での活躍を期待して採用活動を行っています。これにより、既存の組織にはなかった視点やスキルセットを取り入れ、事業構造の変革を推進しています。

ポテンシャル採用を成功させ、企業の未来を創る

ポテンシャル採用は、現在の不足を補うだけでなく、企業の未来を創る重要な投資と言えます。成功のためには、現在のスキルよりも将来的な潜在能力を正確に「見極める」ことが最も大切です。そして、採用した人材を企業の戦力にするため、個々の特性に合わせた育成計画やOJT、定期的なフォロー体制を確立する「育成・定着」の両輪を適切に回すことが、企業の成長に欠かせません。

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