• 更新日 : 2025年12月8日

職業病とは?クセとの違いや種類、症状、企業の対応策を解説

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職業病は、特定の職業や業務環境に起因して発生する疾病や健康障害のことです。職場環境や業務内容が直接の原因となることが多く、予防のためには、労働環境の改善や定期的な健康診断、長時間労働の是正などが必要です。

本記事では、職業病の概要や発生する原因、健康で安全な職場環境を整備するためにできることについて解説します。

職業病(業務上疾病)とは?

職病病とは、仕事が原因で発生する病気や障害のことです。労働基準法およびその施行規則に基づいて職病病の具体的な内容が規定されており、労働基準法では「業務上疾病」、医学的には「職業性疾病」と呼ばれます。

労働基準法第75条では、使用者は労働者が職業病にかかった場合には「必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない」と定められています。

引用:業務上疾病に関する関係法令|厚生労働省

労働災害との違い

職業病と労働災害は厳密には異なります。同じ職業に関連する病気でも、主に突発的な事故によって発生するものが労働災害と呼ばれます。両者は発症の時期や、その病気の原因が継続的な業務に関連しているかどうかによって区別されます。

厚生労働省が定める「職業病リスト」に該当すると、業務上の事由や通勤による傷病などに対して労災保険から必要な給付が行われます。労働災害とみなされると、その治療費は労災保険から全額支払われるため、医療費の自己負担はありません。

また、治療のために休業が必要な場合には、休業補償が支払われます。労働災害として認められるためには、労働基準監督署への申請が必要です。

参考:労災補償の対象となる疾病の範囲を定めた職業病リストを改正しました|厚生労働省

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ついクセでやってしまう職業病との違い

職業上の習慣によって、日常生活でついやってしまうクセのことも職業病と呼ばれることがあります業務上疾病である職業病との大きな違いは、医療機関での治療を要するかどうかです。職業上の習慣によるクセとして、以下の例が挙げられます。

  • 接客業の仕事をしている人が、店で買い物をしているときに他のお客さんが入ってくるとつい「いらっしゃいませ」と言いそうになる
  • コールセンターで働いている人が、電話が鳴り続けているのを聞くと取りたくなる
  • 歯科衛生士をしている人が、ついつい人の口元を見てしまう

このような「クセ」は、職業柄の習慣として許容されるものであり、病院にかかって治療を要するものではありません。そのため、業務上疾病である職業病とは全く異なるものです。

職業病で一番多いのは?

職業病で一番多いのは腰痛です。令和4年の「業務上疾病発生状況等調査」によると、疾病を12種類に分類したとき、負傷に起因する疾病の件数が7,081件と最も多く、腰痛はそのうちの5,959件を占めています。

それに次いで多いのが熱中症などの異常温度条件による疾病、3番目に多いのが手指前腕の障害および頸肩腕症候群です。

(1)負傷に起因する疾病(うち腰痛) 7,081(5,959)
(2)有害光線による疾病 19
(3)電離放射線による疾病 0
(4)異常気圧下における疾病 16
(5)異常温度条件による疾病(うち熱中症) 1,028(827)
(6)騒音による耳の疾病 12
(7)(2)〜(6)以外の物理的因子による疾病 40
(8)重激業務による運動器疾患と内臓脱 145
(9)負傷によらない業務上の腰痛  31
(10)振動障害 10
(11)手指前腕の障害および頸肩腕症候群  218
(12)(8)〜(11)以外の作業態様に起因する疾病 135

参考:業務上疾病発生状況等調査結果(令和4年)|厚生労働省

職業病の種類

ここでは、厚生省の「職業病リスト」に基づき、職業病を8種類に分けて解説します。

参考:職業病リスト|厚生労働省

 ①業務上の負傷に起因する疾病

業務中の負傷により発生する疾病は、業務とケガや病気との間に因果関係が認められる場合に該当し、これを「業務起因性」と呼びます。

さらに、労働契約に基づいて労働者が事業主の支配下にあることが「業務遂行性」として認められる必要があります。

②物理的因子による病気

紫外線や放射線などの物理的因子が原因で発生する病気も職業病です。例えば、低気圧の場所での作業による高山病や、寒冷地での凍傷、暑熱地での熱中症が挙げられます。

潜水作業による潜水病や赤外線にさらされる作業による白内障などもこれに含まれます。

③身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する病気

重量物を取り扱う作業による筋肉や関節の疾患、長時間の不適切な姿勢による腰痛、振動工具による神経障害など、過度な身体負担を伴う作業により発生する疾病も職業病です。

近年では、パソコンや電子機器の反復操作による運動器症候群も増加しています。

④化学物質が原因の病気

業務中の化学物質へのばく露が原因で発生する病気も職業病に分類され、例えば化学物質過敏症は以下のような原因物質によって引き起こされます。

  • 合成樹脂の熱分解生成物
  • 木材の粉じん
  • 排気ガス
  • 防虫剤
  • 洗剤
  • 住宅建材

微量でも反応し、頭痛や吐き気、皮膚の赤みなどの症状が現れます。

⑤粉じんを吸い込むことが原因による病気

粉じんの吸入による健康障害として、大気中の粉じんが原因のじん肺があります。じん肺は、トンネル建設工事、金属の研磨作業、鋳物業などでみられます。

初期症状がほとんどないため、咳や痰、息切れなどが進行すると重篤な状態になることがあるため、注意が必要です。

⑥細菌やウイルスが原因の病気

細菌やウイルスが原因の職業病も存在します。医療機関における患者の診察や看護による伝染性疾患、動物取り扱い業務によるブルセラ病や炭疽病などが該当するでしょう。

新型コロナウイルス感染症も、業務に起因する場合は職業病として労災保険の対象となります。

⑦がん原性物質による病気

発がん性物質へのばく露が原因で発生する職業病は、初期症状がないことが多いため見逃されやすいです。また、転移のリスクがあるため早期対策が重要です。

労働安全衛生法に基づき、発がん性物質を取り扱う事業者は、労働者のばく露を低減させる措置を講じる必要があります。

⑧長時間労働による病気

近年、長時間労働が原因の過労死や精神障害、自殺などが深刻な社会問題となっています。長時間労働は従業員の心身の健康を損ねるリスクがあるため、従業員の労働時間の管理が重要です。

Liu et al.(2002)の研究によると、過去1か月間の週の労働時間が61時間以上の者は、40時間以下の者と比べて心筋梗塞のリスクが1.9倍になったと報告されています。

⑨心理的負荷による精神障害

心理的負荷による精神障害は、職場でのストレスや過労、ハラスメントなどが原因で発症し、うつ病、適応障害、不安障害などがあります。

精神障害は労働者の健康や生活に深刻な影響を与えるため、早期の対策やサポートが重要です。

職業病になりやすい職業

ここでは、職病病になりやすい職業と主な職病病の認定件数についてみていきます。

職業病になりやすい職業

職業病になりやすい職業としては、看護職や介護職などの保健衛生業や医療保健業での発症が多く報告されています。これらの職業では、患者の移動や介助の際に腰に負担がかかることが多いためです。また、重い荷物を取り扱う業務や長時間のデスクワークも腰痛を引き起こしやすいとされています。

職業病になりやすい職場には、自身の体調や作業環境に注意を払い、適切な対策を講じることができる自立した人材が求められます。例えば、腰痛のリスクを理解し、普段の業務において正しい持ち上げ方や姿勢を守る人は、職業病になりにくいです。

このような自立した人材がいることで、効率的に業務を遂行することができ、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与してくれます。

主要な職業病の認定件数・認定率の推移

業務上疾病について、新規に支給決定が下りた件数について年度別にみていきます。

令和2年 令和3年 令和4年
業務上の負傷に起因する病気 4,491 4,474 4,553
物理的因子による病気 1,071 756 900
身体に過度の負担のかかる作業態様に起

因する病気

1,441 1,388 1,437
化学物質等による病気 213 235 228
粉じんの吸入による病気 222 197 165
細菌、ウイルス等の病原体による病気 4,716 19,700 150,621
がん原性物質による病気 968 952 1,028
長時間の労働による病気 194 172 194
心理的負荷による精神障害 608 629 710
前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病 2 2 0
その他業務に起因することの明らかに疾病 5 862 146

令和2年から令和4年にかけて支給決定件数が急増しているのが「細菌、ウイルス等の病原体による病気」です。この時期に新型コロナウイルスの感染者数が急増したことが大きな要因と考えられます。

参考:令和4年度 業務上疾病の労災補償状況調査結果|厚生労働

職業病の原因や症状

職病病の原因はさまざまです。ここでは、職病病の主な原因について解説します。

職場環境の問題

騒音や過度な温度、照明の問題などの物理的な職場環境が悪いと、ストレスや体調不良の原因となります。また、必要な設備やツールが揃っていないと、効率的な作業ができないだけでなく安全面においても疎かになる危険があります。

長時間労働

長時間労働が常態化すると、身体的な疲労だけでなく精神的疲弊にもつながります。長時間労働によって十分な休息が取れないと、体の回復が追いつかず慢性的な疲労が蓄積し体が不調に陥りやすくなるのです。

業務で納期の締め切りが間近に迫っている場合などには長時間労働になりやすく、プレッシャーによって心理的な負担が大きくなります。

仕事の内容や役割の曖昧さ

仕事における自分の役割や責任が明確でないと、仕事への不安や混乱が生じてしまいます。また、本人の適正に合わない仕事を強いられると、ストレスや不満が溜まりやすくなり、事故やケガを誘発する恐れがあります。

人間関係の問題

上司や同僚などの職場の人間関係が悪化すると、ストレスが増大し仕事のモチベーション低下に繋がりやすいです。また、 職場でのパワハラやセクハラは精神的ストレスの引き金となります。

職業病かなと思ったら?

職業病になった、または職業病の恐れがある従業員がいる場合には、企業は以下のような対応が必要です。

職業病リストで従業員の症状を確認

職業病が疑われる従業員がいる場合、厚生労働省の職業病リストを参照し、その従業員の仕事内容や症状がリストに該当するかを確認します。

職業病リストに該当する症状が確認され、業務に起因することが認められれば、労災補償の対象となり保険給付が受けられます。

参考:職業病リスト|厚生労働省

労災指定病院での診察を手配

従業員が職業病の可能性がある場合には、労災指定病院での受診が原則です。受診時には、仕事が原因のケガや病気であることを病院に伝えるよう指示します。

職業病と診断されれば、受診や薬代などの費用は病院から労働基準監督署に請求されるため、従業員が窓口で支払いをする必要はありません。ただ、受診した病院が労災指定病院でない場合には一旦医療費を全額支払う必要があります。その後、労働基準監督署に請求手続きを行うことで、医療費が全額返金されます。

労災の手続きを速やかに行う

従業員が労災保険の給付を受けられるよう、速やかに労災の申請手続きを行います。申請用紙には、以下のような項目について記載が必要です。

  • 対象労働者の氏名・生年月日
  • 被災日時
  • 被災場所
  • 被災するに至った経緯
  • 会社の証明

被災するに至った経緯については、数字などを用いて具体的に記載することが求められます。

休職や職務変更を検討する

従業員の症状によっては、休職して治療に専念させることも必要です。また、職業病の原因となった業務に復帰後も就くと再発の恐れがある場合には、職務の変更や配置転換を検討しましょう。

職業病が疑われる場合には早急に対応し、従業員の健康と安全を第一に考えた対策を講じることが求められます。

職業病を防ぐには?従業員と企業の対策

ここでは職業病予防のためにできることについて、従業員側と企業側の視点からそれぞれみていきます。

従業員の対策

従業員ができる予防策としては以下の3つがあります。

職場のルールを守る
職病病を防ぐためには、まず従業員自身が職場のルールを守ることが大切です。例えば作業時に防じんマスクや保護メガネなどの装着が義務付けられている場合には、自分を守るためにしっかりと身につける必要があります。

ルールを忠実に守ると、効率よく仕事ができない場合もありますが、自分の身の安全を第一に考え安全な労働環境を確保しましょう。

労働環境の見直しを会社に相談する
労働環境の改善が必要だと感じた場合には、会社や上司に相談することが大切です。労働環境については、現場で働く従業員が一番よく分かっており、そこに潜んでいる危険について従業員自身が認知しやすいです。

会社の経営者などの上層部は、現場についてはよく知らないことが多いため、写真などを用いて状況を説明すると理解してもらいやすいでしょう。複数の同僚と協力して相談することも効果的です。

ストレス管理を行う
仕事でストレスを溜めすぎないことも大切です。仕事では誰もが大なり小なり、ストレスを感じるものです。趣味や運動、リラクゼーション法を取り入れ、日々のストレスを発散しましょう。

また、メンタルヘルスケアのために職場のカウンセリングやメンタルヘルスプログラムを活用し、心の健康も維持することも大切です。

企業の対策

企業ができる予防策としては以下の3つがあります。

安全で快適な職場環境の整備
企業側は、従業員が安全で快適に作業ができるように配慮することが大切です。例えば、作業場の照明や空調などの整備によって、安全な作業環境を提供することにより業務の効率化を図りましよう。

また、長時間労働の是正やノルマの軽減によって従業員の健康を守る必要があります。

定期的に健康診断を実施する
企業は定期的に従業員に健康診断を受けさせる義務があります。健康診断によって、従業員の職業病の予防や早期発見が期待できます。

また、必要に応じて産業医による面接指導を行うことで、過重労働による重篤な健康障害の予防にもつながるでしょう。

ストレスチェックの実施
企業は定期的に従業員のストレスチェックを行うことも大切です。常時50人以上の従業員を使用する事業場では、1年に1回の定期的なストレスチェックが義務付けられています。

50人未満の事業所にはストレスチェックの実施義務はありませんが、従業員のメンタルヘルスのために実施することが望ましいでしょう。また、高ストレス者には、産業医の面談やストレスマネジメント教育が大切です。

参考:ストレ スチェック制度導入マニュアル|厚生労働省

適切な労働時間管理で生産性を高めよう

職業病を予防するためには、従業員と企業がそれぞれ意識し対策を講じることが大切です。特に企業側には従業員の負担を軽減するために、長時間労働の是正を行うことが求められます。

そのためには、従業員一人ひとりの労働時間を正確に把握し管理することが欠かせません。労働時間を正確に把握・管理するためには、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。勤怠管理システムの導入によって、過度な労働を未然に防げるだけでなく、従業員の生産性と幸福度の向上にもつながるでしょう。

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