- 更新日 : 2025年11月25日
相対評価とは?絶対評価との違いや具体例、人事評価の採用方法を解説
相対評価とは、評価対象の従業員を他の従業員と比較ACする評価方法です。評価がしやすい、あるいは人件費のコントロールが容易といったメリットがあります。しかし近年では、相対評価を「時代遅れ」として、絶対評価を導入する会社も少なくありません。本記事では相対評価のメリットや絶対評価との違いを解説します。
目次
人事評価での相対評価とは?
人事評価における相対評価とは、対象の従業員を、他の従業員と比較して評価する方法を指します。他の従業員と比較して仕事の成績が良かったか、職務遂行能力が高かったかなどの視点で評価する手法です。
集団内でバランスよく評価を割り振れることや、評価しやすいことなどから、これまで多くの企業が採用してきた評価方法といえるでしょう。
相対評価の具体例
学校での成績評価などと同様に、人事評価における相対評価の方法でも、評価対象者をいくつかの区分に当てはめます。具体的には、以下のような運用例が挙げられます。
- 評価対象者を5つの分布に分け、上から「5%・20%・60%・10%・5%」と区分して運用する
- 上位5%を「S」(5点)・上位5~25%を「A」(4点)・25~75%を「B」(3点)・75~95%を「C」(2点)・95~100%を「D」(1点)として運用する
相対評価のメリット
相対評価のメリットは、主に次の3点です。
- 評価者が評価しやすい
- 人件費をコントロールしやすい
- 企業やチームの競争意識が高まる
各メリットを解説します。
評価者が評価しやすい
相対評価は、評価者が評価をしやすい制度です。他の従業員との比較による手法のため、評価基準や目標値を設定する必要がありません。評価基準や目標値を決めて評価する場合は、その基準や値が妥当であるかどうかを検証する必要があります。
しかし、相対評価については部署の中で従業員同士を比較し順位を割り振ればよいため、評価者に大きな負担がかかりにくいでしょう。
人件費をコントロールしやすい
人件費をコントロールしやすいことも、相対評価のメリットです。従業員をランクつけし、決められた割合に振り分ける手法のため、「低評価をつける対象がいない」という事態は起きません。昇給の対象を絞り込めるため、人件費をコントロールすることが可能です。
企業やチームの競争意識が高まる
相対評価は組織内での順位つけによる評価のため、企業やチーム間での競争意識が高まります。高評価がつく割合はあらかじめ決まっているため、部署内の同一ランクの従業員は全員がライバルとなります。昇給や昇格は、基本的に良い評価であることが前提のため、従業員はおのずと競い合い、良い評価を得ようと努力するでしょう。
そのため、管理者がコーチングなどを行わなくても、自発的にスキルの獲得に取り組み、チーム内が適切な緊張感に包まれる可能性が高まります。
相対評価のデメリット
相対評価にはデメリットも存在します。相対評価のデメリットとして挙げられるのは、以下の3点です。
- 集団のレベルや人数により適正な評価ができない
- 個人の成長が反映されにくい
- チームワークが乱れる可能性がある
それぞれの内容を解説します。
集団のレベルや人数により適正な評価ができない
相対評価は他の従業員との比較がベースにあるため、集団のレベルや人数の影響を受けることに注意しましょう。どんなに頑張ってよい成績を納めたとしても、周囲の従業員がそれ以上に優れていた場合、高い評価は得られません。その従業員は、優秀な従業員が少ない部署に在籍していれば、同じ実績でも高評価を得ていた可能性があります。しかし、周囲のレベルが高かったことにより、低い評価を受けることで、本人のモチベーションが下がってしまうリスクは懸念されます。
また、評価対象となる集団の人数が少ないと、能力に大きな差がみられない従業員が複数いた場合、無理やり順位をつけなければなりません。その結果、適正な評価から乖離する場合がある点もデメリットです。
個人の成長が反映されにくい
相対評価のデメリットとして、個人の成長が反映されにくいことも挙げられます。
相対評価はあくまでも集団内での順位による評価であるため、経験が長い従業員が高い評価を受け続けるケースも少なくありません。経験の浅い従業員がスキルやノウハウを習得し、成長しているのが明らかな場合でも、人事評価には反映されない事態が起きてしまうでしょう。
このように、取り組みの姿勢や個人としての伸び率が評価されないため、人材の育成には向いていないといえるでしょう。
チームワークが乱れる可能性ある
チームワークが乱れる可能性があることも、相対評価のデメリットの1つです。全員が高評価を得られるわけではないため、従業員同士の競争意識が刺激されます。
競争意識がプラスの方向に働いた場合は、従業員が自発的に成長しようとするため、組織全体のレベルアップにつながるでしょう。しかし、自分の評価を上げるために、他の従業員の足を引っ張る状況に陥るリスクもあります。
相手を下げて自分の評価を高めようとする従業員がいると、組織内の情報共有がされない、困っている従業員に対して誰もサポートをしないといった、個人主義の組織になってしまいがちです。
相対評価と絶対評価との違い
相対評価のほかによく用いられる評価方法として、絶対評価があります。絶対評価とは、対象の従業員が、あらかじめ決められた基準を満たしているかどうかに着目して評価する方法のことです。たとえば、「一定の売上金額を超えれば高評価がつく」と決まっている場合、組織内での順位が最下位であっても高評価がつくのが、絶対評価です。
相対評価がほかの従業員と比較して行うものであるのに対し、絶対評価は、ほかの従業員との比較はせず、決められた基準を満たしているか否かによって評価する点が違いといえます。
人事評価で相対評価か絶対評価に迷ったら?
人事評価で相対評価を用いるか、絶対評価を用いるか迷うこともあるでしょう。結論からいうと、どちらか1つを選択するのではなく、両者を柔軟に使い分けるのがおすすめです。
従来は、日本企業では相対評価を用いる会社が主流でしたが、近年は絶対評価を導入する会社が増加傾向にあります。相対評価では個人の成長が反映されにくい、あるいは在籍する部署やチームのレベル感によって、評価が変わってしまってしまうといったデメリットが問題視された結果といえるでしょう。
しかし絶対評価についても、目標値の設定が難しいことや、数値化されないような目標設定の場合、クリアしたか否かの判断が評価者ごとにバラつく可能性があるなどのデメリットがあります。
このように、いずれの方法にもメリットとデメリットが存在するため、どちらか一方のみが優れているとはいえません。そのため、営業部など評価基準を数値化しやすい部署では絶対評価を、総務部や法務部などの業務を数値化しにくい部署では相対評価にするといった、柔軟な対応を検討するとよいでしょう。
相対評価の特徴を理解して柔軟に活用しよう
相対評価とは、評価対象の従業員を、他の従業員と比較して評価する方法のことです。評価や人件費のコントロールがしやすいことなどから、これまで多くの会社で取り入れられてきました。しかし近年では、対象の従業員が決められた基準を満たしているかどうかに着目して評価する、絶対評価を導入する会社が増えつつあります。
相対評価と絶対評価には、それぞれメリットとデメリットがあるため、業種や部署によって、柔軟に使い分けることもおすすめです。相対評価や絶対評価の特徴をそれぞれを十分に理解し、適切に活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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