- 更新日 : 2023年10月27日
形骸化とは?意味や使い方・例文、社内の形骸化を防ぐ方法を解説
近年、ビジネスの世界でよく耳にする「形骸化(けいがいか)」という言葉。多くの企業や組織でさまざまな取り組みや制度が導入される中、その本来の目的を忘れ、形だけが残ってしまう現象を指します。
形骸化は組織の効率や生産性を大きく低下させる原因ともなります。本記事では、形骸化の意味から、その具体的な例、そして解決方法に至るまでを詳しく解説します。
形骸化(けいがいか)とは?
「形骸化」という言葉は、もともと「形と骸(かい:骨)」を意味する言葉であり、何らかの事物や制度、行為が本来の機能や役割を失って、形だけの存在となることを指します。
特に、長い時間が経過する中で、本来の意義や目的を忘れ、一度は意味のあったものが時間とともに内容が失われてしまう様子を形容する際に使用されます。例えば、時代の変化に伴い、必要性が薄れた制度や規則が、ただ形式だけ残ることを指す際に使われることが多いです。
ビジネスシーンでの使い方・例文
ビジネスの場においても「形骸化」という言葉は使用されることがあります。特に、長く続く企業や組織で、伝統的な方法や制度が時代とともにその役割や意味を失っていながら、形式的には継続されている状態を指す場面で使われます。
例文:「年次の社員研修は内容が古く、実際の業務に関連性が低い。この研修が形骸化していると感じる社員が増えてきている。」
「形式化」との違い
「形式化」と「形骸化」は、ともに何かが形だけの存在となることを意味する言葉として使われることがありますが、ニュアンスに違いがあります。
形式化は、ある行為や事物が正式な形や手続きに従うことを強調するときに使用する言葉です。一方、形骸化は、その形式や手続きが本来の目的や意味を失い、空虚な存在となってしまった状態を指します。
形骸化の対義語「活性化」
「活性化」という言葉は、何らかの事物や行為が活発になる、または元気になることを意味します。形骸化が何かが形だけの存在となってしまった状態を指すのに対し、活性化はその対義として、事物や行為が新たなエネルギーや活動を持ち、本来の役割や機能を果たすようになる状態を指します。
例えば、ビジネスの場では、新しい施策や戦略により売上や生産性が向上する様子を「活性化」と形容することがあります。
社内でよくある「形骸化」の例
ビジネスにおいて、制度の「形骸化」が起こる6つのケースを考えてみましょう。
なんとなく1on1ミーティングが実施される
1on1ミーティングは、上司と部下、あるいは2人のメンバー間でのコミュニケーションを深め、問題点や改善提案を共有するための重要な機会です。しかし、これが形骸化すると、単に予定があるから実施され、真剣な議論や意見の交換が少なくなることがあります。実質的な内容がなく、例えば天気の話や趣味の話題で時間を消化するような状態が続くと、1on1の真の意味が失われてしまいます。
定例会議の主旨が顔合わせや日常報告になる
定例会議は、プロジェクトの進捗や組織の課題、次のステップを明確にする場として非常に有効です。しかし、形骸化してしまうと、単に参加者が顔を合わせ、日常的な報告や日常業務の確認に終始することが増えます。これでは、新しいアイデアや課題解決の議論が生まれづらく、効果的な意思疎通が失われてしまいます。
人事評価・面談の時期になると面倒な空気が流れる
人事評価における面談は、従業員の実績や意欲を評価し、次のステップを計画するための重要な機会です。しかし、これが形骸化すると、面談が義務感から行われ、真摯なフィードバックや建設的な議論が少なくなります。双方が単に手続きとして面談を済ませるだけの状態になってしまい、評価本来の意義が失われます。
「ノー残業デー」のルール日に残業している
「ノー残業デー」は、従業員の健康を守り、ワークライフバランスを取るための取り組みの一つです。しかし、形骸化すると、「ノー残業デー」にも関わらず多くの従業員が残業してしまうことがあります。これは、組織内でのルールや取り組みの意義が共有されていないことを示すサインです。
目標管理制度が組織の向上につながっていない
目標管理制度は、組織の成果を向上させるためのツールとして導入されることが多いです。しかし、これが形骸化すると、従業員が目標をただ設定し、それを達成することだけに集中し、組織全体の成果やビジョンにつなげることが忘れられてしまいます。
株主総会に議論がなされずに終了する
株主総会は、経営者と株主との対話の場であり、企業の経営方針や成果を共有し、フィードバックを得るための大切な場です。しかし、この場が形骸化してしまい、議論が生まれず、単に手続きだけが行われる状態となると、株主との信頼関係の構築や企業の透明性が損なわれてしまいます。
社内の「形骸化」を防ぐ方法
では、ビジネスシーンで形骸化が生じる原因と、それを防ぐ方法について探っていきましょう。
ルールや目的を明確にする
形骸化の大きな原因の一つは、ルールや目的が不明確であることです。当初の目的や背景を忘れ、単なる形式としての手続きが繰り返されると、それに従う意義が失われがちです。
このため、新しい取り組みやルールを導入する際、その背景や目的、期待される結果を明確に伝え、文書化することが重要です。また、それを理解し、共有するための研修やワークショップを定期的に実施することも効果的です。
定期的なアナウンスを行う
一度説明しただけでなく、定期的にその目的や意義を再確認し、再アナウンスすることで、従業員の意識を新鮮に保つことができます。特に大きな変更や新しい取り組みが始まる際には、その経緯や背景、目的をしっかり伝えれば、形骸化のリスクを減少させることができるでしょう。
定期的に見直しをする
時代や環境、組織の状況が変わる中で、過去の取り組みやルールが現在の状況に合わなくなることがあります。定期的にこれらを見直し、必要に応じて更新することで、形骸化を防ぐことができます。また、見直しの際には従業員からのフィードバックや意見も取り入れることで、より現場に合う改善を行うことが可能です。
目標達成に向けたPDCAサイクルを回す
PDCAサイクル(Plan, Do, Check, Act)を回すことで、計画的に取り組みを進め、その結果をチェックし、必要なアクションを取ることができます。このサイクルを定期的に回すことで、形骸化のリスクを減少させるとともに、組織の取り組みやプロジェクトを常に最適化することができます。
会議の場合は意義を検証する
会議が形骸化する原因として、その目的や意義が不明確である、または時間の経過とともに変化してしまったことが挙げられます。定期的に会議の目的や内容、参加者を検証し、必要に応じて変更することで、有効で意義ある会議を継続的に行うことができます。
形骸化の類語を紹介
「形骸化」には、類似した紛らわしい言葉がいくつかあります。ここでは、4つの類語を挙げ、その意味と具体例を見ていきましょう。
死文化(しぶんか)
法律において、特定の条文や法律が事実上効力を持たなくなることを指します。ある法律が制定された際には適用されていたが、時間とともに社会の価値観や状況が変化し、その法律が現実の事例に適用されることがなくなるケースが考えられます。
具体例としては、国連憲章に旧敵国条項と呼ばれる規定があります(第53条、第107条)が、旧敵国の全てが国際連合に加盟して70年以上経過した現在では、一般的には、事実上死文化した条項と認識されている事例を挙げることができます。
弱体化(じゃくたいか)
「弱体化」とは、もともと持っていた力や機能が低下して、効果や性能が落ちることを意味します。
具体例としては、企業の製品やサービスが市場での競争力を失い、他の競合製品に比べ見劣りする状態や、組織のコミュニケーション力が低下し、情報の伝達や意思疎通がうまくいかなくなる状態などが考えられます。
官僚化(かんりょうか)
「官僚化」とは、組織が大きくなり、過度な階層やルールが増え、柔軟性や迅速な意思決定が困難になる状態を指します。
具体的には、大企業や政府機関などで、業務処理に多くの承認が必要となり、結果として意思決定が遅くなる、または新しいアイデアや提案が埋もれてしまうような状況がこれに該当します。この状態が続くと、組織の活力や創造性が失われ、形骸化する恐れがあります。
有名無実化(ゆうめいむじつか)
「有名無実化」とは、名前だけは知られているが、その実質や内容が伴っていない状態を指す言葉です。
具体例としては、かつての名ブランドが、品質やサービスの低下により、名前だけが残り実質的な価値が伴わなくなる状態や、組織の中の部署や役職が、実際の権限や機能を持たず、名ばかりで存在している状態などが考えられます。
「形骸化」を理解し、組織の活力を保つための方法を学ぼう!
形骸化の意味から、その具体的な例、そして解決方法などについて解説してきました。形骸化は、本来の目的や価値を失い、形だけが残る状態を意味し、多くの企業や組織が陥るリスクの一つです。
形骸化を理解し、それを未然に防ぐ方法を学ぶことで、こうしたリスクを回避し、組織としてさらなる成長と発展を目指せます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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