• 更新日 : 2026年2月19日

飲食店の就業規則は必要?作成義務・メリット・記載内容と注意点を解説

Point飲食店に就業規則は必要?

就業規則は、飲食店の従業員が常時10人以上いる場合に作成・届け出が義務です。

  • 労働基準法で記載項目が定められている
  • 届け出には労働組合または従業員代表の意見書が必要
  • 作成後は店舗での周知が必須

10人未満の飲食店の場合、作成義務はありませんが、ルール明文化によりトラブル防止と業務効率化に効果的です。

飲食店を経営するうえで、スタッフとの信頼関係や安定した店舗運営には「就業規則」の整備が欠かせません。従業員数が増えてくると、労働条件や職場のルールを明文化しておくことはトラブル回避に役立ちます。

本記事では、就業規則の作成義務の有無やメリット、記載すべき内容、飲食店特有の注意点や作成後の届け出手続きについて解説します。

飲食店に就業規則の作成義務はある?

飲食店を経営するにあたり、従業員を雇用する際には就業規則の作成が必要かどうかを理解しておくことが大切です。法律では従業員数に応じて義務の有無が定められており、見落とすと行政指導や罰則の対象になることもあります。

従業員が常時10人以上いる場合は就業規則の作成と届け出が義務

労働基準法第89条により、飲食店で常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則の作成と所轄の労働基準監督署への届け出が義務付けられています。

ここでいう「労働者」には、正社員だけでなくパート・アルバイトなど雇用形態を問わずすべての従業員が含まれます。届け出には、作成した就業規則と労働組合または従業員代表の意見書が必要であり、提出後は就業規則の内容を従業員に周知しなければなりません。店内への掲示やコピー配布、社内ネットへの掲載など、いつでも確認できる方法で共有することが求められます。これらの義務を怠ると労働基準法違反とみなされ、罰則の対象となるおそれがあります。

参考:労働基準法|e-GOV

従業員が10人未満でも就業規則を作成することが推奨される

従業員が10人未満の飲食店では、法律上の作成義務はありませんが、トラブル防止や統一的な労務管理の観点から就業規則の整備が強く推奨されます。

就業規則を作成しない場合であっても、雇用時には労働条件通知書を交付し、個別に賃金や労働時間などの条件を書面で明示する義務があります。ただし、通知書は個々の契約に関する情報に限られるため、店舗全体のルールや方針を共有するには不十分です。就業規則を任意で作成することで、従業員と経営者の間で認識をそろえることができ、勤務ルールを明確に伝えることができます。これにより、業務上の混乱を防ぎ、職場の安定運営や将来的な規模拡大にも対応しやすくなるでしょう。

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飲食店が就業規則を整備するメリットは?

就業規則は法律で義務付けられたものと思われがちですが、飲食店にとっては職場環境の安定や店舗運営の効率化に貢献する重要なツールでもあります。ここでは、飲食店が就業規則を整備する3つのメリットを解説します。

店舗運営の一貫性と効率が高まる

就業規則を整備することで、労務管理や業務指示の基準が明確になり、店舗運営が円滑になります。

日々の業務において、スタッフに対してルールやマナーをその都度口頭で伝えていては、言い方やタイミングによって内容に差が生じることがあります。その結果、従業員の間で認識のばらつきが起こりやすくなります。あらかじめ書面で明文化された就業規則があれば、誰が見ても同じ内容を理解でき、業務の指導や対応に一貫性を持たせることが可能です。また、複数店舗を展開している場合にも、就業規則を共通ルールとして活用できるため、全店での労務管理を統一しやすくなる利点があります。

トラブルを予防し、経営者のリスク回避に役立つ

労働条件や職場のルールを就業規則で明確にしておけば、従業員との間にトラブルが生じる可能性を減らせます。

飲食店ではシフトの急な変更や残業の有無、罰則の適用など、労働条件を巡ってトラブルが発生することがあります。こうした際に、ルールの根拠として就業規則があれば、曖昧な説明による誤解や不満を防ぎやすくなります。さらに、万一法的な争いに発展した場合にも、適切に整備された就業規則は、経営者側の正当性を証明する材料となり、リスクヘッジに有効です。ルールを予め明文化しておくことで、予防的にも防御的にも機能します。

従業員の不安を解消し、職場への安心感と定着率向上につながる

就業規則を設けることで、従業員が抱きやすい不安や疑問にあらかじめ対応でき、安心して働ける環境づくりに繋がります。

給与の支払い方法や評価制度、シフトの休憩時間、制服・身だしなみの基準などは、スタッフにとって気になっていても聞きにくい項目です。就業規則として明示しておけば、従業員は入社前後の段階で勤務条件を正確に把握でき、不安を感じずに業務に集中できます。明確で公平なルールが存在する職場では、従業員の信頼感や満足度が高まり、離職の防止にも寄与します。長期的な人材定着を図るためにも、就業規則の整備は有効な施策です。

飲食店の就業規則に記載するべき内容は?

就業規則を作成する際には、法律で定められた記載必須の項目と、店舗の運営実態に応じて記載すべき任意のルールがあります。ここでは、必須項目とそれ以外の重要項目を分けて解説します。

【絶対的必要記載事項】労働基準法で必ず定める事項

絶対的必要記載事項とは、労働基準法第89条により、就業規則に必ず記載しなければならない基本的な労働条件です。これらは就業規則の中核となる内容であり、いずれかが欠けていると、法令違反と判断される可能性があります。

  • 始業および終業の時刻
    開店準備や閉店作業を含めた勤務開始・終了の時間を明確に定めます。シフト制の場合は、その旨も記載します。
  • 休憩時間
    労働時間に応じた休憩の付与方法や時間帯を定めます。分割休憩を行う場合も、その取り扱いを明示します。
  • 休日および休暇
    週休の考え方、定休日、シフト休、有給休暇、特別休暇などの基本ルールを記載します。
  • 賃金に関する事項
    賃金の決定方法、計算方法、支払方法(現金・振込など)、賃金の締切日および支払日を具体的に示します。
  • 昇給に関する事項
    昇給の有無、実施時期、判断基準などを記載します。昇給がない場合でも、その旨を明記します。
  • 退職に関する事項
    自己都合退職の手続きや退職の申し出期限、解雇の事由や手続きについて定めます。

これらの項目は、従業員が働くうえで最も基本となる条件であり、飲食店の規模や業態に関わらず共通して求められる内容です。就業規則を作成する際は、抽象的な表現を避け、現場の運用が具体的にイメージできる形で記載することが重要です。

【相対的必要記載事項】制度を導入している場合に記載が必要な項目

労働基準法第89条では、事業場が任意に導入している制度がある場合、それらの取り扱いを就業規則に記載しなければならないとされています。制度が存在しない限り記載義務はありませんが、制度があるにもかかわらず未記載のままでは、トラブル発生時に説明責任を果たせない可能性があります。

以下は飲食店で該当しやすい相対的必要記載事項の例です。

  • 退職手当(退職金)制度の有無と支給基準
  • 退職手当を除く臨時の賃金の支給条件・支給時期
  • 最低賃金額に関する事項
  • 従業員の費用負担に関する事項(例:作業用品・食費など)
  • 安全衛生管理に関する取り決め(例:感染症予防、食品衛生基準)
  • 職業訓練・研修制度の有無と内容
  • 業務災害時の補償内容・私傷病時の扶助制度
  • 表彰・懲戒に関する基準(例:無断欠勤への対応、優秀スタッフの表彰条件)

これらの制度を導入している場合は、就業規則に具体的な運用ルールを記載する義務が発生します。

【任意記載事項】職場ルールの明確化に役立つ項目

法的義務はないものの、企業や店舗の運営方針に基づいて自由に盛り込める内容です。任意記載事項は、労務トラブルを防ぐためのルール整備や、従業員との信頼構築に有効です。

飲食店において特に有用な任意記載事項は次のようなものです。

  • 接客マナー・言葉遣いに関する基準
  • 髪型・服装・ピアス等の身だしなみルール
  • 厨房やホールの衛生管理基準(例:手洗い、マスク着用、手袋使用)
  • 社内の備品や食材の取り扱いルール(無断持ち帰り禁止など)
  • SNS・インターネット投稿のルール(勤務中の撮影・投稿禁止等)
  • 業務連絡手段の指定(LINE・チャットツール・紙媒体など)
  • 従業員割引・食事補助制度の内容と条件
  • 副業や他店舗との掛け持ちに関する方針

これらは店舗の方針や現場の状況に即したルールであり、記載しておくことで曖昧な対応を避け、従業員との共通認識を確立しやすくなります。

飲食店ならではの就業規則作成のポイント・注意点は?

飲食店の現場では、一般的な企業とは異なる労働環境や運営実態があります。ここでは、飲食店が就業規則を作成・改訂する際に注意すべきポイントを紹介します。

モデル就業規則は参考程度にとどめ、店舗の実情に合わせて調整する

厚生労働省などが公開している「モデル就業規則」は便利なテンプレートですが、飲食業にそのまま当てはめると、かえって実態にそぐわない部分が出てくる可能性があります。

たとえば、退職金制度や賞与支給に関する規定が記載されていることがありますが、必ずしも全ての飲食店がこれらを採用しているわけではありません。また、飲食業において重要な衛生管理やユニフォームの取り扱い、接客マナーに関する記述は、モデル規程では不十分な場合があります。

したがって、モデルをそのまま使うのではなく、自店舗の運営実態に照らして取捨選択し、不要な項目は削除、必要なルールは追加するなどして、現場に即した就業規則にカスタマイズすることが重要です。作成を通じて、経営方針や職場の課題を見直すきっかけにもなるでしょう。

衛生管理やSNS利用など、飲食店特有のルールを明文化する

食品を扱う業種である飲食店においては、衛生管理に関するルールの明文化が欠かせません。たとえば手洗いの頻度や方法、マスク・手袋の着用、厨房やホールの清掃スケジュールなど、具体的な基準を定めておくことで、従業員の意識向上と事故防止に繋がります。また、制服やエプロンの洗濯義務や費用負担の有無なども、あらかじめ記載しておくとトラブルを防ぎやすくなります。

加えて、最近では従業員によるSNS投稿に関するトラブルも増えており、「バイトテロ」と呼ばれる問題行動が社会問題となっています。店舗内での撮影や情報拡散、レシピの漏洩などを防ぐため、就業規則にSNS利用や機密情報の取り扱いについてのルールを明記し、違反時の懲戒規定もあわせて記載しておくことが有効です。こうした明確なルールによって、店舗の信用や営業上の秘密を守ることができます。

就業規則を作成した後の届け出・運用の流れは?

就業規則は作成しただけでは効力を持ちません。法令に従い労働基準監督署への届け出と、従業員への周知を行うことで、初めて効力を発揮します。ここでは、就業規則作成後に必要となる届け出と運用の流れについて解説します。

従業員が10人以上の場合は労働基準監督署への届け出が必要

前述のとおり、常時10名以上の従業員を雇用している飲食店では、労働基準法第89条により就業規則の作成・届出が義務づけられています。

届け出の際には、就業規則の本文に加えて「従業員代表の意見書」を添付しなければなりません。従業員代表は、従業員の過半数で組織された労働組合がある場合は労働組合、ない場合は従業員による投票などで選出された「過半数代表者」が該当します。経営側である店長やオーナーはこの代表にはなれないため、選任方法にも注意が必要です。

意見書には、代表者の署名とともに就業規則案に対する意見(賛否や要望など)を記載します。意見が反対であっても届け出は可能ですが、意見聴取というプロセス自体を省略することは認められていません。

就業規則の周知が行われて初めて従業員への効力が生じる

届け出が完了した後は、作成した就業規則を従業員に周知する義務があります。労働基準法第106条により、就業規則は「常時各作業場の見やすい場所に掲示し、備え付け、または書面で交付」するなど、いつでも確認できる状態にしておく必要があります。

周知方法としては、以下のような手段が一般的です。

  • 紙のコピーを従業員に配布する
  • 店舗内の事務所や休憩室に掲示・備え付ける
  • 社内の共有フォルダやクラウドにPDFデータを掲載する

周知が不十分な状態では、就業規則の効力が従業員に及ばないと判断される可能性があります。作成後は、全従業員に内容を正確に伝えることが重要です。

規則の改定時も同様に届け出と周知が必要

一度作成した就業規則も、法改正や社内制度の変更に応じて随時見直しを行う必要があります。働き方改革による労働時間の見直しや、休日制度・手当の新設といった変更があった場合は、規則の内容を更新しなければなりません。

改定時にも新規作成時と同様に、従業員代表の意見聴取、労働基準監督署への届け出、全従業員への周知が必要です。就業規則は店舗経営の基盤となるルールであるため、常に最新の内容を保ち、信頼性のある労務管理を心がけましょう。

飲食店の就業規則を整備して安心な職場環境を築こう

飲食店における就業規則の整備は、法的な義務対応に留まらず、円滑な店舗運営とトラブル防止、従業員の安心確保につながる重要なステップです。 常時10名以上の労働者を使用する場合には就業規則の作成・届け出が必須となり、10名未満でも自主的に職場ルールを明文化しておくことで労務管理上のリスクを大きく減らすことができます。作成した規則は労働基準監督署への届け出と従業員への周知を確実に行い、日々の運用に活かしていきましょう。

就業規則を適切に整備・運用することで、経営者もスタッフも安心できる健全な職場環境を築く一助となるはずです。


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