- 更新日 : 2026年1月28日
アルバイトにおける有給とは?義務や日数の決まり方、管理のポイントを解説
「アルバイトだから有給はない」は間違いです。アルバイト(短時間労働者)にも、法律に基づき年次有給休暇を取得する権利があります。
本記事は、アルバイトの有給について、付与条件(勤続6ヶ月・8割出勤)、週の労働日数に応じた比例付与の計算方法、賃金の算出ルールを分かりやすく解説します。さらに、年5日取得義務化の対象者特定や、退職時の有給消化など、実務で発生しやすいトラブルを防ぐための管理の重要ポイントまで網羅的に解説します。
目次
アルバイトにおける有給とはどのような権利か?
アルバイトやパートであっても、法律上の要件を満たせば有給休暇は当然の権利として発生します。ここでは、労働基準法に基づく基本的な考え方と、実際に権利が発生するための「勤続期間」「出勤率」という2つの重要条件について解説します。
法律上、アルバイトやパートも有給休暇を取得できるのか?
結論から言えば、雇用形態にかかわらず、アルバイトやパートタイム労働者も正社員と同様に年次有給休暇を取得する権利があります。
労働基準法第39条において、業種や職種、雇用の名称(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど)を問わず、一定の要件を満たしたすべての労働者に対して有給休暇を与えることが使用者の義務として定められているからです。したがって、「ウチはバイトだから有給はない」という会社のルールは法律違反となり無効です。企業は対象となる従業員に対し、適切に休暇を付与し管理しなければなりません。
有給休暇が付与される具体的な条件とは?
有給休暇が発生するためには、「雇入れの日から6ヶ月継続勤務していること」と「全労働日の8割以上出勤していること」の2つの条件を満たす必要があります。
この基準は労働基準法で明確に定められており、シフト制のアルバイトであっても同様に適用されます。「継続勤務」とは在籍期間を指すため、実労働日数ではありません。また、「全労働日」とは、雇用契約や就業規則(社内ルール)で当初決められていた労働日を指します。会社都合の休業などは出勤扱いとして計算されるケースがあるため、勤怠管理においては注意が必要です。
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有給取得義務化はアルバイトにも適用されるのか?
2019年(平成31年)4月の法改正により、企業には従業員に対して年5日の有給休暇を「確実に取得させる」義務が課されました。このルールは正社員だけでなく、条件を満たすアルバイトにも等しく適用されます。ここでは、義務化の対象となる具体的な基準と、違反した場合のリスクについて解説します。
義務化の対象となるアルバイトの条件
年10日以上の有給休暇が付与されるアルバイト・パート労働者に対しては、会社側が年5日の有給休暇を確実に取得させる義務があります。
すべてのアルバイトが対象ではなく、後述する「比例付与」の表において、付与日数が「10日以上」となっている従業員が対象です。具体的には、「週3日勤務で勤続5.5年以上」や「週4日勤務で勤続3.5年以上」、あるいは「週30時間以上の契約(通常付与)で勤続0.5年以上」のスタッフなどが該当します。対象者を正しく把握していないと、知らぬ間に法違反を犯すことになるため注意が必要です。
義務違反時の罰則と企業リスク
対象者管理を怠り、年5日の有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法違反として従業員1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります。
この罰則は「対象者1名につき」適用されるため、管理不備の人数が多ければそれだけ罰金額も膨らみます。また、金銭的なペナルティだけでなく、「労働基準法を守らない企業」として是正勧告を受けたり、企業名が公表されたりするリスクもあります。コンプライアンス遵守の観点からも、アルバイトの有給管理は必須業務といえます。
有給の付与日数はどのように決まるのか?
アルバイトやパートの有給付与日数は一律ではなく、週の労働日数や労働時間に応じて変動します。ここでは、短時間労働者に適用される「比例付与」のルールと、実際に何日が付与されるのかを確認するための具体的な日数一覧表について解説します。
週の労働日数によって変わる「比例付与」の仕組み
週の所定労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満のアルバイトの場合、正社員よりも少ない日数が付与される「比例付与」という仕組みが適用されます。
通常の労働者(正社員やフルタイムパート)は勤続6ヶ月で10日が付与されますが、勤務日数が少ないパートタイマーに対して同じ日数を付与するのは公平性を欠くためです。一方で、週30時間以上働いている場合や、週5日以上勤務している場合は、たとえ時給制のアルバイトであっても正社員と同じ「通常付与(原則10日〜)」の対象となります。
付与日数の一覧表(勤続年数別)
以下は、週の所定労働日数に応じた有給休暇の付与日数表です。週の労働日数ごとに分けて記載していますので、該当する表をご確認ください。
1. 週4日〜5日以上のケース
(※週30時間以上の契約はすべて「週5日以上」の列が適用されます)
| 勤続年数 | 週5日以上(年217日以上) | 週4日(年169〜216日) |
|---|---|---|
| 0.5年 | 10日 | 7日 |
| 1.5年 | 11日 | 8日 |
| 2.5年 | 12日 | 9日 |
| 3.5年 | 14日 | 10日 |
| 4.5年 | 16日 | 12日 |
| 5.5年 | 18日 | 13日 |
| 6.5年以上 | 20日 | 15日 |
2. 週2日〜3日のケース
| 勤続年数 | 週3日(年121〜168日) | 週2日(年73〜120日) |
|---|---|---|
| 0.5年 | 5日 | 3日 |
| 1.5年 | 6日 | 4日 |
| 2.5年 | 6日 | 4日 |
| 3.5年 | 8日 | 5日 |
| 4.5年 | 9日 | 6日 |
| 5.5年 | 10日 | 6日 |
| 6.5年以上 | 11日 | 7日 |
3. 週1日のケース
| 勤続年数 | 週1日(年48〜72日) |
|---|---|
| 0.5年 | 1日 |
| 1.5年 | 2日 |
| 2.5年 | 2日 |
| 3.5年 | 2日 |
| 4.5年 | 3日 |
| 5.5年 | 3日 |
| 6.5年以上 | 3日 |
有給休暇を取得した時の賃金はどう計算する?
有給休暇を取得した日に対し、会社はいくらの賃金を支払えばよいのでしょうか。実は金額の算出方法は一律ではなく、法律で認められた3つのパターンのうち、会社が就業規則で定めた方法に従って計算されます。ここでは、各計算方法の特徴と、シフト制で勤務時間が不規則な場合の運用実態について解説します。
支払われる金額の3つの計算方法
有給休暇を取得した日に支払う賃金の計算には、「平均賃金」「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」「健康保険法等の標準報酬日額」のいずれかを採用します。
就業規則等でどの計算方法を採用するかをあらかじめ定めておく必要があります。最も一般的で事務処理がスムーズなのは「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」ですが、シフトによって労働時間が大きく変動する場合などは「平均賃金」を用いることもあります。「標準報酬日額」を使用するには労使協定が必要です。
シフト制で労働時間がバラバラな場合の計算例
シフト制で日によって勤務時間が異なる場合、「平均賃金」を用いて算出するのが公平ですが、実務上は「その日に予定されていたシフトの時間を働いたもの」として通常の時給計算をするケースが多く見られます。
例えば、時給1,000円のアルバイトが5時間のシフトに入っている日に有給を使った場合、5,000円が支給されます。しかし、シフトが確定していない段階で有給申請があった場合などは計算が複雑になるため、過去3ヶ月の賃金総額をその期間の総日数(暦日数)で割って算出する「平均賃金」を用いることで、極端な不公平を避けることができます。どちらを採用するかは会社の規定によります。
アルバイトの有給管理を行うための実務ステップ
アルバイトの有給管理は、個々の契約内容やシフト状況が異なるため、正社員よりも煩雑になりがちです。管理漏れや付与ミスを防ぐためには、場当たり的な対応ではなく、一定のフロー(手順)に沿って事務処理を行うことが重要です。ここでは、管理体制を整えるための具体的な4つのステップを前半・後半に分けて解説します。
管理の準備:対象者の抽出と付与通知
最初に行うべきは、現状の把握と本人への通知です(ステップ1・2)。
- ステップ1:対象者の抽出 雇用契約書を確認し、週の所定労働日数と勤続年数から、今年度新たに有給が付与される対象者をリストアップします。
- ステップ2:付与日数の確定と通知 比例付与の表に基づき、付与日数を計算して有給休暇管理簿(Excelや人事管理システム等)に記録します。その後、給与明細やチャットツール等を通じて「あなたには今回○日の有給が付与されました」と本人に明確に通知します。
運用と監視:取得計画と消化状況の確認
付与した後は、確実に消化されるよう計画と監視を行います(ステップ3・4)。
- ステップ3:取得計画の策定 年10日以上付与される「消化義務対象者」については、いつ頃取得するか意向を確認し、計画的に消化できるようシフト調整を行います。繁忙期を避けて取得してもらうよう早めに相談することがポイントです。
- ステップ4:残日数のモニタリング 毎月の給与計算時に取得状況を確認し、取得が進んでいない従業員には「あと○日残っていますが、いつ使いますか?」と早めに声掛けを行います。期限直前に慌てて消化させることがないよう、定期的なチェックが不可欠です。
アルバイトの有給管理を円滑に行うための重要ポイント
アルバイトの有給管理は、個々の契約内容やシフト頻度が異なるため、正社員よりも複雑になりがちです。管理漏れや法的リスク(30万円以下の罰金など)を回避するためには、単に日数を数えるだけでなく、以下の3つのポイントを意識した運用体制を作ることが重要です。
ポイント1:勤続年数と週労働日数を常に最新化し、付与日数を「可視化」する
アルバイトは契約更新時に労働条件(週の勤務日数など)が変わることが多いため、いつの間にか「比例付与」のランクが変わっていることがあります。 管理ミスを防ぐためには、Excelや勤怠管理システムを用いて「入社日」「現在の週所定労働日数」を常に最新の状態に保つことが最優先です。その上で、付与された日数を管理者だけでなく、本人にも給与明細やチャット等で通知し、お互いに残日数を可視化しておくことがトラブル防止の第一歩となります。
ポイント2:「年5日の取得義務」対象者を早期に特定し、計画的に消化させる
前述の通り、年10日以上の有給が付与されるスタッフには年5日の取得義務が発生します。 対象者をリストアップしたら、付与直後の段階で本人と面談や相談を行い、「どの時期に休めそうか」という大まかな計画を立ててください。特に学生アルバイトなどはテスト期間や帰省時期、主婦(夫)パートは子供の学校行事などに合わせて計画的に充当することで、シフトの穴あきを防ぎつつ義務を果たすことが可能になります。期限ギリギリになって「明日から5連休取ります」と言われないための予防策です。
ポイント3:申請期限や代替要員のルールを就業規則で明確にする
「明日忙しいけど有給使います」といった急な申請は、現場の混乱を招きます。 また、会社には、当日の申請を認める義務まではありません。したがって、就業規則で「有給休暇の申請はシフト確定前の○日までに行うこと」といった申請期限のルールを明確に定めておくことが重要です。また、誰かが休んでも業務が回るよう、マニュアル整備や多能工化(一人が複数の業務をこなせる状態)を進め、特定の人に依存しない体制を作っておくことも、間接的ですが非常に重要な有給管理のポイントです。
アルバイトの有給についてよくある質問
Q:退職時に残った有給をまとめて消化することは可能か?
退職時に残っている有給休暇を一括で消化することは法的に認められています。
有給休暇は労働者の権利であり、退職日までに残日数を行使することを会社は拒否できません。したがって、「残りの期間はすべて有給消化にあてたい」という申し出があった場合、会社はそれを受け入れる必要があります。
ただし、最終出勤日と退職日の間に有給休暇を充てる形になるため、引き継ぎ期間が不足しないよう、従業員とは「早めの退職申出」と「業務引き継ぎのスケジュール」について事前に話し合っておくことが重要です。
Q:シフトが入っていない日に有給を充てることはできるか?
原則として、労働義務のない休日(シフトが入っていない日)に有給休暇を取得することはできません。
有給休暇はあくまで「労働義務のある日に、労働を免除して賃金を保障する制度」だからです。したがって、元々休みの日に有給を申請されても、会社はそれを受け入れる必要はありません。
ただし、シフト制において「シフトが決まる前」に希望休として有給申請があった場合は、その日を労働日として設定した上で有給扱いにするという運用は可能です。
Q:有給休暇に有効期限はあるのか?
有給休暇の請求権は、付与された日から2年で時効となり消滅します。
つまり、今年付与された分は翌年まで繰り越すことができますが、翌々年には使えなくなってしまいます。人事担当者は、消滅する前に取得を促すか、あるいは古いものから順に消化される仕組みを理解しておく必要があります。繰越分を含めて最大で何日保有できるかをシステム上で正しく設定しておくことが大切です。
Q:繁忙期で人が足りない時、有給の申請を断ることはできるか?
会社は原則として有給休暇の取得を拒否することはできませんが、時期をずらしてもらう「時季変更権」を行使することは可能です。
「事業の正常な運営を妨げる場合」(例:申請日に休まれると、業務が完全にストップしてしまう場合)に限り、会社は「今は忙しいので、別の日(〇月〇日など)に変更してほしい」と指示することができます。ただし、単に「忙しいから」「人手不足だから」という理由だけで認められるものではなく、代替要員の確保など最大限の配慮をした上での最終手段となります。
Q:使いきれなかった有給休暇を「買い取る」ことはできるか?
原則として、有給休暇の買い取りは法律で禁止されています。
有給休暇は「心身の疲労回復」を目的とした制度であり、金銭に変えて休みを与えないことはこの目的に反するからです。ただし、例外として「退職によって無効となる分」や「時効(2年)で消滅した分」、あるいは「法定付与日数を超えて会社が独自に付与した分」については、会社の判断で買い取ることが認められる場合がありますが、これは会社の義務ではありません。
アルバイトの有給管理の要点をおさえてトラブルを防ごう
本記事を通じて、アルバイトの有給休暇は、条件を満たせば法律上当然に発生する権利であり、決して正社員だけの制度ではないことを理解いただけたかと思います。非正規雇用者に対する有給管理は、単に法律を遵守するだけでなく、スタッフの満足度や定着率を高める上でも重要です。
最も重要な点は、週の労働日数に応じた「比例付与」の仕組みを正しく理解し、付与日数を誤らないことです。また、年10日以上付与される対象者に対しては、会社側が年5日の有給消化義務を負うため、計画的な消化を促す運用が必須です。計算方法の選定、申請ルールの明確化、そして退職時の残日数処理など、実務上のポイントを押さえることで、無用なトラブルを未然に防ぎ、スムーズな人事労務管理を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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