- 更新日 : 2026年1月14日
IT人材育成の課題とは?解決策やロードマップ、補助金の活用を徹底解説
IT人材の不足は、企業のDX推進と競争力維持にとって大きな課題です。とくにIT人材の採用が難しい中小企業にとって、既存社員を育成し、自社のビジネスに合ったデジタル人材を確保することが急務となっています。この記事では、IT人材とは何かという基本から、不足の現状、育成のための具体的なロードマップ、企業での成功事例、さらには育成に活用できる助成金・補助金までをわかりやすく解説します。
目次
IT人材とは?
IT人材というと、システムエンジニア(SE)やプログラマーといった技術者を思い浮かべるかもしれません。
しかし、現在のビジネス環境では、より幅広いスキルを持つ人材が求められています。IT人材は、IT技術を専門とする人材だけでなく、デジタル技術を活用してビジネスを変革できる「デジタル人材」も含めた総称として捉えられる場合もあります。
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IT人材不足の現状と原因・将来予測
経済産業省の調査によると、IT人材の需要は増加の一途をたどっている一方で、供給が追いついていません。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、AIやビッグデータ、クラウドといった先端技術に対応できる人材の不足が顕著になっています。
このまま進むと、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足する可能性が指摘されています。とくに中小企業では、大企業に比べて採用競争力が低いことから、より深刻なIT人材不足に直面しているのが現状です。この背景には、既存のITシステムを使い続ける「レガシーシステム」の保守に多くの人員が割かれていることや、新しいデジタル技術を理解し、活用できる人材が少ないことがあげられています。
IT人材不足を解消するには?企業が取るべき3つの方向性
T人材の不足は、企業の競争力や事業継続に直結する問題です。IT人材不足を解消する方法としては、一般的に「採用」「外部パートナーの活用」「社内でのIT人材育成」という3つの方向性があります。
昨今の状況を踏まえると、中長期的に最も確実なのが、既存社員を「IT人材」「デジタル人材」として育成する社内育成(リスキリング)です。
即戦力となるIT人材を中途採用や新卒採用で確保する
ただし、ITエンジニアやDX人材の採用競争は年々激しくなっており、とくに中小企業にとっては、人件費や知名度の面で不利になりやすい現実があります。
システムベンダーやコンサルティング会社などの外部パートナーを活用する
専門性の高い領域をアウトソースすることで、短期的に不足するスキルを補うことはできますが、社内にノウハウが蓄積されにくいという側面もあります。
既存社員を「IT人材」「デジタル人材」として育成する社内育成
自社のビジネスや業界特有の課題を理解したうえでITスキルを身につけた人材は、外部から採用した人材よりも、自社に合ったIT活用やDXを推進しやすくなります。
また、計画的なIT人材育成に取り組むことは、従業員のキャリア形成やスキルアップにもつながります。「会社が自分の成長に投資してくれている」と感じてもらえることで、エンゲージメントや定着率の向上にも好影響が期待できるでしょう。
IT人材不足を解消したい中小企業ほど、「採用だけに頼らず、既存社員の育成に投資する」という発想が重要になります。次の章では、具体的なIT人材育成のステップ(ロードマップ)を見ていきます。
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IT人材育成における企業が直面する課題と対処法
IT人材を育成する企業が直面する主な課題は、「育成リソースの不足」と「育成対象者の意欲維持」です。これらを克服するには、計画的な外部活用とモチベーションを高める仕組みづくりが求められます。
教育担当者の不足と負担増加への対処法
ITスキルを持つ社員は、すでに多忙なケースが多く、育成に時間を割くことが難しくなります。実務と教育の両立による疲弊が、育成プログラムの頓挫につながることもあります。
基礎的な知識や最新技術に関する教育は、高品質な専門eラーニングや外部研修サービスにアウトソースすることで、社内担当者の負担を大幅に減らせます。社内担当者は、実務に特化したOJTの指導や進捗管理に集中できるように役割を分担しましょう。
OJTの属人化と体系化の難しさへの対処法
実務を通じて教えるOJTは有効ですが、教える内容が属人化しやすく、指導者によってレベルがバラつくため、全体として均質なスキルアップにつながりにくい側面があります。
明確な評価基準とカリキュラムを策定し、OJTの指導内容を標準化します。指導マニュアルを作成したり、OJT期間中に達成すべき具体的なアウトプット(例:簡易ツールの開発、データ分析レポート)を設定したりすることで、均質な学習機会を提供できます。
育成コストの確保への対処法
外部研修やeラーニングの導入には費用がかかるため、特に予算の少ない中小企業にとって、予算確保が大きなハードルになることがあります。
政府や自治体のIT人材育成に特化した助成金・補助金(人材開発支援助成金など)を積極的に活用しましょう。また、費用対効果の高いオンライン学習サービスを選定したり、無料または安価な公的機関の研修を利用したりすることで、コストを抑えながら質の高い教育を実現できます。
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IT人材の育成に必要なスキルは?
IT人材として活躍するためには、特定の技術知識(テクニカルスキル)だけでなく、それをビジネスの成果につなげる能力(ビジネススキル)も欠かせません。育成プログラムを設計する際は、これらのスキルをバランスよく習得できるようなカリキュラムを検討すべきでしょう。
課題発見・設定力
現場の業務を深く分析し、「非効率なプロセスはどこか」「どのデータが不足しているか」といった、デジタルで解決すべき真の課題を見つけ出す能力です。単にツールを導入するだけでなく、何のために導入するのかを定義する力が求められます。
コミュニケーション力
専門知識を非技術者である他部門のメンバーや経営層にもわかりやすく伝え、プロジェクトの必要性を理解してもらい、協働を進める能力です。技術用語を多用せず、ビジネスのメリットに焦点を当てて説明できる力が重要です。
企画・推進力
デジタルプロジェクトの実現可能な計画(スコープ、スケジュール、予算)を立て、ステークホルダーを巻き込みながら実行し、結果を出す能力です。計画通りに進まない際の柔軟な対応力やリスク管理能力も含まれます。
IT基礎知識
ネットワーク、セキュリティ、データベース、クラウドサービス(AWS、Azureなど)の基本的な仕組みや概念を理解していることです。これにより、導入するシステムが自社のインフラに適しているかを判断したり、簡単なトラブルシューティングを行ったりすることが可能になります。
データ分析スキル
ExcelやBIツール(Tableau、Power BIなど)を用いて、収集した業務データや顧客データを分析し、そこから得られたインサイトをビジネス上の意思決定に活かす能力です。単なる集計ではなく、傾向や因果関係を読み解く力が求められます。
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未経験からIT人材を育成する5ステップロードマップ
IT人材を効果的に育成するためには、ゴールから逆算した段階的なロードマップが必要です。ここでは、未経験者をIT人材に育てる一般的な5つのステップをご紹介します。
STEP 1:ITリテラシーの基礎習得
IT用語、セキュリティ、情報倫理、SaaSなどの業務ツールの使い方など、すべての社員が知っておくべき基本的な知識を習得します。この段階は、デジタル技術に対する苦手意識を払拭し、共通のIT知識基盤を築くことを目的とします。
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STEP 2:専門分野の基礎知識習得
プログラミングの基礎、データベースの扱い方、クラウドサービスの概要など、育成目標とする専門的な技術の入り口を体系的に学びます。このステップで、対象者がこれから専門としていく分野の全体像を把握し、必要な理論や概念を身につけます。
STEP 3:実践的な技術の習得
実際の業務で使われるツールや言語を用いた小規模な演習を行い、アウトプットする力を養います。たとえば、Pythonを使ったデータ前処理や、特定のクラウド環境でのサーバー構築演習など、手を動かすことで理論を定着させます。
STEP 4:OJTを通じたスキル定着
部門内の小さな改善プロジェクトなどに参加させ、先輩社員の指導のもとで実務経験を積み、学んだ知識を定着させます。この段階では、成功体験を積み重ねることを重視し、座学で学んだ知識を現実のビジネス課題に適用する訓練を行います。
STEP 5:自立・応用力の強化
新しい技術の調査や、中規模な部門横断プロジェクトのリーダーを任せ、自ら課題解決に取り組む力を育てます。自力で問題を発見し、解決策を設計・実行できる、真の自律的なIT人材へと成長させることを目標とします。
このIT人材育成ロードマップを、自社の事業計画や人員構成に合わせてカスタマイズし、各ステップの達成度を評価する仕組み(スキルマップや評価シートなど)を用意することで、計画的な人材育成が実現しやすくなります。
関連資料|教育計画書
スキル習得に合った育成プログラムの種類
育成プログラムには、従業員のレベルや目的に合わせてさまざまな種類があります。
- eラーニング/オンライン講座
個人のペースで基礎知識を習得できるため、初級レベルの育成に適しています。
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特定の高度な技術や、最新のトレンドを効率よく学ばせたい場合に効果的でしょう。 - 社内勉強会/ワークショップ
部署の垣根を越えた知識共有や、実践的な問題解決能力を高めるのに役立ちます。
関連資料|職場内研修計画書(ワード)
IT人材の企業での育成成功事例
IT人材の育成を成功させた企業は、トップダウンでの明確なビジョン提示と、外部リソースの適切な活用という共通点が見られます。
【事例1】富士通のデジタル人材育成プログラム
富士通は、2020年以降、全社員を対象とした大規模なリスキリング(学び直し)とデジタル人材育成に注力しています。
具体的な取り組み :
富士通は、全社員約13万人を対象とした全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を実施し、デジタル人材の育成を図っています。また、リスキリングのために、最先端スキルを習得可能な教育プログラムである「Global Strategic Partner Academy」を開発し、社員に対して、オンライン学習の場を提供しています。「
結果:
全社的にDXに対する意識が向上し、デジタル技術を活用したプロジェクトの提案数が増加しました。また、IT人材が各部門に配置されたことで、ビジネスとIT知識を結びつけたイノベーションの創出につながっています。
【事例2】日立製作所におけるLumada事業推進人材の育成事例
日立製作所は、IoTプラットフォーム「Lumada」を核としたDXビジネスの推進のため、顧客の課題解決を担う人材育成を急務としました。
具体的な取り組み:
日立製作所では、Lumada事業推進のために、データサイエンティスト、AIエンジニア、コンサルタントといったDXを担う専門人材を育成しています。育成プログラムは、座学だけでなく、実際の顧客データや業務プロセスを用いた実践的なワークショップを中心に構成されています。
結果:
Lumada事業の成長に必要な専門人材を継続的に供給できるようになり、顧客企業のDX推進を強力にサポートできる体制が構築されました。これにより、サービス事業の売上拡大に直結しています。
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IT人材育成に活かせる助成金・補助金と政府施策
IT人材の育成には、研修費用や受講中の人件費など、ある程度のコストがかかります。とくに中小企業にとっては、「やりたいが予算が取りにくい」という悩みも多いのではないでしょうか。
こうした負担を軽減するために、国や自治体が用意している助成金・補助金、デジタル人材育成支援策を上手に活用することが重要です。
企業のIT人材育成で活用したい主な助成金・補助金
従業員の教育研修にかかる費用の一部を補填してくれる公的な助成金・補助金を活用することで、IT人材育成のハードルを下げることができます。代表的な例として、次のような制度が挙げられます。
人材開発支援助成金
従業員に職務に関連した専門的な知識やスキルを習得させるための訓練(Off-JT)を実施した企業に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
ITスキルやデジタル技術に関する研修も対象となる区分があり、「特定訓練コース」や「特別育成訓練コース」などを利用することで、体系的なIT人材育成にかかる負担を抑えられます。
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者がITツール(ソフトウェア、クラウドサービスなど)を導入する際にかかる費用の一部を補助する制度です。主な目的は業務効率化や売上アップですが、クラウド型勤怠管理システムや会計システムなどを導入することで、従業員のITリテラシー向上やDX推進の素地づくりにもつながります。
これらの制度は、対象となる事業や補助率・上限額、申請スケジュールなどが年度によって変わります。利用を検討する場合は、厚生労働省や経済産業省、各種支援機関(商工会議所など)のウェブサイトで最新情報を確認し、必要に応じて専門家や社会保険労務士、税理士などに相談しながら進めるとよいでしょう。
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政府・自治体によるデジタル人材育成支援の動き
政府は、国全体としてのIT人材不足を解消するために、デジタル人材育成支援を強化しています。たとえば、経済産業省が策定した「デジタルスキル標準(DSS)」をもとに、企業が自社に必要なデジタル人材像を整理し、育成プログラムを設計できるよう支援する取り組みが進められています。
また、地方自治体や外郭団体が主催する中小企業向けのIT研修・DXセミナーも増えています。東京都など一部の自治体では、ITスキル研修の受講費用を一部補助したり、IT導入補助金に上乗せする独自の支援策を用意しているケースもあります。
とくに中小企業の場合、自社だけでIT人材育成の仕組みを整えるのは容易ではありません。まずは、自社の所在地や業種に合った公的な支援策がないか、地元の商工会議所や中小企業支援センター、自治体の窓口に問い合わせてみることをおすすめします。外部の支援メニューを上手に組み合わせることで、IT人材育成のコストと手間を大きく抑えることができます。
IT人材の育成を計画的に進め競争力を高めよう
IT人材の育成は、長期的な視点と計画的なロードマップに基づいて進めることが大切です。IT人材が不足している現状をふまえると、外部採用だけでなく、既存の従業員をデジタル時代に対応できる人材へと育てる「自前での育成」が、企業の持続的な成長を支える柱となります。
育成を進める上では、まず「自社の事業に必要なIT人材とは誰か」をはっきりさせ、次に「必要なスキル」を定義し、そして「OJTとOff-JTを組み合わせた体系的なプログラム」を実行することが肝心です。育成コストの課題に対しては、政府や自治体のIT人材育成に特化した助成金・補助金を積極的に活用しましょう。計画的にIT人材育成を進めることで、自社の競争力を高め、デジタル変革の波を乗りこなすことが可能になるでしょう。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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