- 更新日 : 2026年1月14日
キャリアアンカー診断とは?メリットや企業が活かせる場面などを解説
従業員のキャリアを支援するうえで、キャリアアンカー診断を実施するのは有効な手段です。キャリアアンカー診断とはどのようなものでしょうか?
本記事では、キャリアアンカー診断の特徴や実施するメリット、注意点などを解説します。診断結果を人事に活用する方法についてもまとめているので、企業の担当者はぜひ参考にしてください。
キャリアアンカー診断を実施する流れについても、ご紹介します。
目次
キャリアアンカー診断とは?
キャリアアンカー診断とは、仕事を選ぶ際に自身の価値観や得意分野を明確にするための、自己分析テストのことです。
キャリアアンカーという概念は、組織心理学者エドガー・シャイン氏が提唱したもので、人がキャリアを決める際の指針を指します。
キャリアアンカーは一度形成されると長期的に影響します。そのため、自身のキャリアアンカーを理解しておくことが重要です。
自身のキャリアアンカーを理解することで、適性のある業界や職種を見極め、強みを発揮できるようになります。
さらに詳しく知りたい方は、下記よりキャリアアンカーの解説記事をご覧ください。
キャリアアンカー診断が注目されている背景
近年、ダイバーシティ推進やポジティブ・アクションが浸透し、働き方の選択肢が広がったことで、個人が自身の価値観に合う働き方を重視する傾向が強まっています。
一社で終身雇用まで働く時代から、転職を視野に入れながら自己実現を追求する時代へと変化しました。
時代の変化に伴い、従業員のキャリア観を理解することは欠かせません。
従業員一人ひとりの強みや志向性を把握できなければ、十分に力を発揮できないこともあります。
優秀な人材の離職を防ぐ意味でも、企業でキャリアアンカー診断を実施することが注目されているのです。
キャリアアンカーの3つの要素
キャリアアンカー診断では、働く人が大切にしている価値観や、判断基準を見極められます。
とくに、キャリアに影響を与えるとされる3つの要素が互いに関係し合い、重なる部分こそが、本人が妥協できないキャリアに対する考え方です。
コンピタンス(Can)|得意なこと
コンピタンス(Can)は、業務で発揮できる力や、他者より得意と感じるスキルを指します。
たとえば、技術に強い、数値の分析が得意、相手の意図をくみ取る会話が上手といった能力などです。主に、成功体験や周囲からの評価によって、認識されることが多い要素です。
自身の強みを活かしてさらに成長したい、より高い役割に挑戦したいという意欲も、この領域に含まれます。
動機(Will)|やりたいこと
動機(Will)は、「何に心が動かされるか」を示す要素です。主に、従業員が情熱を持って取り組めるテーマや業務領域を指します。
時間を忘れて集中できたり、困難があっても挑み続けられたりするような仕事が含まれます。
興味ややりがいを感じる分野を知ることで、より意欲を発揮できる環境を見つけやすくなるでしょう。
価値観(Must)|価値を感じること
価値観(Must)は、仕事や人生を選ぶうえで「これだけは外せない」と思う基準や、信念のことを指します。
たとえば、社会に役立つ実感を求める人もいれば、家族との時間を最優先に考える人、安心できる環境を重視する人など重視する点はさまざまです。
価値観は、仕事における意思決定の土台となり、職場との相性を左右する重要な要素といえます。
企業でキャリアアンカー診断を実施するメリット
ここからは、企業でキャリアアンカー診断を取り入れることで、得られるメリットについて説明します。
優秀な人材の離職を防げる
近年は、自身の能力を活かせる仕事や充実感を得られる環境を求めて、転職する人が増えています。
そのため、従業員が大切にしている価値観や志向を無視した配置や評価が続けば、優秀な人材が別の企業へ転職してしまうこともあるでしょう。
キャリアアンカーを踏まえて組織体制を整えれば、従業員の働く意欲や愛着が高まります。結果的に、定着率の向上にもつながります。
優秀な人材を確保する観点から、キャリアアンカー診断の活用が重要です。
従業員のエンゲージメントを高めて、離職率を低下させたい方は、下記の記事もご覧ください。
従業員の満足度が向上する
従業員の仕事に対する満足度が向上するのも、キャリアアンカー診断を実施するメリットです。
キャリアアンカー診断の結果を踏まえて業務を任せることで、従業員は自分の考えや価値観に沿った働き方ができるようになります。
反対に、望まない方向性の仕事を与えると不満を抱え、本来の力を出し切れない状況が生まれがちです。
個々の志向に合った役割や目標を設定することで、自己実現の機会が広がり、モチベーションを高めやすくなります。
適材適所の配置ができる
キャリアアンカー診断を活用して従業員の価値観や強みを把握することで、人事担当者は適材適所の配置が可能です。
従業員それぞれに合ったポジションで働ければ、意欲が高まり、結果として仕事の進め方もスムーズになります。
従業員が、自分の活躍できる場が社内にあると感じられれば、離職の抑止にもつながるでしょう。企業は、継続的に力を発揮してもらえる体制を整えられます。
無駄の少ない組織運営により、生産性アップも期待できるでしょう。
マネジメントの際に役に立つ
キャリアアンカー診断の結果を踏まえてアプローチすることで、従業員が納得しやすい形で指導することが可能です。
管理職にとって、部下のどこを見て評価するべきか、どのような声かけが響くのかは悩みの種といえます。キャリアアンカー診断を通じて、従業員の価値観や動機が把握できれば、対応方針を立てやすくなります。
従業員一人ひとりに合った接し方や、育成方法を検討するうえで、キャリアアンカー診断は有効です。
組織運営をスムーズにする、マネジメント材料として活用できます。
適切なキャリア支援ができる
キャリアアンカー診断の結果を参考に、個々のタイプに適した研修や配置転換を計画することで、無理のない形で成長を促しやすくなります。
また、企業が主体的にキャリア形成を支援する姿勢を示すことで、従業員との信頼関係が深まるのもメリットです。従業員が、安心して働ける環境づくりにもつながります。
こうした取り組みが進むと、従業員の仕事への満足度が高まり、成果の向上も期待できます。
従業員とキャリアプランを考えるうえで、役に立つ情報をまとめているので、ぜひ下記記事も参考にしてください。
企業でキャリアアンカー診断を実施する際の注意点
ここでは、企業がキャリアアンカー診断を導入する際に、事前に理解しておきたいポイントや気を付けたいことについて解説します。
診断結果で人柄を判断しない
キャリアアンカー診断によって、従業員の大切にしている価値観を知れる一方、その結果だけで「この人はこういうタイプ」と決めつけてしまうリスクがあります。
キャリアアンカー診断の結果で示される内容は、あくまで現時点で優先されている傾向にすぎません。
そのため、人柄やすべての判断基準が明らかになるわけではない点に注意しましょう。
タイプに分けずに、従業員を知るひとつの材料として受け止めつつ、対話を通じて理解を深める姿勢が求められます。
結果は状況によって変わることを理解する
キャリアアンカー診断の結果は、固定されたものではなく、環境やライフステージの変化によって変わる可能性があります。
育児や介護、家庭環境の変化などにより、これまで重視していた価値観が変わることも珍しくありません。
たとえば、出産をきっかけに、仕事の成果よりも子どもと過ごす時間を優先するケースが挙げられます。
そのため、一度の診断結果で判断するのではなく、定期的に実施して現状を把握することが重要です。
キャリアアンカー診断結果を人事に活かす方法
ここでは、キャリアアンカー診断の結果をどのように人事戦略や制度に落とし込むか、活用方法について説明します。
組織の改革につなげる
組織の体制を見直す際に、従業員それぞれのキャリアアンカーを知っておくことで、判断材料のひとつとして活用できます。
日々の業務だけではわからなかった意欲や適性を知ることで、新しい体制づくりや配置を検討しやすくなります。
また、新規事業や新部門の立ち上げの場面でも、価値観や強みを基準に人材を配置することで、隠れた可能性を引き出すことが可能です。
キャリアアンカー診断を通じて、社内の力を最大限に発揮できます。
採用時のミスマッチを予防する
キャリアアンカー診断を通じて、どのような場面で力を発揮しやすいかがわかるため、採用の段階で取り入れれば、適性を見極める手がかりとして役立ちます。
しかし、キャリアアンカーは社会経験を通して形成されていくのが特徴です。そのため、まだ経験が浅い新卒採用には向きません。
ある程度業務の経験を積んだ、中堅層以降の採用で活用することで、入社後のミスマッチ防止に役立てられます。
従業員のキャリアプランに寄り添う
キャリアアンカー診断の実施を通じて、従業員が自らの将来像をあらためて考えるきっかけを提供できます。
そのため、企業は従業員のキャリアプランに寄り添うことが可能です。
キャリアアンカー診断の結果から、仕事への向き合い方や今後の方向性が見えてくるため、本人の志向に合わせた成長支援がしやすくなります。
潜在的な強みや希望する役割を把握できれば、より個々のキャリアプランに寄り添った選択肢を提示でき、納得感のあるキャリア形成につなげられます。
企業がキャリアアンカー診断を実施する流れ
ここでは、企業がキャリアアンカー診断を導入する際の手順や進め方について、実施の流れに沿って説明します。
1. 実施の目的を明確にする
キャリアアンカー診断を始める際は、まず何のために行うのかを明確にすることが欠かせません。
目的が定まっていると、対象者の選定や実施形式、結果の使い方まで一貫性を持って進められ、従業員にも納得感のある形で説明できます。
たとえば、従業員のキャリア志向の把握、配置転換や育成施策への活用、長期的な人材戦略に反映するなどです。
企業ごとに、目的に沿った運用が求められます。
2. 対象者および実施形式を決める
キャリアアンカー診断を実施する目的が決まったら、目的に合わせて対象者を設定します。
すべての従業員に対して実施するのか、部署や役職を限定するのかで、取得する情報の内容や活用場面が変わります。
また、オンラインで個別回答する形や、集合型で実施する方式など、運用方法も選択が必要です。
市販のツールを活用したり、自社で作成したシートを使う方法もあります。
形式によって集計やフィードバックの手段が異なるため、事前の計画が重要です。
3. 従業員に対して実施をアナウンスする
キャリアアンカー診断の対象となる従業員には、まず実施の目的や結果の活用方法をわかりやすく伝えることが大切です。
匿名で行うかどうか、回答にかかる時間はどれくらいかなども事前に知らせます。これにより、安心して取り組める環境を整えます。
オンラインツールを使用する場合は、ログイン手順や操作説明を、紙で実施する場合は配布物を準備してください。
企業が丁寧に案内することで、従業員はキャリアアンカー診断に対する理解が深まり、正確な回答が期待できます。
4. キャリアアンカー診断を実施する
事前準備が完了したら、キャリアアンカー診断を実施します。
質問形式の自己回答で進める場合は記入してもらい、オンラインツールを使用する際は自動で集計が進みます。
また、診断結果は本人の成長支援やキャリア形成に活かす目的であることを、あらめて伝えることが重要です。
これにより、回答への信頼性も高まり、より有益なデータを得やすくなります。
5. 診断結果を集計・分析する
実施後に、企業はキャリアアンカー診断の結果をまとめて、個人ごとの傾向や部門全体の傾向を把握します。
スコアの提示にとどまらず、各タイプの特徴や強み、課題も整理することで、より実践的な分析が可能です。
こうして得られた情報は、人材育成や異動計画に反映させます。従業員の成長を支援しつつ、組織運営に役立てられる形で活用しましょう。
6. 実際のキャリアに活かす
キャリアアンカー診断の結果は、従業員にフィードバックして自己理解を深める機会として活用するのがおすすめです。
必要に応じて、従業員との面談やコーチングを組み合わせると、より効果的です。
企業側は部門ごとの傾向を把握し、人材配置やキャリア開発計画に反映させることで、従業員一人ひとりの納得感を高めながら、組織全体の成果向上につなげられます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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