- 更新日 : 2026年1月14日
エンパシーとは何か?ビジネスにおける重要性や具体例、高め方を解説
ビジネスシーンにおいて「エンパシー」という言葉を耳にする機会もあるでしょう。多様な価値観を持つ人々がともに働く現代において、他者を理解する力は組織運営においても重要な能力です。
エンパシーは、自分と異なる価値観の相手を想像するスキルであり、高めることで組織の信頼関係やイノベーションの創出につながります。
この記事では、エンパシーの意味やシンパシーとの違い、ビジネスにおける重要性、具体的な高め方について解説します。
目次
エンパシーとは?
エンパシーとは、どういった意味を持つ言葉なのでしょうか。まずは基本的な意味と、よく似た言葉である「シンパシー」との違いについて解説します。
エンパシーの意味
エンパシーとは、相手が置かれている状況や心情を自身に置き換え、その人のことを理解しようとする能力のことです。簡単にいえば「共感力」とも表現できます。
エンパシーが高いと、相手の感情に同調するだけでなく「もし自分が相手の立場だったらどう感じるか」「相手がなぜそのように考えるのか」を深く理解しようとします。他者を理解するためのスキルのひとつといえるでしょう。
エンパシーとシンパシーの違い
エンパシーと似た言葉に、共感や同情を意味する「シンパシー」があります。エンパシーとシンパシーの違いは、相手の感情に対して「自身の感情が動くかどうか」という点です。
シンパシーは「かわいそう」「大変だね」というように、相手の状況に合わせて自分の感情も同じように動く状態を指します。共感スキルのひとつではありますが、相手と自分の価値観が近い場合に自然と起こりやすいため、意識して発揮することは少ないでしょう。
一方、エンパシーは、相手と価値観が異なっていても、相手の視点を「主体的」に想像する能力です。シンパシーが比較的受動的な反応であるのに対し、エンパシーは能動的に相手を理解しようとするものといえます。
シンパシーについてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
エンパシーが重要視される理由
エンパシーが現代のビジネスにおいて重要視される背景には、ビジネス環境の変化や組織の多様化が挙げられます。
現代の企業では、多様なバックグラウンドを持つ人材がともに働いており、従業員一人ひとりの価値観は異なります。こうしたなかで、異なる意見を拾い上げ、新たな付加価値やイノベーションを生み出すには、互いの視点を理解し合う姿勢が欠かせません。
また、互いの考えや感情を理解することは、ハラスメント防止や従業員の精神的な安定の確保にもつながります。こうした背景から、エンパシーは性格的な特徴ではなく、必要なビジネススキルのひとつとして求められているのです。
エンパシーの種類
エンパシーはいくつかの種類に分類され、ビジネスシーンにおいても状況に応じた使い分けが求められます。ここでは主要な4種類のエンパシーについて解説します。
コグニティブ・エンパシー
コグニティブ・エンパシーは、自分とは共感しにくい相手であっても、その立場や心情に立って想像する能力のことです。「認知的共感」とも呼ばれます。
ビジネスでは、自分とそりが合わない人や、価値観がまったく異なる相手と接する機会も少なくありません。そのような場合でも、相手の心情や考えの背景を理解しようと努めることで、業務を円滑に進められるようになります。
エモーショナル・エンパシー
エモーショナル・エンパシーは、相手の価値観や感情に深い共感を示すことです。「感情的共感」とも呼ばれます。
自分が価値観や感情への共感を示すと、相手は「話を聞いてもらえた」「自分を認めてもらえた」と感じやすいため、信頼関係を深めるのに役立ちます。また、話に共感することで相手のモチベーションを高める効果もあり、結果的にチーム全体のパフォーマンス向上につながる可能性もあるでしょう。
コンパッショネイト・エンパシー
コンパッショネイト・エンパシーは、相手の考えを想像・共感したうえで、そこからなんらかのアクションを引き起こすことを指します。
気持ちを理解するだけでなく、相手の辛さや苦しみを汲み取り「助けよう」「問題を解決しよう」と行動に移すのが特徴です。相手について理解したうえで問題解決を意識する行為であることから、より実践的なエンパシーといえるでしょう。
ソマティック・エンパシー
ソマティック・エンパシーは、相手の苦しみや痛みを想像した結果、自身も同じように身体的な反応を示してしまうことです。「身体的共感」とも呼ばれます。
例として、体調が悪い人の様子を見て、自分まで体調を崩してしまうといったケースがこれに当たります。これまでのエンパシーのように能動的に発揮するものではなく、生理的な反応に近い能力です。そのためビジネススキルとして意識的に活用するシーンは少ないですが、相手の異変を素早く察知する助けになる場合もあります。
エンパシーが高い人・低い人の特徴
エンパシーが高い人と低い人には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。具体的な傾向を見ていきましょう。
エンパシーが高い人の特徴
エンパシーが高い人は、傾聴力があり「聞き上手」なのが特徴です。観察力にも優れており、言葉だけでなく表情や声のトーンといった情報から、相手の感情を読み取れます。
また、自身の価値観を絶対視せず、相手の意見を受け入れる柔軟性も持ち合わせています。相手の意見を尊重するため、相手側が不快な気分になることも少ないでしょう。
想像力が豊かな人や相手をおもんぱかる能力のある人は、相手の立場に立つことが得意なため、エンパシーが高い傾向にあります。
エンパシーが低い人の特徴
エンパシーが低い人は、自身の視点や「正しさ」に固執する傾向があります。「普通はこうするはずだ」といった、自らの経験や考えにもとづくバイアスがかかりやすく、周囲の事情を考慮せずに議論を進めて、相手を追い詰めてしまうこともあるでしょう。
また、他人の感情を読み取る機会が少ないため、悪気なく無神経な発言をしてしまうケースも見られます。思ったことがすぐ口に出てしまう人や、正論を振りかざす人は、エンパシーが低い傾向にあるといえるでしょう。
こうした人は、周囲との摩擦を生む可能性もありますが、他者に左右されず単独で完遂する作業などでは力を発揮することもあります。エンパシーが求められない部署などで活躍する可能性が高い人材です。
エンパシーの高い組織に生まれるメリット
組織全体でエンパシーが高まると、離職率の低下やイノベーションの創出、マネジメント能力の向上といったさまざまなメリットが生まれます。エンパシーの高い組織に生まれるメリットについて解説します。
安心して働けて離職率が下がる
エンパシーが高い組織では、従業員の「心理的安全性」が高まり、離職率の低下が期待できます。心理的安全性とは、地位や経験にかかわらず、誰もが率直に意見をいえる状態のことです。
失敗しても頭ごなしに否定されず、困ったときには助け合えるという信頼感が職場にあれば、従業員は安心して働くことが可能です。また、主体的に意見をいえるため、従業員自身の成長も期待できます。
こうした環境の構築は、会社への愛着(エンゲージメント)を深め、優秀な人材の定着につながります。定着率が高まれば、組織力自体の強化も見込めるでしょう。
心理的安全性についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
イノベーションが生まれやすくなる
エンパシーは、社内だけでなくユーザー視点で物事を見る際にも役立ちます。エンパシーが高いと、ユーザーが何を求めているかが見えやすくなり、顧客自身も気づいていないような潜在的なニーズを発見できる可能性がありるでしょう。
また、社内で多様な意見が出た際、エンパシーを活かしてそれらを上手にまとめられれば、複数のアイデアが合わさって、化学反応が起こることもあります。活発に意見を出し合える環境になれば、イノベーションも生まれやすくなるでしょう。
多様な人材を適切にマネジメントできる
現代は雇用の流動化が進み、職場にはさまざまな背景・経験を持つ人材が増えています。価値観や家庭環境、生まれ育った場所なども、人それぞれです。
エンパシーが高い組織であれば、こうした人材の多様性を「個性の違い」として受け入れられます。その結果、従業員一人ひとりの事情に配慮した適切なマネジメントが可能になり、誰もが能力を発揮しやすい環境が整うのです。
管理職のエンパシーが高いと、適切なマネジメントがされている組織になる可能性が高まります。
ビジネスにおけるエンパシーの具体例
実際のビジネスシーンにおいて、エンパシーはどのように発揮されるのでしょうか。具体的な会話例をもとに解説します。
上司から部下への会話
部下がミスをした際の会話においても、エンパシーの有無で対応に大きな違いが出ます。
| エンパシーがない場合 | 「なぜこんなこともできないんだ」 |
|---|---|
| エンパシーがある場合 | 「何か進めにくい要因があったか」 「あなたの立場から見て、何が難しかった?」 |
エンパシーがない場合は「なぜこんなこともできないんだ」と叱責が先に出てしまいがちです。これでは部下は萎縮し、意欲の低下を招く恐れがあります。
一方、エンパシーがある場合は「何か進めにくい要因があったか」「あなたの立場から見て、何が難しかった?」と問いかけが先に来ます。部下の視点に立って背景事情やプロセスの課題を理解しようとするため、部下は事実を報告しやすくなり、根本的な問題解決につながるのです。
部下から上司への会話
部下が上司から進捗報告を求められた際にも、エンパシーが活きます。部下の発言を例に見てみましょう。
| エンパシーがない場合 | 「とりあえずやります」 「急ぎでやらなければいけませんか」 |
|---|---|
| エンパシーがある場合 | 「資料はすでにまとまっています」 「今日の15時までに提出できます」 |
エンパシーがあれば、「上司はこの業務についてなんらかの不安や気掛かりがあるのかもしれない」と相手の心情を読み取れます。そのため、「資料はすでにまとまっています」「今日の15時までに提出できます」といった、相手を安心させる具体的な報告が可能です。
一方、エンパシーがない場合は、上司の心情を読み取れないため、自分の都合を優先した発言をしてしまいます。そのため、上司からさらに進捗を問いただされる機会が増えることが考えられます。
部下が相手の心情を先回りして読み取り、不安を解消することで、上司の信頼獲得につながるでしょう。
顧客への会話
顧客対応のなかでも、クレーム対応においては、高度なエンパシーが求められます。
たとえば、顧客がヒートアップしている際は「お客様がどれほど困り、不安を感じたか」を想像し、その感情に寄り添う言葉をかけるのが重要です。まずは相手の感情を受け止めることで、顧客の怒りが鎮まる可能性が高まります。そのうえで具体的な解決策を提案していくことが、信頼を回復するきっかけとなります。
エンパシーの高い従業員はクレームにも熱くならず冷静に対処できるため、顧客の流出を阻止でき、自社の評判を落とさずに済むでしょう。
エンパシーを高めるために企業ができること
エンパシーを高めるためには、個人の意識だけでなく企業の支援も欠かせません。組織全体でエンパシーを高めるための方法を解説します。
対話のしやすい環境をつくる
従業員同士が対話しやすい環境を整えるのは、エンパシーを高める有効な手段です。対話が増えれば、相手が何を考えているかを知る機会も増えるためです。
互いの人となりまで理解できれば、自然と相手への想像力も働きやすくなります。「この会社はどのような意見でも受け入れてもらえる」という雰囲気づくりを意識するのがポイントです。
定期的な1on1ミーティングに加え、部署を超えた交流会などを開催するのも、対話しやすい環境づくりに効果的です。さまざまな人と交流できる機会を設け、対話が自然と生まれる職場を目指しましょう。
傾聴などのトレーニングを実施する
スキルとしての「傾聴力」を高めるトレーニングを実施するのもひとつの手です。
相手の話に対して、自分で評価・判断せずに聞く技術や、相手の感情を言語化する力を養うことで、共感力を高められます。ワークショップを交えた研修会を開くなどして「聴く力」を組織的に養えば、全体的なエンパシー向上が期待できるでしょう。
従業員の感情を「見える化」する
ツールを活用して、従業員の感情を可視化していくアプローチも有効です。
たとえば、パルスサーベイなどのツールを導入し、従業員のコンディションやストレス状態を定点観測します。従業員の感情が見える化されれば、管理職が部下の心情に気づきやすくなり、エンパシーを発揮するきっかけを作れます。また、精神的な疲弊による離職やトラブルの予兆の察知にもつながり、早急な対策を打てる点もメリットです。
勤怠管理データなども合わせてサーベイ結果を確かめ、必要なエンパシー向上対策を決めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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