- 更新日 : 2025年12月5日
ストレス耐性 チェック適性検査の選び方とミスマッチ防止
「ストレス耐性チェックで正確な耐性がわかるのか?」
「高額な対策をしても、離職コスト削減に繋がる保証はあるのか?」
「部下に不調のサインがあっても、どこまで踏み込んでいいの?」
上記のように、新人採用や部下の不調についてお悩みの方も多いでしょう。
本記事では、新人採用に向けて導入すべき適性検査の紹介や部下の不調の兆候を把握し、悪化する前に適切な対応について解説します。
目次
企業がストレス耐性チェックに注目すべき理由は?
ストレスチェックは、法令を守るためだけでなく、休職や離職によるコスト削減や採用のミスマッチ防止、データを活用した職場環境の改善にもつながります。
従業員の健康を経営資源として捉えることで、企業リスクを減らし、組織力を向上させるための戦略的なツールとなるためです。
離職・休職リスクの低減とコスト削減
メンタルヘルス不調による休職や離職は、代替社員の採用や教育にかかる費用、生産性の低下など、企業にとって大きな見えないコストとなります。
事業リスクを最小限に抑える方法として、ストレス耐性チェックの導入は効果的です。
なぜなら、ストレス耐性や現在のストレスレベルを定期的にチェックすることで、従業員の不調のサインを早い段階で見つけられるからです。
早期の発見と対応が可能となり、症状が悪化する前に、産業医による面談や業務内容の調整といった、適切な予防策を講じられます。
結果として、企業の貴重なリソースを守り、持続可能な事業運営の実現にもつながります。
採用の最適化とミスマッチ防止
ストレス耐性チェックは、企業の採用活動と人材活用を最適化する上で重要です。
採用時や配属時に個人のストレス耐性を測ることで、業務の負荷が大きい職種や対人対応が多い仕事に、より適した人材を配置できるようになります。
また、単に打たれ強いかどうかだけでなく、ストレスに対する対処方法(コーピング)やプレッシャーがかかったときのパフォーマンスの傾向といった、今後の可能性も把握できます。
結果として、採用後のミスマッチによる早期離職を大幅に防げ、定着率や人材活用の精度向上につながるでしょう。
法令遵守と組織マネジメントの改善
ストレスチェックは、法令を守ることと組織の改善という、2つの面で企業経営において役割を果たします。
従業員が50人以上いる事業場では、ストレスチェックの実施が義務付けられているからです。
企業は法律で決められたことを守るだけでなく、ストレスチェックを組織マネジメントの改善にも活用すべきです。
たとえば、チェック結果をグループごとに分析することで、長時間労働が多い上司からのサポートが足りないなど、部署ごとの特徴的なストレス要因を客観的に把握できます。
結果として、データに基づいてハラスメント防止策を講じたり、業務の負担を均等にしたりするなど、より効果的に職場環境を改善できるようになります。
健康経営と企業イメージの向上
ストレス対策の強化は、企業が健康経営を進める上で重要であり、企業イメージの向上にもつながります。
健康経営では、従業員の健康を大切な経営資源と考え、ストレスチェックの実施が従業員への積極的な投資と評価されるためです。
ストレス対策の強化は、企業のブランディングが強化され、優秀な人材が集まりやすく、採用で他社との差別化が可能です。
また、現代の企業活動では、メンタルヘルス対策が企業の社会的責任や評価にも大きく関係しています。
採用・配置の適性診断
ストレス耐性を測る適性検査は、採用ミスマッチ防止と配置の最適化に有効です。
さまざまな適性検査を行い、情緒の安定度やストレスへの対応傾向を客観的に評価します。
適性検査の導入
ストレス耐性を測る適性検査の導入は、採用時のミスマッチを防ぎ、入社後の配属をスムーズに行う上で有効です。
たとえば、SPI3、CUBIC、TalentAnalyticsなどの主な検査は、性格特性や知的能力だけでなく、情緒の安定性やストレスに対する耐性・対処傾向も客観的に評価できます。
適性検査を実施する目的は、応募者が企業の環境や業務内容に対して、精神的に適応できるかどうかを予測することにあります。
検査結果をもとに、応募者の過去のストレス経験や具体的な対処法について質問する構造化面接を行えば、負担の大きい職種への適性を判断するための参考情報となります。
ストレス耐性チェックで導入すべき適性検査
企業がストレス耐性チェックのために導入すべき代表的な適性検査は、性格の特徴や行動の傾向を総合的に測定するツールです。これらは単なるテストではなく、採用や人員配置の判断材料として活用されます。
導入が推奨される主要な検査と、ストレス耐性に関する測定ポイントは以下の通りです。
SPI3
SPI3は、性格の特性や意欲的な側面、組織への適応力という3つの観点から、ストレスに対する反応や耐性を測定します。
具体的な測定ポイントや活用シーンは以下のとおりです。
| 測定ポイント | ストレス耐性との関連 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 性格の特性 | 抑うつ性緊張性など、ストレスを感じやすいか、気分が落ち込みやすいかを測る | 新卒・中途採用の初期選考 ストレスへの反応傾向を把握 |
| 意欲的側面 | 仕事に対する達成意欲や粘り強さ、困難な状況下でどれだけ頑張れるかを予測する | 業務負荷の高い部署(営業、企画など)への配置検討 |
| 組織適応性 | 協調性や活動性から、組織のプレッシャーの中で、周囲とうまくやっていけるかを測る | チームワークが重視される職場への配属検討 |
CUBIC
CUBICは、精神的な強さや情緒の安定性といった、ストレスに対する耐性を詳しく分析します。ストレスの多い職種や管理職候補者の選考に役立てることが可能です。
具体的な測定ポイントや活用シーンは以下のとおりです。
| 測定ポイント | ストレス耐性との関連 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 精神的なタフネス | プレッシャーや困難に直面した際の打たれ強さや精神的な安定性を詳細に分析する | メンタルヘルスリスクの高い職種や、管理職候補者の選抜 |
| 情緒安定性 | 感情の起伏の激しさや、冷静さを保てるかどうかを測定し、ストレスへの耐久度を判断する | クレーム対応など、感情労働が伴う職種への適性判断 |
内田クレペリン検査
内田クレペリン検査は、作業曲線から疲労耐性や集中力の持続性、安定性を測定します。とくに、ストレスがかかる状況でどの程度仕事を続けられるかや、作業中のパフォーマンスの変動を客観的に判断できます。
具体的な測定ポイントや活用シーンは以下のとおりです。
| 測定ポイント | ストレス耐性との関連 | 活用シーン |
|---|---|---|
| 作業量の変化と集中力 | 作業曲線から、疲労耐性や集中力の持続性を測定 とくに、休憩後の回復力や業務の持続力がストレス下でどう変化するかを見る | 定型業務や精密な作業が求められる職種での安定性評価 |
| 安定性・正確性 | ストレスや疲労が増した際に、パフォーマンスが大きく落ち込まないかどうか(安定型か、波があるか)を客観的に判断する | 業務の量や質に波がある部署への配置検討 |
適性検査の導入・活用における注意点
ストレス耐性チェックの結果は、不採用の直接の理由にせず、フォローアップと配属検討の補助情報にとどめましょう。
守秘義務を徹底し、法的リスクを避けると同時に、従業員からの信頼を守ることが運用の大前提となります。
採用選考での利用は補助的に留める
ストレス耐性チェックの結果は、採用選考において補助的な情報として活用すべきです。
ストレス耐性が低いことを理由に不採用とすることは、人権や職業選択の自由の観点から問題視されるリスクがあるからです。
検査結果はあくまで配属先を検討したり、入社後のフォロー体制を整えたりする際の参考情報として活用しましょう。
データはフォローアップのために活用する
ストレス耐性チェックの結果は、不採用の判断材料として使うのではなく、入社後のフォローアップ体制を作るために活用しましょう。
なぜなら、ストレス耐性の結果が適材適所の配置に役立つ貴重な情報になるからです。
たとえば、ストレスに弱い傾向が見られる場合でも、社内の人間関係が良好な部署や、業務量を調整しやすい仕事に配属すれば、本人に合った職場づくりができ、ミスマッチを防ぎやすくなります。
ストレスを感じやすい社員には、入社後のOJT時にメンターをつけたり、定期的な面談の回数を増やすことで、初期のサポート体制を強化する材料としてもこのデータは役立ちます。
守秘義務を徹底する
ストレス耐性の検査結果は、厳重な守秘義務をもって扱う必要があります。
検査結果はプライバシー性の高い情報であり、扱いを誤ると従業員からの信頼を失うだけでなく、法的なリスクにも発展する可能性があるからです。
管理や利用目的、検査結果を閲覧できる範囲(誰が結果を見られるか)について、社内で厳格なルールを設けましょう。
結果を適切に保護し、従業員の個人情報保護を徹底することが、企業がチェックツールを運用する上での大前提となります
法令遵守と組織的なリスクヘッジ
ストレスチェック制度は、法令を遵守しつつ、集団分析によって職場リスクを客観的に可視化し、事業リスクとコストを軽減します。
外部サービスを利用することで人事部門の負担を減らし、制度を効果的に運用できます。
ストレスチェック制度
従業員が50人以上いる企業に義務づけられているストレスチェック制度には、単なる法令遵守を超えた価値があります。
ストレスチェックを通じて集団分析を行い、職場の課題を客観的に明らかにできます。結果として、事業に伴うリスクやコストを減らすことが可能です。
ストレスチェック制度では、法律に基づいて仕事の負担心身の自覚症状周囲からのサポートの3つの視点を測る職業性ストレス簡易調査票(全57項目)が使われます。
高ストレス者への医師面接の手配や、集団分析レポートの作成まで一括して代行する外部委託サービスを利用すれば、人事担当者の負担を大幅に減らすとともに、制度を効果的に運用できます。
ストレスチェック制度の概要と企業の義務
ストレスチェックは、従業員が50人以上いる企業では年に1回の実施が義務付けられています。また、高ストレス者に対しては面接指導を行い、守秘義務を徹底することも必要です。
集団分析を活用することで、職場環境の改善やリスク管理を実施し、組織全体のエンゲージメント向上を目指します。
ストレスチェックの実施
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために、法律で定められている義務です。企業は毎年1回、定期的にストレスチェックを実施することが求められています。
検査では、厚生労働省が定めた職業性ストレス簡易調査票などを用いて、次の3つの領域を確認します。
- 仕事の量や質などの仕事の負担
- 不眠や食欲の低下などの心身の自覚症状
- 上司や同僚などからの周囲のサポート
ストレスチェックを行うことで、従業員は自分自身のストレスの状態に気づけ、企業も組織全体の改善活動に役立つ基礎データを手に入れられます。
高ストレス者への面接指導
高ストレス者への面接指導は、企業が果たすべき大切な法的義務であり、従業員の健康を守るための最後の砦となります。
検査によって高ストレスと判定された従業員が医師による面接指導を希望した場合、企業は必ずその希望に応じて、面接を行わなければなりません。
面接指導を受けた結果として、医師から労働時間の短縮や部署異動などの就業に関する措置について意見を聴き、必要があれば実際に措置を講じます。
迅速かつ的確な対応を行うことは、従業員の心身の健康回復や、企業の安全配慮義務の実現に直結します。
検査結果の守秘義務
ストレスチェックの検査結果には、厳格な守秘義務が定められています。
企業が従業員の同意なしに検査結果を取得したり、不適切な目的で利用したりすることが厳しく禁じられているためです。
高ストレス者への面接指導をもとに、降格や解雇などの不利益な取り扱いをすることも禁止されています。
結果の適正な管理と利用は、制度の信頼性を保ち、従業員が安心して検査を受けられる職場環境づくりの土台となります。
集団分析の実施と活用
ストレスチェックは、個人ごとの状態を把握するだけでなく、組織全体の改善に役立てることで、本来の効果を発揮します。
企業は、チェック結果を部署やチームごとに集計・分析し、職場ごとのストレス要因を把握するよう努めなければならないからです。
集団分析の結果は、データに基づいた客観的な改善策を講じるための根拠となります。
たとえば、労働時間や業務の負荷を見直したり、ハラスメント防止のために職場でのコミュニケーションを改善したりするなど、具体的な職場環境の改善が求められています。
結果として、従業員全体のエンゲージメントと生産性の向上につながるでしょう。
現場での早期発見と対応の実行
管理職は、簡易チェックシートを使って部下の不調のサインを客観的に把握し、EAP(外部相談窓口)へスムーズに繋げる体制を整える必要があります。
早期発見と専門家との連携によって、従業員の休職を未然に防ぐことが可能です。
簡易セルフチェックシートの導入
管理職が部下の不調を早期に把握するためには、簡易セルフチェックシートの導入が有効です。
簡易セルフチェックシートは、部下との面談時や日常的な観察時に、客観的な視点を得るためのサポートとなるからです。
チェックシートは、厚労省提供のものや自作のリストを活用し、睡眠、食欲、表情、業務効率、遅刻・欠勤の増加など、目に見えるストレスサインのチェック項目を整えます。
結果として、不調の早期兆候を逃さずに把握でき、適切なタイミングで面談や声かけを行うきっかけ作りとして活用できます。
EAP(従業員支援プログラム)
EAPとは、従業員とその家族のメンタルヘルスや生活上の悩みを、外部の専門家が支援する、企業導入の相談プログラムです。
EAPの導入は、従業員のメンタルヘルスを専門的に守るために有効な手段と言えます。
ストレスを抱えた従業員が管理職を経由せずに、社外の専門家によるサポートを直接受けられる安全な導線を確保できるからです。
この制度を導入する目的は、管理職の対応を超える複雑な問題や、プライバシー性の高い悩みを専門家に任せられる点にあります。
問題が深刻になる前に、専門的な支援によって従業員の早期回復を促し、休職などの事態を未然に防ぐことが期待できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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