- 更新日 : 2025年12月5日
転職の適性検査で落ちる人の特徴は?内容や導入目的、選定ポイントを解説
適性検査は「能力検査」と「性格検査」で構成されており、就職・転職の選考試験で活用される選考プロセスの1つです。適性検査の結果に基づいて、求める人物像にマッチしているかを判断できます。しかし、適性検査の種類は数多くあるため、自社で使用している適性検査が最適かどうか悩む企業も多いでしょう。
この記事では、転職の適性検査に落ちる人の特徴や導入する目的、自社に最適な適性検査を選定するポイントについて解説します。
目次
転職時の適性検査で落ちる人の特徴
転職時の適性検査では、合格基準に達していないことに加えて、求める人物像との不一致や回答の一貫性の欠如など、総合的に判断されます。ここでは、転職時の適性検査に落ちる人の特徴について解説します。
求める基準に達していない
能力検査で企業が設定する合格基準に達していない場合は、適性検査で落ちやすくなります。合格ラインは企業ごとに異なり、正解率や偏差値で一定の基準を設けている場合が多くみられるためです。
採用倍率が高い企業では、基準未満の応募者をふるい落とすことで、選考効率を高めています。適性検査の問題は基本的に選択式であるため、全問解答しなければ正答率が上がりにくい傾向です。
時間不足で未解答が多い
能力検査は時間内に全問解答できていないと落ちやすい傾向にあります。問題数が多いため、1問に時間をかけすぎると未解答が増え、正答率が下がる原因になるからです。
解答スピードやタイムマネジメント能力も、実務適性として企業が重視している要素です。未解答が多く残っている場合、決断力や処理能力が不足していると判断されやすくなります。
能力検査で出題される問題の多くは基礎的な内容のため、瞬時に対応できる力が必要です。制限時間内での解答完了は、集中力や計画性を測る指標としても使われます。
求める人物像とマッチしていない
性格検査では、応募者の特性が企業の求める人物像と一致しているかを重視しています。協調性・柔軟性・挑戦意欲といった傾向が、社風や職種に適しているかが評価のポイントです。
企業の価値観や文化と応募者の行動特性が合わない場合、早期離職のリスクがあると判断されます。性格に「正解・不正解」はありませんが、業務適性や組織への適応度の観点から不採用とするケースもみられます。企業の求める人物像と大きく乖離していると、ほかの要素が優れていても、選考の通過は困難です。
応募者にとっても、自分に合わない企業で働くことは長期的な負担につながるでしょう。そのため、適性検査は、企業と応募者双方のミスマッチを防ぐための重要な判断材料となります。
回答に一貫性がない
性格検査では、同じテーマに関する質問を繰り返すことで、回答の一貫性をチェックしています。応募者が自分を良く見せようとして無理な回答をすると、矛盾が生じやすくなります。たとえば、「リーダーシップがある」とする一方で「意見を言うのが苦手」と答えると、整合性に欠けると判断されるでしょう。
一貫性がない結果は、「自己理解が浅い」「信頼性に欠ける」と見なされ、適性検査で落ちるリスクにつながります。正直かつ自然体で回答したほうが、結果としてマッチ度の高い企業と出会いやすくなります。
回答が極端に偏っている
性格検査で極端に偏った回答は、信頼性に欠けると判断され、適性検査の段階で落ちてしまいます。「一度も失敗したことがない」などの現実離れした回答は、正直さを疑う要素となるからです。
自分を過度に良く見せようとする傾向は、企業が組織との適合性を疑問視する原因となります。偏った傾向は、入社後にチームワークや対応力で課題が生じると判断される可能性があります。無理に理想的に見せようとせず、実際の考えに近い自然な回答を意識しましょう。
転職者採用で実施する適性検査の内容とは?
転職者の適性検査は、実務遂行力を測る能力検査と、組織への適応力を見極める性格検査で構成されます。両者を組み合わせると、スキルと人物の両面から採用の精度を高め、ミスマッチの防止につなげられます。
能力検査
能力検査は、応募者の基礎学力や論理的思考力を評価するための検査です。出題内容は、国語に相当する「言語分野」と、数学に相当する「非言語分野」に大別されます。
言語分野では、文章の読解力や語彙力、論理的に説明する力が問われます。非言語分野では、計算力や図表の読み取り、条件整理などの数的処理能力が重視されるポイントです。能力検査の結果は、入社後に求められる実務遂行力を見極める材料として活用されます。
性格検査
性格検査は、応募者の価値観や行動傾向、ストレス耐性などを把握するために実施されます。業務への適応力や組織風土との相性を見極めるための判断材料です。
回答の一貫性やバランスから、誠実さや自己理解の程度も間接的に評価できます。自社の求める人物像と照らし合わせることで、ミスマッチの防止も可能です。
検査結果は人材配置や育成方針の検討にも活用される場合があります。性格検査は「落とすため」ではなく「合う人を見極めるため」に設計すると、効果的に活用できます。
転職者採用に適性検査を導入する目的
転職者採用における適性検査は、応募者の能力や特性を客観的に把握し、自社とのマッチ度や活躍の可能性を見極めるために実施されます。適性検査の導入により、主観に頼らずに公正な判断を行えます。
応募者が自社にマッチするかを判断するため
適性検査は、応募者が自社の社風や職務内容に適応できるかを見極めるために活用します。スキルや経験が十分でも、価値観や働き方が合わない場合は早期離職のリスクが高まるからです。
また、性格検査を通じて、協調性や柔軟性などの行動特性を把握できます。リーダー職や対人業務が多いポジションでは、統率力や対人関係能力を評価できます。応募者が企業理念や価値観に共感できるかどうかも、入社後の定着や活躍に影響するポイントです。
このように適性検査では、面接だけでは判断が難しい内面的な傾向を、検査結果と照らして総合的に評価できます。
選考の補助ツールとして活用するため
適性検査は、応募者が多い場合の初期選考におけるふるい落としの基準として活用されます。面接だけでは判断しづらい論理的思考力や性格の傾向を可視化できるからです。
適性検査を書類選考や面接と組み合わせると、採用の精度と客観性の向上が期待できます。また、面接前に適性検査の結果を確認すると、深掘りすべきポイントの明確化も可能です。
適性検査の活用により、採用担当者の主観による評価の偏りを抑制できるため、公平な判断を行えます。さらに、採用後のミスマッチや早期離職の防止にもつながるため、中長期的なコスト削減効果も期待できます。
応募者の基礎能力を確認するため
適性検査を活用すると、応募者の基礎学力や一般常識を客観的に確認できます。言語分野では、日常業務に必要な読解力や文章構成力を、数理能力検査では、計算力や論理的思考力などの考える力を評価できます。適性検査は職種に関係なく、社会人としての最低限の教養や理解力を持っているかを見極める手段です。
また、適性検査の活用で、客観的データにもとづいた評価ができ、属人的な判断や先入観による選考ミスを防ぎやすくなります。採用後の育成負担やトラブルを減らすためにも、基礎能力の確認は重要です。
転職者採用の適性検査の種類
転職者採用で活用される適性検査には、評価する内容や受検方法にそれぞれ特徴があります。SPI3や玉手箱Ⅲなど主要ツールの特性を理解し、自社の職種や選考目的に合う適性検査を選びましょう。
SPI3
SPI3は株式会社リクルートが提供する代表的な適性検査です。検査内容は、言語・非言語といった能力検査と、性格検査の2種類で構成されています。性格検査は約300問あり、応募者の行動傾向や職場適応力を可視化できます。
SPI3の受検形式は、以下の4種類です。
- テストセンター
- Webテスト
- インハウスCBT
- ペーパーテスト
能力検査では、読解力・計算力・論理的思考力など、業務遂行に必要な基礎力を測定します。SPI3は柔軟な受検環境と実務に直結する評価軸から、多くの業種・職種で採用されています。
参考:適性検査「SPI」とは?|就職準備応援サイト|リクルートマネジメントソリューションズ
玉手箱Ⅲ
玉手箱Ⅲは、日本エス・エイチ・エル株式会社が提供するWeb型適性検査であり、幅広い業界で利用されています。検査科目は以下の4分野で構成されます。
- 言語
- 計数
- 英語
- パーソナリティ(性格・意欲)
玉手箱Ⅲの問題形式は各分野1種類に固定され、同じ形式の設問が連続して出題される特徴があります。短時間で大量の問題に解答する必要があるため、正確さとスピードの両立が求められます。
玉手箱Ⅲの性格検査では、入社後の活躍の可能性や企業風土とのマッチ度の評価が可能です。汎用性・導入のしやすさから、多くの企業が玉手箱Ⅲを選んでいます。
GAB
GABは、日本エス・エイチ・エル株式会社が提供する適性検査です。検査は以下の項目で構成されます。
- 言語理解
- 計数理解
- 英語(形式による)
- 性格検査
受検形式は、Webテストやテストセンター、マークシートから選べます。言語・計数は論理的読解や計算処理を通じて、知的能力を客観的に測定できます。性格検査では職場適応力や行動傾向を分析できるため、採用後のミスマッチ防止に効果的です。
クレペリン検査
クレペリン検査は、正式には内田クレペリン検査と呼び、株式会社日本・精神技術研究所が提供する心理検査です。一桁の足し算を制限時間内に繰り返し行い、作業能力や性格特性を数値化します。
計算量の推移やミスの傾向から、ストレス耐性・集中力・持続力といった行動特性を分析できます。クレペリン検査は紙と鉛筆で実施されるため、Web形式には対応していません。
クレペリン検査は、官公庁や教育、医療業界などで導入例が多く、責任感や作業安定性が求められる職種に適しています。面接では判断しにくい、内面的なパフォーマンス特性を客観的に把握する手段として効果的です。
参考:内田クレペリン検査 〜検査について | 株式会社 日本・精神技術研究所(日精研) | 心理アセスメント・心理トレーニング
CUBIC
CUBICは株式会社エージーピーが開発した適性検査で、Web形式と筆記形式に対応しています。能力検査は以下の5科目から構成され、難易度の選択が可能です。
- 言語
- 数理
- 論理
- 図形
- 英語
CUBICの性格検査は123問で構成され、回答の整合性チェック機能も備えています。採用だけでなく、人材育成や配置の評価にも活用されています。CUBICは柔軟な設計が可能であり、職種や企業ごとの要件に合わせてカスタマイズできる汎用性の高さが特徴です。
適性検査を選定するときのポイント
適性検査を選ぶ際の重要なポイントは、ツールの知名度や価格ではなく、自社の採用基準と照らして、何をどう見極めたいのかを明確にすることです。採用の目的を整理し、適性検査の結果を活かせる仕組みを整えましょう。
自社が求める人材を見極められるか
適性検査は、自社の求める人物像や評価基準に合った内容であるかの事前確認が重要です。コミュニケーション力や協調性など、業務に直結する特性を見極められる設計かをチェックしましょう。応募者と既存社員の相性分析が可能な検査であれば、配置や育成にも活用可能です。
適性検査で評価可能な要素の粒度が粗すぎる場合、具体的な人材要件とのズレが生じやすくなります。面接や履歴書では判断が難しい特性を、どの程度まで深く測定できるかを見極め、自社に合った検査を導入することで、採用ミスの防止と選考プロセスの効率化が期待できます。
費用対効果が合っているか
適性検査は、導入や運用にコストが発生するため、価格体系を事前に把握することが重要です。初期費用や月額費用、従量課金制など、ツールごとに料金形態が異なります。
適性検査の受検人数や採用規模に応じて、無駄のない課金モデルを選ぶと、コストを抑えられるでしょう。年間契約型や従量制のほか、無料プランが用意されているツールもあります。検査の精度や分析機能のレベルによって価格が大きく変動するため、注意が必要です。
適性検査はコストだけでなく、選考の質・スピード・ミスマッチ防止の効果を加味して、総合的に導入判断をすることが大切です。
検査結果に信頼性があるか
適性検査を選ぶ際は、検査結果の信頼性を確認しましょう。年間受検者数や導入企業数など、導入実績が豊富な検査であれば、データの精度も高まりやすくなります。また、同業種・同規模の企業での活用例があれば、自社でも有効活用できます。
適性検査の統計的な妥当性や、信頼性が検証されているかも重要なポイントです。偏差値や比較データのベースとなる対象者数が多いほど、分析の正確性が向上します。さらに、採用時だけでなく、配属・育成・評価などにも活用できる検査であれば、より高い費用対効果が見込めます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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