- 更新日 : 2025年12月5日
辞めて欲しくない人が辞める6つの原因とは?優秀な人材の流出を防ぐための対策も紹介
どの企業にも、経営陣や上司から期待されているエース級の社員がいるのではないでしょうか。ただ、そのような辞めて欲しくない人ほど、突然退職を申し出ることがあります。
実際、優秀な人材が退職を選ぶことに対して「何がきっかけとなっているのだろう」「貴重な人材の退職を防ぐにはどうすれば良いのか」と疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、辞めて欲しくない人が辞める主な原因を6つ解説します。また、社員が退職を検討しているときのサインや優秀な人材の流出を防ぐ具体的な方法もまとめています。
目次
辞めて欲しくない人が辞める6つの原因
辞めて欲しくないと感じるほどの優秀な社員が退職を決意してしまう主な原因を6つ紹介します。
1. このまま会社にいても成長できないと感じる
ずっと会社に残っていても成長が見込めないと強く感じるようになると、会社を退職する引き金になりやすいです。
具体的には、以下のような状況や環境が退職の要因となり得ます。
- ルーティンワークばかりで挑戦的な仕事が与えられない
- ロールモデルとなる上司や先輩がいない
- 新しいプロジェクトが発足されても、常に同じメンバーが担当していて自分にチャンスが回ってこない
- 旧来のやり方に固執する人ばかりで、新しい知識やスキルを学ぶ機会がない
優秀な人材の中には、自身の市場価値を常に意識している人も少なくありません。
成長できる機会がないと、「この会社にいても新しいスキルが何も身につかない」「履歴書に記載できるようなことがない」「市場から取り残されてしまう」と危機感を抱きます。この危機感がきっかけとなって転職を考え始める人が多いのだと考えられます。
2. 正当に評価されない
自分の働きや成果が正当に評価されないことに対して不満を抱くケースもあります。特に以下のような状況は、社員の不満を募らせる要因となりやすいです。
- 曖昧な評価制度によって、成果を何も出していない社員と給与や待遇が変わらない
- 上司の主観や好き嫌いで評価が決まっていると感じる
- 年功序列の文化が根強く、年齢や社歴が若いというだけで重要な役職に就けない
優秀な社員ほど、自分のスキルや実績がきちんと評価されるのを望む傾向にあります。また、正当に評価されていないという感覚は、モチベーションを著しく低下させることにもつながります。
もし評価されない状態が続けば、「自分の実力や成果を正当に評価してくれる会社が他にあるかもしれない」と考えて、転職を決意させてしまう可能性が高いです。
3. 会社に将来性がないと感じる
会社に将来性がない、会社のビジョンに共感できないと感じて退職を決断する人もいます。以下のいずれかの状況に該当する場合は、特に注意したほうが良いでしょう。
- 将来のビジョンと現在の方針や業務内容が矛盾している
- 経営陣が語るビジョンが抽象的で共感しにくい
- 業界全体が大きな変革期にあるのに、自社だけが旧来のビジネスモデルに固執している
- 業績が悪化しているにもかかわらず、原因を市場のせいにして本質的な改革から目を背けている
エース級の社員の中には、業界全体の動向を把握したうえで会社に将来性があるのかを常に見極めている人もいます。
そのため、会社や業界の未来に希望が持てないと感じると、より先進的な企業や今後需要が伸びそうな業界へ転職を考え始めるケースも少なくありません。
4. 裁量権がなくキャリアアップも望めない
現在の業務に裁量権がないことやキャリアアップを望めないことも、優秀な人材が退職する理由となり得ます。
- マイクロマネジメントが横行しており、自分で考えて行動する余地がない
- 新しいアイデアを提案しても、「前例がないから」「リスクがあるから」と挑戦させてもらえない
- 社内の役職ポストが詰まっており、この先10年ほどは今のポジションから変われそうにない
業務に対して裁量権がないと、「信頼されていない」「ただの歯車だ」と感じる人も多くいます。また、キャリアアップが望めないような状況は、今後も引き続き同じポジションで同じ業務を担当することが確定しているのと同じです。
このように成長の機会や昇進の道が閉ざされていると、モチベーションを保ち続けるのは難しいでしょう。別の会社へ転職しようと考えるのも不思議ではありません。
5. 生産性のない業務が多い
生産性のない業務にフラストレーションが溜まって、最終的に退職を選ぶケースもあります。具体的には、以下のような状況です。
- 目的のわからない定例会議に毎週拘束される
- 部門間の連携体制が整っておらず、社内調整のような業務に多くの時間を費やしている
- 時代遅れのITツールを使い続けており、簡単な作業に膨大な時間がかかる
生産性のない業務が多いという状況は、それだけ成長できる時間も機会も奪われていることを意味します。
非効率な環境が改善されない場合、「より本質的な業務に時間を割きたい」「合理的な会社で働きたい」という考えが強くなって転職を決断する人もいるでしょう。
6. 柔軟な働き方ができない
会社が柔軟な働き方を認めていないせいで会社に残ることが難しくなり、以下のような理由で退職を選ぶ可能性もあります。
- 育児や介護に専念したいが、時短勤務や勤務地の変更といった対応が認められない
- 業界・職種的に可能なはずであるが、リモートワークやフレックスタイム制度の導入に否定的である
- 基本給が低いのに副業が全面的に禁止されており、生活が苦しくなっている
現代の日本において、リモートワークやフレックスタイム制などは、特別な福利厚生ではなく当たり前の制度となりつつあります。
それにもかかわらず、新しい社内制度の導入を先延ばしにし続けると、より制度の整った会社へ転職を考える人が出てくるのは自然なことでしょう。
社員が退職を考えているときのサイン
従業員が退職を考え始めてから実際に申し出るまでに、以下のようなサインや前兆が見られることがあります。
- 新しいプロジェクトへの参加を断る
- 毎日定時で帰るようになる
- 有給の消化日数が増える
- 社内イベントへの参加や周囲との雑談を避けるようになる
- 会議での発言が減る
- テレワークの申請が増える
もし上記のような行動が見られたら、会社に注力する時間を減らして転職活動に本腰を入れようとしている可能性があります。
ある日突然、退職を告げられることもあるため、面談を設定したり雑談がてらに様子をうかがったりして対策を打ちましょう。
辞めて欲しくない人を引き止めたいときはどうすれば良い?
辞めて欲しくない人を引き止める場合のおすすめの流れを紹介します。
1. 退職理由についてヒアリングをする
まずは1対1の面談の場を設けて、退職理由について丁寧にヒアリングしましょう。この面談の目的は引き止めの交渉や説得をすることではなく、あくまでも退職を決断した根本的な理由を理解することです。
実際の面談の場では退職の意向を一旦受け入れ、相手が安心して話せる雰囲気を作ります。そして、「なぜ辞めようと思ったのか」「今後について何か不安なことがあったのか」などと落ち着いて話を進めましょう。
また、話の途中で「でも」「しかし」と反論したり自分の意見を一方的に述べたりせず、相手が話し終えるまで傾聴する姿勢も重要です。
相手がすべてを話してくれた後であれば、本質的な退職理由を探るために質問をしても問題ありません。ただ、このときも圧をかけたり脅したりするのではなく、冷静に質問をしましょう。
2. 代替案を提示する
ヒアリングによって根本的な退職理由が明らかとなったら、その原因を解決できる代替案を提示してみると良いでしょう。
具体的には、評価制度の見直し、配置転換、新しい社内制度の導入など、さまざまな方法があります。
ただ、安易な約束はするべきではありません。実現不可能なことや明確に答えられないことを約束すると、本人の信頼を損なってしまうことも考えられます。
よって、1人で判断するのが難しい場合は、「持ち帰って検討させて欲しい」と正直に伝えるのが望ましいです。加えて、「この件は◯◯さんに聞いてみる必要があるので、△△日までに回答します」のように今後のアクションもあわせて明示しましょう。
3. 再度検討してもらう
具体的な代替案を提示できたら、退職について改めて検討してもらう時間を設けます。すぐに返答を促すよりも、代替案を踏まえて冷静に考えてもらったほうが双方にとってより良い結果につながりやすいためです。
1週間ほどの猶予を持たせて、「△△日に再度、面談したい」と1対1のミーティングを再設定しましょう。
そこでもし、退職を考え直してくれた場合は、代替案を実行して本人の希望をなるべく汲めるように働きかけます。
引き止めが叶わなかった場合は、円満な退職を目指すことに切り替えましょう。業務委託としての継続や再雇用などの話もすれば、退職後もより良い関係を築ける可能性があります。
社員を引き止める場合の注意点
実際に社員を引き止める際は、以下の点に注意しましょう。
- 感情的にならない
- 昇給や昇進など安直な提案をしない
- 本人の意思が揺るがない場合は退職を受け入れる
脅したり執拗に説得したりすると相手を萎縮させてしまううえに、余計に退職の意思が硬くなる可能性もあります。なるべく冷静に話すことを心がけましょう。
また、退職理由をあまり聞かずに昇進や昇給などの安直な提案をするのも避けるべきです。「役職やお金で解決しようとする会社なのか」とがっかりさせてしまうことも考えられます。退職理由の本質的な部分を踏まえて、的確な代替案を提示することが大切です。
そして、退職は労働者に認められた自由な権利であり、民法の第627条の第1項でも無期雇用の従業員はいつでも退職を申し入れることができると規定されています。そのため、説得しても本人の意思が変わらない場合は、潔く退職を受け入れましょう。
貴重な人材の流出を防ぐための主な対策
貴重な人材の流出を防ぐためにできる主な対策を紹介します。
定期的に面談を行う
1on1ミーティングのような、上司と部下が定期的に面談できる機会を設けましょう。業務の進捗を確認するだけでなく、どのようなキャリアを考えているのか、何か不満を抱えていないかなどを把握することが目的です。
キャリアに対する悩みや人間関係での不満などのほかに、プライベートでの困り事や近況なども含めて聞くと信頼関係が深まりやすいです。従業員との信頼関係を築けていれば、実際に会社への不満を抱えている場合に早い段階で打ち明けてもらいやすくなります。
面談は部下の声を直接聞ける貴重な場です。定期的に顔を合わせて話をすることで退職の兆候を早めに察知できるようになるでしょう。
また、1on1ミーティングにて会社に改善して欲しいポイントを知ることで、新しい制度導入のヒントを得られたり評価制度を見直すきっかけになったりする可能性もあります。
社員が打ち明けてくれた不満や要求は、持ち帰って社内で慎重に検討することをおすすめします。そして、本人との次の面談では「このような対策を考えている」「実際にこの制度が導入されることとなった」など進捗も一緒に伝えるとなお良いです。
評価制度を整える
評価制度を現代の働き方や価値観に合ったものへアップデートすることも大切です。年功序列を完全に廃止する必要はありませんが、個人の成果や貢献度を客観的かつ公平に評価する仕組みを整える必要があります。
現代に合った評価制度にするためには、評価の基準や評価の手法を一から見直すと良いでしょう。正当かつ公正に評価してもらえる制度があれば、頑張っても損をするという不公平感を払拭できるだけでなく、社員のモチベーションを高めることも可能です。
新しい評価制度が完成したら、どのような行動と成果がどのように評価されるのかという評価基準を全社員に公開するのが望ましいです。評価基準を公開することで、上司の主観や好き嫌いで評価が決まるという疑念を取り除けます。
評価基準の作り方について詳しく知りたい人は、ぜひ以下の記事をご参照ください。
キャリアパスや昇進の道を明確に示す
従業員が会社で長く働き続けることをイメージできるように、キャリアパスや昇進の道を明確に示すことも重要です。
たとえば、「一般社員・主任・係長・課長・部長」の道筋や各役職に就くために必要なスキルなどを具体的にまとめ、全社員がいつでも確認できる状態にしましょう。
また、管理職を目指すコースだけでなく、特定の分野を極める専門職コースを用意するなど多様なキャリアの選択肢を用意できるとなお良いです。
さらに、さまざまなキャリアパスを歩んで活躍している先輩社員のインタビューを社内報で特集するという方法もあります。具体的なロールモデルを示せるため、社員がステップアップの方法や自身の将来像を想像しやすくなります。
柔軟な働き方ができる制度を導入する
従業員一人ひとりのライフステージを考慮して、柔軟な働き方ができる制度の導入も検討しましょう。
- リモートワーク
- フレックスタイム制
- 時短勤務
- 週休3日制
- 副業の許容
上記のような制度があれば、優秀な人材が育児や介護といった事情でキャリアを諦めることなく、長く働き続けられます。
また、多様な働き方を認める企業文化は、従業員とのエンゲージメントを高められるだけでなく、企業の魅力向上にも役立ちます。
たとえば、採用ページや求人票で上記の制度をアピールすれば、採用活動において人材を獲得しやすくなるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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