• 更新日 : 2025年12月5日

ロスジェネとは?意味や時代背景・特徴・直面している課題と対策をわかりやすく解説

就職氷河期の時代に社会へ出た「ロスジェネ世代(ロストジェネレーション世代)」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

景気後退のあおりを受け、正社員として働くことが難しかったこの世代は、今もなお雇用や収入面で多くの課題を抱えています。

「ロスジェネとは具体的にどんな世代なのか」「どの年代が該当するのか」「なぜこのような時代が生まれたのか」「どんな特徴や価値観を持つのか」など、気になる疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、ロスジェネ世代の意味や誕生の背景、仕事観・価値観の特徴から、他世代との違い、現在抱える課題、国や企業による支援策までをわかりやすく解説します。

さらに、ロスジェネ世代がこれからのキャリアを前向きに築くための転職・スキルアップのポイントも紹介しています。

社会や働き方の変化を理解したい方や、自分がロスジェネ世代に該当する方は、ぜひ最後までご覧ください。

ロスジェネ(ロストジェネレーション)とは?

ロスジェネとは「ロスト・ジェネレーション(失われた世代)」の略で、バブル崩壊後の1993〜2005年頃に社会人となった人々のことです。

新卒で社会に出たタイミングで就職氷河期に直面し、正社員採用が大幅に縮小した時期に重なったため、非正規雇用や不安定な職に就かざるを得ない人が増え、キャリア形成が難しくなりました。

さらに、景気後退や成果主義の浸透、終身雇用の崩壊といった社会構造の変化が重なり、長期的な経済格差が広がる要因にもなりました。現在でも、この世代は賃上げの遅れや雇用不安などの影響を受け続けています。

ロスジェネ世代が生まれた背景

ロスジェネ世代が生まれた背景には、バブル崩壊による長期的な経済停滞、新卒採用の大幅な縮小に伴う就職氷河期の到来、そして成果主義の浸透や非正規雇用の拡大といった雇用構造の変化が重なったことがあります。

これらの要因が若年層のキャリア形成に大きな影響を与え、「失われた世代」と呼ばれる状況を生み出しました。

以下では、ロスジェネ世代が誕生した背景を3つの要因から解説します。

バブル崩壊と経済停滞

1980年代後半に訪れた好景気であるバブル経済は、金融引き締め策により急速に崩壊しました。株価や地価が急落したことで、多くの企業が倒産し、銀行も経営危機に追い込まれた現象です。

1990年代初頭からは「失われた10年〜20年」と呼ばれる長期不況に突入し、企業は人件費削減や採用抑制を強化しました。この環境下で影響を受けたのが若年層であり、これがロスジェネ世代の形成につながりました。

新卒採用の縮小と就職氷河期の到来

バブル崩壊後、多くの企業が新卒採用を大幅に縮小しました。就職氷河期のピークである1999年第一四半期には、有効求人倍率が0.48倍にまで落ち込むほど深刻な状況になったデータも残っています。

この影響で希望する職種に就けない例や、不本意な形での就職が増加しました。「就職氷河期」は1994年の流行語大賞にもノミネートされるほど社会問題として注目されました。

成果主義・非正規雇用拡大が進んだ時代

当時は、成果主義や実力主義が導入され、従来の終身雇用制度が崩れ始めた時期です。

1985年に制定された労働者派遣法は、2003年の改正により非正規雇用の拡大を後押ししました。その結果、非正規雇用率は90年代前半から後半にかけて1.5倍に増加しました。

企業は人件費削減を進め、安価な労働力として非正規雇用に依存する形が定着したのです。ロスジェネ世代は正規雇用の機会を十分に得られず、長期的な所得格差が生まれる一因となりました。

ロスジェネ世代の特徴と価値観

ロスジェネ世代は、厳しい就職氷河期を経験したことから、働き方やお金、将来への向き合い方に独自の価値観を形成してきました。

仕事に対して真面目で責任感が強く、資格取得やスキルアップへの意欲も高い一方で、将来への不安から貯蓄志向が強く、慎重でやや悲観的な傾向を持つ人も少なくありません。こうした背景から、結婚や大きな消費に対して消極的になりやすい側面も見られます。

ここでは、ロスジェネ世代の主な価値観について項目ごとに紹介します。

仕事に対して真面目で責任感が強い

ロスジェネ世代は、厳しい就職環境を乗り越えた経験から、仕事に対して前向きで真面目に向き合う傾向があります。

働けることへの感謝が大きく、指示に忠実に応えようとする姿勢が強いです。成果を上げることで生き残ろうとする意識が根強いため、高い専門性やスキルを求めて努力を続ける特徴もあります。

資格取得やスキルアップへの意欲が高い

「代わりはいくらでもいる」という社会状況の中でキャリアを築いてきたため、ロスジェネ世代はスキルや資格を重視します。

自己研鑽に積極的で、資格取得やリスキリングを通じて専門知識を高める人も少なくありません。成果主義が浸透する中で評価を得るためにも、スキルを武器にキャリアを形成する姿勢が強く表れます。

将来への不安から貯蓄志向が強い

若い頃にバブル崩壊や不況を経験した影響で、将来への不安が根強い世代です。

収入が安定しない時代を生きてきたことで浪費を避け、堅実な生活を重んじます。消費より貯蓄や資産形成を優先する傾向が強く、老後や年金問題への不安が行動の背景にあります。

慎重で悲観的な傾向がある

バブル崩壊を間近で見た体験から、ロスジェネ世代は将来に対して慎重になりがちです。

就職や転職ではリスクを避ける判断をしやすく、キャリア形成でも安定を重視します。社会や経済への不信感を抱えやすい点も世代の特徴として表れます。

結婚や消費に消極的な傾向がある

経済的不安や所得の低さにより結婚へのハードルが高く、生活維持を優先するために贅沢や大きな消費を控える傾向が続きます。

非正規雇用や賃金停滞が背景にあり、家庭を持ちにくい現実が行動に影響しています。消費では節約を重んじ、実用性を重視した選択をしやすい点も特徴です。

ロスジェネ世代と他の世代との違い

ロスジェネ世代は、就職氷河期に社会へ出たことで非正規雇用や収入不安に直面しやすく、慎重で堅実な価値観を形成した点が特徴です。

上の世代の安定志向と、下の世代のデジタルネイティブで柔軟な価値観の狭間に位置し、社会構造の大きな変動の影響を強く受けた世代といえます。

他の世代の特徴は次の表のとおりです。

世代育った環境価値観の特徴
団塊世代高度成長期・終身雇用安定志向、組織への忠誠
バブル世代好景気・大量採用楽観的、社交的
ロスジェネ世代氷河期・雇用不安慎重・現実的、自己防衛的
ゆとり/Z世代デジタル環境多様性・柔軟な働き方志向

ロスジェネ世代が抱える課題

ロスジェネ世代は、就職氷河期を経験した背景から、雇用の不安定さや賃金格差、将来不安など、他の世代と比べて特有の課題を抱えています。

ここでは、代表的な特徴をわかりやすく紹介します。

非正規雇用・賃金格差の問題

ロスジェネ世代は、バブル崩壊後の就職氷河期に直面し、正社員として就職できず非正規雇用を選ばざるを得なかった人が多く存在します。非正規雇用では賃金や昇給の機会が限られるうえ、退職金や賞与にも差があり、長期的な所得格差につながります。

さらに、企業が若年層採用を優先してきた経緯から、ロスジェネ世代の賃上げが後回しになることも少なくありません。このような条件下でキャリアを積むことは難しく、安定した雇用への転換も困難になりがちです。その結果、生活水準や将来への備えに不安を抱える人が多く見られます。

キャリア形成や転職の難しさ

新卒時に希望する職種に就けなかった経験が長期的に影響し、キャリア形成が難しくなるケースがあります。非正規の職歴が続くことで転職市場での評価が低くなりやすく、成果主義や実力主義への移行期に社会に出たことで、変化する制度への適応に苦労した世代です。

キャリアアップの機会を得にくく、転職市場では即戦力が求められやすいため、ハードルの高さを感じる人も多いです。また、自己PRが苦手な人が一定数存在し、経験をうまく評価につなげられない点も課題となります。

老後・年金不安(2040年問題)

非正規雇用期間が長く続いた影響で、将来受け取れる年金額が少なくなる可能性があります。十分な老後資金を準備できないまま中高年を迎える人が多く、2040年以降には社会保障費の増大や年金制度の不安定化が懸念されています。

働き続けなければ生活維持が難しい世帯も増えており、体調不良や親の介護との両立といった課題も深刻です。その結果、社会的孤立や生活困窮のリスクが高まる傾向があります。

「8050問題」など社会的孤立の課題

ロスジェネ世代では、親の介護と自分の無業状態が重なる「8050問題」が顕著です。長期的な非正規雇用や無職状態が続くことで社会との接点を失い、孤立に陥るケースが増えています。中高年で引きこもり状態となり生活困窮に直面する事例も報告されています。

経済的な不安と精神的な孤独が相互に影響し、支援につながりにくい点も課題です。さらに、家族全体が高齢化していく中で、支援体制の整備が急務となっています。

ロスジェネ世代が転職で成功するためのポイント

ロスジェネ世代が転職で成功するためには、変化の激しい労働市場を踏まえたスキルアップやリスキリングに取り組むことに加え、将来性のある成長産業を意識してキャリアの方向性を定めることが重要です。

また、就職氷河期世代向けの支援プログラムや転職エージェントを積極的に活用しつつ、自身の経験を強みに変えて効果的に自己PRすることで、選考通過の可能性を高められます。

ここでは、そのための具体的なポイントを解説します。

スキルアップ・リスキリングが重要になる

転職市場で競争力を高めるためには、ITやデジタル技術などの新しいスキル習得が必要です。リスキリングによって既存スキルを新分野に応用できるようになり、キャリアの再構築につながります。

自己投資意欲の高いロスジェネ世代にとって、リカレント教育での学びなおしや自ら選択する講座の受講は有効な手段であり、資格取得を通じて再就職を有利に進める効果が期待できます。また、学び直し支援や教育訓練給付金制度を活用することで、経済的負担を軽減しながらスキルアップを実現できるでしょう。

成長産業への転職を意識する

テクノロジー、ヘルスケア、物流などの成長産業は人材ニーズが高く、長期的なキャリア形成におすすめです。安定した業界で働くことで将来の見通しを立てやすくなり、キャリアの不安を減らせます。

新技術やビジネスモデルへの適応力も求められるため、変化に対応する姿勢が重要です。産業構造の変化を踏まえ、需要が拡大している職種に焦点を当てることで、転職成功につながります。

就職氷河期世代支援プログラムや転職エージェントを活用する

政府が提供する「就職氷河期世代支援プログラム」では、職業訓練やカウンセリングなどが用意されており、就職や社会復帰に向けた支援を受けられます。ハローワークや自治体にも支援窓口があり、キャリアカウンセリングやリカレント教育の機会も整っています。

また、転職エージェントを利用することで、面接対策や職務経歴書の作成支援など、実践的なサポートを受けられます。エージェントのサポートにより、自分の強みを企業ニーズと結びつけることで、採用率を高める効果が期待できるでしょう。

経験を強みに変える自己PRを行う

厳しい環境を乗り越えた経験を強みとして捉え、前向きにアピールすることが大切です。就職氷河期の中で培った忍耐力や順応性、問題解決力は、企業にとって大きな価値があります。実績を数値や具体例で示すことで、採用担当者に伝わりやすくなります。

また、リーダーシップや長期的な業務経験を即戦力として表現することで、企業側の期待に応える自己PRが可能です。困難を乗り越えてきたストーリーを盛り込むことで、共感を得られやすくなります。


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