- 更新日 : 2025年12月5日
ミスマッチとは?採用における意味や5つの原因・防止策を徹底解説
「採用してもすぐに辞めてしまう」という悩みを抱える企業は少なくありません。
企業と求職者の認識のズレを「ミスマッチ」と呼び、採用コストの消費や社員のモチベーション低下といった悪影響を及ぼします。
本記事では、ミスマッチの意味や発生する原因から具体的な防止策まで解説しています。
企業の採用プロセスを見直し、ミスマッチを未然に防ぐ仕組みづくりの参考にしてください。
目次
ミスマッチとは
ミスマッチとは、企業が求める人材像と実際に採用した人材の間に生じる認識のズレや不一致を指す言葉です。
ビジネスシーンでは、「聞いていた仕事内容と違う」「給与や待遇に不満がある」といった形でミスマッチが発生します。
ミスマッチを防ぐことで採用コストを削減し、社員の定着率を向上させる効果が期待できます。
丁寧な面接で認識のズレを確認し、入社後のフォロー体制を整えることで、ミスマッチの発生を抑えることが可能です。
アンマッチとの違いは?
アンマッチとは、企業と求職者の組み合わせが成立しない状態を指します。
ミスマッチは「認識のズレ」であるのに対し、アンマッチは「マッチングが不成立」です。アンマッチは採用段階で確認でき、ミスマッチは入社後に表面化するため、対策のアプローチが異なります。
採用ミスマッチの5つの種類と具体例
ミスマッチには、主に5つの種類があります。
それぞれ発生する原因や対策が異なるため、ミスマッチの種類を確認し、対策の参考にしてください。
① 雇用条件のミスマッチ
給与や勤務時間など、労働条件に関するミスマッチです。
具体例としては、「残業はほとんどない」と聞いていたのに、実際は月30時間以上の残業が常態化しているケースが挙げられます。
また、聞いていた年収に手当が含まれていて実際の基本給は低いケースも該当します。
求人票や就職面接での説明が曖昧だったり、実態と異なる情報を伝えていたりすると発生しやすいので注意しましょう。
② 業務内容のミスマッチ
実際に担当する仕事内容が、入社前に聞いていた説明と異なるケースは、業務内容のミスマッチに該当します。
採用された職種と実際の業務が異なったり、希望していた仕事が実際の業務の一部だったりするケースです。
業務範囲や役割が不明確なまま採用すると、入社後にギャップが生じやすくなります。
③ 企業文化・社風のミスマッチ
企業文化や社風とのミスマッチは、企業の価値観や雰囲気が従業員の期待と合わない場合に起こります。
企業文化は言語化しにくく、面接だけでは伝わりにくいため、ミスマッチが起きやすいポイントです。
例えば、「フラットな組織」だと認識していたが年功序列の雰囲気が強い場合や、「ワークライフバランス重視」と謳っていて長時間労働が評価される場合が挙げられます。
④ 人間関係のミスマッチ
上司や同僚との相性が合わず、職場での人間関係に悩むケースです。
上司のマネジメントスタイルが合わなかったり、チームの雰囲気になじめず、孤立してしまったりと、ストレスを抱える要因になります。
性格や価値観の違いは採用段階で完全に見極めるのが難しく、入社後に顕在化しやすいため注意が必要です。
⑤ スキル・適性のミスマッチ
求職者のスキルや能力が、企業が求めるレベルや業務内容に合わない場合のミスマッチです。
例えば、想定していた業務スキルや役割適性が実務レベルに達していなかったケースが挙げられます。
面接や書類選考だけでは見極めが難しく、入社後に能力不足や適性の不一致が判明することが多くあります。
高度な専門性や即戦力性を求める職種では、このギャップが早期離職につながりやすい点が課題です。
ミスマッチが企業にもたらす影響
ミスマッチは、企業にさまざまな悪影響を生じさせます。
早期離職による損失だけでなく、組織全体の生産性やモチベーションにも影響するので注意しましょう。
ここでは、代表的な3つの影響について解説します。
早期離職による採用・育成コストの損失
ミスマッチが原因で早期離職が発生すると、採用にかけたコストが無駄になります。
採用にかけたコストは、以下のとおりです。
- 求人広告費
- 人材紹介手数料
- 面接対応の人件費
- 入社後の研修費用
- 教育にかけた時間
厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)によると、新卒入社3年以内の離職率は約3割に上ります。
早期離職が続くと、組織の採用活動が常に追われる状態となり、本来の業務に支障をきたすリスクがあります。
社員のモチベーション・エンゲージメント低下
ミスマッチは、社員の仕事への意欲にも影響を与えます。
期待していた業務内容や職場環境とのギャップが、やりがいや達成感を損なうためです。
モチベーションが下がると、業務の質やパフォーマンスにも悪影響が及び、不満を持つ社員が増えると周囲のメンバーにもネガティブな影響が波及します。
エンゲージメントの低下は、離職予備軍を生み出し、組織全体の定着率を下げる要因にもなります。
組織の生産性低下と採用活動の長期化
ミスマッチが発生すると、社員が本来のパフォーマンスを発揮できず、生産性が低下します。
また、スキルや適性が合わない社員には上司や先輩のフォローが必要になり、チーム全体の効率が低下します。
早期離職が続くと欠員補充のための採用活動が常態化し、人事担当者の負担が増加するでしょう。
採用と離職の悪循環が続くと、組織の成長が停滞するリスクがあります。
ミスマッチが発生する主な原因
ミスマッチを防ぐには、原因を把握することが大切です。
ミスマッチは、一方の問題ではなく、企業側と求職者・従業員側の双方に要因が存在する場合があります。
ここでは、代表的な3つの原因について解説していきます。
企業側の情報提供が不十分
ミスマッチの要因のひとつは、求人票や面接で企業の実態を正確に伝えていないことが挙げられます。
特に、ネガティブに受けとられやすい情報を隠してしまうと、入社後にギャップが生じやすくなります。
良いところだけを伝えようとするのは控えましょう。
業務内容についても、曖昧な表現で説明すると、求職者が自分なりに解釈してしまい、認識のズレが生まれます。
企業は、どこまで任せるのかや、どのようなスキルが求められるのかといった情報を具体的に共有する必要があります
よい面だけを強調するのではなく、実際の業務内容や職場環境、直面している課題まで含めて正確に伝えることで、候補者は働く姿を現実的に描きやすくなり、ミスマッチの防止につながります。
求職者に対する見極めが不十分
求職者のスキルや適性を正確に把握できないままの採用もミスマッチの原因となります。
経歴や面接の印象だけで判断すると、実際の業務遂行能力や職場への適応力を見誤る可能性があります。
属人的な評価で採用を決めるとミスマッチのリスクが高まるため、適性検査などの客観的な指標をあわせて活用しましょう。
また、求職者の価値観やキャリア志向を十分に理解しないまま採用すると、入社後に不満が生じやすくなります。
入社後のフォロー・サポートが不足
入社後のオンボーディングやフォローアップ体制が十分でない場合も、ミスマッチが生じる一因となります。
新入社員が業務理解を深める機会を得られず、上司や先輩とのコミュニケーションが不足すると、求められる役割を正しく理解できません。
定期的な面談やフィードバックが行われないと、早期にギャップを把握できず、双方が抱えるズレに気づくタイミングが遅れてしまうでしょう。
ミスマッチを防ぐための5つの対策
ミスマッチを防ぐには、採用から育成まで、各段階で具体的な対策を講じる必要があります。
ここでは、効果的な5つの防止策について確認していきましょう。
① 自社の情報を正確かつ包括的に伝える
求人票や面接では、業務内容や労働条件を具体的に伝えることが有効な対策の1つです。
「繁忙期は月30時間程度の残業が発生します」といったネガティブな情報も開示することで、入社後のギャップを防げます。
職場見学や現場社員との面談の機会を設け、リアルな雰囲気を体感してもらうのも重要でしょう。
また、SNSで日常の業務風景や社員インタビューを発信するのも効果的です。
② 構造化面接や適性検査を活用する
客観的に求職者を見極めるには、構造化面接や適性検査を活用しましょう。
構造化面接とは、評価基準を統一し、決められた質問を投げかける面接方法です。
「困難な課題にどう対処しましたか」といった質問を全員に行い、基準に沿って採点します。
適性検査は性格や価値観を数値化できるため、複数の評価手法を組み合わせることで候補者の適性をより正確に見極められます。
③ リファラル採用を検討する
リファラル採用も、ミスマッチを対策する方法のひとつです。
リファラル採用とは、既存社員からの紹介で採用する手法で、社員が自社の実態を理解した上で紹介するため、入社後のミスマッチ防止に繋がります。
紹介された求職者も、事前に職場の雰囲気や仕事内容を把握できるため、入社後のギャップを小さくできます。
ただし、紹介者との関係性に配慮し、採用可否は公正に判断しましょう。
④ 試用期間や体験入社の機会を設ける
試用期間や体験入社の機会を設けることで、双方が適性を見極められます。
求職者が職場の雰囲気や仕事内容を事前に理解できるため、ミスマッチが起こりにくくなるでしょう。
例えば、1週間程度の体験期間を設け、実際のチームに参加してもらうことで、求職者は「この職場で働けそうか」を判断できます。
短期間でも実務を経験することで、入社後のギャップを大幅に減らせます。
⑤ 定期的な面談とサポート体制で継続的にフォローする
定期的な面談とサポート体制を整えることで、ミスマッチを未然に防げます。
内定後から入社までの間も連絡を取り、職場の雰囲気や業務内容について質問に答える機会を設けましょう。
入社後は、メンター制度を導入し、先輩社員が定期的にフォローする仕組みを作ることが効果的です。
1on1ミーティングを実施し、悩みや不安が小さいうちに相談できる環境を整えることで、ミスマッチの芽を早期に摘み取れます。
現場で使えるミスマッチの早期発見チェックリスト
ミスマッチの兆候を早期に発見することで、離職を防ぐことができます。
ここでは、社員の変化を見逃さないようにするためのチェックポイントを紹介します。
該当項目が多い社員には、面談を実施し、悩みや不安を丁寧にヒアリングしましょう。
行動面:遅刻や欠勤が増えていないか
- 遅刻や欠勤が以前より増えている
- 始業ギリギリに出社することが多くなった
- 休憩時間に一人で過ごすことが増えた
- 社内イベントや飲み会への参加を避けるようになった
- 表情が暗く、元気がない様子が続いている
業務面:ミスが増えたり報告が遅れたりしていないか
- 業務のミスや漏れが以前より増えている
- 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が減っている
- 質問や相談をしなくなった
- 納期や期限を守れないことが増えた
- 業務の進捗報告が遅れることが多い
メンタル面:不安やストレスを抱えていないか
- 愚痴や不満を口にすることが増えた
- 「辞めたい」「転職したい」という発言がある
- 同僚とのコミュニケーションが減っている
- 休憩時間や終業後すぐに帰宅するようになった
- 疲れた様子や体調不良を訴えることが増えた
ミスマッチが起きてしまった場合の3つの対処ステップ
ミスマッチはしっかりと対策していても、発生してしまう場合があります。
そこで、すでにミスマッチが起きている場合の具体的な対処法を紹介します。
① 1対1の面談で本音を聞き出す
まず、落ち着いた環境で1対1の面談を実施し、本人の気持ちを丁寧に聞きましょう。
本音を引き出すことで問題の本質を捉えることができます。
「何に困っているか」「どう感じているか」を率直に話してもらうことが、改善への第一歩です。
会議室ではなくカフェスペースなど、リラックスできる場所で話を聞くと、本音が話しやすいでしょう。
「最近元気がないように見えるけど、何か困っていることはある?」といった声かけから始めると、話しやすい雰囲気が作れます。
② 改善できることを一緒に考える
問題が分かったら、具体的な改善策を一緒に考えてください。
本人の意見も取り入れることで、納得感を持って改善に取り組めるためです。
例えば、「業務量が多すぎる」という悩みがあれば、「どの業務を優先したいか」「誰かに任せられる業務はないか」といった具体策を一緒に検討します。
「会社はあなたをサポートしたい」という姿勢を明確に示すことが大切です。
業務調整や配置転換、メンター制度の導入など、実行可能な選択肢を複数提示しましょう。
③ 定期的に様子を確認して進み具合をチェックする
改善策を実行したら、定期的にフォローアップしましょう。
継続的なサポートで信頼関係を築き、問題が再発していないか確認するためです。
「状況は良くなったか」「他に困っていることはないか」を定期的に確認してください。
改善が見られない場合は、再度話し合い、別の解決策を検討することも必要です。
小さな変化でも褒めたり、感謝を伝えたりすることで、モチベーションを維持できます。
継続的なコミュニケーションを通じて、社員が安心して働ける環境を整えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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