• 更新日 : 2025年12月5日

フラット型組織とは?メリット・デメリットや実際に導入している企業の例も紹介

フラット型組織とは、部長や係長のような中間管理職を廃止もしくは最小限にした、フラットな組織構造を指します。

新しい組織構造への移行を検討している人の中には、「フラット型組織とは具体的にどういうものなのか」「メリットやデメリットを知りたい」と気になる人もいるでしょう。

そこで本記事では、フラット型組織の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、フラット型組織へ移行する際の注意点や実際に導入している企業の事例などもまとめています。

フラット型組織とは?

フラット型組織とは、従来の部長や課長などの役職を廃止もしくは最小限にし、階層をフラットにした組織構造のことです。

役職が少ないため、経営層と現場の社員との距離が近く、円滑なコミュニケーションと迅速な意思決定を行えるのが特徴です。また、管理職によるマイクロマネジメントもなくなるため、社員一人ひとりが持つ裁量権が大きくなり、主体的に行動することが求められます。

フラット型組織が注目されている背景には、今の日本で働く人々の価値観が多様化していることにあります。終身雇用や年功序列が減少し、昇進や昇給ではなく自己成長や働きがいなどを重要視する人が増えました。

そのため、上司に言われた仕事をこなすよりも、自主的に行動して成果を出すことにやりがいを感じる人も多くなり、そのようなニーズを満たせる組織構造としてフラット型組織が注目されています。

ピラミッド型組織との違い

ピラミッド型組織とフラット型組織の違いを、以下の表にまとめました。

組織構造ピラミッド型組織フラット型組織
特徴社長を頂点とし、その下に部長、課長、係長、一般社員といった多階層の役職が存在する管理職が存在しない、もしくはごくわずか
組織の形役職が下がるにつれてその階層に属する人も増える、まさにピラミッド型の組織構造トップや最小限の管理職と複数の部署で構成される、横型の長方形のような組織構造
意思決定基本的にトップダウン方式ボトムアップ方式もしくは分散型
情報の流れ上層部から一般社員というように、上から順に情報が流れていくトップと一般社員の双方向が情報を共有し合う
社員の業務範囲役職ごとに明確に決められている裁量権が大きく、業務範囲も広め

上記のように、ピラミッド型組織とフラット型組織には、明確な違いがあります。

フラット型組織の4つのメリット

フラット型組織のメリットを4つ紹介します。

1. 意思決定が迅速化される

フラット型組織の分かりやすいメリットは、意思決定が迅速化されることです。

従来のピラミッド型組織は、現場からの提案が係長、課長、部長と何人もの上司の承認を得る必要があるため、一つのことを確定させるのに多くの時間がかかってしまいます。

フラット型組織に移行すると、係長や課長のような中間管理職がほとんどいなくなるため、情報の伝達経路が短縮されます。これにより、経営層から現場への指示や現場からのフィードバックなどが、スピーディーに行われるようになるでしょう。

また、何人もの上司の了承を得る必要もなくなるため、承認プロセスも簡潔となります。現場の担当者が顧客のニーズや市場の変化を察知したときに、上層部の判断を待たずに迅速にアクションを起こすことが可能となります。

2. 社員が意見を出しやすくなる

フラット型組織への移行で役職という階層がなくなれば、社員が意見を出しやすくなることにも期待できます。

上下関係や階層のない組織は社員同士の関係性がほぼ対等となるため、自分の考えやアイデアを安心して発信できる「心理的安全性」という度合いが高くなると言われています。

「このようなことを言ったらどう思われるだろう」という不安が軽減され、若手社員や入社したばかりのメンバーでも積極的に意見を出してくれる場合もあるでしょう。

多様な意見が活発に出ることにより、ミーティングを円滑に進められたり課題解決も容易になったりすることも考えられます。

3. 一人ひとりが責任感を持つようになる

フラット型組織を導入することで、社員の責任感を育てることも可能です。課長や部長などの管理職がなくなれば、社員一人ひとりが自らの判断で仕事を進める機会が必然的に増えるためです。

上司からの指示を待つ従順な姿勢よりも積極的に行動する姿勢が求められるため、主体性が自然と育まれていきます。

自分で行動したり決断したりする機会が多くなることによって、プロジェクトに対して当事者意識が芽生える可能性もあるでしょう。上からの命令で仕事をやらされているわけではなく、自らの意思でプロジェクトを動かしているという実感から、仕事に対する強い責任感も持てるようになります。

4. 多角的な視点を育てられる

役職の壁がなくなることは、多角的な視点を持つきっかけにもなり得ます。

ピラミッド型組織では、上司からのフィードバックや指示を待つという一方通行なコミュニケーションになりがちです。

しかし、フラット型組織に移行すれば、前述の通り心理的安全性が高くなるため、以前よりも各社員が意見を出しやすくなります。

これにより、自分とは異なる考え方やアイデアにも触れる機会も必然的に増えるでしょう。新しい視点で物事を捉えられるようになれれば、イノベーションの創出にもつながる可能性があります。また、思考もより柔軟化して、問題解決も迅速に行えることにも期待できます。

フラット型組織の3つのデメリット

フラット型組織のデメリットを3つ紹介します。

1. 情報共有の非効率化を招く

フラット型組織へ移行すると、情報共有の非効率化を招く可能性があります。

ピラミッド型組織の「部下→課長→部長」といった明確な報告ルートがなくなるため、「この情報は誰に伝えれば良いのか」と判断に迷う人が続出することが考えられます。結果、情報の共有漏れや遅延などが起きやすくなる恐れもあるでしょう。

また、社員独自の情報共有ルートが生まれる可能性がある点にも注意が必要です。たとえば、コミュニケーションの中心人物やその周りにいる人のみが情報を取得できており、他の人はいつも遅れて共有されるという事態にもなりかねません。

2. 管理者の負担が増える

中間管理職を減らすと、残った数少ない管理職の負担が増えることが予想されます。

一般的に、1人の管理者がマネジメントできる部下の人数は、5人程度か多くても10人〜20人程度とされています。しかし管理職を減らすと、1人のリーダーが担当するメンバーの数が40人や50人ほどになる可能性も否めません。

また、リーダーが一人ひとりの進捗を把握したり、フィードバックを行ったりする時間が物理的に不足することも考えられます。そのため、適切な評価や育成も困難となり、チーム全体のパフォーマンス低下につながることもあり得ます。

3. キャリアパスの設計が難しくなる

課長や部長といった役職が存在しなくなると、具体的なキャリアパスが不透明となります。

どのようなスキルを身につけ、どのような成果を出せば、どのレベルの処遇になるのかという評価制度との連動も難しくなるでしょう。

昇進や昇給という目標が見えにくくなることで、社員が自分の成長を実感できなくなり、モチベーションが低下してしまう可能性もあります。特に上昇志向の強い社員は、「これ以上の成長や昇進は望めない」と判断して離職を選んでしまう場合もあるでしょう。

フラット型組織へ移行する際のポイント

現在の組織体制からフラット型組織へ移行する際のポイントを3つ紹介します。

情報共有の仕組みを再設計する

フラット型組織へ移行する際は、「誰が何を知っているのかが分からない」という事態を防ぐために、情報共有の仕組みをより精密に構築する必要があります。

具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • 情報伝達の流れを明確に定める
  • プロジェクト管理ツールを活用して、何がどこまで進んでいるのかを可視化する
  • 些細な確認事項でもチャットツールでオープンに共有する
  • 会議の内容は必ず議事録に残す
  • 各プロジェクトやチームで情報共有の責任者を決める

上記のような、必要なときに必要な情報にアクセスできる仕組みを整えられれば、情報伝達の抜け漏れを防げるでしょう。

新たなキャリアパスや評価制度を整備する

フラット型組織の導入により役職や階層がなくなると、昇給や昇進の道筋が不明瞭となりやすいです。よって、それに代わる新しいキャリアパスや評価制度を設計する必要があります。

たとえば、役職を減らすと管理職に就ける人数も減るため、特定分野の専門性を極める「スペシャリスト等級」のような他のキャリアコースを用意すると良いでしょう。多様な評価軸を設けることで、管理職には興味がない社員にも、明確にキャリアの道筋を示せます。

また、評価制度として「360度評価」を導入する企業も多く存在します。360度評価とは、従来のように上司が一方的に部下を評価するのではなく、複数人の意見を総合して評価を行う手法です。多角的な視点で本人を見ることで、従業員のスキルや実績などをより正確に評価できるようになります。

管理者の業務を分散させる体制を構築する

フラット型組織への移行に伴って管理職が減ることにより、わずかに残った管理職の配下につくメンバーが必然的に多くなります。そのため、業務過多とならないように工夫をすることが大切です。

たとえば、タスクの進捗確認や日々の業務報告は、プロジェクト管理ツールで代替すると良いでしょう。1on1ミーティングやフィードバックなど、より本質的な業務に時間を割けるようになります。

もしくは、1人の管理者が担当するメンバーの最大人数を決めておくのも一つの手です。必ずしも一つの部署のリーダーを1人だけにする必要はありません。メンバーの数が最大人数を超えたら、別の社員をリーダーに選別するという方法もあります。リーダー同士の定例会を開いて、お互いの悩みを相談したり成功体験を共有したりするのも良いでしょう。

フラット型組織の事例

最後に、フラット型組織を導入している企業の事例を紹介します。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社は、電子認証を主軸に多様なセキュリティソリューション事業を展開する会社です。

GMOグローバルサイン・ホールディングスは、2023年4月からフラット型組織の一つである「ホラクラシー」を導入しています。

上司や部下などの階層や役職を廃止し、全ての部門を「サークル」と呼ばれるチームへ移行しました。各サークルは必要な社員をスカウトできるほか、従業員自身もスキルを発揮できるサークルを自ら選択できます。

また、給与に関しても、過去の成果を翌年に反映する方式から未来の成果への期待値を見込んだ自己申告方式へ変更されました。役職に基づかない新しい評価制度を構築し、個人の貢献度が多角的に評価される仕組みが整備されています。

株式会社ガイアックス

株式会社ガイアックスは、スタートアップの創出と支援を行っている会社です。

ガイアックスは、社員の意思を尊重することで自律性を持って働いてもらうことを目的に、フラット型組織と似た組織体制を敷いています。

たとえば、部署にリーダーは存在しますが部下の異動を拒否する権限がないため、メンバーのスカウトや部異動を自由に行えます。新卒社員もいくつかの部署で働いたうえで、自分に合った部署を選択できるのが特徴です。

また、経営層が会議をした際は、内容を議事録にまとめて全社員に共有しています。これにより、社員は会社の状況を正確に把握し、主体的に意思決定を行えるようになります。

株式会社アトラエ

株式会社アトラエは、成功報酬型求人メディア「Green」を運営する会社です。メンバー全員が経営視点を持ち、より主体的に動くことを目的として、フラット型組織の一つである「ホラクラシー」を実践しています。

役職をなくし、プロジェクト単位で業務が推進されているのが特徴です。年齢や職種、性別に関係なく、社員全員が同じ目線で考え、発言し、行動できる文化が根付いています。

評価制度には、360度評価が採用されました。「会社のビジョンを実現するために、どのくらい貢献できているか」を基準に社員同士で評価し合い、最終的には給与の分配割合まで決定します。

そして、情報共有の透明性を高めるために、資料や議事録に関してはオンライン化されました。チャットもオープン化することにより、必要な情報へアクセスしやすくしています。


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