- 更新日 : 2025年12月5日
1on1をやめてほしいと言われたら?見直すべきポイントを徹底解説
1on1ミーティングを導入したものの、「やめてほしい」「意味がない」といった声が社員から上がる場合があります。
社員の不満の背景には制度そのものよりも、話すテーマが曖昧だったり上司の準備が追いついていなかったりといった、運用や関係性のほころびがあることが多いためです。
本記事では、社員が1on1を負担に感じる背景と、やってよかった1on1へと再構築するための実践的なポイントを紹介します。
目次
1on1をやめてほしいと言われる3つの理由
導入時には部下との対話を深めるといった期待を寄せられがちな1on1ですが、制度化が進む中でやめてほしいと言われるケースも少なくありません。理由を3つの観点から整理します。
形だけ続いていて時間と気力の消耗につながっている
1on1の回数や形式だけが重視されると、実施すること自体が目的になり、本来の対話の意義が薄れていきます。上司も部下も義務としてこなしている感覚が強くなると、やらされているという認識が積み重なります。
義務感のある1on1が続いてしまうと、面談のたびに気力を奪われる経験が重なり、1on1自体がストレスに感じてしまうためです。
短いやり取りを繰り返すだけの面談が続く場合も、時間だけ取られると見なされやすく、続ける意味がないと部下に感じられてしまう可能性があります。
話すことがない・意味がないと社員が感じている
毎回の1on1で話すテーマが決まっていないと、進捗の確認や軽い雑談ばかりになり、内容が似通ってしまいがちです。同じ話題を繰り返す状況が続くと、部下はまた同じことを話すだけだという飽きや退屈さを覚えます。
上司が話すだけ、あるいは質問して報告を受けるだけの場になると、対話としての手応えを感じにくくなります。何のための時間なのかが共有されず、成長実感や具体的なフィードバックも得られないままだと、1on1を続ける意味が分からないと感じる可能性もあるでしょう。
議題が共有されず流れ任せの進行になると、部下が成長や気づきを持ち帰りづらくなり、面談の効果が発揮されにくくなります。
上司・人事側の運用負担やスキル不足が響いている
多数の部下と定期的に1on1をおこなう上司にとって、事前準備や記録、フォローまで含めると時間の負担は重くなります。負担が大きい場合、十分な準備ができないまま形だけ実施され、内容が薄い面談に終わってしまう場面も少なくありません。
質問や傾聴のスキルが十分でない場合、雑談だけで終わったり、場当たり的な助言で面談を締めてしまったりしがちです。人事が運用目的や期待する成果を明確に示せず現場任せになると、方向性を持てないまま続けることになり、制度への不信感が強まります。
準備不足とスキルの偏りが重なると、面談が消化すべきタスクとして扱われやすく、上司側の心理的負荷も高まりやすいというリスクにもつながります。
1on1をやめてほしいと社員に思われる3つの構造
1on1が形だけになってしまうかどうかは、現場での運用だけでなく、制度の設計や前提となる考え方とも深く関係しています。ここでいう制度の設計とは、何を話す場なのかが定まっていない、評価と分けられていないといったルール面の曖昧さを指します。
目的が共有されていない、安心して話せる雰囲気がない、評価の話ばかりになるともうやめてほしいと感じる部下が増えていってしまうでしょう。
目的が共有されず評価面談化している
1on1の目的が成長支援ではなく評価や反省の場だと受け取られると、部下は自由に本音を話しにくい場合があります。話した内容がそのまま評価に結びつくのではないかという不安があると、無難な話題しか出せず、率直な対話が生まれません。
面談の目的が曖昧なままだと、日々の数字や成果をチェックする場の延長のように感じられがちです。報告や反省だけを求められる構造が続くと、1on1は負担感の強い評価面談として認識されてしまいます。
目的の認識が揃っていない状態では、対話が評価ベースになってしまい本音を話しづらい雰囲気が続くため、部下が安心して話せる場として機能しないでしょう。
本音で話せるだけの安全性が確保されていない状況にある
ミスや課題を話しただけで評価が下がるかもしれないと感じている部下は、守りの姿勢になりやすく、本音を隠そうとします。否定的なコメントや詰問調の問いかけが多い場では、自分の弱みをさらけ出すことが難しくなります。
1on1で話した内容が他部署や別の場に共有された経験があると、どのような話題でも安心して話せる場ではないと感じられてしまう可能性は高いです。安心して話せない状況が続くと、部下にとって1on1はストレス源となり、やめてほしいと感じる強い理由になってしまいます。
安全性が十分でない環境では部下の発言量が減り、やり取りが当たり障りのない報告だけになりやすく、面談が形式的なやり取りになりがちです。
上司ごとのスキルの偏りがそのまま面談の質に反映されている
上司が結論やアドバイスを先回りして提示するスタイルだと、部下が自分で考えたり言葉にしたりする余地が生まれません。共感よりも問題解決を急ぐ姿勢が強いと、表面的なやり取りだけで終わり、対話が深まらないでしょう。
上司自身が内省や対話の意義を理解していない場合、1on1は業務報告や指示出しの延長になりがちです。上司のスキル不足や認識のギャップが積み重なり部下側には、自分のための1on1ではないという失望感が生まれます。
部下が話す割合が極端に少ない面談は、気づきや主体性につながりづらく、報告して終わりの場になってしまいがちです。
1on1をやめる前に見直すべき3つのポイント
部下から不満が出ている状況でも、1on1自体をやめる前に、やり方や前提を見直すことで改善の余地があります。上司のスキル・対話の設計・時間や頻度の設定を整えれば、同じ制度でもまったく違う体験に変えていくことができます。
上司の面談スキルを高める仕組みを整える
傾聴や質問の技術を体系的に学べる研修やワークショップを用意し、上司が基本スキルを身につけられる場をつくることが重要です。座学だけでなく、ロールプレイやフィードバックを通じて実際の場面を想定しながら練習すると、現場で使える感覚が養われます。
評価のつけ方を学ぶ研修だけに偏らず、対話を通じて相手の考えを引き出す力を育てる設計が求められます。上司自身に傾聴するスキルが育っていく仕組みがあれば、1on1は部下にとっても話してよかったと思える時間に変わっていきます。
部下のタイプ・価値観に合わせた対話設計をおこなう
部下全員に同じ聞き方やテンポで接するのではなく、性格傾向や価値観の違いを踏まえた対話設計を意識することが大切です。MBTIやDiSCなどのタイプ分析ツールを活用すると、相手が重視しやすいポイントや話しやすいスタイルを把握しやすいでしょう。
動機づけになりやすいテーマや、聞き方の深さやスピードを個々人に合わせて調整していきます。一律のフォーマットに当てはめる発想を手放し、部下一人ひとりに合った関わり方を模索する姿勢が、1on1の質を高めます。
時間・頻度・テーマを現場に合わせて再調整する
1on1の最適な時間や頻度は、職種や担当業務・繁忙期の状況によって大きく変わるため、一律に固定しない工夫が必要です。事前に話すテーマを共有し、限られた時間で何にフォーカスするかを決めておくと、対話の密度を高めやすいでしょう。
15分を週1回おこなうといった短時間モデルを取り入れれば、負担を抑えつつ接点の回数を確保できます。現場の声を踏まえて時間や頻度、話すテーマを柔軟に見直していくと、やらされている感覚が薄れ、続けやすい形に近づけられます。
部下から1on1をやめてほしいと言われたときの3つの初動対応
部下からやめてほしいと直接伝えられた場面は、上司の立場からするとショックであるものの、運用を見直す大きなきっかけになる場合もあります。対応次第で、信頼を深める転機に変えられる場合があるからです。
部下の話に耳を傾ける
部下が持っている違和感や不満をきちんと聞く姿勢が重要です。これまで続けてきた中で、どのあたりに負担や引っかかりを感じているのかを具体的に尋ねると、本当の課題が見えてきます。
どのような雰囲気や進め方なら話しやすいか、これから続けるとしたらどんな形が理想かを一緒に言語化していくことも大切です。傾聴しつつやり取りを重ねると、本人にとって意味がある形を一緒に探すことができるでしょう。
防衛反応を起こさずに傾聴と共感をする
部下からの否定的な言葉を聞いたときこそ、言い訳や反論をせず、まず感情を受け止めようとする姿勢が重要です。これまでの経緯を丁寧に聞き、相手の言葉を自分なりにかみ砕いて返すと、伝わったという実感が部下に生まれます。
責めるような問いかけや答えを急がせる質問は控え、沈黙があっても落ち着いて待つ余裕を持つことが求められます。安心して思いを話せたと部下が感じられれば、改善策についても協力的な姿勢を引き出しやすくなるでしょう。
制度ではなく関係性を見直す視点を持つ
1on1がうまく機能していないとき、原因を制度やフォーマットだけに求めず、上司と部下の関係性にも目を向ける必要があります。相手への信頼や安心感が十分でない状態では、どんなルールやツールを整えても、対話の質は上がりにくくなります。
回数を減らしたり形式を緩めたりしながら、日常のコミュニケーションや小さなやり取りの積み重ねで関係を立て直すことも有効です。関係性の土台ができれば、1on1でも自然に話しやすくなり、減らすべき制度ではなく役立つ場として認識されていきます。
やってよかった1on1にするための3つのステップ
不満が出ている1on1であっても、目的と進め方を少しずつ整えれば、前向きに活用できる仕組みに変えていくことが可能です。
日々の対話を通じて小さな変化に気づけるようになると、どこが変わってきたかを一緒に振り返れるようになり1on1が単発のイベントではなく、日常の成長を支える習慣として根づいていきます。
① 1on1を何のためにやるのかを改めて考える
最初に取り組むべきなのは、1on1を評価や管理の場ではなく、部下の成長やキャリアを支援する場として位置づけ直すことです。上司と部下の双方が、何を持ち帰れれば成功と言えるのかという目的を共有し、同じ前提で臨める状態をつくります。
組織としても、1on1で大切にしたい価値やゴールを明文化し、全員が共通認識を持てるようにしておくことが欠かせません。目的がはっきりした状態で続ければ、単なるルーティンではなく、意味のある時間として続けられるでしょう。
② 対話テーマを事前に共有する
毎回の1on1を充実させるには、その場で思いついたことを話すのではなく、事前に扱いたいテーマを共有しておく工夫が役立ちます。目標・直面している課題・最近の感情やコンディションといった軸で整理すると、話しやすく、振り返りもスムーズになります。
事前にメモなどで共有しておけば、上司も準備ができ、限られた時間を最も大事な話題に使えるでしょう。突発的な雑談に流されにくくなると、1on1が意図を持った対話の場として機能します。
③ 前回の話題を次につなげる仕組みをつくる
1on1を単発のイベントで終わらせず、毎回の対話を次の行動やテーマにつなげる設計にすれば、効果を実感できます。面談の終わりに出てきた気づきや、次回までに実践する内容を簡単に言語化しておくと、次に話すときの道筋をたてられるでしょう。
次の1on1ではやってみてどうだったか、何を学んだかを一緒に確認し、状況に合わせてテーマや関わり方を微調整していくことが重要です。
PDCAサイクルを回す流れが定着すると、部下は変化や成長を実感しやすくなり、やって終わりではなく次につながる面談として感じられる場面が増えていきます。
よくある4つの質問
1on1運用で企業から寄せられやすい疑問をまとめると、雑談の扱い・頻度の適切さ・対話の質・代替手段の可否といったテーマに集約されます。
形式よりも、負担を抑えつつ信頼関係と継続的な対話をどう保つかが共通の論点になるため、状況に合わせて運用を整えていく動きが欠かせません。
雑談中心でも意味がある?
雑談が多い1on1であっても、互いの人柄や価値観を知るきっかけになり、信頼関係づくりには一定の役割があります。堅苦しい雰囲気になりがちな面談を和らげ、部下が本音を話しやすい空気をつくるうえでも、軽い話題は有効です。
話した内容そのものよりも、安心して話せる関係性がどれだけできているかが影響します。信頼の土台をつくるための雑談と、目的なく時間を消費している状態を区別し、雑談と本題のバランスを取りながら進めると1on1の流れが安定し関係性も育まれるでしょう。
軽い話題を通じて心理的距離が縮まると、課題共有や相談に入りやすく、少し踏み込んだ話もスムーズになります。
週1の1on1は多すぎる?
週1回の1on1が適切かどうかは、人数や業務量・1回あたりの濃さによって変わるため、単純に多い少ないでは判断できません。短時間でも頻度高く話すことで、変化に早く気づきやすくなり、フォローがしやすくなるケースもあります。
準備や記録の負担が大きく、面談の質が下がっているようであれば、頻度や時間の見直しを検討したほうがよい状況です。現場の負担感や手応えを踏まえて、チームに合うリズムを一緒に見つけていく動きがあると続けやすいでしょう。
実際には時間の長さよりも目的が明確かどうかの方が満足度に影響するため、頻度よりも設計の質を整えることが重要です。
上司からの一方的な指導を防ぐには?
一方的な指導になりがちな場合は、上司が話す時間を減らし、まず相手の話をじっくり聞くことに意識を向ける必要があります。面談の流れに、部下が自由に質問したり意見を述べたりする時間をあらかじめ組み込んでおくと、双方向性が生まれやすいでしょう。
上司側が答えを用意しておくのではなく、どう思うか・どうしたいかを尋ねる問いを増やすと、部下の主体性も育ちます。心理的に安心して話せると、一方通行ではなく自然な対話が可能です。
参加者双方の発言量が均等に近づくほど、部下の納得感や自走性が高まりやすい傾向があります。
忙しくて時間が取れない場合の代替策は?
忙しくて長時間の面談を確保しにくい場合は、10分程度の短い1on1をこまめにおこなう方法も選択肢に入れましょう。対面だけにこだわらず、チャットやボイスメモなどを組み合わせて、状況の共有や相談のハードルを下げる工夫も有効です。
重要なのは、まったく接点を持たない期間を長くつくらず、小さくても対話の機会を続けることです。完全にやめてしまうのではなく、現実的に続けられる形を一緒に探せば、関係性や情報のギャップを防げます。
短時間の接点でも前回の続きに触れてから始めるだけで、対話の一貫性が保たれ、短い面談でも効果が出やすくなります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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