- 更新日 : 2023年9月21日
登記簿謄本の見方や取得方法を解説 登記事項証明書の違いは?
土地や建物が関係する取引に必要な登記簿謄本や登記事項証明書。そもそも登記とはどのような制度なのか、登記簿謄本と登記事項証明書に記載されている内容に違いはあるのかなどについて解説します。(監修者:公認会計士 北川ワタル)
目次
登記とは「ある物事の権利関係」を明確にすること
登記とは、ある物事の権利関係を公示するために行われる手続きです。トラブルが起きないよう所有者などを明確にすることとも言えます。また、登記所である法務局が土地や建物などの不動産、会社、債権など、様々なものの権利や義務を保護するための制度でもあります。
不動産を対象とする登記は、物理的な現況と権利関係を公示するために行われます。土地と建物は別々に登記が行われ、土地は1筆(1区画)、建物は1個ごとに手続きされます。
登記簿謄本と登記事項証明書の違い
不動産の登記簿謄本には、土地や建物に関しての所在や面積・所有者・権利関係などが記載されています。一般的に登記簿謄本と呼ばれるものは、これらの情報を写しとして書面化したものです。
登記された情報は不動産登記法により公示されることが義務付けられているので、誰でも交付・閲覧することができます。
一方の登記事項証明書も、記載されている内容は登記簿謄本と変わりません。ただ、電子によりデータ管理されている点が登記簿謄本との大きな違いです。
登記簿謄本・登記事項証明書に記載されている内容の見方
※不動産登記の登記事項証明書等の様式(法務省)より引用
土地と建物、どちらの登記簿謄本や登記事項証明書も、それぞれ「表題部」と「権利部」に分けて記載がされており、権利部はさらに「甲区」と「乙区」に分類されています。それぞれに記載されている内容を「土地」の様式例に沿って見てみましょう。
表題部
土地と建物で、表題部に記載される内容が異なります。
土地の場合、記載されているのは所在・地番・地目(土地の現況)・地積(面積)などです。地目とは、土地が宅地・原野・田・畑など23種類の用途のうち、現在何に使われているのかについてです。
建物の場合は、所在・地番・家屋番号・種類・構造・床面積などです。種類とは、居宅・店舗・事務所・工場など建物が何に使われているのかのことです。構造には建物を建てるときの材料や屋根の種類、階数などが表示されます。
権利部(甲区欄)
誰がいつ、どのような目的でその不動産を取得し、現在所有しているのかを示すため、所有者に関する事項が記載されます。
目的とは、不動産を取得した原因が売買なのか、それとも贈与や相続なのかということです。また不動産の仮登記や差押え、仮処分の情報も甲区に記載されます。
権利部(乙区欄)
所有権以外の権利に関する事項が記載されます。例えば、抵当権や根抵当権、地上権、地役権、賃借権、先取特権、不動産質権などが該当します。
登記事項証明書には色々な種類がある
電子管理された登記簿に記載されている事項のすべて、または一部を証明した書面が登記事項証明書です。登記事項証明書には次のような種類があり、用途によってどれを取得すればよいか異なります。それぞれの内容を確認しておきましょう。
全部事項証明書
対象の不動産が初めて登記されてから現在に至るまで、誰が所有者だったのか、担保として差し入れられていた情報など、権利関係がすべて記載されたものです。
現在事項証明書
対象の不動産が初めて登記されてから現在までの権利関係の中で、現在効力を有する登記事項だけを記載したものです。
過去の所有者や、すでに抹消された担保権など、全部事項証明書で記載される内容は省略されているため、現在の登記事項や情報だけを知りたい場合に有効です。過去に差押えがあった不動産など、その事実を知られたくない場合などに活用できます。
一部事項証明書
対象となる不動産の甲区、または乙区のうち、請求に係る情報の一部だけを記載したものです。何区何番事項証明書や登記簿抄本と呼ばれることもあります。
例えば分譲マンションの場合、建物1個に対する全部事項証明書を取得してしまうと、それぞれの区分所有者すべての情報も記載されることになり、戸数が多いマンションなどではかなりの枚数の登記事項証明書が作成されてしまいます。
このような場合、自分の住む部屋の情報のみなど、必要な部分だけを記載する一部事項証明書を活用した方が便利です。
閉鎖事項証明書
閉鎖した登記記録に記録されている事項を記した書面に、認証文を付して発行されます。全部事項証明書に記載のない、すでに閉鎖された不動産の情報が記載されますが、閉鎖登記記録の保存期間は土地50年、建物は30年ですので、あまりに古い情報は閲覧できません。
登記事項要約書
登記簿謄本が電子管理される前の閲覧制度に代わるものであり、現在効力がある事項のみが記載されます。なお、認証文や作成年月日などは記載されませんので、現在事項証明書と似ていますが証明書という扱いではない点に注意しましょう。
証明書としては使用しないけれど、現在の有効な情報のみ確認したい場合に取得されることが多いです。
登記簿謄本・登記事項証明書を取得する方法
登記簿は以前、紙のバインダーで保管されていました。請求を受けた情報を複写し、その書面に認証文を付して登記簿謄本としていました。しかし現在は電子管理化されたことで、紙ではなくデータで保管されています。
電子管理化されたことで、どの法務局でも全国の登記事項証明書を取得することが可能になりました。手数料を支払えば誰でも取得することができます。
取得方法は、直接法務局に足を運び窓口で申請する方法、インターネットを使ってオンライン申請する方法の2通りです。
法務局窓口で申請
法務局窓口で不動産用の「登記事項証明書交付申請書」に必要事項を記入し、手数料として600円の収入印紙を貼って提出します。土地と建物、それぞれの登記事項証明書が必要なら2通取得することになるので1,200円手数料を支払うことになります。また、土地は1筆、建物は1個ごとに手数料が発生します。
どの種類の登記事項証明書が必要か選択する欄がありますので、必要なものを選んでチェックを入れることを忘れないようにしましょう。
オンラインで申請
インターネットを使って「登記・供託オンライン申請システム」に登録すれば、登記事項証明書を申請することができます。
手数料はインターネットバンキングで電子納付することが可能なため、収入印紙を準備する必要はありませんし、郵送で受け取るなら1通500円、近くの法務局窓口で受け取るなら1通480円なので、窓口申請よりも安く請求できます。
まとめ
登記簿謄本と登記事項証明書の違いをご説明しました。どちらも記載されている内容に変わりはありません。電子管理化されたことで、日本全国どの法務局でも入手したい不動産の登記事項証明書を取得できますし、インターネットを使った取得も可能になりました。
ただ、閉鎖登記簿など、古い不動産の情報で電子管理化されていないものは管轄の法務局に直接請求する必要があるので注意しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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