- 更新日 : 2025年12月11日
自然薯栽培は儲かる?初心者がプランター・キットで育てる方法や注意点も解説
自然薯栽培は、高単価作物として注目されています。しかし、「栽培が難しいのでは?」「パイプなしでの栽培は現実的?」「収益化まで何年かかる?」といった疑問から、参入をためらう方も多いでしょう。
この記事では、自然薯栽培が儲かるための具体的な栽培技術、必要な初期費用と収益モデル、そして種芋や栽培キットを使った始め方、土作りの重要性まで失敗を避けるための留意点も踏まえて詳しく解説します。
目次
自然薯栽培は儲かる?
自然薯栽培は高い収益性を期待でき、儲かる可能性を秘めた農業ビジネスです。
主な理由は、一般に1kgあたり数千円という高い販売単価と、贈答用や高級食材としての安定した需要にあるとされます。適切な栽培技術(特にパイプ栽培)と販路開拓が伴えば、10a(1反)あたり年間250万〜400万円程度の農業所得を目指すことも可能です。
そもそも自然薯とは?
自然薯(じねんじょ)とは、日本原産のヤマノイモ科の芋を指します。
一般的に山芋と呼ばれるものには、長芋、大和芋など様々な種類がありますが、それらの多くが中国大陸から伝わった栽培種であるのに対し、自然薯は古来から日本の山野に自生していた唯一の原産種です。
自然薯が高単価で取引される3つの理由は?
自然薯が高単価である理由は、希少性、ブランド価値(栄養価・食感)、そして栽培・収穫にかかる多大な労力が価格に反映されているためです。
天然物は減少し、栽培ものも収穫までに1〜2年を要します。さらに、地中深くに伸びる芋を折らずに収穫する作業は非常に困難であり、その労働コストが価格に含まれています。
- ブランド価値:滋養強壮山の恵みといった健康的なイメージが強く、高級和食店や贈答品向けのブランド食材としての地位が確立されています。
- 栽培の難易度:まっすぐで太い、商品価値の高い自然薯を育てるには、専門的な栽培技術(後述するパイプ栽培など)と丁寧な土作りが必要です。
- 収穫の手間:パイプなしの伝統的な栽培方法では、地中1m以上に伸びた芋を掘り出すのに1時間以上かかることもあり、高い技術が要求されます。この手間が価格に転嫁されています。
自然薯栽培を始めるための初期費用は?
自然薯栽培の初期費用は、栽培方法と設備水準によって大きく異なります。小規模(副業)であれば数万円から可能ですが、10a(1反)規模で本格的に始める場合は数十万円以上が見込まれます。
主な費用は、種芋代、土壌改良費、そして栽培を効率化するための専用資材です。栽培用パイプや支柱は一度設置すれば数年間は繰り返し利用できます。
※以下はあくまで一例であり、実施の際は農地法や、自治体のルールを確認してください。
| 項目 | 費用の目安(10a) | 備考 |
|---|---|---|
| 種芋 (またはむかご) | 100,000円 〜 200,000円 | 芋の状態や品種、植え付け本数による ※2年目以降は自家増殖で削減可 |
| 栽培用パイプ・波板 | 150,000円 〜 300,000円 | クレバーパイプやトタン・樹脂製の波板 ※繰り返し利用可 |
| 支柱・ネット | 50,000円 〜 100,000円 | ツルを誘引するために必須 |
| 堆肥・土壌改良材 | 50,000円 〜 100,000円 | 土作りの基礎。土壌診断の結果に基づき投入 |
| 合計(目安) | 350,000円 〜 700,000円 | ※トラクター等の大型農機具、灌水設備費は別途 |
自然薯の栽培方法・育て方は?
自然薯栽培で儲けるためには、高品質な自然薯を効率良く生産する技術が不可欠です。ポイントは、土作りから収穫までの一連の管理と、特にパイプ栽培などの省力化技術の導入にあります。
1. 栽培環境の準備(土作り)
植え付けの1ヶ月以上前から、完熟堆肥や石灰を施し、深く耕して水はけの良いフカフカの土を作ります。良質な土作りは、病気のリスクを減らし、芋の健全な生育を促します。パイプを設置する場所の土壌が特に重要です。
- 土壌改良:植え付けの2〜4週間前に、10aあたり完熟堆肥2〜3トン、苦土石灰100kg程度を施し、深く(30cm以上)耕します。
- 畝立て:水はけを良くするため、高畝(高さ30cm以上)にします。
2. 栽培用資材の設置と植え付け
3月下旬〜4月頃、畝に栽培用パイプ(またはトタン・樹脂製の波板)を傾斜をつけて埋設し、その上部に種芋を植え付けます。
パイプや波板を傾斜(15〜20度程度)させて設置することで、自然薯は重力に従って資材の内側や溝に沿ってまっすぐ伸びます。これにより、収穫作業が劇的に楽になります。
- 資材設置:畝に溝を掘り、クレバーパイプなどの専用パイプや、安価なトタン製・塩ビ製の波板を所定の角度で設置し、土を戻します。
- 種芋:1片40〜60g程度の大きさにカットし、切り口を消毒(または乾燥)させます。
- 植え付け:パイプの入り口部分に、種芋の芽が上(または横)を向くように置き、5〜10cm程度覆土します。
3. 栽培管理
5月頃に発芽したら速やかに支柱とネットを設置し、ツルを誘引します。生育状況を見ながら追肥を行います。
自然薯はツル性植物であり、光合成を活発にするためにツルを上へ伸ばす環境(支柱・ネット)が不可欠です。葉を茂らせることが、地下の芋を太らせることに直結します。
- 支柱・ネット:高さ2m程度の支柱を立て、キュウリネットなどを張ります。
- 誘引:ツルが伸びてきたら、ネットにこまめに誘引します(自然薯のツルは左巻きです)。
4. 収穫
11月〜12月頃、地上部のツルや葉が黄変し、枯れ始めたら収穫適期です。パイプ栽培の場合は、芋を折らないよう慎重にパイプごと掘り出します。
葉が枯れるのは、葉で作られた養分が地下の芋に蓄積されたサインです。
- 地上の支柱やネット、枯れたツルを撤去します。
- パイプの傾斜に沿って周囲の土をスコップやクワで慎重に取り除きます。
- パイプ(または波板)ごと土から引き抜きます。
パイプなしの場合、収穫は非常に難しい作業となります。芋の周囲を1m以上深く、広範囲にわたって手で掘り進める必要があり、労力と時間が膨大にかかるため、ビジネスには不向きです。
自然薯の収穫までにかかる期間は?
自然薯は、植え付けから収穫まで通常1〜2年かかります。何を植え付けるかによって、収穫までの年数が変わります。
- 種芋
その年の秋(11月〜12月)に収穫可能です。 - むかご
- 1年目:むかごを植え、小さな種芋(1年芋)を育てます。
- 2年目:その1年芋を種芋として植え付け、秋に販売サイズの芋を収穫します。
つまり、むかごから始めると、本格的な収益化まで最低でも2年かかるため、こちらを踏まえて計画をたてることが重要です。
自然薯栽培でよくある失敗と対策は?
自然薯栽培が「儲からない」「難しい」という声が聞かれる主な原因は、以下の通りです。
1. 芋がうまく育たない
最大の原因は土作りと資材の準備や知識不足による失敗です。土が硬かったり、未熟な堆肥を使ったり、石や根が混入していたりすると、芋がまっすぐ伸びずに曲がったり、又根になったりして商品価値が著しく下がります。
完熟堆肥を使い、深く耕し、石などを取り除いたフカフカの土を作ること、そして芋をまっすぐ誘導するパイプやトタン波板を使用することが、最も確実な対策です。
2. 収穫で労力がかかりすぎる
パイプなしでの栽培は、収益化の観点から難しいと言わざるを得ません。地中1m以上に伸びた芋を折らずに掘り出すには、膨大な時間と労力がかかり、収穫コストが売上を上回ってしまうためです。
商業栽培を目指すのであれば、パイプ栽培(または波板栽培)は必須です。収穫作業が劇的に効率化され、折れも少なくなるため品質も安定します。
3. 病害虫や連作障害で全滅する
自然薯栽培が難しいとされる一因に、病害虫や連作障害のリスクがあります。
対策の基本は、植え付け前の適切な土作りと、水はけの良い畝作りです。また、同じ場所での連作を避け、数年間の輪作を行うことが重要です。
自然薯栽培で収益を最大化するコツは?
自然薯栽培の収益を最大化するには、高品質化、作業の効率化、高付加価値な販路の確保の3点を戦略的に実行することがポイントです。
1. 高付加価値な栽培技術を身につける
適切な土壌管理、優良な品種選定、そして栽培技術(特にパイプの選定と設置)が、まっすぐで太い高品質な自然薯の生産に不可欠です。
- 品質の追求:高品質な芋を安定的に生産できる技術の習得が最も重要です。
- 販売戦略:栽培方法の工夫、例えば有機JAS認証の取得や、特定の農法をアピールすることで、他との差別化を図り、さらなる高単価を狙うことも可能です。
2. 直売と加工品販売で収益を最大化する
利益率を上げるには、直売所ネット通販(ECサイト)などの中間マージンをカットできる販路と、加工品販売による付加価値化が鍵となります。
JAや卸売市場を通すと手数料が発生しますが、直売は利益率が格段に高まります。また、加工品は規格外品を収益に変え、収入源の多様化と安定化を図れます。
- 直売:贈答用シーズン(お歳暮)が最大の需要期です。ネット通販や地元の直売所を活用し、顧客に直接販売します。
- 加工:収穫時に発生する規格外品を、とろろ、麺、菓子、粉末などに加工します。これにより廃棄ロスをゼロにし、新たな収益源とします。
3. 販路拡大と労働力の確保
飲食店(高級和食店、料亭)への直接卸や、全量買い取りの契約栽培なども有効な販路です。また、自然薯栽培は植え付けと収穫期(冬)に労働力が集中するため、専業農家の場合は計画的な労働力の確保が必要です。
自然薯は副業(プランター・キット)でも栽培できる?
週末や休日を利用した副業や兼業農家としても、自然薯栽培は成り立ちます。
栽培管理の主な作業は特定の時期に集中するため、本業とのスケジュール調整が比較的しやすいです。また、高単価なため、プランターや小面積からでも始めやすい点が副業に向いています。
まずは小規模(プランター数個〜畑数畝程度)から始め、栽培技術と販路を確立してから、徐々に規模を拡大するのが堅実です。
- プランターでの栽培
趣味や自家消費の範囲に近くなります。パイプの代わりに、芋が下に伸びるスペースを確保するか、横に這わせる工夫が必要です。 - 栽培キット
初心者は栽培キットから試すのも良い方法です。種芋と専用の栽培袋(不織布ポットなど)、培養土がセットになったキットで栽培の感覚を掴めます。
副業であっても、まずは栽培技術をしっかりと身につけることが不可欠です。また、副業の所得が一定額を超えると、確定申告が必要になる点には留意が必要です。
自然薯栽培で安定した収益を目指すために
自然薯栽培は高単価作物であり、儲かる可能性を十分に秘めた魅力的な農業ビジネスです。10aあたり300万円以上の売上も目指せます。一方で、その実現には、栽培が難しい側面を技術で克服し、計画的な経営戦略を実行することが不可欠です。
収益化まで何年かけるか計画を立て、種芋から始めるか、むかごから始めるかを決めましょう。副業や家庭菜園であればプランターや栽培キットから試すのも一つの手です。土作り・パイプ栽培・直売や加工といった高付加価値な取り組みを組み合わせ、少しずつ経験を積み重ねていく様な経営戦略こそが、自然薯栽培で儲けるための最短ルートと言えるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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