- 更新日 : 2025年10月1日
SaaS開発の事業計画書の書き方・無料テンプレート【簡単解説】
SaaS(Software as a Service)開発の事業計画書は、事業内容を明確にし、目標を具体化させる目的で作成されます。また、進捗管理や競合分析の基準にもできるため、開発の方向性を定めやすくなるでしょう。
この記事では、SaaS開発の事業計画書の書き方や作成のポイントについて解説します。テンプレートを参考に、信頼性の高い事業計画書を作成してみてください。
目次
SaaS開発の事業計画書はなぜ必要?
SaaS開発の事業計画書は、事業内容を明確にし、目標の具体化を目的に作成されます。また、進捗管理や意思決定の基準にもできるため、開発の方向性を定めるのにも活用できるでしょう。
そのほかにも、以下のような場面で使用できます。
- 投資家や金融機関に事業の実現性や将来性を示す
- 共同創業者を募る際に、事業の魅力を説明する
- 自社サービスの強みを基に販売・マーケティング戦略を立案する
事業の方向性を定め、外部との交渉を円滑にするためにも、事業計画書の作成は欠かせません。事業計画書をしっかりと作り込んでおけば、資金調達やマーケティング戦略の成功にもつながります。
SaaS開発の事業計画書のひな形、テンプレート

マネーフォワード クラウドは、SaaS開発向けの事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードして、ご活用ください。
SaaS開発の事業計画書の書き方・記入例
SaaS開発の事業計画書を作成する際には、以下の項目に記入する必要があります。
- 創業の動機・目的
- 職歴・事業実績
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係
- 従業員
- 借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し(月平均)
具体的に記載することで、SaaS開発の事業計画の信頼性と説得力を高められます。また、市場分析や競合分析、マーケティング戦略なども含めることで、包括的な内容の事業計画書を作成できるでしょう。
創業の動機・目的
創業の動機・目的では「前職で経験した課題を解決したい」という漠然とした記述ではなく、経験に基づいた気づきや解決したい課題・ビジョンを詳細に記載するのが重要です。
具体的には以下のような例が挙げられます。
- クラウドベースの生産管理SaaSを開発し、中小製造業の生産性を20%向上させることで、日本のものづくり産業の競争力強化に貢献する
- 大手製造業で5年間働いた経験から、生産管理システムの非効率性に気づいたため、企業のデジタル化を促進し、生産性向上に貢献する
数値目標を含めた具体的な目的を記述することで、説得力を高められます。また、個人の経験と社会課題を結びつけ、具体的な内容とビジョンを示すのもよいでしょう。
職歴・事業実績
職歴・事業実績の項目では、SaaS開発に関連する経験や実績を具体的に記載します。具体例は以下のとおりです。
- 2015年から2020年まで、クラウド会計ソフトのスタートアップでバックエンド開発リーダーを務め、ユーザー数10万人突破に貢献
- 2020年以降、フリーランスSaaSコンサルタントとして5社の新規サービス立ち上げを支援し、そのうち2社が Series A の資金調達に成功
- 大手SIerでプロジェクトマネージャーとして100人規模のチームを統括
数字を交えて成果を示すことで効果的に実績を伝えられるでしょう。また、技術スキルだけでなく、マネジメント経験も記載すれば、SaaS開発に必要な総合的なスキルセットをアピールできます。
取扱商品・サービス
取扱商品・サービスの項目では、開発するソフトウェアの概要や特徴を簡潔に説明します。記載する内容と具体例は以下のとおりです。
- サービス名:中小企業向けクラウド型顧客管理システム『〇〇』
- 主な機能:顧客情報管理、商談管理、タスク管理、レポート作成
- ターゲット顧客:従業員50名以下の中小企業、特に営業部門
- 競合他社との差別化ポイント:AIを活用した営業提案機能
- 将来的な拡張計画:マーケティング機能を追加予定
将来的な拡張計画を記載しておくことによって、サービスの成長性をアピールできます。
取引先・取引関係
取引先・取引関係の項目では、業種や規模別の想定される主要顧客やサービス提供に不可欠な協力会社、販売促進や機能拡張のための提携先を具体的に記載します。
具体例は以下のとおりです。
| 販売先 | 従業員50名以下の中小製造業 A社(クラウドインフラを提供している) 会計事務所Y社を通じた新規顧客開拓 |
| 仕入先 | B社(決済システムを担当) |
| 外注 | X社(営業支援ツールとのAPI連携) |
詳細に記載することで、事業の実現性や成長性をアピールできます。
従業員
従業員の項目では、正社員の従業員数だけでなく、パート従業員の人数も詳細に記載します。たとえば、以下のように記入するとよいでしょう。
| 常勤役員の人数(法人のみ) | 0人 |
| 従業員数(3ヶ月以上継続雇用者) | 4人 |
| (うち家族従業員) (うちパート従業員) | 1人 3人 |
人件費と事業の成長見込みのバランスを考えて、現実的な人数を算出しましょう。
借入の状況
借入の状況では、現在の借入残高や返済状況、そして今後の借入予定を具体的に記載します。金融機関や投資家からの信頼を得るためにも、正直に記載しましょう。
具体例は以下のとおりです。
| 借入先 | 内容 | 借入残高 | 年間返済額 |
|---|---|---|---|
| A銀行B支店 | 事業 | 500万円 | 50万円 |
| 日本政策金融公庫 | 事業 | 300万円 | 60万円 |
借入がない場合は「現在の借入: なし」と明記します。
また、住宅ローンのような個人的な借入についても、忘れずに記載をしましょう。
必要な資金と調達方法
必要な資金と調達方法では、事業の立ち上げに必要な資金と調達方法を具体的に記載します。具体例は以下のとおりです。
| 必要資金 | 総額1,200万円 |
| 内訳 | 設備資金(事務所取得費、パソコン、開発環境構築):800万円 運転資金:400万円 |
資金の調達方法としては、自己資金300万円・銀行からの融資900万円などの複数の手段を組み合わせるのが一般的です。また、ベンチャーキャピタルからの出資や公的機関の補助金なども、検討すると良いでしょう。
事業の見通し(月平均)
事業の見通し(月平均)の項目では、業界動向や競合分析に基づいた現実的な予測を立てて、具体的な数値目標を掲げるのが重要です。具体例としては以下の内容が挙げられます。
| 売上高 | 初年度:150万円(月額5万円×30社) 1年後:320万円(解約率を2%として月額5万円×64社。毎月3件の新規顧客の獲得を見込む。) |
| 人件費 | 初年度:100万円(4名×25万円) 1年後:130万円(5名×26万円) |
| 家賃 | 初年度:15万円 1年後:15万円 |
| その他 | 初年度:10万円 1年後:15万円 |
マーケティング戦略や製品開発計画と整合性を持たせた数値を明記することで、事業の段階的な成長や改善を示せるでしょう。
SaaS開発の事業計画書作成のポイント
SaaS開発の事業計画書を作成する際のポイントは以下のとおりです。
- さまざまな評価基準・指標でシミュレーションする
- 資金調達を前提とした事業計画を立てる
- ビジネスモデルや将来性について具体的に記載する
具体的かつ説得力のある形で事業計画書に盛り込むことで、SaaS開発事業の将来性と成長戦略を明確にできます。また、投資家や金融機関に対しても、事業の魅力と実現可能性を効果的にアピールできるでしょう。
さまざまな評価基準・指標でシミュレーションする
SaaS事業の成長性や収益性を正確に予測するには、以下のような評価指標を用いたシミュレーションが重要です。
| 評価指標 | 記入例 |
|---|---|
| MRR(月間定期収益) | 初年度末に500万円、2年目は1,500万円 |
| CAC(顧客獲得コスト) | 初年度は1顧客あたり10万円、2年目以降は8万円に抑える |
| LTV(顧客生涯価値) | 平均契約期間3年、月額利用料2万円を想定し、1顧客あたりのLTVを72万円と算出 |
| CR(解約率) | 月間解約率を2%以下に抑えることを目標とし、カスタマーサクセス施策を強化する |
| ARPU(ユーザー平均単価) | 初年度のARPUは2万円/月。アップセル施策により、3年目には3万円/月まで向上させる |
評価指標を用いて、楽観的・中立的・悲観的シナリオを作成し「事業の見通し(月平均)」の項目に記載します。事業の実現可能性と成長性を多角的に示すことで、説得力ある事業計画書を作成できるでしょう。
資金調達を前提とした事業計画を立てる
資金調達を前提とした事業計画を立てる方法は以下のとおりです。
- 必要資金額と使い道を詳細に記載する
- 資金調達のタイミングと金額を明示する
- 出口戦略を立てる
具体例は以下のとおりです。
| 必要資金額と使い道 | 初期開発費用:5,000万 マーケティング費用:3,000万円 運転資金:2,000万円 合計:1億円 |
| 資金調達のタイミングと金額 | シード期:2,000万円 プロダクトローンチ後のシリーズA:8,000万円 |
| 出口戦略 | 5年後のIPOを目指し、年商10億円、利益率20%を達成する |
具体的に目標を設定し「必要な資金と調達方法」の項目の資料として提示することで、投資家が将来のリターンを予測しやすくなるので、円滑に資金調達を進められるでしょう。
ビジネスモデルや将来性について具体的に記載する
SaaS開発のビジネスモデルと将来性を具体的に示すことで事業の魅力を伝えやすくなります。記載する内容の例は以下のとおりです。
| 収益モデル | 月額5,000円のベーシックプランと10,000円のプロプランを提供 API利用は従量課金制 |
| 市場規模と成長性 | 国内のCRMソフトウェア市場は現在1,000億円規模で、年率15%で成長中 |
| 競合優位性 | AI機能による営業提案最適化や、他社製品との豊富なAPI連携 |
| 拡張性 | クラウドインフラの採用により、ユーザー数の急増にも対応可能 |
| 長期ビジョン | 中小企業のセールス&マーケティングを包括的にサポートするプラットフォームを目指す |
「取扱商品・サービス」の資料の一つとして、競合他社と差別化できるポイントや長期ビジョンを示すことで、事業の魅力を効果的にアピールできるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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