• 作成日 : 2025年6月24日

Wordで契約書作成・レビュー!作り方や便利機能、注意点まで解説

契約書の作成やレビューは、ビジネスにおいて不可欠なプロセスです。その際、多くの企業や専門家が利用しているのがMicrosoft Word(以下、Word)です。なぜWordが選ばれるのか、そしてWordをどのように活用すれば契約書レビューをより効率的かつ正確に行えるのでしょうか?

この記事では、Wordを使った契約書作成・レビューの基本的な流れから、知っておくと便利な機能、作業スピードを上げるショートカットキー、そして利用する上での注意点まで、幅広く解説します。

なぜ契約書レビューにWordが使われるのか?

契約書業務においてWordが広く利用されるのには、明確な理由があります。

普及率の高さと互換性

Wordは、Microsoft社が提供しているビジネス文書作成ソフトであり、ほとんどの企業で導入されています。これにより、取引先との契約書のやり取りにおいて、ファイル形式の違いによるトラブルが起こりにくく、スムーズな連携が可能です。

豊富な編集・校閲機能

Wordには、文章の編集はもちろん、「変更履歴」や「コメント」といった、複数人での共同作業も可能とする機能が搭載されています。これらの機能を活用することで、修正箇所や指摘事項を明確に記録・共有できます。

多くの専門家が利用

弁護士や法務担当者など、契約実務の専門家の多くもWordを日常的に使用しています。そのため、専門家へのレビュー依頼や、専門家からのフィードバックを受け取る際にも、Word形式でのやり取りが一般的です。

Wordを使った契約書作成・レビューの基本的な流れ

Wordを使って契約書の作成からレビュー、確定に至るまでの一般的な流れを見ていきましょう。

1. 新規作成またはテンプレートの利用

白紙の状態から契約書を作成するか、テンプレート化(ひな形化)した契約書のWordファイルがあるのであれば、そのテンプレート(ひな形)を利用します。テンプレートを使用することで、必要な条項の抜け漏れを防ぎ、作成時間を短縮できます。

2. 条項の入力と書式設定

契約内容に基づき、具体的な条項を入力します。この際、「段落」「スタイル」機能などを活用して見出しや条項番号の書式を統一すると、見やすく、後々の修正も容易になります。

3. 変更履歴機能を使ったレビュー依頼

レビューを依頼する前に、「校閲」タブにある「変更履歴の記録」をオンにします。これにより、レビュー担当者が加えた修正(文字の挿入、削除、書式変更など)がすべて記録され、誰がどこをどのように変更したかが一目でわかります。

4. コメント機能での指摘・質疑応答

修正意図の説明、疑問点の提示、代替案の提案などは、「コメント」機能を使って行います。該当箇所を選択し、「新しいコメント」をクリックして内容を入力します。これにより、本文を汚すことなく、具体的な指摘や議論が可能です。

5. 変更履歴の反映・確定

レビュー担当者から返却されたファイルを開き、記録された変更履歴とコメントを確認します。一つ一つの変更箇所について、「承諾」または「元に戻す」を選択していきます。「校閲」タブの「承諾」ボタンのプルダウンから「すべての変更を反映」などを選択することも可能です。コメントについても、内容を確認し、対応が終わったら「解決」または「削除」します。

6. 最終版のPDF化と保管

すべての変更履歴とコメントが処理され、内容が確定したら、意図しない変更を防ぐため、また改ざん防止のためにPDF形式で保存するのが一般的です。「ファイル」タブから「エクスポート」または「名前を付けて保存」でPDFを選択します。確定版のファイルは、社内の管理ルールに従って適切に保管しましょう。

契約書レビューに使えるWordの便利機能

Wordには、契約書レビューの効率と質を高めるための便利な機能が多数搭載されています。特に役立つものをいくつかご紹介します。

変更履歴(コメント機能と合わせて最強の校閲ツール)

契約書レビューにおいて最も重要な機能です。誰が、いつ、どこを、どのように修正したかを可視化します。

  • 使い方:「校閲」タブ → 「変更履歴の記録」をオンにする。
  • メリット:修正箇所が一目瞭然となり、レビューの透明性が向上。修正意図の確認や、元に戻す作業が容易。コメント機能と併用することで、修正理由も明確に伝えられる。
  • 表示方法の変更:「シンプルな変更履歴/コメント」「すべての変更履歴/コメント」「変更履歴/コメントなし」「初版」から表示形式を選択でき、レビュー状況に応じて見やすい形式を選べます。

コメント機能(ピンポイントでの指摘・議論に)

本文の特定箇所に対して、質問や提案、修正意図などを記録できる機能です。

  • 使い方:コメントを挿入したい箇所を選択 → 「校閲」タブ → 「新しいコメント」。
  • メリット:本文を変更せずに、具体的なフィードバックや議論が可能。複数のレビュー担当者間での意見交換にも有効。

比較機能(修正前後の差分を明確化)

2つのバージョンの契約書ファイルを比較し、変更箇所を抽出・表示する機能です。相手方から修正案が送られてきた際に、どの部分が変更されたかを正確に把握するのに役立ちます。

  • 使い方:「校閲」タブ → 「比較」 → 「比較…」。元の文書と変更された文書を指定する。
  • メリット:変更履歴が記録されていないファイル間の差分も確認可能。修正箇所の見落としを防ぐ。

スタイル機能(書式統一と目次作成を効率化)

見出し、本文、条項番号などに統一された書式(フォント、サイズ、インデントなど)を効率的に適用する機能です。

  • 使い方:「ホーム」タブ → 「スタイル」ギャラリーから適用、または自分でスタイルを作成・変更。
  • メリット:文書全体の見た目が整い、可読性が向上。スタイルの設定を変更するだけで、該当箇所すべての書式を一括変更可能。見出しスタイルを設定しておけば、目次を自動生成できる。

検索と置換(特定の文言修正・確認に)

文書内から特定の単語やフレーズを検索したり、別の言葉に一括で置き換えたりする機能です。

  • 使い方:「ホーム」タブ → 「検索」または「置換」(ショートカットキー:Ctrl+F / Ctrl+H)。
  • メリット:特定の用語(会社名、サービス名、定義語など)が正しく使われているかの確認や、修正が必要な場合に迅速に対応できる。

文書保護(編集制限で意図しない変更を防止)

文書全体または一部に対してパスワードを設定し、編集可能なユーザーや範囲を制限する機能です。最終版の契約書やテンプレートなどを誤って変更されるのを防ぎます。

  • 使い方:「ファイル」タブ → 「情報」 → 「文書の保護」、または「校閲」タブ → 「編集の制限」。
  • メリット:契約書の原本性や、テンプレートの維持に役立つ。

クイックパーツ / 定型句(頻出条項の入力を効率化)

秘密保持条項、不可抗力条項、準拠法・管轄条項など、契約書で頻繁に使用する定型的な文章を登録しておき、簡単な操作で呼び出して挿入できる機能です。

  • 使い方:登録したい文章を選択 → 「挿入」タブ → 「クイックパーツ」 → 「定型句」または「選択範囲をクイックパーツギャラリーに保存」。
  • メリット:条項入力の手間を大幅に削減し、入力ミスを防ぐ。

契約書レビューで役立つWordショートカットキー

ショートカットキーを使いこなせば、マウス操作の手間が省け、作業スピードが格段に向上します。契約書レビューで特に役立つものを抜粋して紹介します。

基本操作系ショートカット

  • Ctrl + S:上書き保存
  • Ctrl + F:検索
  • Ctrl + H:置換
  • Ctrl + Z:元に戻す
  • Ctrl + Y:やり直し
  • Ctrl + P:印刷

編集・書式設定系ショートカット

  • Ctrl + C:コピー
  • Ctrl + X:切り取り
  • Ctrl + V:貼り付け
  • Ctrl + B:太字
  • Ctrl + U:下線
  • Ctrl + I:斜体
  • Shift + F3:大文字/小文字の切り替え(英文契約で便利)

校閲(変更履歴・コメント)系ショートカット

  • Ctrl + Shift + E:変更履歴の記録のオン/オフ
  • Alt + Ctrl + M:コメントの挿入
  • (コメントや変更履歴の箇所にカーソルがある状態で)Alt + Shift + C:コメント/変更履歴ウィンドウの表示/非表示 (※環境やバージョンにより異なる場合があります)
  • (変更履歴の箇所にカーソルがある状態で)Alt + R → ZT → A2→M:変更を承諾して次へ
  • (変更履歴の箇所にカーソルがある状態で)Alt + R → ZT → J→M:変更を元に戻して次へ

※ショートカットキーはWordのバージョンやOSによって異なる場合があります。

Wordでの契約書レビューにおける注意点

便利なWordですが、契約書レビューで利用する際にはいくつか注意すべき点があります。

変更履歴・コメントの見落としリスク

ファイルを受け取った際に、変更履歴やコメントが残っていることに気づかず、そのまま相手方に返信したり、最終版として扱ってしまったりするリスクがあります。必ず「すべての変更履歴/コメント」表示で全体を確認し、対応漏れがないかチェックしましょう。

意図しない変更履歴の残存

レビューが完了し、最終版とする際には、必ずすべての変更履歴を「承諾」または「元に戻す」で処理し、コメントも「解決」または「削除」 しなければなりません。変更履歴が残ったままPDF化したり印刷したりすると、修正前の情報や内部のコメントが相手方に渡ってしまう可能性があります。

バージョン管理の重要性

複数回のレビューや修正が重なると、どのファイルが最新版かわからなくなりがちです。ファイル名に日付やバージョン番号を入れるなど、明確なルールを定めて管理することが極めて重要です。共有フォルダや契約管理システムなどを活用するのも有効です。

メタデータ(文書プロパティ)の確認

Wordファイルには、作成者、最終更新者、編集時間などの情報(メタデータ)が自動的に記録されています。これらの情報が外部に漏れることを避けたい場合は、ファイルを最終化する際に削除する必要があります。

  • 確認・削除方法:「ファイル」タブ → 「情報」 → 「問題のチェック」 → 「ドキュメント検査」を実行し、「ドキュメントのプロパティと個人情報」を「すべて削除」する。

便利機能を活用しWordで契約書レビューを行おう

Microsoft Wordは、その普及率の高さと豊富な機能により、契約書レビューにおいて非常に強力なツールとなります。「変更履歴」や「コメント」、「比較」といった機能を正しく理解し活用することで、レビュープロセスを効率化し、修正箇所や指摘事項を明確に管理できます。

また、ショートカットキーの活用や、スタイル機能、クイックパーツなどを使いこなすことで、作業時間をさらに短縮することも可能です。

一方で、変更履歴の見落としやバージョン管理の煩雑さといった注意点も存在します。これらのリスクを理解し、適切な対策を講じながらWordを活用することが、正確でスムーズな契約業務の実現につながります。

この記事を参考に、ぜひWordの機能を最大限に引き出し、日々の契約書レビュー業務の質と効率を高めてください。


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