- 作成日 : 2025年1月31日
個人サロンの同意書とは?ひな形や例文、書き方を解説
個人サロンの同意書は、安全な施術とトラブル防止のために作成する重要な文書です。重要事項について顧客から同意を得、その事実と同意の内容を形に残したものとなっています。
本記事で、サロン経営に関わる方に向けて同意書について解説し、作成のポイントを具体例とともに紹介します。
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目次
個人サロンの同意書とは?
個人サロンにおける「サロン同意書」とは、サロンで行われるサービスについて顧客が同意を示す(厳密には、事業者側が顧客から同意を得たい)ときに作成される文書のことです。
この同意書には、提供されるサービスの内容、潜在的なリスク、注意事項などを記し、双方の権利や責任を定める役割があります。
顧客が施術の内容やリスクを理解するためにも効果的ですし、事業者側にとってもこの文書が説明義務を果たしたことの証明資料として役立ちます。
ただ、同意書の法的効力に関してはこれをもって完全な免責が保証されるものではありません。重要な証拠としては機能しますが、「作成したからといって責任問題から100%免れることができるわけではない」ことに留意してください。
個人サロンの同意書はなぜ必要か
サロン同意書の必要性は次の理由から説明することができます。
- 同意書を通じて施術のリスクや注意事項を明確に伝えることができ顧客の安全確保につながるため
- 施術内容・料金・キャンセルポリシーなどを明確にすることで後々のトラブルを防ぎやすくなるため
- 万が一訴訟問題が発生しても権利義務の内容を客観的に示す証拠として使えるため
- 丁寧な説明を行い同意書のやり取りを行う過程が顧客との信頼関係構築につながるため
- 個人情報の取り扱いに関する項目を含めることで個人情報保護法違反のリスクを下げられるため
単に「業界ではよく使われているから」という理由で抽象的な内容しか記載していないと、本当に必要な場面で効果を発揮しません。形骸化することのないように運用することが大事です。
個人サロンの同意書を作成するケース
個人サロンにおいて同意書が作成されるケースは次のように分類することができます。
- 初回来店時
- 新しい施術を行うとき
- 未成年者に施術を行うとき
- リスクの高い施術を行うとき
- 施術内容に変更があったとき
各場面において押さえておきたいポイントを解説していきます。
初回来店時
新規の顧客が初めてサロンを訪れた際に同意書を締結するのがもっとも一般的なケースといえるでしょう。
この段階での同意書には、サロンの基本的な方針、キャンセルポリシー、施術上の一般的な注意事項などを含めて記載しておきます。具体的には次のような事項を含めておくとよいでしょう。
- 施術前の体調確認や持病の有無についての確認事項
- 予約のキャンセルや変更に関するルール
- 施術中の写真撮影や SNS への投稿に関する方針
- 個人情報の取り扱いについての説明 など
初回来店時の対応はその後継続的な関係を構築できるかどうかに大きく関わってくるため、丁寧な対応を心がけましょう。
新しい施術を行うとき
既存の顧客でも、サロンが新しい施術を導入したケースや新しい種類の施術を導入した場合などではその施術に最適化された同意書を作成することが大事です。
この場面では以下のポイントに留意しましょう。
- 新しい施術の内容、これまでの施術との違いや使用する製品や機器、期待される効果の違いなどを詳しく説明する
- 新施術に伴う特有のリスクや副作用について丁寧に説明して顧客の理解を得る
- 新しい施術が顧客個別の状態に適しているかどうかを入念に確認する
- 施術の料金体系や施術回数についての説明 など
新しい施術の際は想定外のリスクに注意し、同意書の作成と説明には特に慎重を期す必要があります。
未成年者に施術を行うとき
未成年者に施術を行う場合、法的な観点から特別な配慮が必要ですので、以下の点に留意して同意書を作成することになります。
- 未成年者本人の同意に加えて親権者の同意も必要
- 施術内容によっては年齢制限があるため年齢確認を行う
- 親権者の連絡先を記載して緊急時の対応について確認する
- 料金の支払い方法や責任者について明確にする
未成年者に対する施術は身体的な問題のほか法的なリスクも高いため、同意書の作成が特に重要といえます。
リスクの高い施術を行うとき
強力な薬剤を使用する施術、顔面への注射を伴う施術、長時間の施術を要する施術など、リスクの高い施術においては事前の丁寧な説明と同意書の作成が欠かせません。
そこで起こり得る副作用などを具体的に説明するよう書面にまとめ、必要に応じてアレルギーテストなど事前の検査を行い、その結果を踏まえた同意書を作成するとよいでしょう。また、よりリスクを抑えるために施術後のケアに関することや注意事項なども明記しておきましょう。
施術内容に変更があったとき
サロンのサービス内容や施術方法に大きな変更があった場合、既存の顧客に対しても新たな同意書を交付し、サインを求めることがあります。
このケースでは以下の点に注意してください。
- 何がどのように変更されたのかを具体的に説明する
- なぜその変更が必要になったのかを説明する
- 変更前と変更後の違いを明確に示して顧客が判断しやすいようにする
- 変更に伴う料金の変更がある場合はその詳細を説明する
施術内容の変更には、例えば使用する製品・機器の変更、施術手順の変更などが含まれます。これらの変更はサービスの品質向上や安全性向上などを目的とすることも多いようですが、顧客にとっては不安や戸惑いの原因となり得ます。
そのため、変更の必要性やその利点を丁寧に説明し、同意書を使って顧客の理解を得ておくことが重要です。
個人サロンの同意書のひな形・例文
同意書の作成ではこちらからダウンロードできるひな形を利用するのが効果的です。
ある程度必要な共通事項を漏らすことなく盛り込むことができますし、効率よく作成業務を進めることができます。ただし、そのまま流用しないよう注意してください。
個人サロンの同意書の書き方
効果的な同意書の作成方法と各項目で押さえるべきポイントについて、例文とともに解説していきます。ひな形も参照しながらご自身のサロンに適した同意書を作っていきましょう。
リスクや副作用について
施術に伴うリスクや副作用について明確に記載することは、顧客の安全確保と紛争予防、双方の観点から重要なことです。
例えば「施術後の効用、効果は必ずしも絶対的ではなく、個人ごとに違いがあることや、副作用が発生することもあることを理解し…」などと記載してリスクなどを認識してもらいましょう。
具体的に、以下のような内容を追加することをおすすめします。
- どのような副作用が起こり得るのかを例示する
- 個人差がどのように現れるのかについての説明
- 施術後に起こり得る一時的な症状の説明
発生頻度やその重さについて具体的に示すのは難しいかもしれませんが、可能な範囲で記しておくと顧客も安心して同意を示すことができるでしょう。
アレルギーや既往歴などの確認
健康状態やアレルギーの有無を確認することは、安全な施術を提供するうえでとても大切なことです。そこで例えば、以下のように記しておきます。
“サロンの施術を受けるにあたり、健康状態に何ら問題がないことを表明し、万が一健康状態に問題がある場合には、主治医の承諾を得ていることを表明します。”
また、このような簡潔な記載に留まらず「具体的なアレルギー項目のチェックリスト」を設けたり、「服用中の薬剤の確認」「妊娠・授乳中の確認」などの欄を設けたりすることも検討しましょう。
施術後の注意事項
施術の効果を最大化し、トラブルを防止するためにも、施術後の注意事項を明記しておきましょう。例えば施術する内容に合わせて以下のような点で留意すべきことがあるのなら同意書に記載をしておき、口頭でも顧客に説明をしておくことをおすすめします。
- 施術直後の注意事項(運動制限など)
- スキンケアや入浴についての注意点
- 施術効果を維持するためのアドバイス
- 異常が出た場合の連絡方法
- 次回施術までの推奨期間 など
特に重要な注意事項に関しては、口頭での説明に加えて別途リーフレットを用意しておくとよいでしょう。
免責時効
万が一に備え、法的な責任問題についても言及しておきましょう。例えば次のような条項を設けます。
“サロン施術中に負傷や疾病などが発生した場合、サロンおよびサロンスタッフその他の関係者は一切の責任を負わないことに同意します。”
“サロン施術中に発生した盗難や紛失について、サロンおよびサロンスタッフその他の関係者は一切の責任を負わないことに同意します。”
ただし、同意書でサインをしたとしてもあらゆる範囲で事業者側の免責が認められるわけではありません。適切な範囲での設定が重要であり、あまりに包括的な免責条項を設けていると当該条項が無効となる恐れもありますのでご注意ください。
そこで重大な過失に基づく損害などについては免責の対象外とするなど、実際に起こり得る問題を想定してある程度の範囲に限定しておくことが望ましいでしょう。
その他一般条項など
同意書の表題や前文には、この文書が何の役割を担っているのかが一目で分かるような文言を記載しておきます。回りくどい表現は使わず、「サロン同意書」などと表題を定め、全文についても次のように簡潔な記載をしておくとよいでしょう。
“私は、以下の内容を十分に理解し、疑問点については質問し、説明を受け納得したうえで、サロンの施術を受けることに同意します。”
また、①作成年月日や②顧客の住所・氏名、も忘れずに記入欄を設けましょう。署名または記名押印をしてもらい、住所も記載してもらうことで誰が同意をしたのか確実に特定するのです。
ほかには、キャンセルポリシーであったり料金の支払い条件であったり、施術内容問わずサロンの利用者に共通する事柄を必要に応じて定めておきます。
個人サロンの同意書を作成する際の注意点
個人サロンの同意書作成においてもっとも注意すべきは消費者契約法上の規制です。
「一切の責任を負わない」といった包括的な免責条項は、法的に無効となる可能性があります。
この一文で同意書全体が無効になるわけではありませんが、余計なトラブルを生む恐れがあるため、弁護士など消費者問題に強い専門家にサポートしてもらいながら作成作業を進めることをおすすめします。
また、よくあるトラブルとしては「施術後も期待した効果が得られない」「施術後の異常(皮膚トラブルなど)」などに対するクレームが挙げられます。これらに対応するため、起こり得る副作用や個人差についてはできる限り具体的に明記することが求められます。
また、施術前のカウンセリングで得た情報と同意書の内容を照らし合わせ、矛盾がないよう注意を払うことも大切です。
なお、押印がなくても無効にはなりませんが、本人が作成したものと証明するためにも押印または署名をしてもらいましょう。
個人サロンの同意書の保管期間や保管方法
同意書の保管ルールについては法律で細かく決められているわけではありません。ただし、トラブルがあった際に同意書が廃棄されていたのでは証拠としての役割が果たせません。
一般的には5~10年ほどは保管しておくことが推奨されます。医療行為とは異なるものの、同じ身体に関わるサービスで作成されるカルテの保存期間が5年と定められていますので、少なくとも5年は残しておきたいところです。
また、会社が作成する契約書だと10年保存するためこの期間に準じてリスクが十分に低くなる10年ほど残しておくと比較的安全といえるでしょう。
保管方法については、契約書などと同じような紛失防止・セキュリティ対策を施しておくとよいでしょう。コピー、あるいはデータのバックアップを取るなどしておくとより安心です。
個人サロンの同意書の電子化は可能?
同意書の電子化は可能です。
方法としては、タブレット端末を使ってその場で直接サインしてもらう方式とオンライン上で同意書を送受信する方式の大きく2つあり、電子契約システムなど専用のツールを導入すればすぐにでも運用を始めることができるでしょう。
電子化することで保管スペースが節約できたり、検索や閲覧が効率的にできるようになったり、といった利点が得られます。また、印刷や場合によっては郵送も不要となりコストも削減することができます。
個人サロンを経営するなら同意書のやり取りも忘れずに
個人サロンにおける同意書は、顧客に安心して施術を受けてもらい、事業運営のリスク管理にも重要な存在です。
ひな形を使うことでスムーズに作成が進められますが、そのままコピーするのではなくサロンでの施術内容や規模に合わせてカスタマイズすることが大事です。
また、文書を見せるだけでなく丁寧にその内容の説明を行うことも忘れてはいけません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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