- 更新日 : 2025年11月7日
飲食店のQSCとは?向上させる5つのステップとチェックシート、企業事例を紹介
QSCとは、マクドナルドを世界的チェーンに育て上げたレイ・クロックが生み出した飲食店経営を成功に導くための行動指標です。QSCは「Q=Quality」「S=Service」「C=Cleanliness」の略で、すべての項目が実現できている状態が理想だと言われています。この記事では、QSCの意味や重要性、QSC向上の具体例とポイント、チェックシートの例や企業事例などを紹介します。
目次
QSCとは?何の略?
QSCとは、マクドナルドの発展に大きく貢献したレイ・クロックが生み出した飲食店経営を成功させる上で重要な行動指標です。「Q=Quality」「S=Service」「C=Cleanliness」の略で、それぞれの項目が欠けることなく実現できている状態が理想です。
以下では、3つの項目について、それぞれの意味を詳しく解説します。
Q(Quality):料理の品質
Q(Quality)は、飲食店が提供する「クオリティ(品質)」を意味します。
料理の品質を判断する主な項目は、下記の通りです。
- 味
- ボリューム
- 温度
- 見た目
- 提供のスピード
- 価格など
「おいしい」「ボリュームがある」など特定の項目だけでなく、料理に関するすべての項目において基準を満たす必要があります。店舗や時間帯によって料理の品質に差が出ないように、管理を徹底することも大切です。
また、料理の内容に見合った価格設定がされているかも重要です。価格のわりに料理の品質が低ければ、お客様に満足してもらうことはできません。
S(Service):従業員の接客
S(Service)は、お客様に対する従業員の接客の品質を意味します。
従業員の接客に含まれる主な内容は、下記の通りです。
- 電話応対
- 入店後の案内
- 商品の提供
- 退店時のレジ対応など
お店への問い合わせや予約の電話対応も接客の1つです。従業員の話し方や言葉遣い、仕草などはお店の印象を大きく左右します。せっかく料理の品質が高くても、接客品質が低ければ満足度が下がることもあります。
お客様に気持ち良く来店してもらい食事を楽しんでもらうには、従業員一人ひとりの接客スキルを高めることがポイントです。
近年は個人がインターネットやSNSを活用してお店の評価を気軽に発信できます。良い接客だけでなく不適切な接客態度も世間に広まりやすいことを理解しておきましょう。
C(Cleanliness):お店の清潔感
C(Cleanliness)は、お店の「クレンリネス(清潔さ)」を意味します。
お店の清潔感に関わる内容は、下記の通りです。
- 店内の清掃状況
- 厨房の衛生管理
- 食器の洗浄状態
- 従業員の身だしなみなど
お店のエントランスやテーブル、受付やトイレなどの汚れは、お客様の楽しい気持ちを損なう原因になります。一方、清潔感があり食器やグラスがきれいな状態であれば、楽しい時間を過ごしてもらえます。
接客する従業員のユニフォームに汚れがないか、着崩れがないかもしっかりチェックしましょう。お店の清潔感を客観的に判断するためにも、お客様の視点に立って衛生面を確認することがポイントです。
QSCの向上が重要な理由
飲食店経営の成功には、QSCの向上が欠かせません。飲食業界では、競合店の存在やトレンドの変化などが売上に大きく影響します。
また、飲食店が売上を伸ばして経営を安定させるには、新規顧客やリピーターを増やす必要があります。ただし、新規顧客へのアプローチばかりでは宣伝広告のコストがかかるため、リピーターを増やすほうが費用対効果は高いと言えるでしょう。
QSCの向上は、初めて来店したお客様の印象アップにつながるため、リピーターになってもらえる可能性が高くなります。「また来たい」「また食べたい」と思ってもらえるような料理の品質・接客・お店の清潔感を目指しましょう。
ES(従業員満足度)との関係性
QSCの向上は、従業員の協力がなければ実現できません。従業員が仕事にやりがいを感じられるように、ES(従業員満足度)の向上を目指すことも大切です。
ESの向上につながる取り組み例は、下記の通りです。
- 清潔感のある労働環境を維持する
- 作業負担を軽減する
- 福利厚生を充実させる
- 社内表彰制度を設ける
- アルバイトの社員昇格制度を設ける
従業員の帰属意識や店舗への愛着を高めることで、従業員のモチベーションアップにもつながります。
飲食店のQSCレベルを向上させる5つのステップ
QSCの向上は、やみくもに取り組むのではなく、計画的にステップを踏んで進めることが成功の鍵です。
ステップ1:現状把握|顧客アンケートで課題を可視化する
まず、自分たちの店舗がお客様からどう見られているかを客観的に知ることから始めます。顧客アンケートを実施し、「料理の味と価格のバランス」「スタッフの対応」「店の清潔感」など、QSCに関するリアルな声を集め、課題を可視化します。
ステップ2:基準作り|マニュアルとチェックシートを作成する
ステップ1で見つかった課題を基に、「あるべき姿」を定義し、全スタッフが同じ基準で行動できるようマニュアルを作成します。さらに、その基準が守られているかを日々確認するためのチェックシートも用意することで、QSCのレベルを客観的に測定できるようになります。
ステップ3:実践と定着|トレーニングでスキルを向上させる
作成したマニュアルをただ配布するだけでは、QSCは向上しません。スタッフ一人ひとりのスキルとして定着させるため、定期的なトレーニングやロールプレイングを実施します。イレギュラーな事態への対応など、実践的な訓練でサービスの質を高めます。
ステップ4:評価と改善|振り返りミーティングで次の一手を考える
一定期間取り組みを実践したら、チェックシートの結果やお客様の声、スタッフからのフィードバックを基に振り返りを行います。上手くいった点はさらに伸ばし、改善が必要な点は新たな対策を考え、共有する。このPDCAサイクルを回し続けることが、QSCレベルを継続的に高めていく上で不可欠です。
ステップ5:土台作り|従業員満足度(ES)を高める
上記の4ステップを効果的に回すためには、土台となる従業員の協力と高いモチベーションが欠かせません。従業員満足度(ES)なくして、顧客満足度(CS)の向上はありえません。
働きやすい清潔な環境(専門業者によるクリーニング含む)の維持、適切な労働時間、公正な評価制度、福利厚生の充実など、従業員が「この店で働き続けたい」と思える環境を整えることが、QSC向上の最も確実な近道です。
QSC飲食店向けチェックシートの例
チェックシートを活用すると、飲食店が抱えている問題や課題の改善がスムーズになります。注意すべきポイントが明確になるため、ケアレスミスを防ぐ効果も期待できるでしょう。
QSCのチェック項目は、「Q(Quality)」「S(Service)」「C(Cleanliness)」の3つに分けてそれぞれ設定します。
下記のチェック項目例を参考に、お店に合ったQSCチェックシートを作成しましょう。
| Q(Quality)のチェックシート項目例 |
|---|
|
| S(Service)のチェックシート項目例 |
|
| C(Cleanliness)のチェックシート項目例 |
|
このチェックシートは、前章のステップ2で作成し、ステップ4の振り返りで活用します。チェック項目が多すぎると、把握に時間がかかり確認がおろそかになるリスクもあります。チェックシートに記載する項目は、分かりやすく整理することがポイントです。
QSCの応用「QSC+α」:QSC+H、QSC+Aなど
QSCに付加価値をプラスすることで、さらにレベルの高いサービスをお客様に提供できます。QSCの応用に用いられる項目は、「H(Hospitality)」「A(Atmosphere)」「V(Value)」の3つです。
ここでは、それぞれの意味とQSCに応用するメリットを詳しく解説します。
QSC+H(Hospitality)とは?
H(Hospitality)は、「ホスピタリティ(おもてなし)」を意味します。
おもてなしは、お客様に料理や食事の場を楽しんでもらうだけでなく、心地よさも感じてもらうためのサービスです。
S(Service)とH(Hospitality)の違いは、マニュアル化できるかどうかです。おもてなしは、S(Service)のようにマニュアル化できません。要望や感じていることは人それぞれ異なるため、目の前にいるお客様に合った対応を考えて行動に移す必要があります。
「リピーターの好みや注文歴を把握する」「親子連れの場合はお子様メニューがあることを伝える」など、お客様が喜ぶ接客を心がけましょう。
QSC+A(Atmosphere)とは?
A(Atmosphere)は、店舗の「アトモスフィア(雰囲気)」を意味します。
「QSC+A」を意識することで、お客様はリラックスして食事を楽しめます。お店のコンセプトに合わせて内装・BGM・従業員のユニフォームを選ぶなど、お客様がまた来たいと思う空間づくりを目指しましょう。
お客様の年代や好みにばらつきがある場合は、明るくて清潔感のある雰囲気を意識するのがポイントです。
QSC+V(Value)とは?
V(Value)は、お店を利用する「バリュー(価値)」を意味します。
レベルの高いQSCの提供により、お客様に価値のあるお店だと認識してもらえます。価値があるお店だと感じてもらうことで顧客満足度が向上し、売上アップも期待できるでしょう。
「期間限定メニュー発売」「来店スタンプ付与」「フォロワー限定プレゼント」など、他店との差別化を図ることも、店舗価値を高める1つの方法です。
QSC実践の企業事例
飲食店の業務効率化やES(従業員満足度)向上のために、QSCを実践している企業は数多くあります。とはいえ、企業の捉え方や目指す目標によって取り組み内容には違いがあります。QSCを店舗経営に生かすために、企業がどのような取り組みを行っているのかチェックしてみましょう。
ここでは、QSCに取り組む企業事例を3つ紹介します。
マクドナルド|日本マクドナルド株式会社
マクドナルドが実践している主なQSCの取り組みは、下記の通りです。
- 徹底したマニュアル化
- 食品管理システムの導入
- アプリによる顧客アンケートの実施
- トランス脂肪酸を減らすための工夫
マクドナルドでは、QSC徹底のために調理や清掃などの作業手順を細かくマニュアル化しています。食品管理システムは、食品が生産地から店舗まで適切に運ばれるように管理できる仕組みです。
お客様の声をリアルタイムで把握できるアプリの活用や、健康に配慮した調理方法の工夫など、マクドナルドではさまざまな取り組みに力を入れています。
ファミリーマート|株式会社ファミリーマート
ファミリーマートが実践している主なQSCの取り組みは、下記の通りです。
- 従業員育成システムの導入
- QSCトレーナーの配属
- QSCのレベルが高い店舗を表彰
- 優秀スタッフ社員登用制度の実施
ファミリーマート独自の従業員育成システムには、QSCが組み込まれています。地域全体の店舗に経験や技術を広める目的で、QSCトレーナーが配置されていることも特徴です。
QSCコンテストを実施して、レベルが高い店舗や優秀な従業員を適正に評価する仕組みも整っています。
すかいらーくホールディングス
すかいらーくホールディングスが実践している主なQSCの取り組みは、下記の通りです。
- 顧客満足度覆面調査ツールの導入
- 収益改善プロジェクトの実施
- QSCの成功事例をマニュアルに反映
- 社長による従業員へのインタビューの実施
課題や問題を洗い出すために、顧客満足度覆面調査ツールを導入しています。収益改善プロジェクトの実施結果から得たスキルや知識は、動画化してグループ内で共有しています。
また、社長による従業員へのインタビューもQSC向上を目指すための取り組みの1つです。従業員のリアルな声に耳を傾けることは、現状の適切な把握につながっています。
QSCは飲食店経営を成功させる上で重要な行動指針
QSCは飲食店経営を成功に導く上で重要な行動指針であり、「Q=Quality」「S=Service」「C=Cleanliness」を表します。飲食業界では競合店の動向やトレンドの変化などが売上に大きく影響するため、QSCを向上させて顧客満足度を高めれば新規顧客やリピーターの増加につながります。QSCを向上させるには、顧客アンケートを実施・分析するほか、マニュアルやチェックシートを作成することも効果的です。
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