- 更新日 : 2025年12月2日
スプレッドシートで議事録を効率的に作成する方法とは?テンプレート作成から自動化まで
Googleスプレッドシート(Google Sheets)を使った議事録作成は、リアルタイムで共同編集が行えるため、従来の文書作成ソフトよりも効率的に作成でき、素早い情報共有にも適しているでしょう。
特に、定期的な会議やチームミーティングでは、テンプレート化と関数の活用により、議事録作成の時間を大幅に短縮できます。
本記事では、テンプレート設計の手順に加え、TODAY・NOW・VLOOKUP・FILTER・QUERY などの関数を活用した自動化、アクションアイテムの抽出・期限管理、共有設定のポイントまでをまとめて解説します。実務の流れに沿って設定できるよう、準備・会議中・会議後の運用例も紹介します。
目次
スプレッドシートで議事録を作る基本的な手順
スプレッドシートで議事録を作成する第一歩は、会議の目的と参加者のニーズを理解し、必要な情報を網羅した構造的なテンプレートを設計することです。 適切なテンプレートにより、会議中の記録が効率化され、後から情報を検索しやすくなります。
議事録テンプレートの基本構造
効果的な議事録テンプレートには、以下の要素を含める必要があります。まず、新規スプレッドシートを作成し、1枚目のシートを「議事録テンプレート」として設定します。
ヘッダー部分(A1:E10)の設計:
会議名: [A1:B1をマージ、入力欄はC1:E1]
日時: [A2:B2をマージ、入力欄はC2:E2]
場所/URL: [A3:B3をマージ、入力欄はC3:E3]
参加者: [A4:B4をマージ、入力欄はC4:E5]
欠席者: [A6:B6をマージ、入力欄はC6:E6]
記録者: [A7:B7をマージ、入力欄はC7:E7]
配布資料: [A8:B8をマージ、入力欄はC8:E9]
ヘッダー部分は、背景色を薄いグレー(#F5F5F5)に設定し、項目名は太字にすることで視認性を高めます。また、ヘッダーを常に表示するには、10行目を選択したうえで「表示」→「固定」→「現在の行まで」を選択します(これで上から10行が固定されます)。
本文部分(A11以降)の構成:
議題番号 | 議題 | 発言者 | 内容 | 決定事項/アクション | 期限 | 担当者
これらの列幅は以下のように調整します。
- 議題番号(A列):60px
- 議題(B列):200px
- 発言者(C列):100px
- 内容(D列):400px
- 決定事項/アクション(E列):300px
- 期限(F列):100px
- 担当者(G列):100px
会議タイプ別のカスタマイズ
会議の性質に応じて、テンプレートをカスタマイズします。
定例会議用テンプレート:
前回の積み残し事項を確認する欄を追加:
前回からの継続事項:[別シートから自動参照]
進捗確認: [ステータス列を追加]
プロジェクトキックオフ用:
プロジェクト概要:
目標・スコープ:
リスク事項:
マイルストーン:
ブレインストーミング用:
アイデア番号 | アイデア内容 | 提案者 | 評価(5段階) | 実現可能性 | 優先度
議事録作成の実践的な手順
- 会議前の準備:
- テンプレートをコピーして新しいシートを作成
- 会議情報(日時、参加者など)を事前入力
- アジェンダを議題欄に記載
- 参加者に共有リンクを送付
- 会議中の記録:
- 発言者と内容をリアルタイムで入力
- 重要な決定事項は背景色(黄色)でハイライト
- アクションアイテムには★マークを付ける
- 疑問点や確認事項は赤文字で記載
- 会議後の処理:
- 記録内容を整理・清書
- アクションアイテムを別シートに転記
- 関係者にメールで共有
- 次回会議の準備事項を記載
議事録作成におすすめの関数と自動化
スプレッドシートの関数を活用することで、日時の自動入力、参加者リストの管理、アクションアイテムの抽出など、議事録作成の多くの作業を自動化できます。 これらの関数により、記録の正確性が向上し、作成時間が短縮されます。
日時・時間管理の関数
TODAY関数とNOW関数: 現在の日付と時刻を自動入力:
=TODAY() // 今日の日付
=NOW() // 現在の日時
=TEXT(NOW(),”yyyy/mm/dd hh:mm”) // 書式指定
会議時間の自動計算: 開始時刻と終了時刻から会議時間を計算:
=IF(AND(C2<>””,D2<>””),TEXT(D2-C2,”h時間mm分”),””)
次回会議日の自動計算: 定例会議の場合、次回日程を自動表示:
=WORKDAY(TODAY(),7) // 7営業日後
=TODAY()+7 // 1週間後
=EDATE(TODAY(),1) // 1ヶ月後
参加者管理の関数
VLOOKUP関数で社員情報を自動取得:
社員番号から氏名、部署、メールアドレスを自動入力:
氏名:=IFERROR(VLOOKUP(A2, 社員マスタ!A:D, 2, FALSE), “”)
部署:=IFERROR(VLOOKUP(A2, 社員マスタ!A:D, 3, FALSE), “”)
メール:=IFERROR(VLOOKUP(A2, 社員マスタ!A:D, 4, FALSE), “”)
FILTER関数で部署別参加者リスト作成:
=FILTER(A2:D, C2:C=”営業部”)
※ 例:A列=社員番号、B列=氏名、C列=部署、D列=メール。名前付き範囲を使うなら、事前に「参加者リスト=A2:D」「部署列=C2:C」を作成してから =FILTER(参加者リスト, 部署列=”営業部”) と記述してください。
COUNTIF関数で出欠管理:
=COUNTIF(出欠列,”出席”)&”名出席”
=COUNTIF(出欠列,”欠席”)&”名欠席”
アクションアイテムの自動抽出
FILTER関数でアクションアイテムを抽出:
決定事項列から「要対応」項目を自動リストアップ:
=FILTER(A11:G100,E11:E100<>””,F11:F100<>””)
QUERY関数で担当者別タスク一覧:
=QUERY(A11:G100,”SELECT B,E,F,G WHERE G=’田中’ AND E<>””)
期限管理の条件付き書式: 期限が近いタスクを色分け:
ルール1(上に配置):=AND(F2<>””, F2-TODAY()<=3) … 3日以内=赤
ルール2(その下):=AND(F2<>””, F2-TODAY()>3, F2-TODAY()<=7) … 4〜7日以内=黄
※ または、現在の式のまま3日以内のルールを上、7日以内のルールを下にして優先度で制御してください。
議事録番号の自動採番
連番の自動生成:
=IF(B11<>””,”MTG-“&TEXT(ROW()-10,”000″),””)
日付ベースの議事録ID生成:
=TEXT(TODAY(),”yyyymmdd”)&”-“&TEXT(COUNTIF($C$2:C2,TODAY())+1,”00”)
テンプレート管理と再利用の仕組み
よく使う議事録テンプレートをあらかじめまとめて管理し、簡単に再利用できるようにしておくと、議事録作成の標準化と効率化を実現できます。
組織全体でフォーマットの統一が進み、情報の共有や検索もスムーズになるでしょう。
テンプレートの管理方法
まず、用途別に「マスターテンプレート」を用意しておくと便利です。
以下のように会議の種類に応じてテンプレートを分類します。
テンプレート種類:
– 定例会議用
– プロジェクト会議用
– 役員会議用
– 1on1面談用
– ブレインストーミング用
これらのテンプレートをGoogleスプレッドシート上で一覧化し、選択できるようにしておくと、誰でも簡単に新しい議事録を作成できます。
テンプレート選択の自動化(例:Google Apps Script)
スクリプトを使えば、テンプレートを選んで自動的にコピーを作成する仕組みも構築できます。
たとえば、B2セルでテンプレートの種類を選ぶと、その内容に応じて対応するファイルが複製される例です。
/**
* B2 の選択に応じてテンプレートを複製し、所定フォルダに作成してURLを通知
* 前提:B2 にデータ検証でテンプレート種別(例:定例会議用 / プロジェクト会議用 …)
*/
function createMeetingMinutes() {
const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSheet();
const type = String(sheet.getRange(‘B2’).getValue()).trim();
if (!type) {
SpreadsheetApp.getUi().alert(‘B2 にテンプレート種別を選択してください。’);
return; }
// 種別→テンプレートIDの対応(URL ではなく **ID** を推奨)
const TEMPLATE_ID_MAP = {
‘定例会議用’: ‘TEMPLATE_ID_1’,
‘プロジェクト会議用’: ‘TEMPLATE_ID_2’,
‘役員会議用’: ‘TEMPLATE_ID_3’,
‘1on1面談用’: ‘TEMPLATE_ID_4’,
‘ブレインストーミング用’: ‘TEMPLATE_ID_5’, };
const templateId = TEMPLATE_ID_MAP[type];
if (!templateId) {
SpreadsheetApp.getUi().alert(`未対応のテンプレート種別です:${type}`);
return;}
// 保存先(任意)。特定フォルダに入れたい場合はIDを設定
const DEST_FOLDER_ID = ‘YOUR_DEST_FOLDER_ID’; // 使わないなら null/空でOK
const tz = SpreadsheetApp.getActive().getSpreadsheetTimeZone(); // 例:Asia/Tokyo
const name = `議事録_${Utilities.formatDate(new Date(), tz, ‘yyyyMMdd_HHmm’)}_${type}`;
// ファイル複製
const templateFile = DriveApp.getFileById(templateId);
const dest = DEST_FOLDER_ID ? DriveApp.getFolderById(DEST_FOLDER_ID) : null;
const copyFile = dest ? templateFile.makeCopy(name, dest) : templateFile.makeCopy(name);
// 複製したスプレッドシートを開いて軽く初期化(任意)
const ss = SpreadsheetApp.openById(copyFile.getId());
ss.getActiveSheet().getRange(‘C1’).setValue(Utilities.formatDate(new Date(), tz, ‘yyyy/MM/dd HH:mm’));
ss.getActiveSheet().getRange(‘C7’).setValue(Session.getEffectiveUser().getEmail());
const url = ss.getUrl();
SpreadsheetApp.getUi().alert(`議事録を作成しました:n${url}`);
// 必要ならシート内セルへも書き戻し
sheet.getRange(‘B3′).setValue(url); // 例:作成先URLを記録}
B2 に データの入力規則(リストを範囲で指定) を設定し、テンプレート種別の一覧(例:設定!A2:A6)から選択させます。コード側は 一覧の値と完全一致するキーでマッピングしてください。
(例:’定例会議用’,’プロジェクト会議用’,’役員会議用’,’1on1面談用’,’ブレインストーミング用’)
過去の議事録データを活用する
新しい議事録を作成する際には、前回の内容を自動的に参照・引き継ぐことも可能です。
- 初回は =IMPORTRANGE(“https://…/edit”,”本文!A1″) を入力し、表示される 「アクセスを許可」 をクリック。
- 実運用では 1回の IMPORTRANGE を変数化して使い回す(LET を推奨。非対応なら補助セル)。
例1:アクション全件を取り込み(前回URLがセル H2 に入っている想定)
=IMPORTRANGE($H$2,”アクション!A:G”)
例2:継続のみ抽出(高速版:LETで1回だけ取得)
=LET(src, IMPORTRANGE($H$2,”本文!A:G”),
FILTER(src, INDEX(src,,5)=”継続”))
※ INDEX(src,,5) は取り込んだ範囲の 5列目(E列) を指します。
※ LET が使えない場合は、別セルに =IMPORTRANGE($H$2,”本文!A:G”) を置き、そのセルを FILTER の範囲に指定。
- テンプレート/過去議事録ファイルは、利用者(またはグループ)に 閲覧以上の権限を付与。
- IMPORTRANGE は 参照先スプレッドシートへ初回のみ「アクセスを許可」が必要。エラー #REF! のバナーから許可してください。
議事録の分析とレポート機能
蓄積した議事録データを分析することで、会議の効率性や決定事項の実行状況を可視化できます。
データを定期的に振り返ることで、どの会議に時間がかかっているのか、アクションの進捗が滞っていないかといった点を把握し、会議の質を継続的に改善できます。
スプレッドシートの関数やグラフ機能を活用すれば、データドリブンな会議運営を簡単に実現できます。
KPIダッシュボードの作成
議事録データをもとに、会議のパフォーマンスを定量的に評価するためのKPI(主要業績指標)を設定します。
会議効率の指標:
- 総決定数:=COUNTIF(決定列範囲,”<>”)
- 総会議時間(時間):=SUM(会議時間列範囲)
- 決定事項数/時間:=IFERROR( COUNTIF(決定列範囲,”<>”) / SUM(会議時間列範囲) , 0 )
※ 列は具体的な範囲(例:D2:D、E2:E)または名前付き範囲に置き換えてください。
月次サマリーの自動集計
QUERY 関数を使えば、月ごとの会議数や平均時間、決定事項数を自動集計できます。
例)議事録データ が A:E(A列=月, B=会議ID, C=時間, D=決定数)で、先頭1行が見出しの場合:
=QUERY(議事録データ, “select Col1, count(Col2), avg(Col3), sum(Col4) group by Col1 label count(Col2) ‘件数’, avg(Col3) ‘平均時間’, sum(Col4) ‘決定数合計'”, 1)
このように設定しておくと、会議データを追加するたびに月次レポートが自動で更新され、集計作業の手間を削減できます。
グラフによる可視化
数値データをグラフ化することで、傾向を直感的に把握できます。
スプレッドシートの「挿入 → グラフ」機能を使えば、以下のような可視化が簡単に作成できます。
- 月別会議時間の推移(折れ線グラフ)
→ 会議の時間が長期的に増減している傾向を確認 - 部署別会議頻度(円グラフ)
→ 部署ごとの会議負担を比較 - アクションアイテムの進捗状況(積み上げ棒グラフ)
→ 各チームのタスク完了率を視覚的に表示
スプレッドシート議事録で会議を価値ある時間に
Googleスプレッドシートを活用した議事録作成は、適切なテンプレート設計と関数の活用により、単なる記録作業から価値ある情報管理システムへと進化させることができます。TODAY関数やVLOOKUP関数による自動化、FILTER関数によるアクションアイテムの管理、構造化による検索性の向上など、本記事で紹介した技術を組み合わせることで、効率的で実用的な議事録システムを構築できます。
重要なのは、組織の文化や会議の特性に合わせてカスタマイズし、継続的に改善していくことです。議事録は会議の記録であると同時に、組織の知識資産でもあります。スプレッドシートの強力な機能を最大限に活用し、会議を真に価値ある時間に変えていきましょう。定期的なレビューと改善により、議事録システムは組織の重要な情報インフラとして機能するようになります。
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