• 更新日 : 2025年8月29日

課長手当の相場はいくら?企業規模や業界別の違い、決め方を解説

課長に支払う役職手当の相場は、月額でおおよそ5万円から8万円が目安とされています。ただし、実際の金額は企業の規模や業種、そして課長に求める責任の重さによって大きく異なります。

適切な課長手当の設計は、社員のやる気や人材の定着、さらには残業代との関係を含めた法的な対応も求められる人事戦略のひとつです。

この記事では、最新の調査データをもとに、課長手当の相場や他の役職との比較、課長手当の決め方、そして法的リスクの回避まで、実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。

課長手当の相場はいくら?最新データを確認

課長手当の全体の平均支給額は、月額でおおよそ5万円台後半から7万円弱が目安となります。この手当は、部下のマネジメントや部署の目標達成など、管理業務に対する責任の重さに応じて支給される「役職手当(役付手当)」の一部です。

東京都産業労働局の『中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)』によると、調査対象企業659社のうち、約66.0%が役付手当を支給しており、多くの企業で制度として定着していることがわかります。

課長手当の平均支給額(月額)は、支給方法によって異なります。

  • 同額支給(268社):平均額 56,507円/平均年齢 47.9歳
  • 差額支給(145社):平均額 68,541円/平均年齢 46.5歳

課長手当の支給方法には、役職ごとに一律で金額が決まっている「同額支給」と、個人の評価や成果によって金額に差がつく「差額支給」の2種類があります。

「同額支給」を課長手当に採用している企業は6割以上ありますが、平均額で比べると、「差額支給」の方が高い傾向があります。従業員の成果や能力を手当に反映することでモチベーション向上を意図した設計といえるでしょう。

ただし、これはあくまで全体の平均値です。自社の手当が適正かどうかを判断するには、企業規模や業種といったより詳しい条件で相場を比較する必要があります。

出典:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)賃金制度、賞与・諸手当:第2表-⑤⑥役付手当の支給状況、支給金額|東京都産業労働局

【企業規模別】課長手当の相場

課長手当は、企業の従業員規模によって支給額に違いが見られます。

10~99人規模の中小企業では、月6万~7万円前後と比較的高めですが、100~299人規模になると約4万円台から7万円台まで金額の幅が広がります。

とくに「成果に応じて手当が変わる差額支給」を導入している企業では、規模が大きくなるほど平均額が高くなる傾向があり、能力や実績を重視する姿勢がうかがえます。

自社の規模に近い企業の相場を知ることで、手当の見直しや設計の参考にしやすくなるでしょう。

【企業規模別】課長手当の平均支給額(月別)

従業員規模同一役職の支給額が同じ場合同一役職でも支給額が異なる場合
10~49人60,783円63,522円
50~99人59,463円78,618円
100~299人42,637円70,423円

支給額の幅と平均年齢からわかること

課長手当の支給額は、企業ごとの考え方によって大きく差があることがわかります。

特に差額支給を採用している企業では、評価や実績に応じて高額な手当が設定されるケースが多く、成果主義が色濃く反映されているといえるでしょう。

また、課長の平均年齢はどの企業規模でもおおむね40代後半となっており、豊富な経験を持つ人材が管理職として起用されている傾向がうかがえます。

一方、50~99人規模の差額支給企業では平均年齢が43.6歳とやや若く、実力のある若手を積極的に登用している可能性も見て取れます。

【企業規模別】課長手当の支給額(同一役職の支給額が同じ場合)

従業員規模最高額最低額平均額平均年齢
10~49人400,000円3,000円60,783円48.0歳
50~99人365,200円10,000円59,463円47.6歳
100~299人91,000円5,000円42,637円48.1歳

【企業規模別】課長手当の支給額と平均年齢(同一役職でも支給額が異なる場合)

従業員規模最高額最低額平均額平均年齢
10~49人273,800円8,000円63,522円47.4歳
50~99人336,500円13,800円78,618円43.6歳
100~299人106,700円41,700円70,423円47.9歳

出典:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)賃金制度、賞与・諸手当:第2表-⑤⑥役付手当の支給状況、支給金額|東京都産業労働局

【業種別】課長手当の相場

課長手当の金額は、業種ごとの職務内容や人材の専門性によって異なります。

なかでも「医療・福祉」は平均17万6,000円と群を抜いており、高度な資格や専門的な知識を要する職種が多いことから、手当も高めに設定されていると考えられます。

「不動産業・物品賃貸業」も9万円台と水準が高く、成果が目に見えやすい営業的要素が金額に反映されている可能性があります。

また、建設業や製造業などでは4万〜6万円台が中心で、役職の責任や評価基準がより均質化されている傾向が見られます。

多くの業種で、成果を考慮して金額が変わる「異なる金額」方式のほうが支給額が高いけ意向があります。特に製造業では2万円近い差があります。

【業種別】課長手当の平均支給額

産業同一役職の支給額が同じ場合同一役職でも支給額が異なる場合
建設業38,446円56,571円
製造業43,956円63,837円
情報通信業51,954円46,669円
運輸業, 郵便業39,422円64,109円
卸売業, 小売業42,007円51,291円
不動産業, 物品賃貸業90,459円データなし
医療, 福祉176,111円33,000円

出典:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)賃金制度、賞与・諸手当:第2表-⑤⑥役付手当の支給状況、支給金額|東京都産業労働局

課長手当以外の部長、係長などとの相場の比較

課長手当の水準を検討する際は、部長や係長など、前後の役職と比較してバランスを取ることが、公平で納得感のある給与体系を築く上で欠かせません。中小企業における役職別の手当平均をみると、部長・課長・係長と階段状に手当額が上がっており、昇進ごとの責任の重さに応じた差がつけられていることがわかります。

役職別手当の平均支給額の比較

役職同一役職の支給額が同じ場合同一役職でも支給額が異なる場合
部長88,678円105,815円
課長56,507円68,541円
係長30,594円38,219円

出典:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)賃金制度、賞与・諸手当:第2表-⑤⑥役付手当の支給状況、支給金額|東京都産業労働局

同一金額支給方式では係長→課長で約2.6万円、課長→部長で約3.2万円、差額支給方式ではそれぞれ約3万円・約3.7万円と、昇進に伴って手当が段階的に増える設計になっていることです。これは、キャリアアップの意欲を後押しするインセンティブとしても機能しているといえるでしょう。

部長手当の相場

部長は、部門全体を統括し、経営方針に沿って意思決定を行うポジションです。その責任の大きさから、部長手当水準も高く、一般的な相場は月8万~10万円、業績好調な企業や金融系業種では13万円以上に達することもあります。

課長手当の相場

課長は、複数のチームやプロジェクトを束ね、現場と経営の橋渡し役となるポジションです。係長手当の支給額の相場は5万~8万円程度で、業績評価によって変動する差額支給制度を採る企業も増えています。責任の幅広さに応じて、安定感のある手当が設計されています。

係長手当の相場

係長は、現場で手を動かしながらも、後輩指導や業務管理を任される“プレイングマネージャー”としての立ち位置です。係長手当相場は2万~3万円で、初めてマネジメントの役割に関わるポジションとして、課長へのステップアップを意識した役割設計といえます。

主任・リーダー手当の相場

主任やリーダーは、チーム内で業務を取りまとめる実務リーダーです。管理職としての裁量や責任は限定的で、手当は月5,000円~1万円程度が一般的です。企業によっては明確な手当を設けず、基本給の昇給で対応するケースもあります。

役職別手当の相場比較

役職手当相場(月額)主な役割
部長8万円 ~ 10万円部門全体の統括、経営方針の実行
課長5万円 ~ 8万円複数チームの管理、部門目標の達成
係長2万円 ~ 3万円チームの管理、現場のプレイングマネージャー
主任5,000円 ~ 1万円現場のリーダー、一般社員の指導役

中小企業が課長手当を決めるときの3つのステップ

ここからは自社の課長手当を設定するための実践的な3つのステップを解説します。この手順に沿って進めることで、論理的で、社内外に説明可能な手当制度を構築できるでしょう。

ステップ1:課長に求める役割と責任を明確にする

課長手当の金額を決める前に、自社における「課長」のポジションがどんな役割を果たすのかを具体的に定義しましょう。この作業は、後に金額の根拠を説明するうえでも非常に重要です。

例えば、以下のような観点から整理します。

  • 業務範囲:どの部署・チームを統括するのか
  • 権限の範囲:どの予算まで決済できるか、人事評価や採用に関与するか
  • 責任項目:部門目標の達成、売上や利益、部下の育成など

この整理を行うと、「担当課長」や「部長代理」といった曖昧な役職が浮かび上がることもあります。そうしたポジションはこの機会に見直し、名称や役割の統合・再定義を進めると、手当制度がより公平でわかりやすくなります。

ステップ2:相場と比較しながら仮の金額を設定する

役割がはっきりしたら、次は相場データや他社事例を参考に、手当の金額を仮設定します。一度にすべての役職の手当を決めるのが難しい場合は、次のどちらかの方法を使うと整理しやすくなります。

  • ボトムアップ方式:主任(1万円)→係長(3万円)→課長(6万円)と、下位役職から積み上げていく
  • トップダウン方式:部長(10万円)→課長(7万円)→係長(3万円)と、上位役職から割り振っていく

この時点では「仮の金額」で構いません。次のステップで調整して完成度を高めます。

ステップ3:全体のバランスと現実的な運用可能性をチェックする

仮設定した金額をもとに、役職間のバランスやコスト面での整合性を見直します。

  • 昇進の魅力があるか:
    係長→課長、課長→部長と役職が上がるごとに、責任に見合った手当の差があるかを確認します。
  • 人件費の枠内か:
    新しい手当制度を導入した場合、全体の人件費が経営計画に収まるかを試算します。
  • 給与の逆転が起きていないか:
    課長の月収(基本給+手当)が、残業代の多い一般社員より低くなる「逆転現象」がないかを必ずチェックしてください。これは管理職本人のモチベーションだけでなく、周囲の昇進意欲にも影響します。

これらの調整を経て、自社の実情に合った、公平で持続可能な役職手当制度が完成します。

課長手当と残業代の関係

役職手当を導入・見直しする際、管理職だからといって、安易に残業代をカットすると「名ばかり管理職」と判断され、未払い賃金をさかのぼって請求されるリスクがあります。

ここでは、その法的なポイントを整理します。

役職手当=残業代なし、ではない

まず押さえておきたいのは、「役職手当を払っていれば残業代は不要になる」という考えは誤りだということです。労働基準法では、原則として残業が発生すれば割増賃金を支払う必要があります。この原則から外れるのは、あくまで「管理監督者」に該当する場合のみです。

注意すべきなのは、労働基準法41条2項における「管理監督者」と、社内の役職名としての「課長」「部長」などはイコールではないという点です。

「管理監督者」にあたるかどうかの4つの基準

では、どのような立場の従業員が「管理監督者」と認められるのでしょうか。役職名ではなく、以下の4つの基準をすべて満たしているかどうかで判断されます 。

裁判例などでは、次の4つを総合的に見て判断されます。1つでも満たさなければ、残業代は必要です。

判断基準該当する例該当しない例
① 職務内容経営会議への出席、事業計画への関与上司の指示を伝えるだけの中間管理職
② 権限と責任部下の採用決定、予算の裁量権面接はするが採否決定権はなし、経費使用は上長の許可が必要
③ 勤務の自由度出退勤が自己裁量、タイムカード管理なし出退勤が管理され、残業には事前許可が必要
④ 処遇(待遇)年収が一般社員より明確に高く、手当も厚い手当が少額で、残業代がないことで部下よりも収入が低くなることがある

「名ばかり管理職」とされるリスクとその代償

要件を満たしていないのに残業代を払わないと、いわゆる「名ばかり管理職」と判断され、以下のような問題を引き起こします。

  • 未払い残業代の請求:
    最大3年分の残業代+遅延損害金が請求される。金額が数百万円に及ぶことも。
  • 企業イメージへの打撃:
    労務トラブルが外部に知られると、採用や取引に悪影響が出る可能性。
  • 職場の士気低下:
    本人のモチベーション低下に加え、周囲の昇進意欲も損なわれる。

とくに注意が必要なのは、手当の金額があまりに少ない場合、それ自体が「管理監督者とはいえない」と判断される場合があることです。

たとえば月5,000円や1万円程度の手当では、責任に見合う待遇とは見なされず、企業側が法的に不利になることもあります。

課長を「管理監督者」として扱う場合は、業務内容・権限・働き方・処遇のすべてを見直し、残業代が不要と言えるだけの実態と手当額を備えておくことが必要です。

課長手当は人材戦略と法務の両面で見直すべき

課長手当の相場を把握することは、制度設計のスタート地点にすぎません。そのデータをもとに、自社の実情に即した「意味のある手当」を設計しましょう。役職手当は、給与項目のひとつであると同時に、社員に対する期待と役割を明確に伝えるメッセージでもあります。

特に中小企業では、業務内容や裁量に見合った手当を設定することで、社員の納得感や昇進意欲が高まり、組織の安定と成長につながります。また、労働基準法に基づく「管理監督者」の定義を誤ると、いわゆる「名ばかり管理職」として残業代の支払い義務が生じ、企業にとって大きなリスクとなるため、法的要件と待遇水準を照らし合わせた慎重な設計が欠かせません。


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