• 更新日 : 2025年4月17日

労働時間の上限は1日8時間!上限を超えた場合のルールや時間外労働の上限規制も解説

労働時間の上限は、労働基準法で厳しく規制されています。法定労働時間は「1日8時間・週40時間」と定められており、法定労働時間以上の労働をさせるには、労使間で36協定を締結しなければなりません。

また、「月45時間・年360時間以内」の時間外労働を超えると、法律違反になる点にも注意が必要です。本記事では、36協定の取り決めや、労働時間の上限規制について解説します。労働時間の上限を正しく理解し、適切な労務管理を行いましょう。

労働時間の上限は1日8時間(週40時間)

労働基準法第32条では、労働時間の上限を原則「1日8時間・週40時間」と定められており、これを「法定労働時間」といいます。

1ヶ月を平均して1週40時間にする「1ヶ月単位の変形労働時間制」や、1年の労働時間を平均して1週40時間にする「1年単位の変形労働制」などもあります。

それぞれの制度のなかで上限を超えた分の労働時間が「法定外労働時間(残業)」です。

法定外労働時間も、労働基準法で上限が定められています。この上限を超えて一定期間従業員を働かせた場合、企業は罰則を課せられる可能性があるので注意しなければなりません。

休憩・休日の考え方

企業は、従業員に対して適切な休憩時間と休日を与えなければなりません。労働基準法では、休憩と休日について以下のようなルールが設けられています。

  • 労働時間が6時間を超える場合の休憩時間:少なくとも45分以上
  • 労働時間が8時間を超える場合の休憩時間:少なくとも1時間以上
  • 休日:少なくとも毎週1日もしくは、4週間で4日以上

休憩時間とは、「労働者が労働から完全に離れることが保障されている時間」です。本来与えられる休憩時間を取得させなかったり、休憩時間に業務を依頼したりすると法律違反になるので注意が必要です。

所定労働時間とは企業が定めた労働時間

所定労働時間とは、企業が就業規則や労働契約で定めた労働時間を指します。労働時間を決める主体が法律である「法定労働時間」とは違い、企業が決定権を持っているのが特徴です。

  • 法定労働時間:原則「1日8時間・週40時間」と定められた労働時間
  • 所定労働時間:各企業が就業規則等で定めている、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を差し引いた労働時間

    所定労働時間には、「9時〜18時(休憩1時間)、10時〜19時(休憩1時間)」などがあり、企業ごとに条件は異なります。

    所定労働時間を法定労働時間と同じ、1日8時間に設定している企業がほとんどですが、一部「9時〜17時(休憩1時間)/1日7時間・週35時間」のように、所定労働時間を短縮している企業も存在します。

    この場合、8時間働いた日は法定労働時間内なので残業代は発生しません。8時間以上働いた分が残業代として支給されます。

    パートやアルバイトも労働基準法が適用される

    パートやアルバイトにも労働基準法が適用されます。法定労働時間の「1日8時間・週40時間」のなかで労働時間を確保する必要があり、この上限を超えて従業員に労働させる場合は、労使間で36協定の締結をしなければなりません。(36協定に関しては次の章で詳しく解説します)

    パートやアルバイトをする人のなかには、2つ以上の仕事を掛け持ちする方もいるでしょう。その場合は、所属している複数箇所の労働時間を通算して、法定労働時間内に

    収める必要があります。

    法定労働時間の上限を超える場合は36協定の締結が必要

    「1日8時間・週40時間」を超えた労働を従業員にさせるには、労使間で「36(サブロク)協定」を結ぶ必要があります。

    また、本来休日は「少なくとも毎週1日もしくは、4週間で4日以上付与しなければならない」と労働基準法で定められています。労働により最低限の休日が取れなくなる場合は、労使間で36協定を締結しなければなりません。

    36協定では、以下のような項目を定める必要があります。

    • 時間外労働を要する業務の種類
    • 時間外労働の上限(1日、1ヶ月、1年の各単位)
    • 従業員に休日労働をさせる日数と始業・終業時刻

    また、36協定は労使間で締結するだけでは効力を発揮しません。所轄労働基準監督署長へ36協定届を提出して初めて効力を発揮する点にも留意しておきましょう。

    時間外労働の上限規制は「月45時間・年360時間以内」が原則

    36協定の締結をしたからといって、企業は従業員にいくらでも時間外労働をさせていいというわけではありません。時間外労働には、「月45時間・年360時間以内」の上限が設けられています。働き方改革の一環で、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から「時間外労働の上限規制」が適用されています。

    時間外労働の上限規制では、臨時的な特別の事情がある場合だとしても、以下の項目を守らなければいけません。

    • 時間外労働が「年720時間以内」
    • 時間外労働と休⽇労働の合計が「⽉100時間未満」
    • 時間外労働と休⽇労働の合計が「2ヶ月目・3ヶ月目・4ヶ月目・5ヶ月目・6ヶ月目」で「平均80時間以内」
    • 時間外労働が⽉45時間を超えていいのは「年6ヶ月」

    時間外労働の上限規制にある「臨時的な特別の事情がある場合」とは、突然の業務量の大幅な増加によって、一時的に上限を超える労働時間が必要になる場合を指します。たとえば、以下のような状況です。

    • 急激な受注増加や納期変更などによる納期のひっ迫
    • 予期しない状態で発生した大規模なクレームへの対応
    • 突発的な設備故障やシステム障害などへの対応

    また、労働時間の上限規制において、次のようなケースはとくに注意しなければいけません。

    (例)時間外労働(44時間)+休⽇労働(56時間)=⽉100時間以上

    この場合、時間外労働は45時間以内に収まっていますが、休日労働の56時間を足すと100時間を超え、法律違反になります。この場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される恐れがある点に留意しておきましょう。

    法定外労働時間の割増賃金(残業代)の種類と割増率

    法定外労働時間の割増賃金(残業代)の種類と割増率を表にまとめました。

    種類支払う条件割増率
    時間外(時間外手当・残業手当)法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき25%以上
    時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間・1年360時間等)を超えたとき25%以上
    時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき50%以上
    休日(休日手当)法定休日(週1日)に勤務させたとき35%以上
    深夜(深夜手当)22時から5時までの間に勤務させたとき25%以上

    参考:しっかりマスター労働基準法割増賃金編|東京労働局

    所定労働時間が9:00〜17:00(休憩1時間)の従業員が残業したケースに当てはめてみましょう。

    引用:しっかりマスター労働基準法割増賃金編|東京労働局

    17:00〜18:00の1時間は、法定労働時間内に収まっているため、残業代の対象になりません。18:00〜22:00の4時間は、時間外労働となり25%以上の割増率で残業代が支給されます。

    また、22:00〜翌日5:00の労働に対しては、深夜手当の25%以上が加算され、計50%以上の割増率で残業代が算出されます。

    労働基準法改正前はいくらでも残業できる状態だった

    労働基準法が改正される前は、厚生労働大臣の告示によって残業時間の上限基準が定められていました。しかし、その内容は「臨時的な特別の事情がある場合の条件」を含めた36協定を締結があれば、企業はいくらでも残業が可能というものでした。

    法改正により、「臨時的な特別の事情がある場合」にも上限規制が設けられ、現在は上限を超えた場合には、罰則の対象となるように定められています。

    残業を含む総労働時間の上限の考え方(1日・1ヶ月)

    ここでは、以下の条件を仮定し、1日と1ヶ月の残業を含んだ総労働時間の上限について解説します。

    (例)1ヶ月を4週(所定労働日数20日)とする(36協定を締結している場合)

    【1日の場合】

    時間外労働の1ヶ月の上限である45時間を、所定労働日数の20日で割ると、1日の残業時間は2.25時間となります。法定労働時間の1日の上限である8時間を足した、10.25時間(10時間15分)が1日の残業を含めた総労働時間の目安です。

    【1ヶ月の場合】

    法定労働時間の上限160時間に、時間外労働の上限45時間を足した、205時間が1ヶ月における総労働時間の上限目安になります。

    ただし、時間外労働が月45時間を超えていいのは年6ヶ月までです。企業は総労働時間の目安を理解したうえで、残業時間を適正に保つよう勤務時間の管理を徹底しましょう。

    時間外労働の上限規制が2024年に適用された職種

    時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から適用されています。一方、以下の業種においては改正に時間がかかる見込みがあったため、2024年3月31日まで猶予が与えられていました。

    各職種における2024年4月1日以降の取り扱いもあわせて解説します。

    事業・業務上限規制の取り扱い(2024年4月以降)
    建設業災害の復旧・復興の事業を除き、すべての上限規制が適用されます。災害の復旧・復興の事業に関しては、時間外労働と休⽇労働の合計について「月100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されません。
    ドライバー特別条項付き協定を締結する場合の時間外労働の上限が「年960時間」となります。時間外労働と休⽇労働の合計について「⽉100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されません。また、時間外労働が⽉45時間を超えていいのは「年6ヶ月」といった規制も適⽤されません。
    医師時間外労働の上限が「年960時間」となります。地域医療の確保のため年1,860時間の上限も設けられていますが、適用されるのは都道府県知事から指定を受けた医師のみです。
    鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業すべての上限規制が適用されます。

    これら4つの職種に時間外労働の上限が設けられ、すべての職種に適用がされたことになります。

    労働時間を適切に管理するためのツール

    厚生労働省は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を設置し、使用者には労働者の労働時間を適正に把握する責務があると示しています。使用者と労働者は、以下のようなツールを使い労働時間の管理を徹底しましょう。

    1. 勤怠管理システム

    勤怠管理システムは、手計算での集計が不要なため、複雑な勤怠時間の計算ミスを事前に防げるのがメリットです。市場に出ている勤怠管理システムは、時間外労働の上限規制に対応する機能が入っているものがほとんどのため、労働時間の管理に役立つでしょう。

    管理職が従業員の勤怠状況を即時に把握できる機能や、労働基準違反のリスクを知らせるアラート機能が備わっているものもあります。

    一方、一時的に導入コストがかかるのがデメリットです。また、従業員がシステムに適応するまでに時間を要します。デメリットがあるとしても、労働時間を正確に管理するためにはメリットの方が大きいといえるでしょう。

    2. タイムカード

    タイムカードは、導入のしやすさが最大のメリットでしょう。タイムカードの機械1台とタイムカードの用紙があれば使用でき、導入コストを低く抑えられます。

    始業と終業のタイミングで従業員本人がタイムカードを押すので、打刻忘れや打刻ミスが起きやすいのがデメリットです。また、労働時間の計算方法が手計算になる場合もあるため、ヒューマンエラーによる計算ミスのリスクがともないます。

    従業員の人数が少ない場合は管理しやすい方法ですが、人数が増えるにつれて管理負担が大きくなるのがデメリットといえるでしょう。

    3. エクセル・スプレッドシート

    エクセルやスプレッドシートは、労働計算ツールを自社に合う形にカスタマイズできる点がメリットです。専用の勤怠管理システムを導入する手間とコストがかからないため、低予算で労働時間の管理が可能です。

    一方、人の手で管理するためデータの改ざんや計算ミスが起きる可能性があります。また、法改正などがある度に関数の組み直しをしなければならない点もデメリットといえるでしょう。


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