- 更新日 : 2025年11月13日
仕事が遅いと言われるのはパワハラ?パワハラに該当するケースや対応方法を解説
部下や後輩がいると「仕事が遅い」と言ってしまうという方もいるかもしれません。これの言動は実は要注意であって、パワハラに該当する恐れがあります。
本記事では「仕事が遅い」と言うのがパワハラに該当するケースや、パワハラにならないように伝えるコツについてご説明します。
目次
仕事が遅いと言われるのがパワハラに該当するケースは?
そもそもパワハラとは厚生労働省によって「①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすもの」という定義がなされています。
これに当てはまる状況で「仕事が遅い」と言えば、パワハラにあたる可能性があります。
一般社団法人日本ハラスメント協会では、「仕事が遅い」という言葉もパワハラにあたる言葉として挙げています。
参考:パワハラにあたる言葉・パワハラにあたる行為|一般社団法人日本ハラスメント協会
特に以下のようなケースでは「仕事が遅い」と言うことがパワハラに該当する可能性が高いため、十分注意しましょう。
仕事量や労働時間が過大で理不尽
例えば、適切な仕事量で部下や後輩の段取りが悪く、たまたま「仕事が遅い」という言葉を口にしてしまった場合、それは指導の範疇と言えるでしょう。一方で、そもそも大量の仕事を与えて長時間労働が慢性的になっている状況を作り出しておいて「仕事が遅い」と言うのは理不尽であり、パワハラの要件に当てはまるでしょう。
上司からのプレッシャーが過度
日頃から上司や先輩が過度にプレッシャーをかけている、頻繁に叱責しているという事実がある場合、「仕事が遅い」という言葉に対しても部下や後輩は恐怖を感じ、パワハラとみなされる恐れが高くなります。
また、一度のみならまだしも、執拗に「仕事が遅い」と言うのは業務上の指導の範疇を超え、やはりパワハラと捉えられるリスクが高くなります。
相談できる人がおらず孤立して業務をしている
例えば、必要がないのにもかかわらず一人部屋に追いやって仕事をさせる、必要な会議などに参加させないといった行為で、相手の人間関係を絶ち孤立をさせるという行為自体がパワハラとなります。この状況で「仕事が遅い」と言ってしまえば、パワハラが成立する確率が高くなるでしょう。
仕事が遅い人にパワハラにならないように伝えるポイント
以上のように、部下や後輩などに「仕事が遅い」と言ってしまうとパワハラとみなされるリスクも十分にあります。一方で、どうしても要領が悪い、もしくは仕事に対する意識が低いがために仕事が遅くなってしまうという人もいます。ここからはそのようなタイプの部下や後輩に対して、パワハラにならないよう指導するポイントについて考えていきましょう。
表現方法を変える
「仕事が遅い」とストレートに伝えるのではなく、表現方法を少し変えてみましょう。例えば「●時までにこの仕事をやってくれると助かる」「前回よりももう少し早めにやってほしい」というように言い換えるだけでも、相手からの印象は大きく変わります。
また、「仕事が丁寧なのはすごくいいけど、今回はスピードを優先してほしい」というように、相手を肯定しつつ急ぐように伝える方法もあります。
進捗状況を逐一確認する
特に新人は業務に慣れておらずスケジューリングが不十分で仕事が遅くなってしまいがちです。放置するのではなく、「●●時までにできそう?」「困っていることはない?」としっかりとコミュニケーションを取って進捗状況を確認しましょう。
状況を把握していれば任せていた仕事が締切までに終わるかどうか判断がつきやすくなります。また、問題が発生している場合はアドバイスができる、間に合わなさそうであれば他の社員をサポートにつけるなどを心がけると、事前に対策ができるようになるでしょう。
そもそも適正に仕事を割り振れているかを見直す
任せている業務量がその人のキャパシティを超えている、業務内容が適性やスキルに見合っていない場合、仕事が遅れがちになるでしょう。いつも仕事が遅い部下や後輩がいる場合、そもそも任せている業務の量や内容が適正であるかどうかを見直してみましょう。これも管理職やリーダーの重要な役割です。
仕事が遅いと言われた場合の対応
上司や先輩から「仕事が遅い」と言われてしまったという方もいらっしゃるかと思います。確かに「仕事が遅い」という言葉はパワハラとみなされる場合がありますが、ご自身に原因があるケースも想定されます。まずは「仕事が遅い」と言われないよう、以下のことを意識してみましょう。
タスク管理方法や優先順位を見直す
例えば、タスク管理が不十分で指示されるまま仕事を引き受けてしまった場合、あるいは複数の業務を同時に進めていて優先順位がついていない場合、仕事が求められている期限までに終わらないという事態に陥りかねません。
「どの仕事をいつまでに完了しなければならないのか」「そのためにはどの仕事から優先させればいいのか」を明確にしましょう。ToDoリストを作成する、カレンダーアプリに仕事の締切を入力するだけでも、締切遅れを防ぐことにつながります。
上司や同僚とのコミュニケーションを増やす
本当は仕事が進んでいないのにもかかわらず、あるいは問題が発生しているのにもかかわらず、それを一人で抱え込んでしまって締切に間に合わないということもありがちです。
特に入社したて、異動したてで慣れないうちは、思ったように仕事が進まないということもあり得ます。悩んだときには上司に早めに状況を報告しましょう。同僚から手伝ってもらうという手段もあります。そのためにも日頃から職場でしっかりとコミュニケーションを取っておくことが大切です。
スキルアップに努める
今は仕事が遅くても、スキルや知識が身につけば、徐々にスピードアップするでしょう。慣れてくれば作業を効率よく進める方法がわかり、さらに仕事が早くなります。特に新入社員や若手社員はスキルアップを図る、自分なりに効率がいい方法を考えるといった努力もしてみましょう。それが将来のキャリアにもつながるはずです。
仕事が速い人にアドバイスをもらう
職場を見渡してみれば同じ仕事を早くこなしてしまう先輩や同僚がいるはずです。「どうしたら仕事が速くなるか」を聞いてみるのもおすすめです。業務に慣れているのもありますが、仕事が速い人は効率的に進めるコツや、「手を抜いてもいい」ポイントを知っているものです。そういったノウハウを聞き出してご自身で取り入れてみれば、飛躍的にスピードがアップするかもしれません。
アドバイスをもらうためにも、日頃から職場でのコミュニケーションは積極的に取りましょう。
仕事が遅いと言われるのが、パワハラに該当する場合の対応
長時間労働が慢性化している、過度なプレッシャーをかけられていて、かつ執拗に、あるいは高圧的に「仕事が遅い」と言われる場合は、パワハラに該当する可能性があります。
パワハラをされていると思われるなら、つらいと感じるなら、まずはどんなことをされているのかを記録しましょう。状況をメモしたり当該の上司や先輩などの声を録音したりすることで、後々の証拠となります。
同時に同僚や親しい先輩、上司などに相談してみましょう。悩みを話すだけでも心がスッキリするはずです。また、周囲からの協力によって当該の上司や先輩の言動が改善される可能性もあります。身近な人に相談できない場合は人事部門や社内のハラスメント相談窓口に相談しましょう。
ただ、相談する相手や窓口がない、社内の人に相談するのは不安だと感じられている方は、外部の窓口に相談してみましょう。労働局・労働基準監督署に設けられている「総合労働相談コーナー」では専門の相談員が話を聞いて対処方法をアドバイスしてくれます。他にも日本司法支援センターが運営していて弁護士などの専門家に無料で相談できる「法テラス」、人権問題の解決についてアドバイスをしてくれる「みんなの人権110番」、メンタルヘルスに関する情報が収集できる「こころの耳」など、さまざまな窓口があります。
参考:こころの耳|厚生労働省
「仕事が遅い」はパワハラに該当する恐れが十分にあり
「仕事が遅い」という言い回しはしばしば耳にするかもしれません。しかし、これを本人に言った場合はパワハラに該当する恐れがあります。管理職の方は言い回しや表現方法には十分注意するとともに、仕事の割り振りや職場の労働環境も見直してみましょう。
一方、「仕事が遅い」と言われてしまった方は、それが指導の一環であることも考えられるため、まずは仕事の進め方に問題がないか顧みてみましょう。改善して業務効率がアップすれば、「仕事が遅い」と言われなくなる可能性もあります。もしパワハラが疑われるのであれば、一度第三者や外部窓口に相談してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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