- 更新日 : 2024年8月30日
テンプレート付き – 時間外勤務申請書について解説!
長時間労働の削減を図るために「残業申請制」の導入を検討している労務担当者の方も多いのではないでしょうか。残業申請制を導入するためには、時間外勤務申請書の作成が必要です。この記事では、時間外勤務申請書の概要や保存期間、記載項目について解説します。記事内の無料テンプレートもぜひご活用ください。
目次
時間外勤務申請書とは?
時間外勤務申請書(残業申請書)は、従業員が残業を申請する際に必要な書類です。この申請に対し、上長が承認した場合にのみ残業を行う仕組みを「残業申請制」と呼びます。「働き方改革」の中の長時間労働の削減を図る施策のひとつです。
ここでは、時間外勤務申請書の目的や、作成義務の有無について解説します。
時間外勤務申請書の目的
時間外勤務申請書はサービス残業や不要な残業を防止し、適切な労働時間を管理することが目的です。従業員が残業を申請し、承認してもらうためには合理的な理由がなければなりません。残業代目当ての生活残業や、他の人が残っているから退社できずに生じた残業などを減少させられます。申請書に残業理由を記載しなければならないことから、定時時間内にダラダラ仕事をしたことで終わらなかったということも防げるでしょう。
時間外勤務申請書によって適切な労働時間の管理ができ、従業員のメンタルヘルスへの負担軽減にもつながります。上長の承認がなければ残業ができないため、長時間労働を抑制できるのです。また、上長は残業の状態に応じて割り振る業務量を早い段階で調整できます。長時間労働や許容量以上の業務量によって従業員が心身の不調をきたすことを予防できるでしょう。
厚生労働省受託事業による「時間外労働削減の好事例集」では、時間外勤務申請書の導入によって時間外労働の削減の取り組みを進められた例が報告されています。従業員からの残業の申請によって「どの部門で」「どのような理由により」「どの程度の残業が発生しているか」など残業の実態を上長や労務部が正確に把握できるようになりました。
その結果、時間外労働削減のために何から行うべきか優先順位付けができるようになったのです。時間外勤務申請書を運用するに当たって「残業申請制を導入しただけ」の状態にならないように注意しましょう。従業員が申請し、上長が承認するワークフローをこなすだけではこの仕組みの意味がありません。「納期が迫っているため」というような具体的な理由を挙げるなど承認基準を設けておいて、その基準を満たす場合のみ承認するようにしましょう。
参考:時間外労働削減の好事例集|厚生労働省受託事業 中小企業における長時間労働見直し支援事業検討委員会
時間外勤務申請書を作成していない場合、罰則はある?
残業申請制の導入は義務ではないため、時間外勤務申請書を作成していなくても罰則はありません。36協定の締結および労働基準監督署への届け出を行っている会社は従業員に法定労働時間(1日8時間1週40時間)を超えて残業を行わせることができます。とはいえ、36協定に定められた時間内に残業時間を収めなければなりません。超過した場合は、会社が労働基準法違反として責任を問われるためです。
労働基準法を遵守するためにも、原則残業禁止とし、残業許可制を導入することが望ましいでしょう。残業許可制を導入する際は時間外勤務申請書を作成し、残業を行う前に従業員から上長への提出を徹底させる必要があります。残業は作業に必要な最小限の時間までとするとともに、その時間を超える残業が、不要であったと認められた場合は残業代を一切支給しないことを従業員に伝えておくことも必要です。従業員と認識違いが起こらないように時間外勤務申請書に関するルールを就業規則に明記しておきましょう。
時間外勤務申請書の保存期間
労働基準法109条および143条において労働関係に関する重要な書類は3年間保存することが義務付けられているため、時間外勤務申請書の保存期間は3年となります。民法改正による賃金等の一般債権に関する消滅時効の期間の変更に伴い、令和2年4月からは保存期間が5年間に延長されていることに留意しましょう。現時点では、延長への急な対応が難しいことを考慮して当分の間は3年間とされていますが、可能であれば賃金を支払った給料日から5年間保存しておくことを推奨します。
時間外勤務申請書は従業員からの未払残業代請求における重要な証拠です。保存義務に違反した場合は30万円以下の罰金が科せられるため注意しなければなりません。保存義務違反が発覚するのは、労働基準監督署が臨検調査に入ったときがほとんどです。労基署が抜き打ちで調査しに来た際もスムーズに対応できるように時間外勤務申請書は保存および管理を徹底しておきましょう。
時間外勤務申請書に記載が必要な項目
時間外勤務申請書の必要な記載事項は以下です。
- 申請日
- 残業予定時間
- 業務内容
- 申請理由
- 上長の承認印
- 上長が不承認とする場合の理由
- 実際に残業を行った時間
- 実際に行った業務内容
- 予定時間を延長した場合はその理由
- 上長の確認印
一般社団法人日本能率協会「第7回ビジネスパーソン1,000人調査(仕事と健康編)」によると、残業をする理由は以下のとおりでした。ここではランキング形式で紹介します。
- 自身の日常業務が終わらないから
- 突発的なことに対応する必要があるから
- 残業手当(時間外給与)が欲しいから
- 職場が残業をする雰囲気だから
- 同僚・部下の業務をフォローするから
- 残業してでも達成したい目標があるから
- 上司から指示されるから
- 上司より早く帰りにくいから
- 会議が就業時間外に行われるから
- 同僚・部下より早く帰りにくいから
- 家に帰ってもしたいことがないから
- その他
残業をする理由の上位を占める1.や2.は残業申請をする理由として適切と言えるでしょう。一方で、同調査によると、労働者は残業を減らすために以下のことを職場に求めています。
- 必要ない業務をやめること
- 残業しない職場の雰囲気づくり
- 特定の人に負荷がかからない仕事の割り振り
- 職場の人員を増やすこと
- 上司が率先して残業を減らすよう働きかけること
- 定時消灯/残業0デーなどの推進
- 会議時間を減らすこと
- 時間でなく成果での人事評価を徹底すること
- 決裁ルートを簡略化すること
- IT機器システム導入による業務の改善
- 仕事の後の学び・趣味の推奨
- オフィスレイアウトなど仕事に集中しやすい職場環境づくり
- 朝型勤務制度の推進
残業を削減することも大切ですが、残業が発生しないような環境づくりも重要です。
残業申請制を導入する前に、今一度業務内容や職場環境を見直してみましょう。
参考:7回ビジネスパーソン1,000人調査(仕事と健康編)|一般社団法人日本能率協会
時間外勤務申請書への記載例 – 無料テンプレート付き
残業申請制を導入するために時間外勤務申請書の定型書式(雛形・ひな形)を作成しましょう。インターネットには様々なテンプレートが公開されており、それを利用するのも一つの方法です。マネーフォワードもテンプレートを公開しており、無料でダウンロードおよび利用が可能です。時間外勤務申請書のテンプレートは以下からダウンロードできます。
なお、残業申請理由として以下のような例を挙げておくと従業員が申請しやすくなるでしょう。
- 明日のセミナー資料作成のため
- 残務処理のため
- 入荷伝票・入出金残高のチェックのため
- プロジェクトの進捗が遅延しているため
- ○○業務:スケジュールがタイトなため
上記のような残業の申請理由の書き方や申請が承認されない場合の例、残業時間の取り扱いについて、就業規則とは別に簡単なマニュアルを作成しておきましょう。そうすることで、従業員からの問い合わせを減らせるため、労務担当者や上長の負担を軽減できるはずです。
時間外勤務申請書に関する理解を深め、適切に勤怠管理を行いましょう!
時間外勤務申請書は不必要・非効率な残業を削減するための有効なツールです。残業を行うことへのハードルを上げることが重要なので申請や承認が流れ作業になってしまわないように注意しなければなりません。また、ただ残業を禁止するのではなく、定時時間内に終えられるように適切な業務量を割り振ることも大切です。サービス残業や生活残業を予防し、本当に必要な残業だけ行えるように適切に勤怠管理を行いましょう。
よくある質問
時間外勤務申請書とは何ですか?
従業員が残業を行う際に上長に申請するための書類です。詳しくはこちらをご覧ください。
時間外勤務申請書には、どんな項目を記載するのですか?
「申請日」「残業予定時間」「業務内容」「申請理由」などを記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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