• 更新日 : 2026年1月14日

従業員のストレスカウンセリング:受けるサインと相談先・費用・企業対応

ストレスは従業員誰にでも起こるものですが、その影響を放置すると心身の健康を大きく損ない、組織全体の生産性低下や休職・離職につながることになりかねません。ストレスが原因で従業員の業務遂行に支障が出ている場合、心理カウンセリングの活用は、従業員の心の健康と職場の生産性を取り戻すための効果的な対策の一つになります。

この記事では、人事労務担当者や経営者が、従業員のストレスを見極めるべきサインや、職場ストレスに最適な相談先、さらに企業が活用できる無料・低額のカウンセリング支援策までをわかりやすく解説します。

目次

従業員がストレスでカウンセリングを受けるべきタイミング・サインは?

ストレスによる不調は、従業員の業務パフォーマンスの変化として現れることがあります。単なる「やる気のなさ」ではない「心の限界サイン」に、管理側として早めに気づくことが重要です。ストレスをカウンセリングで解消すべきタイミングを見極めましょう。

従業員の心の不調は、仕事の生産性低下やハラスメントなどの人間関係の悪化を招き、組織の運営に大きな影響を及ぼします。このサインを見逃さず、早めにカウンセリングなどの専門家の助けを借りることが、企業のリスクマネジメントにもつながります。

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従業員ストレス不調のセルフチェックリスト【要注意サイン】

以下のような状態が2週間以上続き、業務や他の従業員との関わりに影響が出ている従業員がいる場合、ストレスが心身の限界を超えようとしているサインかもしれません。管理者は、部下との日々のコミュニケーションを通してこれらの兆候がないかを見守ることが大切です。

  • 睡眠障害
    遅刻や早退が増える、業務中に強い眠気を感じる
  • 涙もろい
    これまでなかった些細なことで感情的になる、落ち着きがない
  • 仕事の集中力低下
    簡単なミスが増える、業務の優先順位付けができなくなる
  • 出勤がつらい
    腹痛や頭痛などの身体症状を理由に、欠勤や遅刻が増える
  • 食欲の大きな変化
    昼食をとらなくなる、または短時間で大量に食べる
  • 強い不安感
    会議などで発言する際、極度に緊張したり、発言を避けたりする
  • 人との交流を避ける
    休憩時間や社内イベントでの交流を避けるようになり、孤立しがちになる

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「自分は大丈夫」と思う人ほど注意が必要

真面目で責任感が強い従業員や、日頃からストレス耐性が高いと見られている従業員ほど、不調のサインを見過ごしやすい傾向があります。

ストレス耐性が高い社員は、無意識のうちに困難な状況でも「頑張るべきだ」と自分にプレッシャーをかけ、不調を我慢して乗り越えようとします。その結果、心の限界を超えてからようやく不調が顕在化し、回復までに予想以上に時間がかかってしまうケースも少なくありません。管理者は、「まだ大丈夫」ではなく、部下が頑張りすぎていないかを客観的に観察し、必要に応じて休養やカウンセリングを促す機会を持つことが重要です。

ストレスカウンセリングは意味がない?効果と目的を正しく理解しよう

心理カウンセリングに対して、「ただ話を聞くだけで意味がないのではないか」「時間と費用をかける価値があるのか」と感じる経営者や人事担当者はいるかもしれません。これは、カウンセリングを「弱さを克服するためのもの」と誤解している心理的背景が影響していることがあります。

しかし、カウンセリングは弱さの克服を目指すものではありません。専門的な知識を持つカウンセラーと対話することで、従業員が抱えるストレスの原因や感情を客観的に見つめ、自己理解を深めるプロセスです。

この自己理解が、「なぜこの職場でストレスを感じるのか」「どう行動を変えればよいか」という問題解決の糸口を提供します。

ストレスカウンセリングとは?職場における役割

カウンセリングは、病気の診断や薬の処方といった医療行為ではありません。これは重要な点です。その代わり、カウンセリングは、従業員が抱える悩みやストレスの原因を傾聴し、その感情や思考を整理することで、従業員自身の力で問題解決や心の回復をサポートする仕組みです。

カウンセラーは、専門的な知識と技術に基づき、適切な質問や関わり方を通して、従業員が自分自身を深く理解し、ストレスに適切に対処できるよう導きます。これは、休職に至る前の「未然の防止策」として非常に効果的です。

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心理カウンセリングと精神科・心療内科の違い

従業員の不調に気づいたとき、カウンセリングと病院のどちらを勧めるべきか、管理側として迷うかもしれません。

項目心理カウンセリング(カウンセラー)精神科・心療内科(医師)
主な役割悩み・ストレスの原因を聴き、心の整理をサポート診断、薬の処方、治療
対象日常生活や職場におけるストレス、人間関係の悩みなど精神疾患の治療、心身の不調
医療行為行わない(診断・処方はできない)行う(診断・処方ができる)
保険適用自由診療が多い(適用外)適用されることが多い

強い不眠や食欲不振、業務が全く手につかないなど、身体的な症状が強く出ている場合は、まず精神科や心療内科を受診し、医師の診断を受けることを優先的に促す必要があります。病気の治療と並行して、心のケアとしてカウンセリングを活用する方法もあります。

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ストレスカウンセリングの主な手法は?

カウンセリングには、カウンセラーの専門性や対象者の状態によってさまざまな手法が選択されます。中には、とくに職場ストレスの軽減に効果的とされる手法もあります。

認知行動療法(CBT)

ストレスを感じたときの「認知(考え方や受け止め方)」と「行動」のパターンに働きかけ、それを改善することで、ストレス反応の軽減を目指します。ストレスへの対処法を身につけることを目的とするため、職場でのセルフケアに役立ちます。

来談者中心療法

カウンセラーが共感的理解をもって接することで、クライアント自身の内にある回復力や自己成長力を引き出します。傾聴の技法が重視され、自分の気持ちを整理したいときに有効です。

状況別に見るストレス カウンセリングの相談窓口

従業員のストレスの原因は、職場環境だけでなく、家庭や個人的な要因に起因することもあります。人事労務担当者として、それぞれの状況に合ったストレスカウンセリングの窓口を把握しておくことは、適切な対応の第一歩です。

職場ストレス:EAP(従業員支援プログラム)を活用する

仕事のストレスは、長時間労働、人間関係、ハラスメントなど多岐にわたります。職場ストレスの解消に最も有効活用できるのが、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)です。

EAPは、企業が専門のカウンセリング機関と契約し、社員とその家族が匿名でメンタルヘルスや仕事、家庭の悩みを無料で相談できる仕組みです。企業が費用を負担するため、従業員は費用を気にせず、就業時間外でも利用できるのが利点です。EAPの利用は、企業が従業員の健康配慮義務を果たしていることを示すことにもつながります。

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学生・思春期ストレス:スクールカウンセラーや保健センター

従業員の「扶養家族」である学生のお子さんがストレスを抱えている場合も、従業員本人のストレスにつながることがあります。

学生の場合、学校に常駐、または定期的に来校するスクールカウンセラーや、大学の学生相談室・保健センターが無料でカウンセリングを提供している場合があります。人事担当者は、従業員からの相談があった際に、これらの窓口を紹介できるようにしておくと、福利厚生の一つとしても役立ちます。

看護師・医療従事者のストレス相談:同業特化の支援機関

看護師や医療従事者は、命に関わる仕事の重圧などから、非常に高いストレスにさらされています。

一般のカウンセリングに加え、同業のストレスに特化した支援機関や、職能団体が設置している相談窓口を活用することも有効です。同業の事情をよく理解しているカウンセラーなら、より具体的な業務改善のアドバイスや、深い共感が得やすくなります。

家庭・子育て・夫婦関係のストレス:自治体やNPOの無料相談

家庭内の問題は、なかなか外部に相談しにくいものです。子育ての悩み、夫婦間の不和、介護疲れなど、家族が原因のストレスも少なくありません。

こうした場合、まず自治体(市区町村)の「精神保健福祉センター」や「保健センター」が提供する無料のカウンセリングを活用しましょう。また、特定の悩みに特化したNPO法人(非営利団体)が、無料または低額で相談を受け付けている場合もあります。

出典:こころの耳(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)|厚生労働省

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ストレス カウンセリングの費用相場と医療保険適用のポイント

心理カウンセリングの費用は、サービスを提供する場所やカウンセラーの資格によって大きく異なります。民間カウンセリングルームの場合、一般的に1回(50分~60分)あたり5,000円から15,000円程度が相場です。

また、心理カウンセリングの多くは「自由診療」であり、健康保険は適用されません。保険適用となるのは、精神科や心療内科での医師による診察や、医師の指示に基づく一部の集団療法などに限られます。そのため、費用が不安な場合は、継続的な通院が必要になった場合の総額を事前に確認しておくようにしましょう。

無料・低価格でストレス カウンセリングを受ける方法

「カウンセリングを受けたいけれど費用が心配」という従業員がいる場合でも、企業が活用を促せる公的な機関やサービスは多数あります。まずはこれらの公的機関を活用することで、心理的なハードルを下げることができます。

公的な機関のカウンセリングは、費用の心配をせずに相談できるのが大きな利点です。人事労務担当者は、これらの窓口を社内で周知し、従業員が気軽に利用できる環境を整備することが大切です。

自治体・労働局・健康保険組合の無料相談

公的な窓口は、費用を気にせず相談できる重要な選択肢です。

精神保健福祉センターや保健センターでは、臨床心理士や精神保健福祉士による無料の相談窓口を設けていることがあります。

もし仕事のストレスが原因の場合は、労働局や労働基準監督署の相談窓口(過重労働相談など)を活用できます。

また、加入している健康保険組合によっては、組合員向けに提携カウンセリング機関の無料利用や費用補助を提供している場合があります。

公的な電話相談

厚生労働省が支援する「こころの健康相談統一ダイヤル」など、公的な機関が24時間体制で運営する無料の電話相談サービスがあります。

初回無料の民間サービス

多くのオンラインカウンセリングサービスやカウンセリングルームでは、「お試し」として初回のオリエンテーションやカウンセリングを無料または低額(例:500円~3,000円)で提供していることがあります。

この初回無料サービスは、「カウンセラーとの相性」を確認するためにとるべき行動です。カウンセリングは、カウンセラーと相談者の信頼関係が非常に重要であるため、相性が悪いと感じた場合は、別のカウンセラーを探すほうがよいでしょう。

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初めてストレス カウンセリングを受けるときの流れ

「従業員にカウンセリングを勧めたいが、具体的な進め方がわからない」という人事労務担当者もいるのではないでしょうか。初めてカウンセリングを受けるときの手順を知っておくことで、従業員へ説明する際の不安を減らせます。

カウンセリングは、予約から継続、そして終了まで、クライアントである従業員の主体的な意思決定で進められます。初めて利用する際は、その流れをあらかじめ知っておくことで、不安を減らせます。

一般的なカウンセリングの流れは、以下の3つのステップで進めます。

予約

ウェブサイトや電話で、希望するカウンセラーや日時を予約します。この時点で、料金体系やキャンセルポリシーを確認しておきましょう。

初回面談(インテーク面接)

カウンセラーが、クライアントの現在の悩み、過去の状況、希望するゴールなどを詳しく聞き取り、カウンセリングの進め方やルールを説明します。

継続 or 終了の判断

初回面談で、「このカウンセラーと相性が合いそうか」「カウンセリングを継続したいか」をクライアントが判断します。継続を決めた場合は、次回以降の予約をします。

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信頼できるストレスカウンセリングを選ぶ4つのポイント

数あるカウンセリングの中から、企業が従業員へ推奨すべきものや、従業員自身が信頼できるものを選ぶには、いくつかの判断基準があります。信頼できるストレス カウンセリングを選ぶことは、従業員の早期回復と、企業としてのリスク管理に直結します。

① 資格・所属

カウンセラーには、国家資格や専門資格があります。これらの資格を持つ専門家を選ぶことが、安心につながります。

資格名概要特徴・専門性
公認心理師2017年に公認心理師法が施行され、心理職初の国家資格となりました。心理職として幅広い分野での支援が可能。
臨床心理士公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する専門性の高い資格です。臨床心理学に基づき、高度な専門知識と技術を持ちます。
産業カウンセラー一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する資格です。とくに職場におけるメンタルヘルス対策や人間関係の悩みの相談に長けています。

② 明確な料金提示

追加料金が発生する可能性があるか、キャンセル料はいつから発生するかなどを、予約時に必ず確認しましょう。

③ セッション時間

セッションの標準的な時間(例:50分、60分)がはっきりしているかを確認します。

料金や時間が曖昧な場合は、のちのちトラブルになる可能性もあるため、避けた方がよいかもしれません。

④ カウンセラーとの相性

カウンセリングの効果は、カウンセラーとの信頼関係(ラポール)に大きく左右されます。そのため、カウンセラーの話し方や雰囲気、専門分野が「自分には合わない」と感じることは自然なことです。

相性が合わないと感じた場合は、ためらわずにカウンセラーの変更を申し出るか、別のカウンセリング機関を探すことをおすすめします。相性の良い専門家と出会うことが、カウンセリングの効果を高めるための、とるべき行動です。

ストレスを「相談していいこと」に変える企業のメンタルヘルス対策

この記事では、従業員のストレスが「カウンセリングを受けるべきサイン」に変わるときから、無料での相談方法、そして信頼できるストレスカウンセリングの選び方までを解説してきました。

ストレスカウンセリングを受けることは、「従業員が弱い」ということではありません。むしろ、自分の心の状態を客観的に把握し、「これ以上無理をしない」という自己理解、およびセルフマネジメントの一環です。ストレスで限界を感じる前に、EAPなどの適切な相談窓口を活用することは、従業員が長く健康的に働くための、とるべき行動と言えるでしょう。

カウンセリングは、精神疾患の「診断」を目的とするのではなく、従業員が抱えるストレスのパターンを理解し、「より良く組織で働くための知恵」を身につける機会になります。

人事労務担当者や経営者は、一歩踏み出せないでいる従業員に対し、「ストレスは相談していいこと」であり、「会社としても利用を歓迎している」というメッセージを繰り返し発信することが重要です。企業のメンタルヘルス対策として、ストレスカウンセリングの情報を社内で周知し、安心して相談できる環境を整備していきましょう。

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