- 更新日 : 2026年1月14日
従業員満足度アンケートの作り方は?質問項目例・実施手順まで徹底解説
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)アンケートは、従業員が会社に対して抱く満足度や意識を把握するための重要な調査です。このアンケート結果は、離職率の低下や生産性の向上、組織風土の改善といった良好な変化につながります。この記事では、従業員満足度を測る基礎的な理論をふまえ、中小企業の担当者の方がすぐに使える詳しい質問項目の内容例と例文、効果的な実施手順、そしてアンケート結果を経営に活かすための分析方法までをわかりやすく解説します。
目次
従業員満足度調査(ES調査)とは?
従業員満足度調査(ES調査)とは、従業員が自身の仕事や職場環境、組織全体に対してどれくらい満足しているかを把握するための調査のことです。この調査を通じて、企業は従業員のモチベーションを下げている要因や、離職につながる潜在的なリスクをはっきりさせることができます。
従業員満足度アンケートを実施することで、従業員の「本音」を吸い上げ、組織改善の土台となるデータを得ることができます。
従業員満足度アンケートの質問項目を設計する方法
従業員満足度アンケートを効果的に設計するためには、理論だけでなく 実務に落とせる「質問の作り方」 を理解することが重要です。
ここでは、動機づけ・衛生要因の視点を活かしつつ、回答しやすく精度の高いデータを得るための実務ステップを紹介します。
質問数・回答方式(尺度)の決め方
質問項目は多すぎると回答率が下がるため、20〜30問程度を目安とします。
回答方式(尺度)は、比較しやすく改善度を評価しやすい 5段階リッカート尺度(とても満足〜不満) を採用するのが一般的です。
また、以下のような組み合わせが効果的です。
- 定量評価:5段階評価(満足度を可視化)
- 定性評価:自由記述(具体的な改善材料を得る)
- 総合スコア:eNPS(推奨度)などを併用してもよい
バイアスを避ける質問文の作り方
アンケートでは、質問の書き方によって回答が誘導される「バイアス」が発生することがあります。
精度を高めるためには、次のポイントを押さえて質問を作成します。
- 曖昧な表現を避ける
例:「適切だと思いますか?」→「上司の指導内容は業務遂行に必要な情報を含んでいますか?」 - 複数の要素を1問に含めない
- 否定表現を避ける
- 具体的な行動に基づいて質問する
これにより、従業員が迷わず答えられ、改善に使えるデータが集まりやすくなります。
動機づけ要因と衛生要因を質問に落とし込むポイント
ハーズバーグの二要因理論は、ESアンケート設計において非常に有効です。
- 動機づけ要因(成長・やりがい)
従業員のエンゲージメント向上に直結するので、必ず数問は設定する - 衛生要因(給与・待遇・制度・環境)
不満の特定に重要で、部署差を比較する際にも役立つ
たとえば、成長実感の質問に加えて、「上司からのフィードバックは具体的で改善に役立っていますか?」など、 行動レベルの質問に落とし込むことで、より解像度の高い分析が可能になります。
従業員満足度アンケート質問項目の例文
ここでは、質問項目を「動機づけ要因」(満足度強化)と「衛生要因」(不満足度誘発)に分類し、具体的な質問例文を紹介します。
動機づけ要因に関する質問項目例(満足度強化)
仕事のやりがい、成長、達成感、組織への愛着など、満たされることで従業員満足度が高くなる項目です。
- 仕事内容(量と質)
自身の役職や等級に割り振られる仕事の内容は適切だと思いますか。(5段階評価)
自身の役職や等級に割り振られる仕事の量は適切だと思いますか。(5段階評価) - 成長実感
仕事を通じて知識や能力などを得て、自身が成長していると思いますか。(5段階評価) - 帰属意識
所属して働くことが自身にとってプラスだと感じる、○○(会社名)への愛着がある。(5段階評価) - 定着意向
仕事のやりがいや自身の成長などの将来設計を考えて、今後も○○(会社名)で働き続けたいと思いますか。(5段階評価)
衛生要因に関する質問項目例(不満足度誘発)
給与、制度、労働環境など、満たされない場合に不満につながる項目です。
- 人事評価
人事評価の取組みが適切に行われていると思いますか。(5段階評価) - マネジメント
上司からの指導や組織の体制など、自身へのマネジメントが適切に行われていると思いますか。(5段階評価) - 職場環境・風紀
自身が働く上で適切な職場環境が提供されていると思いますか。(5段階評価)ハラスメント対策同僚との人間関係改善やハラスメント対策など、会社による風紀の取組みが適切に行われていると思いますか。(5段階評価) - 給与待遇・福利厚生
給与や福利厚生など、自身の待遇に満足していますか。(5段階評価) - 経営方針・ビジョン
会社の示す経営方針やビジョンは自身が共感できる妥当な内容だと思いますか。(5段階評価)
従業員満足度調査のアンケート例文
個々の制度に対する満足度を深掘りすることで、改善施策へより効果的に活かせるようになります。オンラインアンケートで実施する場合、回答内容によって質問が分岐するよう設定することで、回答者の負担を減らしつつ詳細なデータを集めることができます。
総合満足度を測る基本質問
- 現在、総合的に見て「会社で働くこと」にどの程度満足していますか。(5段階評価)
- 今後もこの会社で働き続けたいと思いますか。(5段階評価)
- 会社を知人に勧めたいと思いますか。(11段階評価)
部署・マネジメントなど領域別の質問例
- 現在の業務量は適切だと感じますか。(5段階評価)
- 業務内容は自身の役割やスキルに合っていますか。(5段階評価)
- 上司からの指示やフィードバックは明確で、業務の助けになっていますか。(5段階評価)
- 上司はあなたの成長を支援しようとしていますか。(5段階評価)
- 安心して意見を言える雰囲気がありますか。(5段階評価)
- 同僚との協力関係は良好ですか。(5段階評価)
- 給与や福利厚生に満足していますか。(5段階評価)
- 社内制度は公平に運用されていると感じますか。(5段階評価)
自由記述で深掘りするための質問例
- 現在の仕事で、改善してほしい点があれば教えてください。
- 職場でより働きやすくなるために必要だと思う施策があれば教えてください。
- 経営陣に伝えたいことがあれば自由に記述してください。
従業員満足度調査を効果的に進める実施手順は?
従業員満足度調査は、単にアンケートをとるだけでなく、その結果を組織改善に活かすことが重要です。次の5つの手順で進め、分析と活用を途中に交えることで、組織の課題をはっきりさせ、具体的な改善につなげます。
1. 準備段階:目的をはっきりさせる
最初に、アンケートを実施する目的をはっきりさせましょう。離職率の改善なのか、生産性向上なのかによって、質問項目の設計が変わります。目的がはっきりすることで、適切な質問項目をとることができるようになります。質問は、「動機づけ要因」と「衛生要因」のバランスをふまえて、特定の改善につながるよう設計します。
2. アンケートの実施:回答率を高める工夫
アンケートの回答率が低いと、結果の信頼性が低くなります。回答率を高くするためには、匿名性を保てることをはっきり伝え、従業員が安心して本音を回答できるようにしましょう。また、実施期間は適切に設定し、回答する従業員にとって負担とならないよう、質問数を適切な量に保つことが重要です。
3. 分析段階:多角的なデータ分析手法
アンケート結果が得られたら、単に平均点を出すだけでなく、多角的な分析を行い、組織の潜在的な課題を深く理解することができます。とくに、基本情報(部署や年代)とのクロス分析は必須です。
| 分析手法 | 目的と特徴 |
|---|---|
| 単純集計 | 各質問項目の全体傾向を把握します。 |
| クロス分析 | 「部署別」や「勤続年数別」など、属性を交差させて集計し、部署間や年代間での意識の差をはっきりさせることができます。 |
| 構造分析 | 「総合満足度」に最も影響を与えている要因を統計的に分析し、とくに効果的な改善領域を特定します。 |
| ポートフォリオ分析 | 各項目を「満足度」と「重要度」の2軸でマッピングし、「満足度が低く、重要度が高い」という、最優先で改善すべき領域をはっきりさせる手法です。 |
4. 活用段階:結果を改善策につなげるためのフィードバック
分析結果は、経営層だけでなく、適切な範囲で従業員にも共有します。とくに、「動機づけ要因」が低い場合は、仕事の権限を広げるなど、やりがいにつながる施策を検討しましょう。「衛生要因」が低い場合は、給与水準や制度の改善など、不満を解消する施策を優先的に実行しましょう。
5. 改善策の実行と効果測定
策定した改善策は、必ず実行に移しましょう。従業員が「アンケートに回答しても何も変わらない」と感じると、次回の回答意欲は失われます。施策を実行した後には、その効果を測定するために、次回のアンケートを定期的(年1回など)に実施します。これにより、継続的な組織の進化ができるようになり、良好なサイクルが生まれます。
従業員満足度アンケートを実施する目的は?
従業員満足度アンケートを実施する主な目的は、企業が抱える潜在的な課題を客観的にはっきりさせることです。
- 組織課題の可視化
従業員が何に不満を感じ、何を求めているかをデータとして捉えることで、人事制度や職場環境における具体的な問題点、たとえばコミュニケーションの不足や評価制度の不公平感などをはっきりさせることができます。 - 離職の予防
従業員満足度が低い要因を特定し、改善策を実行することで、従業員の会社へのエンゲージメントが高まり、離職率の低下につながります。 - 企業と従業員の意識統一
経営陣の掲げる理念やビジョンが、現場の従業員にどのとおり浸透しているかを測定し、意識のズレを解消する機会を設けます。
従業員満足度を高めるメリット
従業員満足度を高めることは、従業員個人の幸福度を上げるだけでなく、企業経営全体に良好な効果をもたらします。
- 生産性の向上
満足度が高い従業員は、仕事への意欲やモチベーションが高まり、自主的に業務に取り組む姿勢が見られます。これにより、作業効率が向上し、企業全体の生産性向上につながります。 - 顧客満足度(CS)の向上
従業員が満足して働けている職場では、顧客への対応も自然と丁寧になり、質の高いサービス提供ができるようになります。結果として、顧客満足度(CS)の向上にもつながります。 - 優秀な人材の定着
働きがいのある職場環境が整っていることは、既存の従業員の定着率を高め、採用活動においても良好な企業イメージとして作用します。
従業員満足度アンケートを実施する時の3つの注意点
従業員満足度アンケートは、実施方法や質問設計を間違えると、従業員からの信頼を失い、適切なデータを得られない結果につながります。次の3つの注意点をふまえて進めましょう。
1. 調査の匿名性と公平性を保つ
とくに重要なのは、「誰が、どのような回答をしたか」が会社側に特定されないように、匿名性を保てることです。記名式にしたり、回答数が少ない部署で属性をはっきりさせたりすると、従業員は本音を書きにくくなります。公平で中立的な立場からの調査実施を徹底することが、良好なデータ収集の第一歩です。
2. 質問項目を増やしすぎず、目的をはっきりさせる
質問項目が多すぎると、回答者の負担が大きくなり、回答率の低下や、適当な回答につながります。質問数は適切な量に保ち、とくに重要な項目に絞りましょう。また、専門用語や曖昧な表現を避け、従業員が迷わず理解できる表現を選ぶようにします。
3. 結果を必ず改善につなげることを約束する
従業員が「アンケートに回答しても何も変わらない」と感じると、次回の回答意欲は失われます。結果を分析した後、具体的な改善策を打ち出し、従業員に「会社は変わろうとしている」という姿勢をはっきり示しましょう。改善策の実行とその後の効果についても、定期的にフィードバックし、信頼関係を築くことが大切です。
従業員満足度アンケートを活用し職場環境の改善へ
従業員満足度アンケートは、単なる現状把握だけでなく、企業が抱える課題をはっきりさせ、具体的な改善活動につなげるための強力なツールです。アンケート結果を多角的に分析し、従業員一人ひとりの声に耳を傾ける姿勢を示すことで、組織のエンゲージメントは向上します。
従業員満足度の向上は、離職率の低下や生産性が高くなることにつながり、結果として企業の持続的な成長をけん引します。従業員満足度アンケートを定期的に活用し、継続的に職場環境を改善していくことが、これからの時代、非常に重要になります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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