- 更新日 : 2026年1月14日
コアバリューとは?意味や作り方、企業の事例をわかりやすく解説
コアバリューとは、企業が大切にする価値観であり、従業員が自ら判断し行動する際の思考の指針となるものです。理念やビジョンよりも日常業務に近いレベルで機能し、社員が迷わず判断できる「行動のものさし」として組織文化を形づくります。
本記事では、コアバリューの意味や企業理念・MVVとの違い、導入メリットを解説します。実際の企業事例も紹介しているので、コアバリュー設定の参考にしてみてください。
ビジネスにおけるコアバリューとは?
コアバリューとは、組織が行動や意思決定の基準として共有する「中核となる価値観」です。細かなルールではなく、企業全体の判断基準を示すものさしになります。
コアバリューは意図的・戦略的に定めることで、判断の一貫性が高まります。従業員間の価値観がそろうため、企業文化の土台も固まるでしょう。
企業文化については、関連記事でも詳しく解説しています。
企業理念との違い
企業理念とは外部に向けた公的な宣言であり、企業の根本的な考え方を示します。「なぜ存在するのか」「社会にどのような価値を提供するのか」を定義し、企業の目指す姿を言語化します。
一方、コアバリューは、理念を日常業務で実現するための行動基準です。判断に迷ったとき、コアバリューは考え方の軸として機能します。
企業理念とコアバリューは、抽象度が違います。コアバリューはより具体的であり、日々の意思決定に直接使えるのが特徴です。
企業理念を明文化するメリットは、関連記事で詳しく解説しています。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との違い
MVVとは「ミッション・ビジョン・バリュー」の略称で、組織の方向性を示す枠組みです。ミッションは存在意義、ビジョンは目指す将来像、バリューは判断や行動の前提となる価値観を表します。
コアバリューは、MVVのうち「バリュー」を具体化し、日常業務で使える行動基準に落とし込んだものです。MVVが組織の全体像を示す設計図である一方、コアバリューは現場で使える判断のルールにあたります。
コアバリューが重視される3つの理由
コアバリューが重視される背景には、働き方の多様化などの影響が考えられます。変化する時代に合わせて、現場での柔軟な判断が求められる現代では、行動の拠り所が必要です。コアバリューの設定により、組織全体の判断に一貫性をもたせられます。
1. 企業文化の指針になる
コアバリューは、企業文化を形づくる指針になります。価値観が言語化されていない組織では、従業員ごとに判断基準が異なり、大切にすべき考え方が曖昧になりがちです。コアバリューが定められていると、日常業務における判断や行動に一貫性が生まれ、企業らしさが共有されやすくなります。
また、コアバリューは新人や異動者にも伝えやすく、暗黙の了解に頼らずに組織の考え方を理解してもらえる点が特徴です。結果として、世代や立場を超えて価値観が受け継がれ、企業文化を長期的に維持するための共通言語として機能します。
コアバリューの浸透によって、企業文化を浸透させる方法や手順は、関連記事をご覧ください。
2. 組織の自己管理ができる
コアバリューがあることで、メンバーの自立性が向上し、上司が細かく管理する手間を減らせます。迷ったときも、「信頼を最優先する」「まずやってみる」のような軸が共有されていれば、ある程度の自己判断が可能です。
確認待ちや手戻りが減ると、日常行動の迷いが小さくなり、業務がスムーズに進みます。報告のための報告が減り、管理コストを削減できるのも利点です。さらに、現場での主体的な判断が促され、改善提案が生まれやすくなることも期待できます。
上司は指示出しの時間が減り、支援に集中できるでしょう。指示がなくても機能する、自己管理がしやすい組織づくりにつながります。
3. 意思決定の基準になる
コアバリューは、組織における意思決定の基準として機能します。判断の軸が共有されていない場合、同じ課題に直面しても人や部署ごとに結論が異なり、衝突や手戻りが起こるでしょう。調整や説明に時間がかかり、意思決定が遅れる原因にもなります。
一方、コアバリューがあれば、視点の共有が可能です。個人の好みや立場ではなく、組織の価値観を基準にできるため、迷いが減るでしょう。チーム間の認識もそろいやすくなるため、意思決定の一貫性が高まり、社内外からの信頼も獲得できます。
コアバリューを導入する4つのメリット
コアバリューを導入するメリットは、組織の価値観がそろい、現場の行動基準が明確になることです。ルールや手順を増やさなくても、判断基準や優先順位を共有できるため、品質向上や生産性アップにつながります。
1. サービス品質の向上
コアバリューを導入することで、サービス品質の基準が共有され、対応のばらつきを抑えられます。価値観が基準になれば、マニュアルにない場面でも「顧客視点で考える」「長期的な信頼を優先する」といった判断が可能です。担当者ごとの対応品質も安定しやすくなります。
品質のばらつきが減ると、顧客体験は安定します。担当者が変わっても同じ水準の対応を受けられるため、顧客の安心感が高まるでしょう。この積み重ねが、企業への信頼につながります。
2. 企業のブランディング
コアバリューは、企業のブランディングを支える基盤になります。一貫した価値観が共有されると、従業員の判断や行動にブレが出にくくなり、顧客に伝わる印象の統一が可能です。
広告やロゴだけでブランドを作るのではなく、日常の対応や意思決定を重ねることが、ブランド価値につながります。従業員一人ひとりがブランドを体現できれば、信頼の形成が早まり、企業イメージアップを実現できるでしょう。
3. 生産性アップ
コアバリューを導入すると、判断基準が明確になり、意思決定が高速化します。迷うたびに上司へ確認したり、関係部署に根回しをしたりする場面が減るため、業務が滞りにくくなるでしょう。
価値観が統一されていると、前提の説明が省けるうえ、意見の食い違いも起こりにくくなります。結果として、コミュニケーションコストが下がり、業務効率化が期待できます。
4. 採用のミスマッチ防止
コアバリューを制定すると、採用時のミスマッチ防止が可能です。応募者は、企業が大切にする価値観を事前に把握できるため、相性を判断しやすくなります。企業側も、考え方や行動を重視した採用ができ、価値観に合った人材を雇用できるでしょう。
入社後に「思っていた会社と違う」と感じるギャップが減るため、早期離職のリスクを下げられます。また、価値観の合う人材が集まることで、人材が定着しやすくなるのも利点です。
採用ミスマッチの原因や対策については、関連記事をご覧ください。
コアバリューの作り方
コアバリューは、企業の歴史や文化、強みを振り返り、本質的な価値観を抽出して作ります。組織内で評価されてきた行動や成果から逆算すると、形骸化を避けられます。
1. 組織の強みや弱み、課題を分析する
最初の段階は、組織の強みや弱み、課題の分析です。コアバリューを作るのに必要な価値観を明確化するため、材料を集めましょう。
まず自社の歴史や事業内容を振り返り、評価されてきた行動や成果を洗い出します。そのうえで、現場で起きている課題や価値観のズレに注目しましょう。たとえば「スピード重視のはずなのに承認待ちが多い」など、日常の矛盾がヒントになります。
最後に「なぜうまくいっているか」「なぜ停滞しているか」を言語化し、目指すべき判断の軸を固めます。
2. コアバリューの要素を洗い出す
強みや課題を整理した後は、コアバリューの要素を抽出します。社員の行動や判断に共通して見られる価値観を抽出して、判断基準を整理しましょう。組織が大切にしてきた基準を知るには、成果につながった行動や、評価された考え方を振り返るのが有効です。
また、経営層だけの視点に偏らず、現場の声も含めて整理する必要があります。立場による認識のズレをすり合わせることで、実態に合った価値観が見えるでしょう。無理に数を絞らず、幅広く提案するのがポイントです。
3. 5個程度に絞り込む
次に、似た意味の価値観を統合したり、重複する要素を排除したりする工程です。意味の近い言葉を統合し、何を最優先にするのか決めていきます。
重要な価値観が多すぎると、意識できなくなり、行動に反映されません。日常的に意識できるよう、5個程度に絞り込みましょう。
最終的に、企業が譲れない価値観だけを残して、ほかは除くことが重要です。迷ったときに立ち返る基準になるか、意思決定を一貫させる力があるかを軸に選ぶと、形骸化しにくいコアバリューになります。
4. 具体的な行動指針に落とし込む
絞り込んだだけでは、コアバリューが行動につながりません。抽象的な言葉を具体的にし、行動レベルの表現に変換する工程が必要です。
たとえば、「挑戦」という抽象的な価値観を深掘りし、「失敗を恐れずに意見を出す」「前例がなくても提案する」のように具体的な場面と行動へ調整します。状況と行動を明確化することが、コアバリューを作るコツです。
5. 企業全体に浸透させる
コアバリューは、組織全体に浸透して初めて意味をもつものです。経営陣がコアバリューに従って行動すれば、現場にも根付いていきます。難しい局面でも、コアバリューに沿った判断を貫くことで、現場にも重要性が伝わるでしょう。
現場にコアバリューが周知されてきたら、評価制度や人事施策への反映が必要です。事例と結びつけて価値観を共有すると、理解が深まります。ただし、浸透を急ぎすぎるのは逆効果です。現場からの声を受け取りながら、表現や運用を調整しましょう。
コアバリュー設定時に押さえておくべき4つの注意点
コアバリューは、単に掲げるだけでは、組織に定着しません。現場や組織と乖離した内容のコアバリューは、現場で使われないルールになるでしょう。定着しない原因を解消することで、長く使われるコアバリューを考案できます。
1. 組織のビジョンに合致した内容にする
コアバリューは、企業の未来像に沿った内容が適切です。ビジョンと整合していれば、日々の判断で迷いにくくなり、行動の一貫性が生まれます。逆に、ビジョンと矛盾した内容のコアバリューは、形骸化しかねません。
たとえば「挑戦」を掲げるのに、失敗を避ける判断ばかりだと、現場はコアバリューを信用しなくなります。目指す方向と価値観がそろっていれば、場面にかかわらず、組織の軸に沿った判断が可能です。コアバリューが単なる流行語にならないよう、長期を見据えて決める必要があります。
2. 浸透までに時間がかかる
コアバリューを制定してから浸透するまでには、一定の時間がかかります。長期的に使えるコアバリューを作るには、時間をかけて組織に根づかせていく地道な努力が必要です。価値観は知識ではなく、行動に現れます。繰り返し伝え、使われる場面を積み重ねましょう。
発信が一度きりだと「掲げるだけ」で終わりやすく、現場から忘れられます。現場の業務とコアバリューを結びつけるには、制度との連携が不可欠です。評価や人事にコアバリューを組み込むことで、徐々に浸透させましょう。
3. 実践できる範囲にする
コアバリューは、現場で実践できることが前提です。実現不可能な内容だと、守れないルールとして形骸化します。
たとえば「常に最速で対応する」を掲げても、人員や権限が不足していれば、コアバリューを守れません。無理に実現しようとすると、現場の疲弊を招きます。
コアバリューには、日々の業務で再現でき、個々の行動に落とし込める表現が必要です。また、運用後も現場の行動とズレがないかを定期的に確認しましょう。
4. 経営陣が具体的な行動指針を示す
コアバリューを浸透させるには、経営陣の行動が欠かせません。トップの判断や振る舞いが伴わなければ、現場に本気度が伝わらない可能性があります。経営層が率先して実践することで、浸透スピードが上がります。
会議での意思決定やトラブル対応の場面でも、コアバリューを意識した行動が重要です。コアバリューに沿った判断が示されると、社員にも重要性が伝わります。お手本として行動を示し、評価や判断の軸として使うことで、価値観が組織全体へ浸透していくでしょう。
コアバリューの企業事例
実際の企業でも、コアバリューを明文化し、意思決定や人材育成に活用しています。とくにグローバル企業では、コアバリューを明確化する傾向が顕著です。価値観をコアバリューとして機能させている企業事例を、下記で紹介します。
1. コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、4つのコアバリューを掲げています。
- 学ぶ向上心を忘れません
- 変化を恐れず機敏に行動します
- 結果を見据え最後までやりきります
- 誠実と信頼に基づいた気高い志で行動します
顧客中心主義とブランドの一貫性を重視し、世界中で同じ判断軸を共有するために、コアバリューを行動基準としている点が特徴です。
事業や市場が異なっても、顧客体験の質をそろえるため、日常業務の判断でコアバリューが使われる設計になっています。国や文化が違っても共通の考え方に立ち戻れるため、社員が迷いにくく、ブランドらしさを維持できる仕組みです。
2. YKKグループ
YKKグループの中核思想は「三善の精神(善の巡環)」です。思想を実現するため、3つのコアバリューを掲げています。
- 失敗しても成功せよ/信じて任せる
- 品質にこだわり続ける
- 一点の曇りなき信用
YKKグループでは、事業判断や現場対応において「それは誠実か」「社会や顧客に対して責任を果たしているか」という視点が重視されます。
コアバリューが行動基準として根づくことで、社員一人ひとりが企業の代表として行動できるため、長期的な企業価値の維持につながっています。
3. アフラック生命保険株式会社
アフラック生命保険株式会社は、創業当初からの理念「がんに苦しむ人々を経済的苦難から救いたい」を基盤に、社員の行動指針として複数のコアバリューを設定しています。
具体的には以下の4つです。
- 創業の想い:創業の理念を今に受け継ぐ行動の基盤
- The Aflac Way:企業文化や日常業務での行動指針
- 企業理念:「新たな価値の創造」「人間尊重」「お客様第一」「高い倫理観」
- ブランドプロミス:「『生きる』を創る。」
これらのコアバリューを社員全員で共有することで、組織全体の一体感を高め、社会的課題の解決に取り組む姿勢を維持しています。価値の高い保険商品や必要なサービスの提供も、この行動基準に沿った取り組みの一環として位置づけられています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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