- 更新日 : 2025年12月5日
管理職が退職するとやばいといわれる理由とは?未然に防ぐ方法も解説
管理職が退職すると、業務の停滞や社内の混乱、取引先との信頼低下など会社全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
とくに、中小企業では後任がすぐに見つからず、経営に負担がかかるケースは少なくありません。
本記事では、管理職の退職がやばいといわれる理由や原因、未然に防ぐ対策方法などを解説します。
管理職の退職がやばいといわれる理由
管理職の退職は単なる欠員ではなく、企業の中核を失うことを意味します。とくに、人員に限りがある中小企業においては、影響が大きいでしょう。
以下では、管理職の退職がやばいといわれる理由を5つ解説します。
業務が停滞するため
管理職は現場の進行管理や意思決定の中心を担うため、退職すると業務の停滞や判断の遅れが発生します。
とくに中小企業では、管理職が複数の重要業務を兼任しているケースが多いです。判断・報告・承認が滞るといった事態が発生し、プロジェクトの遅延や顧客への対応スピードの遅れを招くでしょう。
また、業務がひとりの管理職に集中していると、引き継ぎが難しく、生産性の低下やミスの増加にもつながります。
リスクを避けるには、普段から業務マニュアルの整備や権限を分担させる仕組みを整え、管理職が抜けても回る体制を構築しましょう。
社内が動揺するため
管理職は社内の中核であり、退職時は部下や同僚に心理的な動揺が広がります。
「自分も辞めようかな」「会社に将来性はあるのか」など漠然とした不安が生まれ、全体のモチベーション低下や連鎖的な離職を招くリスクがあります。
とくにベテランの管理職の退職は、若手社員に将来のキャリアモデルがいないという印象を与え、定着率を下げる要因になりかねません。
管理職が退職する際は、退職の報告や業務の引き継ぎを慎重に行い、次のリーダーが育っていることを明確に示すと、動揺が最小限に抑えられるでしょう。
会社の評価が下がるため
管理職の退職が続くと、社外から以下のように見られ、企業全体の評価や信用が下がります。
- マネジメントが安定していない
- 組織運営に問題がある
- 人材を大切にしていない
企業の評価や信用が下がると、新たな優秀な人材の確保が難しくなり、悪循環を生むでしょう。
また、SNSや口コミサイトで内部事情が広まると、ブランドイメージの低下にもつながりかねません。
経営層は退職が起きた背景を分析し、制度・職場環境・評価の具体的な改善策を立て、誠実に対応する企業という印象を築く取り組みが必要です。
顧客との信頼関係が断たれる可能性があるため
管理職は顧客や取引先との重要な窓口を担うため、退職時は担当変更に伴う信頼喪失につながる可能性があります。
たとえば「新しい担当者になった途端に相談や報告が減った」「対応スピードが落ちた」などがきっかけで、取引解消や競合への流出を招くおそれがあります。
管理職が退職する際は、引き継ぎ前に顧客同席の打ち合わせを設定し、新しい担当者と連絡フローを共有するのが大切です。誰が引き継ぎ、体制は変わらず継続できるのかを明確に伝え、信頼関係を維持しましょう。
後任の育成に時間がかかるため
管理職の後任は単に業務を引き継いで済むわけではなく、正確な判断力や社内外の信頼関係、リーダーシップの習得に時間がかかります。
とくに中小企業では後任候補が限られているうえ、育成計画がないまま昇格を行い、本人がプレッシャーに耐え切れず短期離職してしまう可能性が少なくありません。
後任不足は、業務の停滞・離職の連鎖・採用コストの増加という深刻な悪循環を生みます。
悪循環を避けるためにも、普段から次世代リーダーの育成やOJTを進め、管理職候補を確保しておくとよいでしょう。
関連記事:サクセッションとは?メリット・デメリットや作成・導入方法
管理職が退職する原因
管理職の退職は単なる待遇への不満だけでなく、さまざまな問題から生じることが多いです。
以下では、管理職が退職する原因を5つ解説します。
業務過多・長時間労働による疲弊
管理職の多くは、労働基準法第41条で定められる「管理監督者」に該当し、時間外や休日勤務に対する割増賃金の支払い義務を適用除外されているケースがあります。
現場では一般従業員の時間外労働の上限規制を守るため、管理職が残業分を肩代わりして業務を処理する構造が生まれがちです。
本来、管理職はマネジメントや事業戦略策定などを行うべき立場です。しかし、日常業務や現場の穴埋めまで抱え込むと疲労が蓄積し、退職リスクが高まります。
経営層は、管理職の業務量と時間管理にも適切に対応しましょう。
責任の重さ・板挟みによるストレス
管理職は組織内で経営層と部下の間で意見調整やトラブル対応を担うため、プレッシャーが大きい立場にあります。
経営層からは厳しい数字責任と成果を求められ、部下からはケアや育成、信頼を求められる板挟み状態です。双方の期待に応えようとするほど、心を犠牲にし、疲弊しかねません。
相談しやすい管理職仲間がいなかったり、サポート体制がなかったりすると、ストレスに耐え切れず退職に追い込まれる可能性が高いでしょう。
評価・報酬への不満と不透明感
管理職は成果への責任を負う一方で、何で評価されているのかが不透明だと、不満を持ちやすいです。
成果基準や昇進ルールが曖昧な場合「頑張っても評価されない」「給与が責任に見合わない」と感じ、他社への転職を検討しかねません。
本来、管理職が担う役割は売上達成だけでなく、組織の成長や人材育成などの要素も含まれます。評価制度に反映されていないと、モチベーションが下がり、退職につながるでしょう。
キャリアの行き詰まり
中間管理職層は上層部の人数が限られているため、昇進のチャンスが少ないです。結果、キャリアパスが見えにくいという課題に陥りがちです。
次のステップが見えないと、キャリアの行き詰まりを感じ「この会社でこれ以上の成長は見込めない」と感じて転職を検討しはじめます。
企業は上層部の人数が限られていても、新たなプロジェクトやスキル習得の機会を提供し、多様なキャリアパスの選択肢を示す必要があるでしょう。
会社の経営方針のズレ
入社当時は会社の方針に共感していても、経営方針や組織の変革により、共感や納得感が持てなくなる場合があります。
自分の考えと会社の進む方向性があわないと感じると、目的意識のズレから退職を決意しかねません。
とくにトップダウン型の組織やコミュニケーション不足の職場環境では、自分の意見をいえない閉塞感がストレスになり、退職の原因となるでしょう。
管理職が退職を申し出た際の対応の流れ
管理職が退職を申し出た際は、業務への影響を最小限に抑えるため、以下のように冷静な対応が必要です。
- 退職の理由を丁寧に聞く(感情的にならず、退職の本音を把握する)
- 退職日と引き継ぎ期間を確定する
- 後任を選定し段階的に業務を引き継ぐ
- 取引先や関係部署へ速やかに連絡する(後任と挨拶に行き、信頼維持に努める)
- 現場の不安を上長や人事がヒアリングする(動揺をケアし、連鎖的な退職を防ぐ)
- 退職理由を分析し、改善策を検討する
適切な対応を通じて、組織の混乱を最小限に抑え、退職を組織改善に活かしましょう。
管理職の退職を未然に防ぐ対策方法
管理職の退職を未然に防ぐには、業務過多や不満などの課題を解決する仕組みが必要です。
以下では、管理職の退職を未然に防ぐ対策方法を5つ解説します。
1on1面談やヒアリングを定期的に行う
管理職の不満やストレスは、責任感ゆえに表面化しにくい傾向があります。上司や人事は定期的に1on1面談やヒアリングを行い、業務負担や不安、モチベーションの変化などを聞き出し、退職の兆候を察知する機会を設けましょう。
1on1面談やヒアリングを行う際は、単なる業務報告や誘導質問を避け、管理職が本音で話しやすい雰囲気をつくるのが重要です。
小さな兆候を見逃さずに対策を行うと、退職を未然に防げるでしょう。
業務負担を分散・軽減する
管理職に業務負担が集中し、長時間労働や疲弊につながるのを防ぐため、権限を分散させる体制づくりを進めましょう。
以下のように仕組みを整えると、特定の管理職が不在でも業務が止まらない体制を構築できます。
- マニュアルを整備する
- サブリーダーを育成する
- 管理職の権限を適切な範囲で一般社員に分ける
業務負担の分散は管理職の退職を未然に防ぐのはもちろん、組織全体の底上げと強化にも直結します。
公平な評価制度を運用し、成果を見える化する
管理職が「何を評価されているのかわからない」という不満は、退職のきっかけになりかねません。不満を解消するには、評価基準を明確に示し、公平な制度を運用するのが大切です。
たとえば売上といった数字の成果だけでなく、人材育成やチームへの貢献なども評価対象に含め、定期的なフィードバックを行います。
努力やチーム貢献が正当かつ公平に評価される仕組みは、定着率を高めるでしょう。
関連記事:サクセッションとは?メリット・デメリットや作成・導入方法
キャリアの選択肢を増やし、成長機会を提供する
管理職の退職を未然に防ぐには、キャリアの選択肢を増やし、成長機会を提供するのも方法のひとつです。
管理職は「この先のキャリアが見えない」と感じ、退職の気持ちが高まる可能性も少なくありません。
マネジメント職だけでなく専門職・教育職・企画職など複数の選択肢を用意し、外部研修や資格取得支援などの成長機会も提供すると、未来への期待を感じさせ、退職が防げるでしょう。
ビジョンや中期計画を共有し、経営と現場の意見交換の場を設ける
経営層は独断で決めるのではなく、ビジョンや中期計画を定期的に共有し、背景や意図を丁寧に説明しましょう。同時に、管理職が現場の意見や課題を経営に直接伝えられる場を設けるのも大切です。
経営方針や目標が現場に伝わっていないと、管理職は方針の理由や方向性がわからず、目的意識を失い、孤立感を抱きやすくなります。
双方向でコミュニケーションをとる経営をすると、管理職が会社の成長を支えていると実感でき、退職が防げるでしょう。
管理職の退職がやばいといわれることに関するよくある質問
ここでは、管理職の退職がやばいといわれることに関して、よくある不安や疑問にお答えします。
管理職の退職で損害賠償や無責任とされるケースはありますか?
原則、管理職の退職自体に損害賠償義務はありません。
しかし退職時の不適切な行為により、取引先や顧客に重大な損害を与えた場合は、例外的に会社から賠償を求められる可能性があります。
具体的には以下が例として挙げられます。
- 会社の機密情報を持ち出す
- 強引に顧客を引き抜く
- 故意に引き継ぎを拒否して業務を完全に停止させる
- 競合他社への転職
企業はトラブル防止のために、退職時に引き継ぎ計画書や顧客対応リストを明文化し、退職者と双方で確認しておくのが大切です。
また、無責任な退職と社内外に感じさせないよう、引き継ぎ期間の設定と適切な社内周知を徹底しましょう。
機密情報漏えいや競合他社への転職といったリスクに対しては、あらかじめ就業規則や契約書等で「秘密保持義務」や「競業避止義務」について定めておくことが有効です。
管理職の退職時に後任がいない場合は、どうすればよいですか?
退職の意思が確認された時点で、業務の緊急度と重要度に応じて、引き継ぎ計画を立てましょう。一時的な対策としては、ほかの管理職に権限と業務を分担させ、業務の空白期間を防ぎます。
管理職は長年の経験と社内外の信頼関係を築いているため、退職時は組織運営に大きな影響を与えます。とくに後任がいない場合、業務停滞や部下の動揺など、職場が混乱状態になりかねません。
普段からナンバー2候補の育成や業務マニュアルの整備を進めておくと、管理職が抜けても回る体制ができるでしょう。
管理職の退職は何か月前にいってもらうのがよいですか?
管理職の場合、一般社員より業務と責任範囲が広いため、3〜6か月前の申し出が理想的です。
法律上は2週間前でも退職は可能であるものの、実務的には引き継ぎ・顧客調整・後任育成などに期間が必要です。
後任がいない場合は、早期に後任の選定と教育計画を立てなければなりません。退職の意思を受けた際は「いつ・誰に・どの業務を・どのように引き継ぐか」を明文化した引き継ぎチェックリストの作成をし、混乱を最小限に抑える必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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