- 更新日 : 2025年3月19日
外国人雇用契約書の作成ポイントや注意点をテンプレート付きで解説
外国人雇用後のトラブルを防止するためにも、契約書を正確に作成することが必要です。しかし、外国人雇用契約書の内容や作成方法がわからず悩む人もいるでしょう。
この記事では、外国人雇用契約書の作成ポイントや注意点を解説します。テンプレートも併せてご紹介するので、契約書の作成をスムーズに進めることが可能です。
外国人雇用契約書とは
外国人雇用契約書とは、外国人労働者を雇用する際に、労働条件を明文化して取り交わす契約書です。口約束だけではトラブルになりやすいため、日本人雇用と同様に必ず契約書を作成しましょう。
外国人雇用契約書の目的や労働条件通知書との違いなどを解説します。
外国人雇用契約書の目的
外国人雇用契約書の目的は、雇用主と外国人労働者の間で労働条件を明確にし、相互の誤解やトラブルを防ぐことです。外国人労働者の場合は特に、言語や文化の違いにより、雇用条件の認識にズレが生じやすいため、契約書で具体的な内容を文書化することが重要です。
また、労働基準法第15条では、労働契約の締結時に賃金や労働時間などの労働条件を書面で明示することが義務付けられています。雇用契約の締結は、企業の法令遵守にも直結します。雇用契約書は、在留資格の申請や更新時にも提出が求められる場合があるため、採用をスムーズに進めるためにも適正な契約書の作成が必要です。
雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書と労働条件通知書は、どちらも労働条件を明示するための書類ですが、以下の違いがあります。
- 雇用契約書
企業と労働者が労働条件に合意し、双方が署名したうえで締結する契約書 - 労働条件通知書
雇用主が一方的に労働者へ条件を通知する文書
労働条件通知も労働基準法第15条で義務となっているため「雇用契約書兼労働条件通知書」とするケースも多いです。
外国人雇用契約書で明示すべき必要事項
契約書の内容は、基本的に日本人を雇用する場合と同じですが、外国人雇用特有の必要事項もあるため注意しましょう。外国人雇用契約書で明示すべき必要事項は、以下のとおりです。
- 労働契約の期間
- 就労場所と業務内容
- 労働時間や休日
- 賃金と支払い方法
- 退職や解雇について
- 就業規則等に定めがある場合に明示が必要な事項
必要事項について詳しく解説します。
労働契約の期間
外国人雇用契約書には、労働契約の期間を明記する必要があります。特に外国人労働者の場合は、外国人の在留期限を超えないように契約期間を設定することが重要です。
在留資格を超えて労働をさせた場合、在留資格の取り消しにつながる恐れがあるため、正確に記載しましょう。また、契約更新の有無や更新基準、契約終了後の対応についても明記することで、労働者との認識のズレを防げます。
契約期間の不明確さは不安や誤解を生む可能性があるため、具体的に記載しましょう。
就労場所と業務内容
契約書には、外国人労働者が勤務する場所や従事する業務内容を具体的に記載する必要があります。在留資格の種類によって、就労可能な業務範囲が異なるため注意が必要です。
就労可能な在留資格を有している外国人でも、出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くと不法就労になります。不法就労させた場合、事業主も処罰の対象となるため注意しましょう。
また、契約社会に慣れ親しんでいる外国人労働者にとって「契約書に記載のない業務はやらない」ことが一般的です。トラブルにならないよう、業務内容を明確に記載しましょう。仕事内容の誤解を防ぐことで、離職率の低下にもつながります。
労働時間や休日
外国人労働者にも労働基準法が適用されるため、労働時間や休日も法定労働時間にもとづいて設定する必要があります。
法定労働時間を超えて働く場合は、割増賃金の支払いが義務です。時間外労働や深夜勤務の可能性がある場合は、条件や割増賃金の扱いについても契約書に記載しましょう。残業時間の上限も、日本人と同様に労働基準法と36協定で定められています。
外国人労働者の場合、在留資格の種類によって定められている労働時間の制限にも注意が必要です。在留資格が「留学」「家族滞在」「特定活動 (一部)」は、労働時間に関して制限があります。就労可能な時間より多く働かせることは違法になるため注意しましょう。
賃金と支払い方法
外国人雇用契約書には、賃金と支払い方法を正確に記載することが重要です。基本給や各種手当、支給日、支払い方法などを具体的に記載しましょう。支払い通貨が日本円であることも明示しておくと安心です。
社会保険料や所得税などの控除項目についても記載し、手取り額との混同を防ぎましょう。給与制度や税金、保険制度に馴染みのない外国人労働者も多いため、契約書に加えて事前説明を行うことで、トラブルの予防や不信感を生みづらくする効果があります。
外国人労働者を雇用する場合も、最低賃金を下回る賃金設定は法律違反です。外国人だからといって安い賃金で雇うことはできません。労働時間や休日、社会保険の適用も日本人労働者と同等に扱う必要があります。
労働基準法第三条では、均等待遇について以下のとおり定められており、外国人であることを理由に労働条件を差別すると労働基準法違反にあたるため注意しましょう。
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」
退職や解雇について
外国人雇用契約書には、退職や解雇に関する条件も記載しましょう。自己都合退職の場合は、退職希望日の何日前までに申し出が必要かを記載し、会社都合による解雇については、解雇事由や手続き、解雇予告の期間などを明示します。
外国人労働者にも労働基準法が適用されるため、退職や解雇に関しても日本人労働者の場合と同様に考える必要があります。不当解雇は禁止されているため、解雇になる理由や条件を具体的に明記しましょう。
外国人労働者は文化や価値観の違いがあるため、解雇の条件について事前に丁寧に説明し、解雇のリスクが高い行動などを理解してもらうことが重要です。
就業規則等に定めがある場合に明示が必要な事項
外国人雇用契約書を作成する際は、就業規則や給与規程など会社内のルールに基づく事項についても、必要に応じて明示することが重要です。
たとえば、賞与や昇給の基準、休職制度、慶弔休暇、服務規律、懲戒処分の取り扱いなど、就業規則に定めがある場合には、契約書内で「就業規則第〇条に記載」といった旨を明記しましょう。労働者が日本人であるか外国人であるかを問わず明示する必要があります。
特に外国人労働者は、日本の企業文化や規則に不慣れなことが多いため、曖昧な説明は誤解を招きやすくなります。契約書と併せて、就業規則の内容を丁寧に説明することが大切です。
外国人雇用契約書の作成ポイントと注意点
外国人雇用契約書を作成する際には、言語や記載内容などにいくつかのポイントと注意点があるので解説します。
英語や母国語で作成する
外国人雇用契約書や労働条件通知書は、日本語だけでなく、外国人労働者が理解できる英語や母国語でも作成しましょう。外国人労働者の日本語能力によっては、書類の内容を理解してもらえない場合があるからです。
日本語が読めない外国人にも配慮して作成することで、契約内容を正確に理解してもらい、誤解やトラブルを防げます。特に専門用語や法律用語は、日本語に不慣れな労働者にとって理解が難しいため、翻訳による補足説明が必要です。
在留資格の申請においても、労働者本人が外国人雇用契約書や労働条件通知書の内容を理解していることが求められます。在留資格を申請する際に、契約内容について受け答えができない場合、在留許可がおりない可能性があります。そのため、外国人労働者が理解できる形で契約書を作成し、必要に応じて直接説明を行いましょう。
研修期間がある場合は明記する
研修期間がある場合は、研修の内容や場所を明記しましょう。外国人は、在留資格の種類によって、就労できる業務範囲が異なる点に注意が必要です。
たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で就労する場合、単純労働を伴う研修業務は不適切と判断される可能性があります。業務に必要な研修であれば、単純作業が含まれていても期間限定で認められる場合もあります。
そのため、契約書上でも、研修の詳細を明示しておくことで、出入国在留管理庁へ説明する必要がある場合に備えることが可能です。
就労ビザの取得が停止条件となる旨を記載する
外国人雇用契約書には「就労ビザ(在留資格)の取得・維持が雇用の前提条件である」ことを明記しておくことが重要です。採用が内定しても、在留資格が許可されなければ実際に就労することはできません。
在留資格で認められていない業務を行った場合、労働者本人は不法就労の罪に問われ、業務を行わせた雇用主は不法就労助長罪に問われる可能性があります。
在留資格の不許可や更新の不承認があった場合には、雇用契約は自動的に無効または終了する旨を記載することで、雇用主側のリスクを回避できます。
日本における労働に対する考え方を説明する
トラブルを避けるために、日本における労働に対する考え方を説明することも大切です。日本人にとっては当たり前のルールでも、外国人には丁寧に説明する必要があります。
たとえば、以下のポイントが挙げられます。
- 日本では「時間厳守」が重要視され、遅刻や欠勤に対しては慎重に取り扱われる
- 個人の成果だけでなく、チーム全体の成果を評価する文化がある
労働環境や職場でのコミュニケーション方法(報告・連絡・相談の重要性)についても触れることで、外国人労働者が円滑に仕事に適応できるようサポートできます。文化的背景を考慮し、必要な説明を行うことで、円満な雇用関係を築くことが可能です。
外国人雇用契約書のテンプレート
外国人雇用契約書のテンプレートを3種類紹介するので、ぜひ作成時の参考にしてみてください。
厚生労働省提供の外国人労働者向けの多言語のモデル労働条件通知書
厚生労働省のサイトには、多言語対応の労働条件通知書のテンプレートがあります。
多様な国籍の外国人労働者に対して、母国語で労働条件を説明することが可能です。必要な部分を調整して活用しましょう。
テンプレートは下のURLからダウンロードできます。
法務省提供の雇用契約書及び雇用条件書
法務省が提供している雇用契約書及び雇用条件書のテンプレートもあります。外国人雇用に対応した契約書フォーマットで、制度に沿った書式であるため、雛形として活用しやすいです。
テンプレートは下のURLからダウンロードできます。
法務省提供の特定技能雇用契約書
特定技能雇用契約書のテンプレートも、法務省から提供されています。特定技能雇用契約は、在留資格「特定技能」の外国人を雇用する際に締結する契約です。フォーマットに沿って正確に記載しましょう。
テンプレートは以下のURLからダウンロードできます。
外国人雇用契約書を正確に作成して採用をスムーズに進めよう
外国人雇用契約書は、労働条件を明確にし、正確に作成することで、誤解やトラブルを防げます。
契約書は日本語だけでなく、労働者が理解しやすい言語でも作成することをおすすめします。公的テンプレートの活用も取り入れ、正確な書類作成を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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