- 更新日 : 2024年12月13日
新卒社員で休職を選ぶ人の実態とは?対応策と休職制度なども解説
新卒社員でも休職することができ、職場復帰せず退職することも選択肢の一つです。ただし、人事労務担当者はその実態や影響を正しく把握し、適切な対応が求められます。
本記事では、新卒社員が休職する背景と、会社側が対応すべきことを中心に解説します。
目次
新卒で休職する人はどれくらいいる?
厚生労働省の「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移調査」は、新卒で休職する人数で参考になる調査結果を公開しています。同調査の2021(令和3)年3月に大学を卒業した新卒者のうちの34.9%が入社して3年以内に離職したという結果でした。
新卒で休職する主な理由
新卒社員が休職する理由は人それぞれですが、主には以下のような理由があります。
- 入社前と入社後のイメージのギャップ
- 希望していた仕事に就けなかった
- 社内外の人間関係
新卒で休職する人の中には、具体的な仕事内容だけでなく、職場環境にも戸惑いを感じるケースがあります。会社にある程度慣れるまでは新鮮に感じていたことも、次第に入社前に抱いたイメージとのギャップへと変わることもあるでしょう。さらには、先輩社員や同期、取引先との関係などの人間関係で休職を検討する人もいます。
そもそも新卒で休職制度は利用できる?できない?
新卒でも休職申請できることがあります。ただし、休職制度は法律で定められたものではありません。各社が独自に設けられる制度です。そのため、休職のルールは、それぞれ異なります。例えば、「勤続1年未満の休職期間は○日」といったルール定めている会社であれば、新卒でも休職が可能です。一方で「入社○年未満の社員には休職制度は適用されない」というルールを設けている会社では、新卒が休職申請しても認められません。
新卒の休職率と離職率の関係性
新卒でもそれ以外でも、休職は離職の前段階として発生しやすい傾向が見られます。何らかの事情で休職をした人が、休職中に職場復帰の準備が不十分な場合、最終的には離職につながることが多いためです。このような観点から考えると、離職率を休職率の目安とすることもできます。
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新卒で適応障害・うつ病になることはある?
新卒が適応障害やうつ病になることは、あり得ます。学生生活から一変する社会人生活に戸惑うことが多くなり、身体や精神にダメージを与えやすいためです。
新卒がメンタル不調になりやすい理由
新卒がメンタルの不調に陥りやすい理由は、主には「環境の急激な変化」です。それまでアルバイトなどで社会を経験していた人も、就職をして会社員になると、アルバイト時代とは異なる環境で働くことになります。
例えば、アルバイトは時間で拘束されることが多く、大きな責任も負わないことが多いでしょう。しかし、正社員として雇用されると時間ではなく「成果」も求められるようになります。入社して日が浅い社員であっても、仕事や生活態度に「責任」が生じるようになるでしょう。
この「成果」や「責任」に対して必要以上に緊張したり、周囲に頼ることができず孤立したりすると、心身は環境の変化に対するダメージを感じます。
新卒特有のストレス要因
新卒特有のストレス要因には、主に以下のものが考えられます。
- 慣れない業務で求められる成果
- 同期と比べてしまう自身の成長
- 背負う責任の増大
- 新しい人間関係や上下関係
- 長時間労働
- 休日の過ごし方の変化
- 給与に対する不安
仕事の成果や自身の成長については、周囲からの刺激によって生じるものもあります。そのうえで、周囲は成果や成長を急かしていなかったとしても、自分自身が納得できず結果を急いでしまうがゆえにストレスを抱え込むことも少なくありません。
また、慣れない年齢層とのコミュニケーションや、アルバイトではあまり経験していない長時間労働もストレスの要因となる場合があります。さらには、日頃の心身の疲れによって学生時代のように思い切って休日を楽しめない、成果に対して給与が少なく感じるなども新卒特有のストレス要因の一つになることでしょう。
メンタルヘルス対策の重要性
人事労務担当者にとって、従業員のメンタルヘルス対策は重要です。中でも、新卒には特に重要と言ってよいでしょう。なぜなら、新卒がメンタルの不調を抱えてしまうと、本人のキャリアだけでなく、会社の今後の動きにも影響を及ぼす可能性があるからです。
例えば、新卒が入社から早いタイミングでメンタルの不調で休職や退職をすると、会社側は新たな人材確保のために求人広告費用がかさむだけでなく、採用や教育にもコストが発生します。また、会社や組織全体の生産性の低下や、会社自体のイメージの低下というリスクも避けられません。このような展開を未然に防ぐためにも、会社側は新卒を中心とした従業員のメンタルヘルス対策に取り組み必要があります。
新卒で休職してそのまま退職は可能?
新卒が休職して、職場復帰せず退職することは可能です。ここでは休職からそのまま退職するまでの主な流れと注意点について解説します。
休職から退職への手続きの流れ
休職から退職までの手続きは、以下のような流れで行います。
- 退職の申し出
- 退職届の提出
- 退職日の決定
- 引継ぎと私物の整理
- 退職日の手続き(源泉徴収票の受取りや貸与品の返却など)
- 必要書類の準備と手続き(退職金や未払い給与の確認、社会保険の喪失手続き(※会社)、離職票の受取り、健康保険証の返却)
- 退職後の手続き(国民年金の加入手続き(※退職日の翌日から14日以内)、国民健康保険への加入、住民税支払い方法の確認)
休職中にそのまま退職をする場合は、退職の申し出や退職届の提出をメールや郵送で連絡することもありますが、通常は対面でのやり取りとなる手続きです。退職予定の新卒と人事労務担当者の間で、具体的なやり取りを決めておきましょう。
退職時の注意点と法的な考慮事項
新卒社員が休職中にそのまま退職をする場合、いくつかの注意点があります。
- 退職の意思表示の有効期限
→法律上は退職日の2週間前までに行えば退職の効力が発生する
- 業務の引継ぎは任意
→引継ぎは義務ではありませんが、円満退職を望むのであれば丁寧に行うことが好ましい
- 退職後の競業避止義務
→就業規則などに記載がある場合、一定期間は競合他社への就職が制限される
- 機密情報の取り扱い
→業務で知り得た情報や会社の機密情報を持ち出すと法的に罰せられる可能性がある
人事労務担当者は、退職予定の新卒がこれらの注意点や法的な考慮事項に違反しないよう注意しましょう。
休職中の退職が将来のキャリアに与える影響
休職中の新卒の退職は、本人によってその後のキャリアに影響を与える可能性もあるかもしれません。主に以下の3点が挙げられます。
- 転職時の不利要素となり得る
- 前職の退職について聞かれた場合、相手を納得させる説明が必要になる
- キャリアプランの再構築が必要となる
まず「前職を辞めた理由」は、転職選考時にもほぼ確認されます。特に新卒として入社した会社を早期に退職している場合は、相手を納得させられるような理由を説明する可能性が高いでしょう。転職の面接の受け答えによっては不利になることがあるので、入念な対策が必要です。
また、特定の目的を持って入社した会社を短期間で退職した場合は、自身のキャリアプランを見直す必要性が出てくるでしょう。一方で、退職後の時間を自身のスキルアップや資格取得などに充てることで、今後のキャリアをよりよいものにすることも可能です。
新卒で休職した際の給与・賞与は?
休職中の新卒の給与および賞与について、金額や控除などが気になる方もいることでしょう。ここでは詳細について解説します。
休職中の給与支給の仕組みと会社ごとの違い
社歴に関係なく休職中の給与は「ノーワーク・ノーペイの原則(民法第624条・労働基準法第24条)」にのっとり、基本的に支払いはありません。ただし、例外もあり、就業規則や労働契約によっては、一定期間または一定割合の給与が支給されることがあります。
休職期間中のボーナスの取り扱い
休業中のボーナスは、会社独自の規定によって決定されます。休業中のボーナスは支給されない、あるいは少額となることもあります。ただし、賞与の算定期間中に数日でも勤務の実績がある場合は、勤務日数に応じた金額が日割り計算で算出され、それをボーナスとして支給される可能性があります。人事労務担当者はその点を踏まえて自社のボーナスの仕組みを考えなくてはなりません。
新卒で休職か転職か迷った場合の考え方
新卒で入社した会社を休職するか、転職するか、迷うこともあるでしょう。ここでは、それぞれのメリット・デメリットの比較を行いましょう。
休職と転職のメリット・デメリット比較
新卒の休職と転職には、メリットとデメリットがあります。以下の通り、詳細をまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
休職 |
|
|
転職 |
|
|
一時的な判断で決めるよりも少し長い目で考えたうえで、自分の適性や興味を検討するのが重要です。
自己分析とキャリアプランの重要性
休職か転職をしようか迷ったときに、自己分析をし、キャリアプランを立てることは重要性です。
- 自己分析
→自分の強みや弱み、価値観や適性を明確にできる
自己分析を行うことで「自分はなぜ休職や転職をしたいのかを考える」「強みや弱みを活かした将来のビジョンを明確にする」など、今後に有利な気づきを得られます。
- キャリアプラン
→長期的な視点から自身のキャリアについて考えることができる
キャリアプランを立てることは、「短期的な困難を乗り越えるためのモチベーションの獲得」「休職や転職が本当に必要かどうかの検討材料」など、長い目で見たキャリア形成についての有益なてがかりとなります。
休職と転職を迷っているときだからこそ、現実的で意味のある自己分析やキャリアプランが期待できるでしょう。
専門家によるキャリアカウンセリングの活用
休職と転職を迷っているときは、キャリアカウンセリングの専門家の力を借りるという方法もおすすめです。
自身の進退について考える場合、主観的に考えがちです。このような時にキャリアカウンセリングを利用すると、何らかのよいヒントが見えてくるでしょう。自分が出す決断に自信が持てるようにもなり、休職・転職いずれを選ぶにしても有益に作用することでしょう。
休職しそうな新卒に会社側がすべき対応策
人事労務担当者にとって、新卒をはじめとする全社員の休職は、回避したいものです。以下では、対応策について解説します。
早期発見・早期対応の重要性
新卒の休職や転職を防ぐためには、早期発見・早期対応が必要です。以下のような行動を心がけましょう。
- 定期的な面談の実施
- 積極的な声がけによるコミュニケーションの強化
- 産業医との連携
社員が休職や転職を考え始めると、勤怠の乱れや積極性の低下などさまざまなサインが見られるようになります。そうなる前に定期的な面談の実施や、積極的な声がけなどを行うことで早期に休職や転職を防ぐことが重要です。
新卒向けメンタルヘルスケアプログラムの導入
新卒向けのメンタルヘルスケアプログラムは、新卒が職場で直面するストレスや心理的な課題に対処するために設計されています。
- メンタルヘルス基礎知識の習得
- ストレス管理(ストレスを理解し対処法を知る)
- セルフケアとラインケア(自身だけでなく同僚へのケアも学ぶ)
メンタルヘルスは非常に身近なものであるにもかかわらず、意外と知られていないことが多いものです。まずはメンタルヘルスときちんと向き合うことの重要性を知り、自分のストレス傾向や対策を学ぶ、さらには自身だけでなく同僚など横のつながりでも活用できるスキルを習得すれば、自身も周囲もよいメンタルを維持しやすくなるでしょう。
職場環境の改善と上司・同僚の理解促進
新卒で休職を検討する人の中には、職場の環境自体にストレスを抱えている人もいるかもしれません。
- 社内の雰囲気改善
- 職場環境の改善(例:照明や温度管理、スペース配置の見直し)
- ハラスメントチェックと改善
- 指導・サポート体制の見直し
新卒の中には、学生から社会人になって大きく変化した環境に慣れていない間は些細なことでも気にしやすい人もいます。また、オフィスの日当たりが悪い、風通しがよくないなど、外からの影響を受けにくい環境はモチベーションの低下にもつながりやすいものです。
新卒が早期に休職を選択しないよう、人事労務担当者は常日頃から新卒の行動や言動の変化を観察し、心身ともに快適な職場環境づくりに勤しみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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