- 更新日 : 2025年12月24日
終身雇用とは?割合や崩壊と言われる理由、企業がすべき対策
終身雇用とは、正社員を定年まで雇い続ける雇用慣行です。高度経済成長期以降、長年にわたり日本に定着してきました。バブル崩壊以降は低成長が続き、終身雇用の維持が難しくなった上、多様な働き方のニーズの高まり等により見直しの動きがあります。この記事を参考に、自社の雇用システムの見直しのきっかけにしてください。
目次
終身雇用とは?
終身雇用とは、企業が正社員として採用した従業員を定年まで雇い続けることです。日本の雇用慣行であり、法律で定められているわけではありません。終身雇用のもとでは、大きな問題がない限り定年まで働き続けることができます。
従業員は雇用が保障され、安心して長期にわたって働けるため、戦後の日本の経済成長に貢献しました。終身雇用とあわせて勤続年数等で待遇を決定する年功序列や、新卒一括採用が日本型経営の特色と言われています。
終身雇用が広まった背景
終身雇用は戦後の高度経済成長期に広まったと言われています。高度経済成長期には、大企業を中心に競争力を獲得するために優秀な人材を囲い込む必要がありました。
また、戦争が終わった後で、生活の安定を求める人々が多い時代でもありました。そのため、安定した雇用を提供するシステムが重視されたのです。終身雇用は年功序列、新卒一括採用とともに長期雇用に適した仕組みとして広まりました。
終身雇用の特性
終身雇用は従業員を定年までの長期間雇い続けるため、従業員は安心して働くことが可能です。一方、企業は労働力を安定的に確保できるという特性があります。勤続年数に基づき待遇は向上しますが、企業の意向が強く働く形で人事が行われる傾向にあります。
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終身雇用かどうか何でわかる?
終身雇用かどうかは労働契約の内容(雇用契約書等の内容)でわかります。労働契約は雇用期間の定めがない無期雇用と、雇用期間の定めがある有期雇用に分類され、終身雇用はこのうち無期雇用に該当します。
従業員を雇い入れる際には、労働条件を明示する義務があります。労働条件のうち労働契約の期間は必ず明示しなければならない項目です。したがって、雇い入れの際に取り交わす雇用契約書や労働条件通知書等で労働契約の期間を確認すれば、終身雇用か否かがわかります。終身雇用の場合は、契約期間として「期間の定めがない」旨が規定されています。
日本での終身雇用の割合は?
厚生労働省の資料「我が国の構造問題・雇用慣行等について」(2018年6月)によると、若い頃に入社して同一企業に勤め続けている従業員の割合は、2016年時点では大卒で5割程度、高卒で3割程度を占めています。同資料によると1995年以降この割合は低下傾向ではあるものの、依然として終身雇用のもと働いている従業員が多いことを示しています。
アメリカの場合
終身雇用は日本特有のシステムで、アメリカでは採用されていません。アメリカでは、職務に対して人材を充当する形での人事が主流です。つまり、欠員が発生した場合は、職務を任せられる専門的スキルを持った人材を即戦力として採用します。最近日本でも話題になることが多い「ジョブ型雇用」の形態で、ヨーロッパ各国でもほぼ同様の雇用システムが採用されていると言われています。
アメリカのシステムは、新卒一括採用の従業員に仕事やポストを与え、終身雇用を行う前提の日本とは大きく異なります。よって終身雇用の割合という形でのデータは存在しません。
なお、参考までに、労働政策研究・研究機構の「データブック国際労働比較2024」によると、2022年における勤続年数20年以上の割合は日本が22.3%、アメリカは10.8%と約半数です。このデータからも、アメリカでは日本のような長期雇用の仕組みはないと考えられます。
また、世界の主な国々における勤続年数10年以上の割合は以下の通りです。
| 国名 | 勤続年数10年以上の雇用者の割合 |
|---|---|
| 日本 | 46.5% |
| アメリカ | 27.0% |
| イギリス | 29.7% |
| ドイツ | 37.8% |
| フランス | 40.9% |
| スウェーデン | 28.7% |
参考:データブック国際労働比較2024| 労働政策研究・研修機構
資料によると、欧米諸国は日本より雇用期間が短い傾向にあるとわかります。
終身雇用のメリット
終身雇用は従業員や企業にとってどのようなメリットをもたらすでしょうか。以下で主なメリットを4点紹介します。
従業員の生活の安定
終身雇用では、入社後大きな問題がなければ、従業員は定年までの雇用が守られ収入が安定します。収入が安定することで、生活も安定するでしょう。日本の代表的な雇用慣行である年功序列により、勤続年数に応じて収入の増加も期待できます。
会社への帰属意識が高まる
終身雇用では、約40年もの長い間同じ会社で働くことになります。そのため、会社の経営理念やポリシーなどが十分に浸透し、帰属意識の高い従業員を育てあげることができます。帰属意識や忠誠心の高い従業員は離職率が低い場合が多く、人材流出が少ないというメリットをもたらすでしょう。
採用コスト低減が可能に
中途採用では、即戦力採用のために都度採用を行います。通年で採用活動を行う必要があり、採用する従業員一人当たりのコストが高くなりがちです。
一方、終身雇用では新卒一括採用が基本です。多くの従業員を同時期に一括採用できるため、採用コストを低減できるのがメリットだと言えます。
長期的な人材育成が可能に
終身雇用の場合、企業は長期にわたり人材を確保できます。そのため、長期的なビジョンや計画のもとで人材を育成できるのがメリットです。
例えば総合職の従業員であれば、様々な業務の経験を通じて、会社全体を見渡せる幹部候補に育成することもできます。会社の事情に応じた異動なども可能になるため、人材が活用しやすいのもメリットだと言えるでしょう。
終身雇用のデメリット
逆に終身雇用のデメリットとはどのようなものでしょうか。以下で主なデメリットを3点紹介します。
従業員のキャリア選択が難しい
終身雇用では人事に会社の強い意向が働くことから、従業員自身の意向に沿わない異動、転勤などが行われる場合もあります。したがって、従業員が自らが希望する形でキャリアを選択しづらいのはデメリットだと言えるでしょう。
また、勤続年数が評価の中心に置かれ、会社に在籍するだけで一定の評価を受けられることから、仕事やスキルアップなどへのモチベーションが低下することもあります。結果として転職などの機会が減り、キャリア選択を難しくする可能性もあるでしょう。
人件費の削減、調整が難しい
終身雇用では同時に年功序列型の賃金制度が設けられることも多く、勤続年数により賃金が上昇する形になります。従業員の年齢や勤続年数の構成によっては、人件費が負担になる場合もあるでしょう。業績悪化等で人件費負担が重くなっても、解雇などの形での調整が難しいことはデメリットだと言えます。
従業員のモチベーションが高まらない
勤続年数で評価される終身雇用では、従業員のモチベーションが高まらないこともデメリットです。成果を挙げなくても勤続年数が長いことで昇進し、給与が増えることになるため、能力やスキルの高い従業員、成果を挙げた従業員の意欲は低下しがちです。このような状況では、会社の業績向上や従業員自身のスキルアップへのモチベーションが高まりません。
終身雇用のもとでは、このようにモチベーションの低い従業員を雇い続けなければならないことも大きなデメリットだと言えるでしょう。
終身雇用が「崩壊した」と言われる理由
長きにわたり日本の経済成長を支えてきた終身雇用ですが、崩壊したと言われることが増えてきました。その主な理由を以下で3点紹介します。
日本経済の低成長化
高度経済成長期の日本を支えてきた終身雇用は、バブル崩壊以降の日本経済の低成長化により維持することが難しくなっていると言われています。
終身雇用は総じて人件費負担が大きいため、企業の業績が右肩上がりであった高度経済成長期に馴染んでいました。しかしながら、昨今の長期にわたる経済の低成長状態には逆行しているシステムとも言えます。
多様な働き方やキャリア形成へのニーズの高まり
終身雇用では人事に関して会社の意向が強く働くことから、希望部署や勤務地などについて従業員の希望が通りにくい場合があります。
一方、最近の働き方改革や、経済の低成長化による終身雇用への期待の低下などにより、多様な働き方や、転職を前提にしたキャリア志向が高まっています。企業としても人材確保の必要性から、そのような従業員の考えに合わせる必要が出ており、終身雇用を見直す動きにつながっていると言えるでしょう。
グローバル化などの競争が激化
日本経済のグローバル化が進んだことで、各企業の国際競争力を強化しなければならず、企業間の競争も激化しています。業績面ではコスト競争力も求められるため、終身雇用の維持が負担になるでしょう。
また、人材獲得のための競争も激化しています。特にグローバル人材の獲得は難しく、人材確保のために日本型の雇用慣行である終身雇用から、成果主義やジョブ型人事などの人事制度導入にシフトする企業も増えているようです。
終身雇用の今後、企業に求められる対策
終身雇用にはメリット、デメリットの両面があるため完全に廃止に至らないものの、今後の人材の安定確保のためにも環境変化等に合わせて見直しが図られていくことでしょう。
以下では終身雇用が今後どのように変化を遂げるか、変化に向けて企業に求められる対策について3点紹介します。
新たな人事評価や雇用システム
従業員のモチベーション低下を防ぎ、業績向上につなげるためにも、年功序列によらない人事評価制度の導入が求められます。業務における成果や業績の評価に重点を置く人事評価制度の導入は、従業員のモチベーションを高めることにつながるでしょう。
これは優秀な人材を確保するためにも重要な取り組みです。終身雇用のメリットを活かしながら、転職やキャリアを強く意識した欧米型の雇用システムを導入する形のハイブリット型雇用システムを目指すのも一案と言えるでしょう。
キャリア開発の支援
日本経済の長期にわたる低成長などにより、企業業績の先行きには不透明感があります。そのような中、終身雇用が維持されないと考える従業員が増加し、転職を意識したキャリア志向が高まっていると言われています。
終身雇用では人事に関する会社側の意向が強く働き、キャリア形成に不向きな側面があります。キャリア志向の高まりに対応するためにも、会社が従業員のキャリア開発の支援を積極的に行うことが重要です。結果的に従業員の安心感につながり、良い人材を確保することが可能になるでしょう。
多様な働き方の推進
生産年齢人口の減少により、ダイバーシティを意識しながら様々な労働力を確保する必要性が高まっています。したがって、企業が多様な働き方を可能にする取り組みを進めることが大変重要です。
育児や介護等と仕事の両立を支援するためのフレックスタイム制、時短勤務制度など柔軟な働き方が可能な制度を設けることも一案です。勤務制度以外で、会社が両立支援をサポートするための諸制度を導入するのもよいでしょう。
終身雇用と他の雇用との違い
終身雇用以外の雇用制度について、その相違点を中心に以下で解説します。
終身雇用とジョブ型雇用
終身雇用はメンバーシップ型雇用とも呼ばれますが、それと対比して説明されることが多いのがジョブ型雇用です。終身雇用(メンバーシップ型雇用)は人に仕事を充当する雇用形態、ジョブ型雇用はその逆で仕事に人を充当する雇用形態と言えます。
「入社すること」を言い換えると、終身雇用(メンバーシップ型雇用)においては「就社」、ジョブ型雇用においては「就職」とも言えるでしょう。
終身雇用(メンバーシップ型雇用)では、職務の内容や勤務地が限定されず、勤続年数に比例し待遇が上昇します。一方、ジョブ型雇用では、採用にあたって職務内容を明確に定義した上で雇用契約を締結します。欧米諸国を中心に採用されている雇用システムで、一般的に昇進、昇格や、賃金において年功要素がありません。
ジョブ型雇用は2020年の経団連の提言、その後の大企業を中心とした導入の動きなどもあり、昨今注目されています。
終身雇用と長期雇用
長期雇用とは、文字通り長期にわたり安定して雇用を維持する仕組みを意味します。終身雇用とほぼ同義ですが、終身雇用は入社してから定年まで同じ会社で雇用し続けることを意味するのに対し、長期雇用は単に長期にわたる雇用を意味します。
日本の企業は終身雇用のシステムを備えているといっても、従業員は関連会社に出向や転籍をした後に定年を迎えることが多いのが実態です。このような場合、厳密には終身雇用と呼べないことから、長期雇用と呼んでいます。
人材確保のために時代にマッチした雇用システムへの見直しを
終身雇用にはメリット、デメリットの両面があります。終身雇用は長く日本に定着してきた雇用システムですが、低成長時代への移行、グローバル化の進展、多様な働き方を求める動きなど、新たな時代に合わせて変化が求められています。
終身雇用を維持している企業においては、メリットに留意しつつ再検討するとともに、時代にマッチした形で雇用システムを見直すことが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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