- 更新日 : 2024年10月30日
仮説思考とは?プロセスや具体例、トレーニング方法について解説
仮説思考とは、直面する課題や問題に対して自身の経験や知識を元に仮説を立ててから、その仮説を元に検証を行う思考方法です。仮説思考を身につけることにより、作業をスピーディに捌けるようになるなどのメリットが得られます。
本記事では、仮説思考とはどのようなものなのか、プロセスや具体例、トレーニング方法について解説します。
目次
仮説思考とは?
仮説思考とは「おそらくこうなるのではないか」と先回りして、予見しておく思考方法です。具体的には、自分が今持っている知識と状況を照らし合わせて仮説(自分なりの答え)を立て、その検証に必要な根拠を探しに行く思考方法といえます。
なぜ仮説思考がビジネスで重要とされるのか
仮説思考がビジネスで重要視されている理由は、変化が激しい現代において、問題点を迅速に見極め解決に導いていくための思考方法が必要なためです。
仮説思考ではあらかじめ自分なりの答えを持って事実を検証します。もしこのときに、何も仮説が立てられていない状態であれば検証すべき事実が絞り込めず、非常に非効率的な調査を行わなければなりません。一方、あらかじめ仮説を立てておけば、検証すべき事項を絞り込めるため、効率良く問題を解決することが可能です。
仮説思考を身につけるメリット
仮説思考は変化の激しい現代に適した思考方法であり、多くのメリットが存在します。もちろん、仮説以外の可能性を見落とすなどのデメリットもありますが、要所要所で実践できれば、その恩恵は計り知れません。以下に挙げるメリットを参考に、仮説思考を用いるシーンをイメージしてみてもよいでしょう。
作業のスピードアップが可能
仮説思考を身につける1つ目のメリットは、速やかに仕事をこなせる点です。
特に、多くの課題や問題を解決すべきシーンでは、1つひとつをスピーディに対処していくことが求められます。もし、仮説を立てずに課題に向き合った場合、試行錯誤のために工数を取られることもあるため、効率的に問題を捌くことが難しくなるでしょう。実際、多くの課題に対処しなければならない経営者や意思決定者には、仮説思考を取り入れている方も少なくありません。
軌道修正が容易
仮説思考で仕事を進めていくと、当初想定していた仮説が誤りであったと気づくこともあります。しかし、仮説思考で仕事を進めていた場合は比較的スピーディに進捗しているため、間違いに気づくタイミングも早く、早い段階での軌道修正が可能です。
また、誤りに気づく過程でもう1つの仮説やその他の可能性に気づくこともあるため、仮説が全く無駄になってしまうわけでもありません。ケースバイケースではありますが、多くのデータが出揃うまで待つよりも、仮説検証を高速で繰り返すことにより、結果として早く問題解決に繋がるでしょう。
仮説思考のプロセス
基本的に仮説思考は「状況の把握」「仮説の設定」「仮説の検証」「仮説の修正」の4つのステップから構成されます。より質の高いアウトプットを生み出すためには、仮説の設定から修正までを手早く何度も回さなくてはなりません。ここでは、具体的に仮説思考のプロセスについて解説します。
状況の把握
まず、情報の整理を行いましょう。情報を整理することで、状況を客観的に把握することが可能です。逆に情報の整理が不十分で、課題の具体や達成すべきゴールがぼやけてしまうと、仮説を立てること自体が難しくなります。
ここでのポイントは、情報の整理や収集を行っているうちに、必要以上に対象を広げてしまわないようにすることです。解決すべき課題やゴールを常に意識しながらした情報の把握を進めましょう。
仮説の設定
次に、課題の背景にある事情や情報を深掘りし「なぜそうなっているのか」「これが結果としてどうなるのか」などについて仮説を立てていきます。ここで注意すべきなポイントは、最初から完璧な仮説を立てようとしないことです。
仮説思考のメリットは、スピーディな課題解決です。そのためには、1つの仮説に時間をかけるのではなく、課題の設定、検証と修正を何度も回転させることが求められます。最初に立てた仮説で課題が解決されるとは限らないため、2周目、3周目と段階的に精度を高めていけば問題はありません。
仮説の検証
このステップでは、仮説の立証のため、情報を収集し詳細に分析していくことになります。検証の精度が低い場合、最終判断を誤る可能性もあるため、この作業は綿密に行いましょう。
具体的な検証方法としては、定量情報と定性情報の両面から検証を行うことが一般的です。定量情報とは、実験や調査の結果など、数値で可視化できる情報です。一方、定性情報とは、企業のプレスリリースやコメント、ニュースなどの数字には現れない情報のことです。
仮説の修正
検証が完了したら、その結果に基づいて仮説を修正していく段階に入ります。
検証結果を確認する段階で、仮説の誤りに気がつくことも少なくありません。そのため、仮説の修正は検証と並行して行われることも多いです。いずれにせよ、最初に立てていた仮説が誤りであると気づいた段階で、その仮説の修正を行います。
仮説思考の具体例
ここでは、仮説思考の具体的な進め方について具体例を用いて説明していきます。今回、ご紹介するのはあくまで一例ですが、後述するトレーニング方法とあわせて参考にしながら、ビジネスシーンなど日々の実践の中で試行錯誤することが重要です。なお、今回の設定は以下の通りです。
<仮説思考を行う人物の状況>
- 国内でスイーツ商品の製造・販売を行う会社に勤務
- スーパーなど小売店向けの商品を担当する事業部に所属
状況を把握し仮説を設定する
自社で展開している商品のAの売上について、関東甲信越地域の売上が数年ぶりに前年割れの状況になったとします。このような場合に、以下のような問題を仮説思考により設定しました。
(a)競合他社であるX社が新発売した、同種のスイーツBがシェアを奪っているのではないか
(b)関東甲信越地域におけるスイーツ全体の売上が落ち込んでいるのではないか?
(c)主要な卸先であるスーパーマーケットチェーンY社の売上自体が落ち込んでいるのではないか?
上記のように仮説を立てたら、次は検証に移ります。
検証方法を考え、検証を実行に移す
立てた仮説に対して、それぞれ検証のためのデータを収集し確認を行います。今回の場合は、以下のようにデータを収集します。
(a)X社が展開する、新発売スイーツの売上推移の確認
(b)関東甲信越地域における、スイーツ売上に関連する数値の推移の確認
(c)スーパーマーケットチェーンY社の店舗数や売上の推移の確認
上記のデータを収集する中で、(a)から(c)のいずれも数年前からさほど変化していないことに気がつきました。
仮説の修正
競合他社や卸先が大きな要因でないことが判明したため、仮説を修正します。今度は、自社の商品Aそのものや広告に原因があるのではないかと考えて、以下のように仮説を立てます。
(a)自社の商品Aが時代遅れになりつつあり、訴求力が低下したのではないか
(b)Aの広告をSNS等で掲載していなかったため、認知が低下したのではないか
上記のように新たな仮説を立てたら、その前と同じようにデータを収集し検証に移ります。
このように、仮説設定から検証、修正を繰り返すことで課題解決に繋げていきます。
仮説思考のトレーニング方法
仮説思考は日常生活の中での少しの工夫で鍛えることが可能です。さまざまな方法がありますが、具体的に取り入れやすい方法について2点ご紹介します。
So What ? Why So?の思考を繰り返す
自分自身が設定した仮説に対して「だからどうした(So What)」「なぜそうなるのか(Why So)」を繰り返し問いかけ深掘りすることで、仮説思考を鍛えることが可能です。これはビジネスシーンだけではなく、後述の日常生活の中での疑問について意識することでも、トレーニングとして活かせます。
さまざまな経験を積む
仮説思考では、最初に自分が持っている経験や情報から仮説を立てることが必要です。
このとき、本来は関係ないと思える過去の経験や知識が、課題解決の糸口になることもあります。そのため、できる限り多くの経験をし、その経験に対して仮説思考を実践する習慣をつけておくことが良いトレーニングになります。
<例>
普段は遊園地に行かないが、家族や友人に誘われたので久しぶりに訪れた。あまり遊園地やアトラクションに興味がなかったが、思った以上に楽しく、また盛況であったため驚きを受けた。
上記のような場合であれば、ただ楽しむだけではなく「なぜこんなに人気なのだろうか」「逆に自分の視点で見て改善できる点はないだろうか」などの点に注目し、思考してみるとトレーニングに繋がります。
仮説思考を身につけビジネススキルアップへ
仮説思考は、変化の激しい現代の中で必須のものとなりつつあります。日々多くの課題と直面し、それぞれに対してスピーディに対処する必要がある場合は、仮説思考の練度を高めて向き合うことでより大きな結果を出せるでしょう。
一朝一夕で身につくものではないかもしれませんが、日常の中でトレーニングすることも可能ですので、ぜひ意識的に取り組んでみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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