- 更新日 : 2025年11月11日
サボタージュとは?サボると意味は同じ?使い方や各種制度も解説!
サボタージュとは、労働者の争議行為の一種である「怠業」のことです。日常会話では「サボる」という言い方をすることもありますが、正しくは、労働者が意図的に生産性を低下させ、会社側に賃金上昇などの主張を訴える際に行う「怠業」を意味します。ここでは、サボタージュの語源や由来、争議行為の内容について解説します。
目次
サボタージュとは?
日常会話で使われる「サボる」の元となったといわれる「サボタージュ」。サボタージュは、正しくは労働者による争議紛争の手段です。ここでは、語源や意味について紹介します。
サボタージュの語源
サボタージュの語源は諸説ありますが、もともとはフランス語の木靴(sabot)といわれています。フランスの労働者が、木靴(sabot)を使用し、仕事の生産性を低下させるという行為が語源となり、それが派生して労働者が怠業行為を行う意味になったと考えられています。
サボタージュの意味
サボタージュの意味は、労働者が意図的に労働の質や生産性を低下させることです。ただし、日本では争議紛争の手段との認識が浸透しておらず、単純に「仕事を怠ける」という意味合いで使われることもあります。
厚生労働省の令和3年労働争議統計調査の概況を見ると、怠業(サボタージュ)を「労働組合又は労働者の団体が自己の主張を貫徹するために、作業を継続しながらも、作業を量的質的に低下させるものをいう」と定義しています。
サボタージュと「サボる」の違い
「サボタージュ」と「サボる」には、大きな違いがあります。「サボる」とは単に仕事や作業を怠けることですが、サボタージュは、労働組合や労働者の団体が使用者に要望や主張を受け入れてもらえるように訴えるための労働争議を目的にしています。
労働条件に関する不満を主張するため、労働を妨げる行為を争議行為といいます。サボタージュの場合は、労働量の質や量を低下させて主張を貫徹する争議行為です。したがって、労働者が団結して、労働生産性を意図的に下げる行為もサボタージュに含まれます。ただし、個人で行うサボりは本来のサボタージュの意味には該当しません。
サボタージュは争議行為のひとつ
サボタージュ以外にも、労働者が主張を訴えるために行う争議行為にはさまざまなものがあります。
争議行為の種類
以下の行為が争議行為に含まれます。
- ストライキ(同盟罷業)
労働者が一斉に業務や作業を停止し、労働力の提供を拒否する争議行動。日本語では単に「スト」と略されることが多い。 - ボイコット
労働者が団結して「自社製品・サービスを購入しない」と呼びかけて不買運動を実施する争議行為。 - ピケッティング労働争議の際に工場の入口で見張ったり、スクラムを組んだり、座り込んだりして、ストライキをスト破りから防衛する行為。
ほかにも、残業拒否、休暇闘争、職場占拠などがあります。また、事業者は労働者の争議行為に対処するための手段として、会社や店舗を閉鎖し労働を行わせず、賃金を支払わないというロックアウトがあります。
争議の免責とは
争議行為には、免責も存在します。具体的には、労働組合の団体交渉等の行為で正当と認められるものには、刑事上の免責が認められます。また、正当な争議行為により損害を受けたとしても、使用者は労働組合や組合員に対して損害賠償請求ができない民事上の免責の規定もあります。
刑事免責は以下の2つで定められています。
①刑法第35条
「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」
②労働組合法第1条2項
「刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十五条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。」
民事免責
労働組合法第8条
「使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し、賠償を請求することができない」
サボタージュの種類
サボタージュには大きくわけて3つの種類があります。
積極的サボタージュ
積極的サボタージュとは、故意に不良品を作るなどといった企業の業務を直接妨害し、生産性を低下させる行為を指します。ただし、労働に必要な機械や商品を破壊・毀損させるような行為は、与えた損害により会社の財産権が侵害されるため、正当性が認められないケースが多く見られます。
消極的サボタージュ
消極的サボタージュは、労働者が団結して作業効率を意図的に低下させる行為です。一般的に使われる「サボる」に近い状態ですが、個人ではなく集団で行い、賃金上昇などの主張を訴えます。
開口サボタージュ
開口サボタージュとは、会社の悪評を周囲に言いふらし、会社の信用を低下させる行為です。顧客や取引先への印象が損なわれます。ただし、虚偽の発言や事実と異なる発言をすれば、営業妨害とみなされ、争議行為としての正当性は一般的には認められません。
サボタージュの具体例・事件
日本で最初にサボタージュ闘争を起こしたのは、神戸の川崎造船所といわれています。1919年に川崎造船所本社の従業員たちが、労働条件の改定を訴えました。しかし社長が回答を避けたため、当時1,600人いた従業員がサボタージュを行ったといわれます。10日続いたサボタージュは全国的に大きな反響を呼び、結果として会社は労働条件の改善を約束しました。
サボタージュが起こる原因
サボタージュが起こる原因は、不当な評価や人事管理、労働条件が関係しています。主な原因を見てみると、「賃金」「労働条件」「経営・雇用・人事」にわけられます。
賃金は従業員の満足度に大きく関係します。労働内容と賃金が見合っていない場合、不満が溜まり賃上げ交渉へと発展します。労働時間や労働環境などの労働条件もサボタージュが起こる原因となります。例えば、労働者側が希望する勤務時間を大幅に超過して使用者が働かせるなど、いわゆる「ブラック企業」の状態では、サボタージュが起こる可能性が高くなります。
さらに、経営陣の方針や、雇用・解雇に関する問題、不当な人事評価によって、サボタージュに発展するケースもあります。自社の現状に不満があれば、方針転換、待遇改善、公平な評価を求めるための争議行為として、サボタージュが行われます。また、不当解雇に抗議するためにサボタージュが起こることもあります。
人事労務担当者がサボタージュを防ぐ方法・手段
サボタージュへの対策で重要なのは原因を理解することです。賃金や労働条件など、いずれもサボタージュに発展する以前の段階で従業員の声を聴くことができれば、対策を取ることができます。
評価制度の見直しや労働環境の改善など、日頃から労働者の働きやすさ、やりがいについて気を配ることが、サボタージュを防ぐことにつながります。また、労働相談窓口を整備し、労働者が抱く不満や希望について、企業側に訴えられる仕組みを作ることも効果的です。
もし従業員がサボタージュを起こしたら?対応方法について
もしサボタージュが発生した場合、労働組合や労働者の代表と交渉するよう会社として働きかける必要があります。また、サボタージュに争議行為としての正当性があるかを客観的に見極め、正当なものであれば労働者にとって不利益な扱いをしないように対処することが重要です。
従業員がサボタージュを起こすのには理由があります。原因を解明し、労働条件の改善に取り組み、従業員の不満を取り除くことが大切です。
サボタージュは労働者の権利のひとつ
サボタージュは、単純に労働をサボるのではなく、労働者が主張を訴えるための争議行為のひとつです。生産性を低下させるという行為の裏には、労働条件や賃金など会社への不満があります。
サボタージュが発生しないよう、日頃から従業員の声を聞き、働きやすい職場づくりに取り組むことが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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