• 更新日 : 2026年1月14日

ストレスマネジメントとは?企業が行う理由と効果・実践方法を解説

ストレスマネジメントとは、日常生活や仕事で感じるストレスに気づき、それらを適切にコントロールして心身の健康を維持するための取り組みです。これは、単にストレスをなくすことではなく、ストレスを力に変えるための技術とも言えます。企業においても、従業員の健康を守り、生産性を高めるために欠かせない取り組みです。

この記事では、ストレスマネジメントの基本的な考え方、具体的な実践方法、そして企業で取り組む際のポイントをわかりやすく解説します。

ストレスマネジメントとは?

ストレスマネジメントとは、自身が抱えるストレスの存在を認識し、その原因や反応に適切に対処することで、心身の健康を維持、増進することを指します。

これは、世界保健機関(WHO)や厚生労働省などが推奨する、メンタルヘルスケアの重要な柱の一つです。ストレスは、悪いものと捉えられがちですが、適度なストレスは集中力やモチベーションを高める良い刺激にもなりえます。したがって、ストレスマネジメントの目的は「ストレスをゼロにすること」ではなく、「ストレスとの付き合い方を学び、自分の力でコントロールできる状態をつくること」と言えるでしょう

ストレスとは?

ストレスを理解するには、「ストレッサー」と「ストレス反応」の二つの要素をわけて考えるとわかりやすいです。

ストレッサー

ストレスの原因となる外部からの刺激や出来事のことです。

ストレッサーの種類具体的な例
心理・社会的ストレッサー人間関係、仕事のプレッシャー、多忙さ、生活の変化(引っ越し、家族の病気など)
物理的ストレッサー騒音、温度、光
生物的ストレッサー花粉、ウィルス、ハウスダスト

ストレス反応

ストレッサーによって心や体に現れる変化のことです。

ストレス反応の分類具体的な例
心理的反応不安、イライラ、抑うつ、集中力の低下
身体的反応頭痛、胃痛、肩こり、不眠、食欲不振
行動的反応飲酒や喫煙量の増加、遅刻・欠勤、ミスの増加

ストレッサーが体に加わると、ストレス反応として心身に変化が現れます。この反応が長期間続いたり、強いものだったりすると、メンタルヘルス不調や身体の病気につながってしまうのです。

ストレスマネジメントの主な方法はある?

個人でストレスマネジメントを実践するための具体的な方法は、主に「セルフモニタリング」と「ストレスコーピング」の二つのステップで進めます。

まずは自身の状態を知るセルフチェックから始め、その後に適切な対処法を選ぶことが重要です。

セルフモニタリングでストレスに気づく

セルフモニタリングとは、自分の心や体の変化、行動パターンを日頃から意識して観察し、ストレスのサインに早期に気づくための方法です。

ストレスのサインは、人によって異なりますが、たとえば以下のような変化がないか、チェックしましょう。

ストレスのサインの種類具体的な例
体のサインなかなか眠れない、朝起きるのがつらい、頭痛や腹痛が続く
心のサインイライラしやすい、気分が落ち込む、小さなことが気になる
行動のサイン以前よりお酒を飲む量が増えた、ミスが増えた、人との会話を避けるようになった

これらのサインに気づいたら、「今、自分はストレスを感じている」ということを認識し、休息をとる、または次のステップであるストレスコーピングに進むきっかけにします。

出典:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」|厚生労働省

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ストレスコーピング(対処法)の種類

ストレスコーピングとは、ストレッサーやストレス反応に対して、意図的に働きかけ、解消・緩和しようとする行動のことです。心理学では、主に以下の3つのタイプに分けられます。

コーピングの種類特徴具体的な例
問題焦点型ストレッサー自体に働きかけて解決する上司に相談して業務量を調整してもらう、スキルアップして問題解決能力を高める
情動焦点型ストレスによる感情(不安、怒りなど)を解消する友達に愚痴を聞いてもらう、趣味に没頭する、カラオケで歌う
ストレス解消型運動や休息など、心身の緊張を解きほぐす軽い運動をする、十分な睡眠をとる、入浴でリラックスする

対処法を選ぶ際は、「そのストレッサーが解決できるものか、できないものか」をふまえて選びましょう。

業務量の多さなど、解決できるストレッサー には問題焦点型のアプローチを試み、原因自体を解決するように動きます。

過去の出来事、どうにもならない人間関係など、解決できないストレッサーには 情動焦点型やストレス解消型のアプローチで、考え方や感情を切り替えたり、心身を休めたりすることが有効です。

セルフケアとして、自分に合ったコーピング方法をいくつか持っておくことが、ストレスマネジメントにおいては非常に重要になります。

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企業におけるストレスマネジメントの実践例

企業がストレスマネジメントに取り組む際には、個人のセルフケアを支援するだけでなく、職場環境全体を改善する「組織的なアプローチ」を組み合わせることが効果的です。

経営者や人事・労務担当者は、以下の具体例をふまえて、自社に合った施策を検討すると良いでしょう。組織的なストレスマネジメントは、主に「一次予防」「二次予防」「三次予防」という三つの段階で進められます。

一次予防(未然防止)

ストレスが発生しにくい職場環境をつくります。

具体的な取り組みとして、全従業員を対象にしたストレスマネジメント研修の実施(知識の普及)、適切な業務量の配分、ハラスメント防止のためのルール策定をするとよいでしょう。

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二次予防(早期発見・早期対応)

ストレス状態にある従業員を早期に見つけ、対応します。

具体的な取り組みとして、ストレスチェックの実施と集団分析結果の活用、管理監督者(上司)へのラインケア研修の実施をするとよいでしょう。

関連資料|企業向け アンケート
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三次予防(職場復帰支援)

メンタルヘルス不調で休職した従業員の職場復帰を支援します。

具体的な取り組みとして、産業医や外部カウンセラーとの連携、段階的な職場復帰プログラムの策定をするとよいでしょう。

特に、管理監督者(上司)によるラインケアは、部下の変化に最も早く気づくことができるため、組織的なストレスマネジメントの鍵となります。

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介護・看護など特定の職場で考慮すべき点は?

介護や看護の現場では、業務の性質上、以下のような特有のストレッサーが多く、ストレスマネジメントにおいて特別な配慮が必要になります。

特有のストレッサー具体的な内容
身体的・精神的負担利用者や患者の生命に関わる責任、夜勤や不規則な勤務、常に気を張る緊張感。
感情労働相手の感情に寄り添い、自身の感情をコントロールする必要がある。
人間関係チーム医療、利用者・患者の家族との関わり。

これらの職場で効果的なストレスマネジメントを実践するには、専門職向けの研修を取り入れましょう。たとえば、自身の感情とうまく付き合うためのアンガーマネジメントや、利用者との適切な距離を保つためのコミュニケーション技術の教育などが有効です。また、職員がいつでも相談できる外部の窓口やEAP(従業員支援プログラム)の導入も大切です。

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ストレスマネジメント導入による企業のメリット

ストレスマネジメントに取り組むことは、個人が健康を保てるだけでなく、企業経営においても多大なメリットをもたらします。ストレスマネジメントを組織に導入すると、従業員はストレスに対して前向きに対処できるようになり、結果として個人と組織の双方に好影響が出るでしょう。

従業員の生産性の向上

ストレスマネジメントに取り組むことで、従業員は業務のプレッシャーや人間関係のストレッサーに対して柔軟に対応できるようになります。ストレス反応を適切にコントロールできれば、集中力・判断力・モチベーションが高まり、仕事の質とスピードが向上します。

その結果、メンタルヘルス不調の予防にもつながり、組織全体のパフォーマンスを底上げできます。

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組織全体の離職率低下

企業が継続的にストレスマネジメントを推進することは、従業員に「会社が自分の健康を大切にしている」という安心感を与えます。この安心感が、エンゲージメント(愛着・貢献意欲)の向上や離職率の低下に大きく寄与します。

また、長時間労働の是正やハラスメント防止など、ストレス要因を減らす取り組みは、働きやすい職場づくりを後押しします。

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職場環境の改善と組織力の強化

ストレスマネジメントを組織的に導入することで、上司・同僚とのコミュニケーション改善や、業務負荷の偏りの解消につながります。従業員の状態変化に気づきやすくなり、チームとしての対応力も高まるため、職場全体の風通しが良くなり、組織力が向上します。
こうした取り組みは、企業の持続的成長につながる「職場の基盤づくり」として非常に重要です。

企業がストレスマネジメントに取り組むべき根拠は?

現代の企業にとって、ストレスマネジメントは単なる福利厚生ではなく、法令順守・リスク管理・人材定着 の観点から不可欠な施策です。

法的義務

まず、労働安全衛生法により、従業員50人以上の事業場にはストレスチェックの実施が義務づけられています。これは、従業員のストレス状態を可視化し、職場環境の改善につなげるための仕組みで、企業がメンタルヘルス不調を未然に防ぐための重要な役割を果たします。

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企業のリスク管理

厚生労働省の調査では、強い不安やストレスを感じる労働者の割合は高止まりしており、これがプレゼンティーイズム(出勤しているが健康問題が理由で、パフォーマンスが低下している状態)やアブセンティーイズム(健康問題による欠勤や休職)につながり、企業の生産性に直接的な損失を与えることが示されています。こうした状況からも、企業が積極的にストレスマネジメントに取り組む必要性は明らかです。

人材の定着

さらに、ストレスに関する正しい知識を組織全体で共有することは、ハラスメント防止、心理的安全性の確保、離職防止 といった組織改善にも直結します。従業員が安心して働ける職場づくりは、企業価値の向上にもつながると言えるでしょう。

出典:令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省

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ストレスマネジメントの適切な導入が持続的な組織の成長につながる

ストレスマネジメントとは、従業員一人ひとりの健康を守り、結果として企業の持続的な成長を実現するための重要な経営戦略の一つと言えるでしょう。

ストレスマネジメントを組織に適切に導入することで、従業員は自身のストレスと建設的に向き合い、それを乗り越える力が身につきます。これにより、メンタルヘルスの不調を予防できるだけでなく、仕事への意欲や集中力が高まり、組織全体の生産性向上につながります。

企業として、セルフチェックの機会を提供したり、ストレスコーピングの知識を広める研修を実施したりすることは、未来への投資です。今日からでも、まずは職場のコミュニケーションを見直すなど、小さな一歩からストレスマネジメントを始めてみてはいかがでしょうか。

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